京都市が2012年秋に実施した食品ロスの調査では、マスクと
手袋をつけた市職員らが、家庭からのごみ袋をブルーシート上で
ほどき、種類を書いたラベルを貼ったバケツに分けました。 重量で見ると、捨てられたごみのうち4割が生ごみで、さらに
その39.4%がまだ食べられる、「食品ロス」にあたるそうです。
最も多かったのは野菜類で、肉類、魚介類、パン類、
ごはんなどが続きます。手つかずのまま捨てた「直接廃棄」が
半分あり、残りは食べ残しでした。
直接廃棄のうち、おいしく食べられる時期を示す賞味期限が
読み取れるものを調べると、3割は賞味期限前に捨てられ、
期限後2週間以内も3割ありました。
京都市ごみ減量推進課廃棄物企画係長の新島智之さんは
「『高齢で買い物の頻度が減り、まとめ買いが増えたので
食品が使い切れない』といった悩みや『子どもが自立し、
料理の適量が分からない』という声をよく聞きます」と言います。
食品ロスの調査は、長野県松本市も実施しています。
13年秋から冬にかけて計7日間、100戸の家庭から出された
生ごみの内容を調べました。食品ロスは、生ごみのうち3割。
皮むきなど調理の時に食べられるのに捨ててしまった部分が
14.5%、ごはんやおかずなどの食べ残しが11.1%。
手つかずの直接廃棄は4.5%で、このうち賞味期限つきが
56.6%で、期限を過ぎたら食べない方がいいとされる
消費期限つき食品28%の2倍ありました。
賞味期限つきのうち半分近くは、期限前か、期限後1カ月
以内に捨てられていました。松本市環境政策課主任の
丸山祐太郎さんは「同時期に行ったアンケートでは、
『消費期限と賞味期限の違いを知っている』という答えが
80%だったが、正しい理解が広まっていなかったかも
しれない」と言います。
京都市と松本市の数字の違いは、「過剰除去」の扱いと
いった統計の取り方の違いによるところが大きいようです。
環境省は今年3月、家庭から出る食品ロスについての
初めての全国調査を発表しました。食品ロス量を把握
するための調査を実施している市区町村は全体の3%でした。
環境省は、この調査を元に国内の家庭からの食品ロスを、
全食品ロスのほぼ半分の302万トンと推計しています。
食品ロスの実態把握や削減の取り組みは緒に就いた
ばかりです。
市民アンケートで京都市が「食品ロスを出さないために
気をつけていること」を尋ねたところ、多かったのは
「冷蔵庫内を買い物前にチェックする」(51%)、
「買い物メモを持参する」(43%)などでした。
市は、家庭の食品ごみを削減するため
@買った食品を使いきる
A食品を食べきる
Bごみを捨てる際に水をきることを、「生ごみ3キリ運動」と
して呼びかけています。
松本市は、毎月30日を期限の近い物や残り物を使い切る日、
10日を今までは捨てていた野菜の茎などを料理に
使う日とするよう、市民に呼びかけています。幼稚園、
保育園、小学校へ出前授業を実施し、子どもたちの
食べ残しが減ったといいます。子どもを通じて家でも
食品ロスが減るのを期待しているといいます。
(浜田知宏、神田明美)
■国連計画でも半減めざす
日本の食料自給率は、カロリーベースで39%。
G7(主要7カ国)で最低です。農林水産省によると、
年間約5300万トンの食料を海外から輸入しています。
食品ごみは家庭系と事業系を合わせて1676万トンで、
うち632万トンはまだ食べられるのに捨てられる
「食品ロス」なのだそうです。これは、日本人が年間に食べる
小麦の量に匹敵し、国連の世界食糧計画(WFP)が昨年、
飢餓に苦しむ人などに支援した食料320万トンの
2倍にあたります。
食品ロスは、日本の食料安全保障にも絡む問題なのです。
環境省は、家庭から出る食品ごみが年間870万トン、
うち食品ロスは302万トンと推計しています。手を
つけないまま捨てられる「直接廃棄」、厚くむきすぎた
野菜の皮などの「過剰除去」、「食べ残し」が、
ほぼ3分の1ずつとなっています。
全国の家庭から出るごみは年間約2400万トンで、
生ごみは約4割と言われています。市町村などは
一般ごみの処理に年間1兆9400億円を使っています。
1人当たりでは年約1万5千円です。市町村にとって、
食品ごみや食品ロスを減らすことは、倫理的な問題というより
経費節減という自治体の財政に直結する問題なのです。
食品ロス削減は、国際的にも大きな問題です。
昨年9月に採択された2030年に向けた国連の
行動計画「持続可能な開発目標(SDGs)」では、
「2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の
1人当たりの食料の廃棄を半減させ、食品ロスを
減少させる」という目標が掲げられました。
この春に日本で開かれたG7の農相会合や環境相会合でも、
食品ロスは重要課題として位置づけられています。
私たちの食卓は、世界につながっているのです。
■アンケートに寄せられた意見は
こんな時に、食べ物を捨ててしまう。
そんな体験がアンケートに寄せられています。
●「野菜を一番捨てることが多いです。できるだけ保
存可能な根菜を購入し、生食はひとり分しか購入しない
ようにしています。それでも牛乳は飲みきれず捨て、
漬物系もよく残ってしまい捨てています。や
はり、また買えばいいや、とどこかで考えてしまっている
からでしょう。まずはこの意識をかえられるような
生活にしたいです」(東京都・30代女性)
●「安売りの食品を見るとつい買ってしまう。
その後冷蔵庫の奥深く入り込んだ食品はいつしか
忘れ去られ、冷蔵庫の余り物料理を作ろうと整理し
気付いた時には傷んでしまっている。毎日使うものだけ
買えばいいと分かってはいるのだが、ものぐさな私は
、3〜4日分の食材を買ってしまう。買った食材を冷凍
保存出来るよう工夫するといいのだが、加熱して食すより
生で食べる方が好き。冷蔵庫の中の物を使い切ってから、
買い物に行くことを心がける。安売りに飛びつかない。
今の私に出来ることは、この2点に尽きる」
(東京都・60代女性)
●「両親・祖父母から食べ物を粗末にするな、米粒は一粒
たりとも残すな、と言われて育ったので、消費期限切れの
食品を廃棄するときはいつも罪悪感を感じている。
ただ、もったいないからといって無理に食べて食中毒を
起こすのは馬鹿らしいので、割り切って捨てている」
(岐阜県・50代男性)
●「年寄りになると、安い時に買った野菜類が消化しきれずに、
傷んで捨てる場合があります。毎日買い物に行ければ
いいのですが、年金生活者には厳しく、特売日に買い物に
行き安くてうまいものを買う習慣がつき、消化しきれない
野菜があります」(北海道・60代男性)
●「冷凍庫に入れて忙しい時に食べようとするのですが、
半年後にそのまま捨ててしまうことがよくあります。
そのたびに、あーあ、と思います」(埼玉県・40代女性)
●「自分で買ったものは食べたいから買うのでそんなに
忘れませんが、頂いたものというのは意識の中にないので、
気がついたら消費期限が切れていたりします。
未開封ならまだしも、せっかく頂いたからと封を開けて
一度だけ食べてそれきりというパターンが多いです。
本当は、相手の好みをよく知っているのでない限り、
あまり食品は贈らない方が良いのかもしれないと思います」
(東京都・40代女性)
●「調味料:おいしいかと思って買ってもあんまり好みでないとき、
そのまま冷蔵庫に放置して消費期限が切れたら捨てる、
というケースがある。香辛料:珍しい料理を作るために
買った香辛料をその時だけ使ってほとんど残したまま放置、
そのまま消費期限切れになって捨てる、という場合もある。
(最近は小分けのスパイスも売られているので、少なくなったが)」
(兵庫県・50代女性)
●「仕事をしていると毎日買い物に行くのは不可能なので
買いだめをするが、特に野菜は保存のきく状態にする
下処理にまた時間がかかる。賞味期限や消費期限は
あまりうのみにしないで自分の鼻や目で確認するが、
毎日3食のための食品管理は想像以上に大変なこと。
かといって保存料がたっぷりの食品は避けたいという
ジレンマも。現代は冷蔵庫等の保存機能も充実しているし、
食べ物があふれているので、もったいない精神が欠如している」
(東京都・40代女性)
●「病気をしてから時々とても体調の悪い時がある。
食材を買ったのに調理できず、結局捨ててしまうことになる。
罪悪感と無駄になったお金と食材を思うと、とても落ち込む。
多少の日付は過ぎていても、においや見た目で食べるけれど、
時々自分に劣等感を覚える。悲しい」(千葉県・60代女性)
コメントです
食品の食べ残しの統計記事です。
苦手な方には興味がわかないかもしれませんが、
数字で発表していただくと、危機感を表示しやすいです。