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移民問題対策---運転免許試験より簡単?なドイツ国籍取得テスト導入
- ドイツ在住ジャーナリスト
- シュピッツナーゲル典子
このテストは、従来の寛大な無制限移民策に歯止めをかけ、国籍取得条件を緩和(継続滞在年数8年)する代わりに義務付けた試験である。連邦州議員の反対意 見が一部あるものの、内務相ショイブレ氏は「ドイツ連邦共和国は、国籍取得の支給に対して寛大である。なにも過大な要求をしている訳ではない。運転免許試 験より簡単であろう。」と見解を述べた。内務省は、すでにインターネット上で全300問を公表済みでもある。取得テストにはこの300問の中から無作為に 選ばれた質問が33問選定される。
テストの時間は60分で、居住地の連邦州に関する問題が10問含まれる。回答方法は、4通りの答えの中から選択する形式なのでそれほど難しくはな い。ドイツ国民たるものの常識と言われているテストではあるが歴史政治が苦手なドイツ人にとっても正解できない問題が多くあるのも事実。
例題をいくつか上げてみると、
1. ドイツ連邦共和国の憲法の名称は?
2. 連邦州の数は?
3. 連邦議会選挙は何年ごとに行われる?
4. バーデン・ヴュルテムベルク州の州都は?
5. 国歌の作詞者は?
6. DDRの正式名は?
7. 連邦初代首相は?
回答は次の通り
1. Grundgesetz (ドイツ連邦共和国基本法)
2. 16州
3. 4年ごと
4. シュツットガルト
5. Heinrich Hoffmann von Fallersleben (ハインリッヒ・ホフマン・
フォン・ファラースレーベン)
6. Deutsche Demokratische Republik (ドイツ民主共和国)
7. Konrad Adenauer (コンラート・アデナウワー)
連邦統計局によると、2007年にドイツ国籍を取得した外国人は、前年を9,5%(1万1800人)下回る11万3000人にとどまった。これま での動向を探ってみると、国籍関連法が改正された2000年にピーク(18万6700人)となってからは、減少傾向が続いている。昨年新たに国籍を取得し た出身国別内訳では、トルコが全体の25%ほどを占め、トップ。2位は、セルビア・モンテネグロ、以下ポーランド、ウクライナ、イラクの順である。
1989年、ベルリンの壁崩壊後、チェコでは民主化を求めるデモが加速し、共産党体制崩壊をもたらしたビロード革命が勃発した。1993年チェコ連 邦制を解体した直後の夫の赴任であったため、ドイツのスーパーに行けば何でも手に入る不自由なしの生活をしていた者にとっては、物がない国で暮らすという ショックは大きかった。
そのため当時は、プラハから車で片道2時間ほどかけて生活用品や医療品、衣類などを買い込むため定期的に国境を越えてドイツ側に足を運んだ。家族 は、皆ドイツ国籍のため、パスポート提示で検問所の行き来に問題なかった。日本国籍の私は、その都度足止めされ、厳重なパスポートコントロールや入国・出 国書類を提出せねばならなかった。
家族は検問待ちの車の長い列からやっと開放されたと思いきや、今度は私の手続きのために別の場所ですべてが終了するまで待った。無駄な抵抗とは分 かっていたが、毎回検査官につたないチェコ語で話しかけその場の雰囲気を和らげることも試みたが、待ち時間の長いことにはいつも辟易したものだ。一つだけ ありがたかったのは、検査官の関心が私に集中したため、ドイツで買い込んだ品物については検問なしで通過できた事だ。
現在、日本人がドイツの陸地からチェコに入国あるいはチェコを出国する際は、チェコ側が2004年EU加盟国となり、同年よりシェンゲン協定(ヨー ロッパ各国の協定調印領域内での出入国が自由となる・チェコは、07年よりこの協定施行)の調印を済ませたことで、簡略化された。また、1997年日本・ チェコ間の国交正常化40周年後、多数の日本進出企業の投資を含め経済関係も急速に発展したおかげもあり、パスポート提示だけで検問が通過できるように なった。
ドイツの移民者総数は、1000万人余りで、第二次世界大戦後、出稼ぎ移民を次々と受け入れている。ドイツは、現在米国、ロシアに次ぐ世界第3位の 移民大国である。今までは、ドイツ語は理解できなくとも一定の継続滞在年数を過ごすと、申請すればほぼ自動的に国籍取得が出来た。
優秀な技術者や科学者、経営者やスポーツ選手などの有為な人材に対する国籍取得には特例があるものの、ドイツにとって移民問題で一番重要な事は、ド イツ社会から遊離した他国の同じ出身国同士の「並行社会」が生まれることで社会が不安定になるのを阻止することだ。つまり、移民民族の多くは、独自の文化 や言語を持ち込むのに一生懸命で、ドイツ社会に融合しようと努めないのが現状である。
ドイツ語を母国語としない両親をもつ外国人子弟は、学校の授業についていけず、ドイツ人生徒との格差があることで、その後の教育や職業選択に影響を及ぼす。いわゆる落ちこぼれとなった外国人生徒は、非行や暴力に走ったり、ドイツ社会に脅威を与える事件を数々起こしている。
これらネガティブな社会現象にブレーキをかける意味でも、外国人をドイツ社会の中に移民統合することが必須であるとされている。この対策法のひとつ として、2005年に新移民法が施行されて以来、統合コースとしてドイツ語コースやオリエンテーションコースが予算に組まれ、実施された。今回の国籍取得 テストの導入で、無制限移民策に歯止めが出来るのかどうか、今後の動向に注目していきたい。
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