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2020年11月22日

「いじめ件数過去最多」学校で今起きていること 認知件数が多いほど肯定的評価というねじれ

東洋経済 2020/11/19

文部科学省の調べによれば、
2019年度の小・中・高等学校
および特別支援学校における
いじめの認知件数は5年連続で
過去最多を更新。件数は約3倍に
まで膨れ上がった。
この結果だけを見れば、
尋常ならざる勢いでいじめが
増えていることになるが、
果たして実態が正しく
反映されているのだろうか。
数字の背景を追った。

202011225.jpg

「1000人あたり認知件数」
 格差が示すもの

文部科学省は、毎年
「児童生徒の問題行動・不登校等
生徒指導上の諸課題に関する調査」
(以下「問題行動等調査」)の結果を
発表している。2020年10月22日に
発表された2019年度調査結果に
よれば、いじめの認知件数は
61万2496件となり5年連続で
過去最多を更新した。

別表の各年度のグラフを見れば一目瞭然、
まさに右肩上がりだ。
5年前の14年度は18万8072件
だったため、42万4424件も
増えた計算となる。中でも小学校の
増加は顕著で、
この5年間で約4倍となった。

一方、少子高齢化により
児童生徒の数は減り続けている。
8月に文部科学省が公表した
20年度学校基本調査の速報値によれば、
小学校および中学校の児童生徒数は
過去最少となった。
とりわけ小学生は31年連続で
減少しており、いじめ認知件数の
急増と反比例の構図になっている。
つまり、一人あたりのいじめの数は
恐ろしい勢いで増えており、児童の
凶暴化が進んでいると考えて
しまいそうだが、実際はそうではない。
いじめ問題の研究で知られる
明治大学文学部准教授の内藤朝雄氏は、
次のように指摘する。
「例えば、都道府県ごとの児童生徒
1000人当たりの認知件数では、
8.9倍の格差が生じています。
いじめはどこにでも存在しますが、
自治体によってそこまでのばらつきが
出ることは考えにくいため、
この調査がいじめの実態を
表していると考えるのは
無理があるでしょう」

一定の格差が保たれている
のであれば、いじめに地域差が
あるという仮説も立てられようが、
わずか7年間でかなりの変動が
起きているのが事実。
なにしろ、格差の数値を公表し
始めた13年度は83.2倍もあったのだ。
さらに内藤氏は、いじめ認知件数の
実態についても疑問を投げかける。

「いじめに関する事件が起きると、
数字が跳ね上がるのが
『問題行動等調査』の特徴です。
とりわけ、大津市中2いじめ
自殺事件が起こったあとは顕著でした」

11年10月に起こった大津市
中2いじめ自殺事件は、学校側が
「いじめはなかった」と隠蔽
し続けたことから社会問題化。
いじめへの対応と防止などについて
学校および行政の責務を規定した
「いじめ防止対策推進法」
(13年6月に可決、同9月に施行)が
制定される契機となった。

同事件は「問題行動等調査」への
影響も大きく、11年度は
約7万件だったいじめ認知件数が
翌12年度は約19万8000件と増加した。
これは、事件が契機となって実際の
いじめが2.8倍にまで激増したと
考えるよりも、事件が児童のアンケートの
回答に影響を与えたと見るほう
が理にかなっているだろう。

いじめの認知件数が多いほど
高評価

つまり、「問題行動等調査」は
単純に数字だけを追って
「いじめが増えた、減った」と
論ずる対象としては適切でないのだ。
文部科学省自身も同様の認識を
持っており、15年8月17日に
各都道府県の教育委員会および
私立学校主管部などへ発出した
通知には、以下のように明記されている。

「『問題行動等調査』における
児童生徒1000人当たりのいじめの
認知件数については、都道府県間の差が
極めて大きい状況でありますが、
実態を正確に反映しているとは考え難く、
問題行動等調査が国の施策を考える上で
極めて重要な指標であることを踏まえると、
看過し得ない課題となっています」

さらに、この通知では以下のように
「いじめの認知」を再定義している。

「初期段階のいじめであっても学校が
組織として把握し(いじめの認知)、
見守り、必要に応じて指導し、解決に
つなげることが重要」「いじめの認知件数が
多い学校について、『いじめを初期段階の
ものも含めて積極的に認知し、
その解消に向けた取組のスタートラインに
立っている』と極めて肯定的に評価する」

認知件数がゼロもしくは非常に
少ない学校については、
「放置されたいじめが多数
潜在する場合もあると懸念している」
とまで明記している。

これらを踏まえると、
認知件数の増加は、いじめが深刻化
しているというよりも、学校現場が
いじめに対して敏感になってきた表れだと
いえそうだ。認知件数の急激な増加も、
この通知が影響を与えていると考えられる。
内藤氏もその点を評価しつつ、
児童生徒がSOSを発しやすい
環境づくりの必要性を訴えた。

「今回の調査結果からもいえるのは、
世の中で着実にいじめに対する
意識が高まっているということです。
人権意識が高まり、教育行政関係者が
『ある程度報告しなければまずい』と
考えれば認知件数は増えますが、
逆にそれらの意識が低ければ
認知件数は当然少なくなります。
ただ、いじめというのは数量的な
研究が非常に難しい分野です。
今回の調査ではいじめ発見の
きっかけとして
『アンケート調査など学校の取組に
より発見』が54.2%と最も多かったですが、
児童生徒が教室内でアンケートに
記入しているのであれば、
周囲を気にして、本当に思っていることを
書けない可能性も考えられます。
全国一律かつ学校での実施に
こだわらない調査も視野に入れるべきでしょう」

その一方で、教員にはエールを
送りつつ、改革の必要性を指摘する。

「教員1人ができることには
限界があります。教員の能力に
かかわらず、いじめがひどくならない
学校のしくみづくりが重要です。
子どもたちを閉鎖空間にとじこめて、
極端なまでに集団化するという
教育制度を見なおす以外に、有効な
改善策はありません。世の中がいじめに
対する意識を高めることで、
『学校の全体主義』が改善する可能性もあります」

大人の社会でもいじめが
存在していることを考えれば、
学校におけるいじめの根絶は不可能だ。
しかし、病気に早期治療が有効なように、
初期段階での迅速な把握を
推し進めることで、子どもたちに
深手を負わせない可能性は
追求すべきだろう。
「問題行動等調査」で明らかになる
「いじめの認知件数」は、そうやって
防止に取り組む教員たちの
軌跡なのかもしれない。

コメントです
いじめの認知件数についての
現状報告記事です。
けっきょく、社会状況の
変化で各所の歪みが
飛び散り、その先のひとつに
ある人間関係で他人への
攻撃が生じます。
その中のひとつが
他人へのいじめ。
教育現場では、後追いながら
その対策に追われますが、
活動報告や成果を可視化
しないことには解決の糸口に
なりません。
そのような歪みが
今日の記事のような
違和感となります。








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2018年09月30日

日本語教育必要な生徒、1割弱中退 公立高平均の7倍超

朝日新聞 2018年9月30日

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外国で育つなどして日本語が十分にできず、「日本語教育」が
必要な公立高校生のうち、9・61%が昨年度に中退して
いたことが、文部科学省が初めて実施した調査の結果で
分かった。2016年度の全国の公立高校生の中退率は
1・27%で、日本語教育が必要な生徒は7倍以上の
割合で中退していたことになる。また、高校からの
進学率は平均の約6割で、就職する場合は平均の
約9倍の確率で非正規の仕事だった。
専門家は支援の不足が背景にあると指摘している。

在籍している学校が「日本語教育が必要」だと
判断した子どもは、16年5月に全国の公立小中高校などに
約4万4千人おり、過去最多だった。このうち高校生は
外国籍の生徒が2915人、日本国籍の生徒が457人の
計3372人で、10年前の約2・6倍だった。
近年は急増しており、調査対象となった昨年度は
4千人近くが公立高校に在籍していたとみられる。

外国人労働者の増加などに伴い、日本語教育が必要な
子どもは今後も増える見通し。支援の必要性が
指摘されており、高校は小中学校と比べても手薄だと
されている。一方、中退率や進路状況の実態が明らかで
なかったため、文科省が公立高校を設置する都道府県や
政令指定都市の教育委員会などを通じて調べた。

調査では中退率のほか、進路状況のうち
@進学率A就職者のうち、非正規の仕事に就いた率
(非正規就職率)
B進学も就職もしていない生徒の率――をまとめた。
その結果、日本語教育が必要で、卒業見込みの高校3年生は
@が42・19%、Aが40・00%、
Bが18・18%だった。
一方、16年度の公立高校3年生は
@が71・24%、Aが4・62%、
Bが6・50%だった。

文科省はこうした高校生を支援するため、高校がNPOや
企業と連携し、日本語を教えたり、進路相談に乗ったりする
事業を始める方針。来年度予算の概算要求には、
2億円の関連費用を盛り込んだ。

日本語教育に詳しい愛知淑徳大の小島祥美准教授
(教育社会学)は調査結果について
「中退率の差は深刻な問題だ。社会の中で居場所が
なければ、反社会的勢力に取り込まれる可能性もある。
日本語教育が必要であるにもかかわらず、
そう判断されていない子どもも多く、実態はもっと
深刻だと思う。小中と高校のつなぎ目を強化し、
支援が継続されるような取り組みが急務だ」と指摘する。
(張守男、山下知子)

関連記事です。
日本の識字率は100%じゃない? 男性教諭の実感

じわじわと広がる日本社会の格差。
それは教育にも多大な影響を与えている。
「日本は識字率100%ではないのではないか」
関西の公立中学校で社会科を教える
男性教諭Aさん(39)は、そんな疑問を持っている。
授業で生徒に教科書を音読させると、漢字をほとんど
読み飛ばす。自分の住所も書くことができない。
そんな生徒はクラスに1人、2人ではない。

感じるのは、そうした生徒たちは、生活保護を受ける
など貧しい家庭の子が多いということ。
夜に親が家にいない子も多い。ひとり親で、
生活費を稼ぐために夜も働いているからだ。

「経済的に恵まれた家庭とは、本など周囲において
あるモノ、日常的に接する文字がまったく違う。
文字をちゃんと読めないまま卒業しても、健全な
社会人になるとは思えない。まさに負の連鎖です」
(Aさん)

この教諭が見ている世界は、特異なものではない。
生活保護を受けるなど、生活が困窮している家庭には、
子どもが小中学校に通えるよう、学用品費や通学費、
学校給食費を国、自治体が援助している。
文部科学省の調べによると、こうした就学援助を
受けている児童・生徒は、この15年間で倍増。
2012年度は155万人に上り、公立学校の
児童・生徒の15.64%を占めた。

家庭状況と学力の関係についての調査がある。
文科省の「平成25年度全国学力・学習状況調査
(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を
与える要因分析に関する調査研究」では、
小学6年生と中学3年生の保護者にアンケートし、
親の学歴、家庭所得といった「社会経済的背景」と、
全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)における
国語と算数・数学の成績との関係を分析した。
結果は、社会経済的背景が高い児童・生徒の方が、
各教科の平均正答率が高い傾向にあった。
また、学習時間が長いと正答率が上がる傾向にあり、
学力には児童・生徒の「努力」の効果も大きいことがわかった。

しかし、学習時間の効果も不利な環境を克服するのには
限界があった。主に知識を問う「国語A」の正答率をみると、
社会経済的背景が最も低い層で一日3時間以上学習した
児童は平均58.9%だが、最も高い層の児童は全く
勉強しなくても60.5%だった。
分析したお茶の水女子大学の耳塚寛明教授は言う。

「努力して追いつける差ではないとしたら、
格差以外の何ものでもないですよね」

AERA 2015年2月23日号より抜粋

コメントです。
二つの記事を読み比べると、高校生の中退問題は、
外国人労働者問題にだけはとどまらないようですね。
早急に対策を打たないと深刻な状況に陥ります。


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2018年07月07日

差別表現、ユーチューブが相次ぎ削除 利用者が通報

朝日新聞 2018年7月6日

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ネット空間の差別的な表現にどう対処するか。
利用者の「通報」をもとに、運営者側が投稿動画を
削除したり、広告主が問題を指摘されたサイトへの
広告を停止したりする動きが広がっている。
差別表現がなくなると歓迎する声がある一方、
対象の拡大には言論の自由の観点から慎重さを求める声もある。
「ネトウヨ(ネット右翼)動画を報告しまくろう」。
匿名掲示板サイトで呼びかけが始まったのは5月中旬。
きっかけは動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿された、
ある殺人事件の容疑者が「在日」だ、と根拠なく
言及した動画だ。ユーチューブ運営者に規約違反が
報告され、この動画が削除された、という書き込みが
あった。これを受け、他の動画も通報する動きが広がった。
ユーチューブは、差別を扇動するような「悪意のある表現」は
認めないとしており、視聴者が報告できる仕組みもある。
違反した動画は削除し、当事者に通知。
3回続くとアカウントが停止される。
ユーチューブを運営するグーグル日本法人は、
取材に「個別の対応はお話ししていない」と回答。
ただ、一昨年から、規約違反への対応を強化した、という。
複数の動画を報告した50代の会社経営の男性は、
ヘイトスピーチのデモに対抗する活動をしたこともある。
「特定の民族への憎悪をあおり、人を傷つける表現はいけない、
という認識が広まる契機になれば」と話す。
一方、削除された側からは反発も。作家の竹田恒泰氏は
5月下旬、動画が次々に削除されアカウントが停止された。
運営者からは、動画がガイドラインに違反したと判断したと
いう通知と共に、「差別的な発言は許可されません」
という内容のメールが届いたという。
取材に対し、「私はテレビの生放送番組にも出演しており、
ヘイトとされるような言論はしない。ユーチューブ側は
きちんとチェックしているのだろうか」とし、
「通報している人は、気に入らない言論を封殺する
つもりならばお門違い。堂々と議論をすべきだ」と主張した。

まとめサイト「保守速報」への広告停止
差別的な内容を含んだまとめサイト
「保守速報」への広告掲載も問題化した。
大阪高裁は6月28日、在日朝鮮人の
女性に対し名誉毀損(きそん)があったと
して、保守速報に損害賠償を命じた。
記事の差別性を認めた2017年11月の
一審・大阪地裁の判決を支持した。

在日コリアンの男性は6月初め、保守速報に、
セイコーエプソンの広告が載っているのを見つけた。
「有名企業の広告がこんなところに載るのかと驚いた」
紙媒体では、広告主は広告会社などを通じ、どの媒体に
広告をだすか決める。ネット広告は、どのサイトに
載るかではなく閲覧回数などを元に契約をすることが多く、
いくつかのサイトを束ねて配信を仲介する会社など
何社かを経由して掲載されるのが一般的。掲載先が
何百万に及ぶこともある上、サイト名を出さずに
契約する場合もあり、広告主がすべての掲載先を
チェックすることは難しい。
男性は、エプソン側が保守速報への広告掲載に
気づいていない可能性もあると考え、メールで伝えた。
数日後、広告停止を知らせる返信があったという。
指摘した男性は一連の経緯をツイッターに投稿した。
広告を出したエプソン販売の担当者は朝日新聞の取材に、
「今回は広告が掲載されるサイト名を指定していなかった。
『中立性の維持』を掲げる規定に反すると判断し、
すぐに広告を止めた。ネット広告の出稿先をすべて把握
できているわけではないが、今回の件を受け、出稿方法を
見直したい」と話した。
通報の動きが広がり、通販サイト「通販生活」を運営する
カタログハウスや映像配信のU―NEXTも保守速報への
広告を停止。ネット広告大手のファンコミュニケーションズ
(東京都)も、「規約に違反している」として、契約を
解除した。保守速報のサイトには、管理人からのお知らせと
して、「現在広告がない状態で運営しております。
このままだと存続が危うい状態です」と書かれている。
通報の動きに関わった、海外の大学に通う木野寿紀さんは、
かつて東京の街頭でのヘイトスピーチに抵抗して看板を
掲げる活動をしたこともある。
「『言論の自由を制限している』という批判もあるが、
サイト自体は削除されていないし、どのサイトに広告
を出すかは企業が判断すること。
本来は企業がチェックし、対策を取るべきだ」と話した。
ネット広告の仕組みに詳しい慶応義塾大学SFC研究所の
寺田真治・上席所員は、「これまで日本の企業は、
広告の量ばかり気にしてきたが、ここ数年、
ブランドイメージにも関心を持つようになっている。
今後、透明化の動きは進むのでは」と話す。

「他の表現にも規制広がる可能性」

一連の動きについて、ヘイトスピーチ問題に
詳しい明戸隆浩・東京大大学院特任助教は
「利用者の間で、ネット上の差別表現を放置したままに
しておけない、という危機感が高まってきた結果だ」と評価する。

その背景に、16年の米大統領選で、フェイスブックが
フェイク(偽)ニュースの温床になったとして批判され、
世界的にもネット上の言説や企業への責任を求める声が
高まっていることがあるとみる。
「差別的な主張を載せるとそれなりの訪問数はあるため、
一定の広告収入などにつながっていたが、企業側が敏感に
対応するようになれば、ビジネスとして成立しなくなるのでは」

一方、表現規制に詳しい山口貴士弁護士は、今回の動画通報の
盛り上がりについて、「特定の少数の人の権利が侵害される
場合は対応が必要だが、『傷つく人がいるから』という
理由だけで表現そのものの規制を求めていくと、他の表現にも
規制が広がってしまう可能性がある。その副作用についても、
考えるべきではないか」と指摘する。
(篠健一郎、丸山ひかり、仲村和代)





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2018年07月04日

(2030 SDGsで変える)捨てられる新品の服「年10億点」 在庫処分業者「600社が持ち込み」

朝日新聞 2018年7月3日

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倉庫に山積みの段ボール。中身は、捨てられる寸前だった服だ。
ニット、パーカ、スカート――。
大手通販業者や若者に人気のブランドの商品など、
「新品」ばかり。新しいデザインの服が安く買えるように
なった陰で、大量の売れ残りが発生している。

 大阪市の在庫処分業者「ショーイチ」の倉庫には
常に30万〜40万点の服がある。
「売れ残った、少しほつれていたなど、ここに来る理由は様々。
一度も売り場に出なかった服もある」と山本昌一社長は言う。
アパレル業者や工場など年間約600社から、500万点が
持ち込まれる。
定価の1割ほどで買い取り、タグを外してブランド名が
分からないようにして、自社のサイトやイベント会場などで
販売している。見栄えのいい写真を掲載するなどの
販売努力をして、定価の17〜18%でようやく
売れていくという。
しかし、そのまま捨てられてしまう服も少なくない。
東京都内の産業廃棄物処理業者は、銀座に店を出す
有名ブランドから売れ残った商品の処理を依頼された。
「洋服のほか、靴やカバンなど収集車3台分。
すべて破砕して焼却してほしいと言われた」。
1点ずつ処分の証拠写真も求められた。
「横流しされるとブランドが傷つく恐れがあるし、
倉庫に保管すれば資産となり税金がかかる。だからあえて焼却する」
新品衣料の売れ残りや廃棄の統計はないが、国内の年間供給量から
年間購入数の推計を差し引くと十数億点にもなる。
再販売される一部を除き、焼却されたり、破砕されて
プラスチックなどと固めて燃料化されたりして実質的に
捨てられる数は、年間10億点の可能性があるともいわれる。

 (仲村和代、藤田さつき)


 ◇国連が2015年に採択した
「持続可能な開発目標」(SDGs〈エスディージーズ〉)では、
商品などをつくる生産者と購入する消費者に対して
「つくる責任、つかう責任」(目標12)を提唱しています。
取材すると、毎日身につける服がむだを生んで大量のゴミを
発生させ、製造現場で働く人の生活に悪影響を与えている
可能性が見えてきました。
「私たちの服はどう作られているの?」という問いから、
消費者の責任を考えてみませんか。




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2018年06月21日

(チャイナスタンダード)ネット監視・管理、価値観の過渡期 ダニー・オブライエン氏

朝日新聞 2018年6月20日

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国家によるインターネット上の情報管理が様々な形で
広がり始めている。
企業や国家が大量の個人情報を握る時代。
ネットの自由は、プライバシーは、どうなるのか。
電子フロンティア財団国際部長
ダニー・オブライエン氏に聞いた。(サンフランシスコ=宮地ゆう)

 ■FB問題、米国のやり方に一石

 ――インターネット草創期の様子は
   どのようなものだったのでしょうか。

 「インターネットは、わずかな人々に使われて
いた頃から、自由で開放的であるべきだという
考えが根本にあった。一方で米政府は、
早くからネットから情報を取ろうとした。
民間は情報を守るため暗号化技術の開発を続け、
両者はいたちごっこを続けてきた」
「米政府が大量の通信記録を集めていたことが
暴露されたスノーデン事件後、批判を受けて
『米国自由法』が制定され、政府によるネットの
監視活動はある程度制限された。
逆に英国では、秘密裏にIT企業に広範な
協力を求めるようになった。
他国でも、政府がIT企業を通じて行う
情報収集を合法化する動きが出ている」

 ――政府が個人情報を握る中国と
   大差ないということでしょうか。

「大きくは変わらないが違いはある。中国では、
政府による監視を前面に出し、国民が悪さをしないよう
抑える戦略をとっている。中国でグーグルの検索が
利用できた当時、禁止用語を打ち込むと一時的に
使えなくなった。監視されていることを国民に
意識させるためだ。欧米のようなひそかな情報収集とは違う」

 ――ネットの監視や管理のあり方で
   複数のモデルが並立しているようです。

 「ネット管理は、技術的な問題よりもプライバシーに
対する各国の考え方や文化が反映される。多くの中国人は
プライバシーを政府に渡すことに嫌悪感を抱かない。
また、自国のデータは自国で管理する『データ主権』の
考えがある。米国では、インターネットは自由な
言論空間であるべきだと考え、政府の干渉を嫌ってきた
歴史がある。一方、欧州連合(EU)は企業が
個人情報をどれだけ持っているかを気にする。我々のルールに
従わなければ域内で商売させない、という姿勢でもある」
「異なる価値観が台頭し、インターネットの世界は
過渡期にある。今後、どの形の規制が普及するかは、
各国がどの文化をモデルにして、どういう価値観を
求めるかによるだろう」

 ――フェイスブック(FB)の個人情報流出問題が
   起きました。なぜ大きな騒ぎになったのでしょう。

「個人情報流出の被害がはっきり見える例は少ない。
FBは、誰の個人情報が流出してどう使われ、
どんな結果を招いたかまで見えた非常にまれな例だ。
さらにこの情報が米大統領選でトランプ陣営に
利用された点も怒りを買った」
「多くの人は、個人情報を守ろうにも、なすすべが
ないと感じてきた。どこか気持ち悪いと思いながら
FBを使い続けたのは、どうしたら状況を
変えられるのかわからなかったからだ。
ネットは個人に等しく力を与えるはずだったのに、
大企業が巨大な力を持ってしまった。
FB問題はこの不均衡を是正する機会だと思う。
他国でも今までは米国のIT企業を通じて価値観が浸透し、
米国のやり方に合わせてきたが、それも変わるかもしれない」

 ――EUでは5月から
 「一般データ保護規則(GDPR)」が施行されました。

「EU外でモデルになる可能性はある。懸念があると
すれば、かなりあいまいな言葉で書かれているところだ。
今後、EUの規制当局がプライバシー保護の名のもとに、
ネットを管理し始める可能性は否定できない。
プライバシーだけでなく、言論の自由など他の権利も
尊重する必要があり、バランスが求められる」

 ――中国型の管理が世界に広まる可能性は。
「GDPRは他国からもいい規制だという声が多くあるが、
中国に対して前向きな反応がほとんどないところを見ると、
他地域に広がる可能性はまずないだろう。
ただ、それぞれの国がどの方向へ動いていくのか
注視していく必要がある」


 ◆ダニー・オブライエン氏
英国生まれの元ジャーナリスト。英国政府のネット監視に
対し透明性を求める市民団体を設立するなど、ネットでの
言論の自由を守る活動に従事。ネット利用者の権利擁護を
目指す電子フロンティア財団で、政府によるモバイル
端末からの情報収集活動などについて分析している。


 ◆キーワード
<スノーデン事件> 英紙ガーディアンが2013年6月、
「米国家安全保障局(NSA)が米電話会社の通話記録を
毎日数百万件収集」と報道。米中央情報局(CIA)元職員、
エドワード・スノーデン氏が「情報源」として名乗り出た。
その暴露文書からは、大手IT企業が個人情報収集に
協力していたことも判明。日本を含む世界38の大使館や
代表部、メルケル独首相、欧州連合や国連本部が
盗聴・監視対象だった疑惑も浮上した。

<フェイスブックの情報流出> 米交流サイト最大手、
フェイスブック(FB)の最大8700万人分の
個人情報が、選挙コンサルティング会社
「ケンブリッジ・アナリティカ(CA)」に流出。
CAから費用提供を受けたロシア系米国人教授が
独自のFBアプリを開発し、学術目的名目でこれらの
情報を入手。
2016年の米大統領選に影響を与えたと指摘される。

 <一般データ保護規則
(GDPR=General Data 
Protection Regulation)>
 欧州連合28カ国にノルウェー、アイスランド、
リヒテンシュタインを加えた欧州経済領域で
5月25日から導入された。企業や団体が欧州域外に
個人情報を持ち出すことは原則として禁止。
対象は名前や住所、メールアドレスのほか、
ネットを通じた商品購入記録まで幅広い。
違反すると高額の制裁金が科される可能性がある。


コメントです。
日々の生活でネットからの情報活用が浸透し、
今や誰でもフリーで膨大な情報が得られます。
もちろん、その情報の品質は「玉石混交」ですが、
表面上は便利性のほうが明らかに勝っています。
でも、誰がそのインフラを維持するコストを
負担しているのでしょうか?
何かしらのメリットがないと、誰も負担など
しません。
その見返りが個人情報の蓄積です。



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2018年04月08日

妊娠した高校生「知れたら退学」おなか隠して通学、出産

朝日新聞 2018年3月30日

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全国の公立高校で2015年度と16年度に、
32人の高校生が妊娠・出産を理由に学校側から
勧められて退学していたことが、文部科学省の調査で
明らかになった。女子生徒が退学に追い込まれる
現状があるなか、学ぶ機会を奪わないよう生徒を
支援する動きも広がりつつある。
  • 妊娠・出産の高校生、学校の勧めで「自主退学」32件
  • 妊婦の生徒「排除」傾向 退学処分や自宅待機

 文科省の調査によると、2年間で高校が生徒の妊娠を
確認した件数は全日制と定時制で計2098件。
妊娠後の在籍状況は「本人または保護者の意思に
よる自主退学」が3割にあたる642件に上り、
高校の勧めによる「自主退学」は32件あった。

このうち、生徒や保護者が「通学、休学や転学」を
希望したのに、学校が退学を勧めたケースは18件だった。
事実上、望まない退学に生徒が追い込まれていた
可能性がある。学校側は「母体の状況や育児を行う上での
家庭の状況から、学業継続が難しいと判断した」
「学校の支援体制が十分ではなく、本人の安全が
確保できないと判断した」といった理由から退学を
勧めたという。

今回の調査は子どもの貧困の問題に取り組む
国会議員グループなどの求めを受け、文科省が
初めて取り組んだ。同年代の男子高校生が妊娠
させた事例がある可能性もあるが、
調査は女子生徒のみを対象にした。

同省は29日付で全国の教育委員会に対し、安易に
退学勧告をしないよう求める通知を出した。
生徒が退学を申し出ても、本人や保護者の意思を
十分確認し、休学や転学などの方法を知らせるよう
求めている。

妊娠した生徒を支援する動きも

学校の対応に対して疑問視する声もあがる。

妊娠・出産の高校生、学校の勧めで「自主退学」32件


全国の公立高校で、妊娠・出産を理由に学校側から
退学を勧められ、その結果生徒が学校を退学した
ケースが2015〜16年度に32件あったことが、
文部科学省による調査で分かった。生徒が通学や
休学を希望したにもかかわらず、学校側が退学を
勧めた例もあり、本人の意思に反して退学に
追い込まれていた可能性もある。

文科省が高校生の妊娠・出産と退学の関連を
調べたのは初めて。担当者は「高校卒業に向けた
学習ができないことは、貧困の連鎖などにつながる
恐れがある。安易な退学勧告をせず、子どものために
必要な配慮をしてほしい」と話す。
全国の教育委員会にも、こうした配慮を求めるという。

調査によると、15、16年度に高校が生徒の妊娠を
把握したのは全日制1006件、定時制1092件の
計2098件。在籍状況をみると「本人または
保護者の意思に基づいて自主退学」が全日制で
371件(36・9%)、
定時制で271件(24・8%)だった。

懲戒として退学させられた事例はなかったが、
高校の勧めによる「自主退学」は全日制で21件、
定時制で11件あった。このうち、生徒や保護者が
「通学、休学や転学」を希望したのに、学校が退学を
勧めたケースは全日制で12件、定時制で6件あった。
勧告の理由は「母体の状況や育児を行う上での
家庭の状況から、学業継続が難しいと判断した」
「学校の支援体制が十分ではなく、本人の安全が
確保できないと判断した」が多かったという。
(根岸拓朗)


コメントです。
今日の記事です。
100%退学というわけでは
ないのですね。
教育現場や同席する就学生にも
混乱が生じるでしょうが、
きちんとガイドラインを定めて
セーフティーネットを整備して
ほしいです。
放置すれば貧困層に陥る可能性が
高いです。

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2018年02月19日

奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる

朝日新聞 2018年2月12日

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国の奨学金を返せず自己破産するケースが、借りた本人だけで
なく親族にも広がっている。過去5年間の自己破産は延べ
1万5千人で、半分近くが親や親戚ら保証人だった。
奨学金制度を担う日本学生支援機構などが初めて朝日新聞に
明らかにした。無担保・無審査で借りた奨学金が重荷となり、
破産の連鎖を招いている。

機構は2004年度に日本育英会から改組した
独立行政法人で、大学などへの進学時に奨学金を
貸与する。担保や審査はなく、卒業から20年以内に
分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と
保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に
保証料を払う「機関保証」を選ぶ。機関保証の場合、保証料が
奨学金から差し引かれる。
16年度末現在、410万人が返している。

機構などによると、奨学金にからむ自己破産は16年度までの
5年間で延べ1万5338人。
内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、
連帯保証人と保証人が計7230人だった。
国内の自己破産が減る中、奨学金関連は3千人前後が続いており、
16年度は最多の3451人と5年前より13%増えた。

ただ、機構は、1人で大学と大学院で借りた場合などに
「2人」と数えている。機構は「システム上、重複を除い
た実人数は出せないが、8割ほどではないか」とみている。
破産理由は「立ち入って調査できず分からない」という。

自己破産は、借金を返せる見込みがないと裁判所に
認められれば返済を免れる手続き。その代わりに財産を
処分され、住所・氏名が官報に載る。一定期間の借り入れが
制限されるなどの不利益もある。

奨学金にからむ自己破産の背景には、学費の値上がりや
非正規雇用の広がりに加え、機構が回収を強めた影響もある。
本人らに返還を促すよう裁判所に申し立てた件数は、
この5年間で約4万5千件。16年度は9106件と
機構が発足した04年度の44倍になった。
給与の差し押さえなど強制執行に至ったのは
16年度に387件。04年度は1件だった。

奨学金をめぐっては、返還に苦しむ若者が続出したため、
機構は14年度、延滞金の利率を10%から5%に下げる
▽年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を
5年から10年に延ばす、などの対策を採った。
だが、その後も自己破産は後を絶たない。

猶予制度の利用者は16年度末で延べ10万人。
その期限が切れ始める19年春以降、返還に困る人が
続出する可能性がある。(諸永裕司、阿部峻介)

     ◇

〈国の奨学金制度〉 1943年に始まり、現在は
日本学生支援機構が憲法26条「教育の機会均等」の
理念の下で運営している。2016年度の利用者は
131万人で、大学・短大生では2・6人に1人。
貸与額は約1兆円。成績と収入の要件があり、
1人あたりの平均は無利子(50万人)が237万円、
要件の緩やかな有利子(81万人)が343万円。
給付型奨学金は17年度から始まり、新年度以降、
毎年2万人規模になる。

高校生向けの奨学金事業は05年度に都道府県に
移管されており、全額が無利子の貸与となっている。
大学生向けで給付型を採り入れている自治体もある。

コメントです。
奨学金の自己破産はずいぶん前から
よく話題にされており、今回、調査によって
統計解析されたようです。
所得格差が進んだことに加え、
正規雇用率の低下、そして
少子化によって大学入学へのハードルが
下がったことも原因の一つでしょう。




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2017年07月23日

ゴールデン街の「欠損女子」バー人気、障害を「隠す」から「見せる」に

AFP 2017年07月21日

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【7月21日 AFPBB News】200店舗以上の飲み屋がひしめく
東京・新宿区の繁華街「新宿ゴールデン街」で、店舗の2階に
続く狭い階段を登ると、白を貴重としたこじんまりとしたバーに
行き着く。客と談笑しながらバーカウンターに立つ琴音さん(24)は、
お酒のグラスを常に左手で運んでいる。彼女には右手がない。

 2015年10月から不定期に開催しているバー「ブッシュドノエル
」は、体の一部が欠損した女性たちがカウンターに立つ
「欠損バー」だ。先天的に手や指がない女性、事故や病気などで
後天的に手や足、目を失った女性ら、現在5人の自称
「欠損女子」がスタッフとして働く。

バーは1時間の完全入れ替え制にもかかわらず、開店の
午後6時から満席状態が続き、途中からは立ち飲み客も
出るほどの人気ぶり。「欠損に興味があった。
セクシーというか」と「欠損フェチ」のくまもんさん(仮名・31)。
毎回来店しているという滝川なつみさん(50)は
「すごく皆さんかわいいと思う。かわいい子とお話しに
来ているだけ」と話す。

「どうやってその義手を動かすの?」という客の素朴な質問に、
琴音さんは肩の動きで能動義手を操作しながら説明し
、「前よりつかむ力が強くなったんですよ」と客の手を
挟んでみせる。最初は「義手」が話題にあがるが、
会話は自然に琴音さんの人柄や日常生活へと流れていく。

■障害を「隠さなくていい場所」

 琴音さんは、開催当初から欠損バーで接客を続けてきた。
店のオーナーの北川玲さんからドリンクの作り方も教わり、
今では片手で器用にカウンター業務をこなす。
「やれることは、彼女たちにもやってもらう。変に特別扱い
したり、私が気を使って全部やることはしない。
そのほうが女の子たちもやりがいがあるみたい」と北川さん。
琴音さんが注ぐグラスがぐらつくと、北川さんが自然に
手を添えてサポートする。

琴音さんが右手を失ったのは、高校1年生のとき。
アルバイト先からの帰宅途中にダンプカーに追突され、
目覚めたときには右手の前腕部を失っていた。
別の病気も併発したことで入院が長引き、高校は
卒業できなかったが、退院後はコールセンターなどの
仕事も経験した。「片手な分、作業が人よりもできないと
思われがちなのが嫌で、すごく努力した」

「欠損バー」を始めたきっかけは、今は廃刊と
なった雑誌「BLACKザ・タブー」の編集長・岡本篤さんが、
琴音さんが事故後も続けていた趣味のコスプレを目にし、
誌面で紹介したこと。読者から熱狂的なファンレターや
メールが届いたため、バーを企画したところ、予想以上の
人が集まった。「最初は成り立つのか疑問に思った」と
琴音さん。スタートから1年半たった今も、客足が絶えない。
「欠損はマイナスに見られがちなのに、ここはどんどん
プラスになっていく場所」だと琴音さんは感じている。
「隠さなくてもいい」という気持ちが彼女をより前向きに
させた。

スタッフで、生まれつき左肘から先の手がなく、3歳から
義手を装着しているぽわんさん(20代)も、
「普通に見えるよう」義手をすることに違和感を覚えて
いたという。「普通じゃないことを否定されているように感じた。
(義手だと)言いたくない人もいるけど、私は言いたい」。
1年半前にニュースで欠損バーの存在を知り、自ら働きたいと
声をかけた。最近では、義手をつけずに
外出することも増えたという。

義眼の「欠損女子」としてスタッフに加わった
大学生リブさん(22)は12歳の頃、窓ガラスに激突し、
右目を失明。去年の5月までは義眼を使用せず、
眼帯や前髪で片目を覆っていた。メイド喫茶で働いたことも
あるが、病気だと誤解されるなど、見た目を理由に
多くの店から断られた。そんな中で出会った欠損バーは
「これからも、い続けたい場所」だという。
「今までコンプレックスだったものが、ここでは『個性』と
思ってもらえる。今までそういう経験がなかったので楽しい」

スタッフ同士は、悩みや喜びを分かち合う仲間にもなった。
「今まで同じ境遇の子と会うことがなかった。知らないことも
知れるし、共感できるから楽しい」とぽわんさん。
プライベートでも一緒に遊びに行くことがあるという。

■「欠損フェチ」から多様な客層へ

訪れる客は様々だ。主催の岡本さんは「最初はフェチが
多かった。傷口を見て、触りたいとか、近くで見たいとか。
でも、彼女たちの努力で、客層が変わっていった。
来ると、ほっこりする空間になった」と話す。

確かに、「欠損バー」というアンダーグラウンドな響きに
似つかず、店内には和やかな雰囲気が漂う。
「お客さんの中でも温かい空気が流れていて、
他のバーにはない」と常連の小川佳祐さん(28)は言う。
小川さん自身も、軟骨無形成症という障害を抱えている。
「僕の場合、同じものを求めて来ているところも少しある。
相手もがんばっているから、僕もがんばろうという気持ちを
得られる」。実際、障害者の常連客も多いという。

■慈善事業ではなく、「普通に」「面白く」働く

 岡本さんは、障害者の働く場所が限られている現状に対し、
欠損バーで新たな風を吹き込みたいと願う。
「もう少し障害者が働くことが普通になって、
似たようなものがでてくれば面白い」

一方で、欠損バーは決して「慈善事業」ではないと念を
押す。琴音さんの腕を見て、岡本さんが思い付いたバーの
「ブッシュドノエル」という名前は、フランス語で「切り株」と
いう意味だ。「この名前もふざけていると思う。
でも、障害者だからって真面目にやる必要はない。
来てみたら、面白いよと」

中にはスタッフに同情する客もいるが、それは彼女たちに
とって本望ではない。「『事故に遭ったんだ、かわいそう』と
言われるのは好きではない。『あ、そういえば手が
ないんだったね』くらいがいい」と琴音さん。

そこには、「障害」という壁を超えた、一対一の
人間関係がある。「一般社会の中で、
1
人の人格がある人として位置づいている。
ごく自然体にやっていて、それを発信できるのがいい」。
普段から障害者に関わっている社会福祉士の
小幡恭弘さんは、バーの魅力をこう語る。

あえて「欠損」を押し出すことで、「障害」が障害で
なくなっていく場所。「こういう境遇の人たちが普通に
楽しく生きているのを、気をはらずに接してほしい」と
ぽわんさん。「事故に遭う前よりも、今の自分のほうが
確実に好き」と琴音さんの目も輝く。欠損バーの明かりは、
絶えない笑い声とともに、遅くまでともり続けている。
(c)AFPBB News/Hiromi Tanoue


コメントです。
欠損バーの話題です。




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2017年07月02日

風邪薬成分、安価な中国産で水増し 国内最大手メーカー

朝日新聞 2017 6 22

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多くの風邪薬で使われている解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(AA)
製造で国内最大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山市)が
自社で作ったAAに安価な中国製AAを無届けで混ぜて水増しし、
製薬会社に出荷していたことがわかった。医薬品医療機器法
(薬機法)違反にあたり、厚生労働省が5月に立ち入り調査を
実施。指導権限を持つ和歌山県が近く処分する方針だ。

民間調査会社によると、国内でAAを製造しているのは2社で、
山本化学が国内シェアの約80%を占めている。
AAを仕入れた製薬会社が調合して風邪薬をつくり、病院で
渡される薬や市販薬として広く販売している。厚労省の立ち入り後、
同社はAAのほか全製品の出荷を自粛している。

 関係者によると、山本化学は、米国産の原料などを使い、
和歌山市内の工場でAAを製造している。しかし、これとは別に
中国で作られた安価なAAを輸入し、自社で作ったAAに
混ぜて出荷していたという。費用を節減し、生産量を
上げるためとみられる。

山本化学の関係者は「少なくとも数年前から、中国製を
1〜2割混ぜていた」と話している。



コメントです
少し前に食品関係の産地や期限の偽装が
発覚したのは記憶に新しいですが、
いよいよ製薬会社ですか。
以前、複数の薬剤師による覆面座談会の
記事を読んだことがありますが、
全員が口をそろえてジェネリック薬は
選択しないとありました。
その方たちの意見がすべてだとは
思いませんが、やはり消費者の知らないところで
不正や違法行為はあるのかもしれません。

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2017年06月03日

出生数、初の100万人割れ 出生率1.44、2年ぶり微減 昨年

朝日新聞 2017年6月3日

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2016年に国内で生まれた日本人の子どもの数は
97万6979人で、年間の出生数で初めて100万人の
大台を割り込んだ。厚生労働省が2日発表した
人口動態統計でわかった。
合計特殊出生率は1・44で、前年を0・01ポイント
下回った。前年より下がるのは2年ぶり。
人口維持に必要とされる2・07に遠く及ばず、
人口減に歯止めがかからない。

合計特殊出生率は1人の女性が生涯に産むと見込まれる
子どもの数で、その年の15〜49歳の女性が産んだ
子どもの数を元に計算される。過去最低だった05年の
1・26を底に13年までは緩やかな回復が続いたが、
14年以降は一進一退で足踏みした状態になっている。
母親の年代別では35〜44歳で微増したが、
34歳以下の世代はすべて低下した。
16年に生まれた子どもは前年より2万8698人少なく、
統計を取り始めた1899年以降、初めて100万人を
下回った。減少傾向は第2次ベビーブームが終わった
1974年から続いており、親になる世代の人口自体が
減っていることが背景にある。一方、死亡数は
130万7765人で戦後最多だった。その結果、
出生数から死亡数を引いた自然減は33万786人で、
過去最大の減少幅となった。
婚姻件数は4年連続で減少し、戦後最少を更新して
62万523組だった。出生率の都道府県別では
沖縄が1・95で最も高く、最低は東京の
1・24だった。
厚労省の担当者は出生数減少について
「晩婚化や婚姻件数の低下が影響している。
このまま減少が続くと予想される」とみている。

 (西村圭史)


 ■「1.8」遠い政権目標

「極めて深刻な問題だ。若者や非正規雇用労働者の
経済的不安定、子育ての孤立感・負担感、
さまざまな要因が絡み合っている」。
菅義偉官房長官は2日の記者会見で、2年ぶりに
前年を下回った出生率についてこう述べ、
少子化対策に取り組む方針を改めて強調した。
安倍政権は、50年後の人口1億人維持を目指し、
20年代半ばの「希望出生率1・8」の達成を
掲げる。子どもをつくりたいとの希望がかなった
場合の出生率としている。人口減少にブレーキを
かけて消費や投資を促進させる狙いで、保育所の
整備や結婚支援、仕事と育児が両立できる
環境整備などに取り組んでいる。
だが、内閣府幹部は「ここまでやって、やっと
現状で踏みとどまっている。すぐには効果が見えない」と
漏らす。国立社会保障・人口問題研究所が4月に
公表した将来推計人口では、今後50年間、
出生率が1・42〜1・44で推移すると推計。
今の状況ではこちらの方が現実的で、この推計では
65年の人口は8808万人に落ち込む見通しだ。


 ■結婚したいけれど…
出生率が伸び悩む要因の一つに、結婚する人が
減っていることがある。
16年の婚姻件数は4年連続で戦後最少を更新した。
東京都内の男性(36)は「将来のことを考えるほど
結婚は遠ざかる」と打ち明ける。
スポーツインストラクターとして働いて12年。
トレーニング用具などの出費も多く、生活費を除くと
残るのは月5万円未満。
「体が資本だが、いつまでこの仕事を続けられるか」。
交際する同年代の女性と結婚したいと思っているが、
「生活を支えられなくなる可能性がある」と
結婚話は避けているという。
20〜30代の男女を対象に内閣府が14年度に
実施した調査では、未婚者の約8割が結婚を考え、
「将来子どもがほしい」と回答した人は9割弱にのぼる。
一方、未婚の理由を複数回答で問うと、恋人のいる男女では、
「結婚後の生活資金が足りないと思う」(31・2%)が
トップだった。経済的事情が、結婚しない要因の一つと
なっていることがうかがえる。個人の価値観として
「結婚しない」人も増えているとの指摘もある。
NPO法人全国地域結婚支援センターの
板本洋子代表は「結婚することが当然だった時代は移り、
個人の人生の『選択肢の一つ』になっている」と話す。
社会保障制度に詳しい日本総研の飛田英子主任研究員は、
「子育てを社会全体として支える仕組み作りは重要」と
したうえで、「『人口減少社会』を前提に、それでも
揺るがない社会保障のあり方や格差がさらに
拡大しない仕組みも議論していく必要がある」と
話している。

 (佐藤啓介、中井なつみ、高橋健次郎)



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2017年05月24日

スマホしながらバス運転、頻発 小1死亡事故も


朝日新聞 2016・5・23

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端末の使用目的は通話が3件で、残りはスマホの
画面を見たものが大半だ。
スマホの使い方は
▽ゲーム6件
(ポケモンGO5件、モンスターストライク1件)
▽メール5件
▽無料通信アプリ「LINE」5件
▽写真や動画を投稿3件

  • 常習化 青信号渡る7歳に気づかず

    路線バスや観光バスなどの運転士が運転中に
    スマートフォンや携帯電話を操作し、
    国土交通省に報告のあったケースが
    昨年1月以降、少なくとも33件
    あることがわかった。
    自転車の男児をひいて死亡させる
    事故も起きていた。
    国や業界団体は危険な「ながら運転」の
    禁止徹底を呼びかけるが、歯止めがかからない。

    • 運転中にスマホや携帯電話を使うのは
      道路交通法で緊急時やハンズフリーでの
      通話を除いて禁止されている。
      業界団体の日本バス協会は今年1月、
      スマホなどの使用禁止の徹底を求める
      指針をまとめたが、2月以降に
      7件起きるなど後を絶たない。

国交省自動車局への取材をもとに、朝日新聞が
バスの運行事業者に確認した。昨年1月から
今年4月までに把握できたバスの「ながら運転」は
33件。内訳はスマホが27件、携帯電話が4件、
タブレットが1件などで、走行中や信号待ちの間
などに操作していた。

事業別にみると、路線バス27件、観光など貸

チャット1件などだった。

死亡事故は昨年3月に東京都台東区で起きた。
交差点を右折中の大型観光バスが、自転車で
横断歩道を渡っていた小学1年生の阿部余木
(よぎ)君(当時7)をひいて死亡させた。
運転士は事故の直前までLINEでメッセージを
見ていて、スマホを片手に運転していたという。
右側ばかりを見ていて、向かい側から来た
余木君には「全く気づかなかった」という。

仙台市では昨年1月、回送中の路線バスが
女性をはねて重傷を負わせた。
運転士がスマホでメールを確認していたという。

バスの「ながら運転」をめぐっては昨年10月、
大阪で観光バスの運転士がポケモンGOをしている
動画がネットに投稿され、国交省が11月に禁止の
徹底をバス協会などに通知。その後、国交省は指導を
強化し、問題が起きたすべてのケースを監査

することにした。国交省は33件のうち27件を監査し、
2件を車両使用停止、21件を文書警告とした。

国交省は「プロの運転士としては数があまりに多い。
一方で、問題が発覚したのは乗客が通報したり事故に
なったりしたケースで、実際はもっと多いだろう。
監査などで厳しく対応したい」
(自動車局安全政策課)としている。(北川慧一)

■バス運転士の「ながら運転」(主な例)

15年夏〜16年夏 
大阪 路線バスの運転士が回送中に
運転席の速度計をスマホで撮影して
ユーチューブに投稿

16年5月 
福岡 路線バスの運転士が信号待ちの間にスマホを
股の間に隠し、テニスの試合結果を確認

16年5月 
福岡 路線バスの運転士がスマホで釣りの
ゲームについてチャットでやりとり

16年10月
大阪 観光バスの運転士がスマホのゲーム
(ポケモンGO)で遊び、ユーチューブに
動画が投稿される

16年11月
大分 路線バスで運転士がスマホのゲーム
(モンスターストライク)で遊び、
乗客に通報される

17年4月
沖縄 貸し切りバスの運転士が回送中に
米軍基地移転の反対集会をスマホで撮影し、
ツイッターに投稿

コメントです。 
知人とも話していますが、
最近のドライバーは運転が
下手というより、
予測不能な動きをする。
ここが強く一致しました。
おそらくスマートフォンのせいでしょう。

前から思っているのですが、運転席に
座るとスマートフォンが圏外になる
自動車を作ればいいのにと。。

それぐらいしないと、運転中の
スマートフォンの使用は減少しません。
そして事故も増えていくはずです。


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2017年05月08日

「おれ、なんで捨てられたの?」 問う息子を抱きしめた

2017年5月7日 朝日新聞

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開設から10年になる慈恵病院(熊本市)の
「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)。
月日を重ねた分、預けられた子どもは大きくなっていく。
中には、新たな家庭で育てられている子どもたちがいる。

西日本で暮らす女性は、小学校低学年になる
息子と初めて出会った日のことを懐かしく思い出す。
3人の子育てが一段落し、「もう一人育てられる」と
思って、育ての親が戸籍上も親となる
特別養子縁組を希望した。乳児院で面会したのは、
生後10カ月の頃。「めちゃくちゃかわいい」。
赤ちゃんは輝いて見えた。緊張した様子だったが、
2時間ほど一緒にいると、ひざに乗るようになった。
抱っこし、ミルクを飲ませてあげた。1歳になる前に家に
やってきて、親子としての時間を紡いでいった。
小学生になった今、ドッジボールや「けいどろ」で
遊び回り、ご飯をもりもり食べる。
「あなたを産んでくれたお母さんがいる」。
初めてそう話したのは、3歳の誕生日。
そこから、日常の中で生い立ちを伝えてきた。
「ゆりかご」に預けられたこともその一つ。
息子から聞いてくることもたくさんある。
「なんでお母さんは産んでくれなかったの?」
「(生みの母は)どこにいるの?」
「もともとの自分の名前は?」。
女性にも答えられない質問もある。
ある時、息子はこんなことを言ってきた。
「おれ、なんで捨てられたの? 
要らなかったの? 要らなかったんでしょ?」
女性はこう返した。
「どうしても命を助けたい、あなたを大事に
したいと思ったのよ。お陰で家族になれてうれしい」。
ぎゅっと抱きしめると息子も力強く抱き返してくれた。
小さな体で一生懸命受け止め、考えているのだと思う。
小学校では、子どもたちが自身の生い立ちを発表する
機会があるという。どうすればよいかと思う。
息子はいずれ、生みの母に会いたくなるかもしれないし、
思春期に入って自分のルーツに悩むかもしれない。
母親として、一つ一つ、息子が納得できるよう、
一緒に向き合っていくつもりだ。
                 ◇
「お父さん、お母さんに『ゆりかご』を通して
出会えたのは奇跡だなと思う」
西日本で暮らす別の男の子はそう語る。
両親は、優しいが、悪いことをすると
しかってくれる「普通の親」だ。
「ゆりかご」のことは、幼い頃から
包み隠さず聞かされていた。
男の子にとって、育ての母も生みの母も大切だ。
「お母さんが2人いてもおかしくない」
その思いを、両親も大事にする。父親は、息子とともに
生みの母が暮らしていた街を訪ね、誓った。
「命をかけて守ります」。
元気に素直に育っている
自慢の息子。
もし駐車場や山の中に置かれていたら――。

「やっぱり『ゆりかご』で命が守られたんだ」と
父親は思う。
今の男の子の夢は、子どもたちにかかわる仕事だ。
両親は願う。
「(息子には)血のつながりがある人がいない。
幸せな結婚をしてほしい」。
家庭ができるのを楽しみにしている。
(岡田将平)

■「出自を知る権利は」悩む病院
匿名で子どもを預かる「ゆりかご」は、病院職員の
声かけや児童相談所による調査で半数以上は
親の身元がわかっているが、
不明のままの子も少なくない。
「子どもから出自を知る権利を奪う」という課題は
開設当初から重く横たわる。
慈恵病院の元看護師長、下園和子さん(65)は、
初めて預け入れに立ち会った光景が忘れられない。
保育器の赤ちゃんの横で、
若い看護師たちが泣き崩れていた。
「山や林に捨てられて死んでいたかもしれない。
これで良かったんよ」と肩を抱いて励ましたが、
内心では「これで本当にいいの?」と感じた。
「私たちはこの子の人生に全く責任を持てない。
それなのに助けたなんて言えないと思った」
開設前は、安全に赤ちゃんを保護できるか
どうかだけに神経が向いていた。
だが、預けられた子どもたちに向き合ううち、
「赤ちゃんたちはいずれ成長し、自分の祖先が
分からないことに悩むだろう。幸せとはいえない」と
思うようになったという。
開設から3年間かかわった元熊本県
中央児童相談所課長の黒田信子さん(66)も、
出自の問題に懸念を持っていた。
とにかく親を捜そうと、預け入れのあるたび、
一緒に置かれていた紙袋や子どもを包んでいた
タオルなどわずかな手がかりから調査した。
親がわからないままの子に
「なぜもっと捜してくれなかったの」と
言われるような気がする。
「(ゆりかごでは)肉体的な命は助けられても、
心は救えていない」と訴える。(岡田将平、山田佳奈)




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2017年03月08日

営利目的で養子あっせん容疑 団体元理事ら2人逮捕へ

朝日新聞 2017年3月8日

児童福祉法が禁じる営利目的の特別養子縁組をあっせん
したとして、千葉県警は、民間団体「赤ちゃんの未来を救う会」
(同県四街道市、昨年9月に解散)の元理事(35)ら男2人を
同法違反容疑で逮捕する方針を固めた。
営利目的で養子をあっせんしたとする容疑での摘発は全国初という。

捜査関係者によると、元理事らは昨年4〜5月、育ての親
(養親)になろうとした東京都内の夫婦から現金計225万円を
受け取った。厚生労働省は事業者が受け取れる金品について
実費以下としている。県警は昨年11月、救う会の関係先を
同法違反容疑で家宅捜索し、元理事らが必要経費を超える
金額を受け取っていたと判断したという。

夫婦は昨年6月に乳児を引き取ったが、生みの親が
「最終的な同意の確認がされていない」と主張。乳児は翌月、
生みの親の元に戻された。あっせんが成立せず精神的苦痛を
受けたとして、夫婦は救う会に慰謝料など約600万円の
損害賠償を求める訴訟を千葉地裁に起こしている。

県は昨年9月、優先して養子を紹介するとして現金を
受け取ったことが社会福祉法で禁じる「不当な行為」に
あたるとして、救う会に事業停止命令を出している。

あっせんされた特別養子縁組が成立せず精神的苦痛を
受けたなどとして、東京都の夫婦が、千葉県四街道市の
民間団体「赤ちゃんの未来を救う会」(9月に解散)に対し、
支払った費用や慰謝料など計約600万円の損害賠償を
求める訴訟を千葉地裁佐倉支部に起こした。提訴は21日付。

 訴状によると、夫婦は同会から「優先的にあっせんを
受けられる」などと説明され、4、5月に計225万円を
支払い、6月に子どもを引き取った。しかし、生みの親が
「最終的な同意の確認がされていない」と主張。
7月に子どもは生みの親の元に戻された。夫婦側は
「生みの親は、社会福祉士のカウンセリングを受ける
機会を与えられないなど、極めてずさんなあっせんに
強い不信感を抱いて子どもの返還を求めた。
このため返還せざるを得なかった」と主張している。

同会の理事だった男性は朝日新聞の取材に「訴状が
届いていないので回答できない」と話している。

同会は9月、この夫婦に子どもを優先して紹介する
費用として現金を受け取ったことなどが社会福祉法で
定める「不当な行為」にあたるとして、県から事業停止
命令を受けた。
県警は今月、営利目的であっせんした疑いがあるとして
児童福祉法違反の疑いで同会の関係先を家宅捜索した。

コメントです。
このような偽善的詐欺犯罪の被害者は、
実際に被害にあった方にとどまらず、
高尚な意識と法的尊守をされている
団体にまでおよびます。
きちんと運営していても風評被害に
さらされる恐れがありますから。
しかし詐欺犯罪者の元団体代表のふたり、

どのような出生で今回の犯罪にまで
至ったのでしょうか?
深層はそうとう歪んだものだと推測されます。



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2017年02月05日

震災孤児の預金を横領 未成年後見人の男に懲役6年


東日本大震災で両親を亡くした当時小学生のおいの
未成年後見人に選任された宮城県石巻市の男が、
おいの預金口座に振り込まれた災害弔慰金など
およそ6800万円を着服したなどとして、業務上横領などの
罪に問われた裁判で、仙台地方裁判所は
「横領した金を高級車の購入などに使い悪質だ」として、
懲役6年の判決を言い渡しました。

石巻市の飲食店経営、島吉宏被告(41)は、
平成23年、震災で両親を亡くした当時9歳の小学生の
おいの未成年後見人に選任され、平成26年までの
およそ3年にわたって、おいの預金口座に振り込まれた
災害弔慰金やおいの両親の死亡共済金など合わせて
およそ6800万円を引き出して着服したなどとして、
業務上横領などの罪に問われました。

裁判で、島被告は「横領したつもりはない。
未成年後見人は
育ての親という認識で
おいのカネは使っていいと思った」と

起訴内容を否認したのに対し、検察は懲役10年を
求刑していました。

2日の判決で仙台地方裁判所の小池健治裁判長は
「未成年後見人の職務をわきまえず、両親を失った
おいの財産を飲食店の開業資金や高級車の購入などに
使い悪質だ。おいの将来のための資金が失われ
多大な悪影響を与えた」として懲役6年を言い渡しました。

厚生労働省によりますと、東日本大震災で両親を
亡くし未成年後見人がついた子どもは、宮城・岩手・福島の
3県でおととし9月の時点で確認されているだけで120人
いますが、弁護士などによりますと、未成年後見人が
災害弔慰金などを横領した事件は初めてだということです。

おいは法廷で判決聞く

島被告から被害にあった現在15歳のおいは2日、
現在の未成年後見人となっている弁護士とともに
裁判所をおとずれ、傍聴席で判決を聞きました。

判決が読み上げられる間、硬い表情を変えることなく、
島被告のほうをじっと見つめていました。

おいの意見陳述書

島被告から被害にあった当時小学生で、現在15歳の
おいは、裁判で提出された意見陳述書の中で
被告に対する思いを述べています。

その内容です。「おじさんには学校に行かせてくれて
お世話になり感謝している。だけど殴られたりけられたり
エアガンで撃たれたりして、自殺してしまいそうになった。
裁判では学費や塾の費用と言い逃れていてショックで
驚いている。おじさんは高い時計を買ったり、寿司屋に
週5回くらい行ったりして派手にお金を使っていた。
私のためにお金を使ってもらったことはなかった。
退職金や生命保険など親が命と引き換えに残してくれた
大切なお金を使ったと聞き許せません。
大人としてしっかり罪を自覚してもらいたい。
大人として罪を償ってもらいたい」

小学生のおいと被告の経緯

震災当時9歳だった男の子は、両親や祖母、それに
いとこの6人で石巻市内に住んでいました。
地震のあと家族一緒に車で避難しましたが、
津波に巻き込まれ家族はばらばらになりました。


男の子は避難所をまわり両親を探しましたが、
震災からおよそ1週間後、両親は遺体で見つかりました。


避難所だった中学校で両親をさがす男の子を目撃した人は
「段ボールに親の名前をマジックで書いたものを持っていて、
どうしたのと話しかけると親を探していると話していた。
1人で大変そうだった」と話しています。


その後、男の子は母親の弟でおじの島被告に引き取られて
石巻市内のアパートで生活するようになりました。


島被告は家庭裁判所に未成年後見人の申し立てを行い、
調査官の面接などを経て、震災発生から2か月後、

未成年後見人に選任されました。

2日の判決では、島被告が男の子の親がかけていた
死亡共済金などを受け取るために未成年後見人の
申し立てをしたと指摘しています。


未成年後見人は、親の死亡などで親権のある人が
いない場合、代理人として財産の管理などを行いますが、
生活費以外の目的で財産を使うことは禁じられています。

男の子の口座などには災害弔慰金や見舞金、
それに親がかけていた死亡共済金などが支払われていました。

検察の調べによりますと島被告は男の子と自分の
財産を区別せず、男の子の2つの口座のうち1つ
は家庭裁判所に届け出ず隠していたということです。


男の子の財産は、島被告が震災の1年後の平成24年に
開業した飲食店の資金や、高級車や腕時計の購入などに
使われました。

島被告が魚を仕入れていた店の女性は「金のネックレスを
純金だと言って身につけていたり、最初は国産車だったのに
買い付けにベンツで来るようになったりして、
なんでそんなにもうかるのかと思っていた」と話しています。

さらに、検察によりますと、男の子は島被告からエアガンで
撃たれるなど暴力を受けるようになりました。

震災発生からおよそ3年後、石巻警察署に相談し

男の子は児童相談所に保護されました。
これをきっかけに家庭裁判所が島被告について調査し、
今回の事件が明らかになりました。

財産管理の現状と課題

東日本大震災の孤児の財産管理について、専門家は
「未成年後見人の犯罪をどう防ぐのかは限界があると思う」と
指摘します。

震災孤児の財産管理について、仙台家庭裁判所は多額の
義援金などが入るため親族だけで未成年後見人を担うのは
難しいとして震災からおよそ9か月後宮城県司法書士会に
依頼し、親族に加えて司法書士も後見人につくケースが増えました。

また、震災の1年後の平成24年、子どもの財産を信託銀行などに
預けて裁判所の許可がなければ勝手に引き出せないように
することができる制度も全国的に運用が始まりました。

しかし、3人の震災孤児の未成年後見人となっている司法書士の
森田みささんは、司法書士や弁護士の横領事件が全国で
相次いでいるほか、信託制度も子どもの財産から一定の
手数料が引かれることなどから財産管理の面で万全
ではないと指摘します。

森田さんは「今回の事件のように子どもの口座を隠されて
しまったら調べようがなく、未成年後見人の犯罪をどう防ぐのか
限界があると思う。信託制度もよりよい運用に変わるべきだ」と
述べています。

また、震災からまもなく6年となり20歳を超えた震災孤児に
未成年後見人から財産が引き渡されるケースが増えているため、
財産をどのように運用するのか新たな課題になっているということです。

森田さんは「高級車を買ってしまうなどすぐに財産を使って
しまう人もいると聞いている。引き渡された財産を成年になっても
見守る仕組みが必要だと感じている」と話しています。




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2017年01月30日

<徳島県警>スマホ写真、被害者の瞳に容疑者の顔 解析成功

毎日新聞2017年1月24日


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容疑者から押収したスマートフォンに保存されていた
被害者の写真を徳島県警鑑識課が解析した結果、
写真を撮影した容疑者の姿が被害者の瞳に映って
いることが判明し、重要な証拠となった事件が昨年あった。
同課によると、瞳に映った姿が証拠になるケースは
大変珍しいという。【松山文音】

「目に人の影のようなものがある。調べてほしい」。
現場の捜査員から、鑑識課の浪花孝一写真係長(43)に
依頼があった。渡されたデータを表示すると、容疑者が
撮影した被害者の顔が映っていた。鏡に映ったものを
解析した経験はあったが、瞳に映った姿の解析なんて
聞いたこともなく、「こんな瞳から見えるんかな」と半信半疑だった。

早速パソコンに向かい、瞳の部分を拡大すると、人の影よりも
背景の方が明るく、はっきりしていた。容疑者の姿を明るく
するために、画像編集ソフトを駆使して補正を繰り返していくと、
次第に顔の輪郭や髪形などが分かるようになり、
スマートフォンを構えている姿が浮かび上がった。

これが事件の重要な証拠となり、上司から
「これは最高の証拠です」と評価されて、うれしさがこみ上げた。

防犯カメラの映像を解析したり、指紋や足跡の鑑定用写真を
撮影したりする日々。「ドラマとは違い、うまくいかないことも多い。
今回の経験で細部まで観察する大切さに改めて気付いた」と
振り返った。

コメントです
徳島県警の鑑識課員の快挙です。
特に高額な機材を使わずとも、
工夫と想像力を働かせての
成果です

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2016年10月11日

「荷物転送バイト」ご注意 勝手にスマホ契約され→中身知らずに転送→犯罪悪用も

朝日新聞 2016年10月10日

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自宅に届いた荷物を開けずにそのまま着払いで転送する
「荷受け代行」アルバイトの被害が全国で相次いでいる。
荷物の中身は勝手に自分名義で契約されたスマートフォン。
料金を請求され、スマホの「解約」を求めると、多額の違約金
などを求められる事態になっている。

自宅でできるアルバイトとしてツイッターなどで拡散。
「荷物転送」とも呼ばれる。バイト代は1件2千〜5千円。
ツイッターに投稿された募集案内は「子どもが近くにいながら
お小遣い稼ぎ」「育休中でも稼げます」などと女性を狙う文面が
目立ったという。

転送されたスマホはオレオレ詐欺のような犯罪に使われたり、
不正に譲渡したとして携帯電話不正利用防止法違反に
問われたりする恐れがある。警察から「被害者は事業者」と
言われ、被害届を受理されない例もあった。

 被害者らによると、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で
指定のIDにメッセージを送ると、荷受け代行の依頼グループの
“仲介者”を名乗る人物から仕事は「仕入れの手伝い」などと
返信がある。氏名や住所、生年月日、電話番号、バイト代の
振込先の口座番号に加え、「高額な荷物もある」として、
住所が確認できる写真付き身分証明書の画像の送信を
求められる。

数日後、格安スマホの事業者から、自宅に約20センチ四方の
小荷物が届き始める。中身は「電子機器」。開封せず転送する
よう指示される。転送先の多くは神奈川県の特定の場所という。
約1週間後にバイト代が振り込まれた。

数週間後、事業者から次々と契約書類が届き、仲介者に送った
個人情報で勝手にスマホが契約されたとわかる。
解約を申し出ると、違約金や本体代など契約数に応じて
数万〜約100万円を請求される。

国民生活センターには昨年11月から相談が寄せられ、
今夏に急増。9月末までに約130件に達した。

契約の相手先は格安スマホの事業者に集中している。
一般的に格安スマホはネット上で個人情報を入力、
運転免許証などの画像を送信するだけで契約できる。

UQコミュニケーションズ(東京都)は相談の増加を受け、
今はネットでの申込者は原則全員、電話で本人確認している。
違約金などの免除は被害届の受理が前提だが、警察に
相談したことを証明する受け付け番号がわかれば、
個別に事情を聴きながら判断する。

 ■ネットに「仲介者」/被害届受理されず

「情けない。なんで気づけなかったんだろう」

 三重県の主婦(25)は落胆する。「子どもが小さいから、
家でできる仕事なら」と4月に荷受け代行を始め、

約1カ月で荷物4個を転送した。

 転送先の住所がネット上で「詐欺に使われている
可能性がある」と指摘されているのを知り、LINEで
“仲介者”に「やめたい」と送信。荷物は来なくなったが、
格安スマホの事業者から、違約金など約10万円の
請求書が届いた。

神奈川県の会社員女性(24)が始めたのは5月ごろ。
「ちょっとした副業をしたい」と連絡をとった。
「今考えれば危険なのに、警戒しなかった」。契約先は4社。
7月に1社分9万円の請求が来た。「今後どれだけ
膨らんでいくのか」と気が重い。

8社と契約させられた大阪府の女性(25)は通話料など
計約30万円を請求された。警察署に相談したが、
「あなたは自ら個人情報を漏らした。
事情を知らない事業者が被害者だ」と言われ、
被害届を受理してもらえなかった。

署は取材に対し、「女性は被害者ではなく、被害届が
出される案件ではない」と答えた。事業者側は
「被害届が受理されないと対応できない」としており、
堂々巡りに。支払期日は刻々と迫る。

女性らは仲介者に「知っていたのか」などとメッセージを
送ったが「こちらもよくわからない」などと返信され、
連絡がとれなくなったという。

 (寺尾佳恵、染田屋竜太)


コメントです

悪いヤツがあとを絶ちませんね。
それと、法整備の遅れを理由に
公的機関の腰の重さ。







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2016年09月01日

自分は何者?学校行けず大人に… 「死後認知」求め提訴

朝日新聞2016年8月30日


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定時制高校での授業が終わり、下校する男性=東京都、関田航撮影

未婚の母の元に生まれ、住まいを転々として「所在不明」となり、
一度も学校に行けないまま大人になったさいたま市の男性(34)が、
「父」の名前が戸籍に記載されるよう、「死後認知」の訴えを30日、
東京家裁に提起した。いまは都立高校の定時制に通い、
来春卒業を予定。父、そして自分は何者かを明らかにし、
けじめをつけて社会に出たいという。

戸籍の父の欄は空白だが、家族の中では「父」の存在は明確だ。
国会議員の秘書をしており、3歳ごろには一緒に食卓を囲んでいた。
母と5歳下の妹との3人暮らしの家にときどき帰り、食事に連れて
いってくれたり、発売直後のPHSを持たせてくれたりした。

陳述書などによると、父には別に家庭があった。母は認知を求め、
父は「認知する」と言いながらしなかった。母は精神的に不安定で
働けず、生活費は父が出したがしばしば遅れた。

家賃滞納による立ち退きが何度かあり、小学校への入学は
うやむやに。母は学校に行かせたかったが、父は世間体を
気にして手続きしなかった。男性は、公園で虫を捕ったり、
市販の教材の顕微鏡を組み立てたりして過ごした。
窓から見える通学風景に「なんで自分だけ」と思ったという。

9歳ごろから7、8年間は、父が手配したホテルで暮らした。
お金をどう工面していたかわからない。男性は食事と清掃
以外の時間は部屋にこもり、学習ドリルで勉強した。
中学に入学するはずの年には、前に暮らした区が、
住民票を削除した。長期間居住実態がなかったためだ。

妹も学校に行かないまま飲食店で働き始めた。男性は母と、
その後も首都圏を転々とした。母は体調がよくなって
アルバイトを始め、男性は家事を担った。

18歳ごろ、ネットで見つけた野球チームに参加してみた。
「誰かに助けてほしい。でも知られたくない」。自分の境遇を
他人のことのように話し、チームの人に「どうしたらいい
ですかね」と尋ねたこともあった。

父の仕送りは途絶えて会うこともなくなり、電話が時々
かかるだけになった。

転機は29歳。母に連れられて行ったハローワークを通じ、
職業訓練の施設に通った。施設長は「人と目を合わせず
内向的。ただ、とても素直だった」と振り返る。何社か面接に
臨んだが、学歴が壁になった。30歳のとき、施設長が
探した夜間中学に入学した。

夜間中学の教員は、面談のとき、「自分の中に足りないものを
感じる」と話した男性の言葉が胸に残った。学校では下の
名前で呼び捨てにした。「彼は生徒になりたくてきた。
それが彼にないものだから」

当時の担任によると、男性は入学時、読み書きができる
程度だった。入学前面談で「未来が開けると思う」と話すと、
母親は大泣きしたという。

父から久しぶりに連絡がきたのは2014年末。携帯電話に
「少しお金を入れてもらえませんか」と伝言が残されていた。
数日後、履歴を見た警察から連絡があった。
路上で凍死したと聞かされた。男性の妹が、火葬と
納骨式に参列した。

朝日新聞の取材では、父の周囲は、男性たち家族の
存在をほとんど知らなかった。男性にとって、父の痕跡は
「親父(おやじ)」と登録した携帯電話の番号だけ。
「よくぞこんなことしてくれたな」と恨み、電話ごしに怒りを
ぶつけた時期もあったが、学校に入れた時点で前だけ
見ることにした。

飲食店で働きながら通っている定時制は皆勤。部活は卓球と
パソコンを掛け持ちしている。「今しかできないから。
エンジョイしないと」。来春、高校を卒業する。「長い期間、
学校に行けなかったが、周囲と自分の力でけじめを
つけられそうだ。社会に出る前に『父が誰か』をはっきりさせて、
リセットしたい」(中塚久美子、後藤泰良)

     ◇

戸籍や住民票があっても行政が居住実態をつかめない
所在不明になる子が後を絶たない。7月発表の厚生
労働省の調査では全国に少なくとも25人いた。
25人の内訳は乳幼児4人、義務教育年齢13人、
義務教育年齢を過ぎた18歳未満が8人。

所在不明の子が虐待などで亡くなる事件が起き、同省は
2014年に初めて実態調査。当時は大阪27人、兵庫26人、
神奈川16人、東京14人など計141人いることがわかった。

当事者が行政サービスを受けようとしないと、所在を
把握できないのが実情だ。総務省住民制度課によると、
マイナンバー制度は居住地に住民票があるのが前提で、
所在不明の子を自動的に発見できる仕組みはないという。

     ◇

 〈死後認知〉 民法では、親の死亡から3年以内で
あれば子は認知(死後認知)の訴えを起こすことが
できると定めている。検察官を相手として訴える。
審理内容は血縁的な親子関係の有無。関係者を
対象にしたDNA鑑定や証言などをもとに総合的に
判断される。原告の名誉回復や相続権の確保など、
訴えの目的は多様だ。最高裁によると、死後認知を
含む認知、認知の無効及び取り消しの訴えは、
昨年までの5年間で年252〜276件あった。


コメントです。
戸籍問題はほんとうに難しいですね。

政府がどれだけ個人に立ち入られるか?

しかし、まれに今日の記事にあるように、
諸事情で取り残されて現在も苦労している方も
います。

いずれにしても、政府は早急に相当量の

シュミレーションを組んでセーフティネットを

整備すべきですね。




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2016年08月28日

婚活サイトでトラブル続々 出資をしたら「さようなら」

朝日新聞 2016年8月23日


「婚活サイト」で知り合った女性に社債の購入や出資を持ちかけられ、
トラブルになるケースが相次いでいる。約束された配当は得られず、
交際に前向きだったはずの女性との連絡は途絶えてしまう。
結婚を望む人たちの出会いの場を利用した詐欺まがいのビジネス、
との指摘もある。

関東地方に住む会社員の男性(38)は今月3日、6人の男性と
ともに計約1億円の損害賠償請求訴訟を起こした。
相手は、婚活サイトでそれぞれ知り合った2人の女性や、
女性の勧めで購入した社債の発行会社など。詐欺容疑で
警視庁への告訴も考えているという。

男性は2013年3月、無料婚活サイトを通じて20代の女性と
出会った。東京・新宿の喫茶店で待ち合わせた女性は、
花柄の華やかなワンピース姿で指にはサファイアの指輪。
会社の秘書役で両親は投資家、と自己紹介した。

「イイ旦那さんになりそう」などとメールをもらい、交際が始まった。
3回目のデートで、「将来の2人のために」と、女性が役員を
務める人材派遣会社の社債購入を持ちかけられた。
男性は交際を続けるため、申込書に署名。
ほかの社債も購入し、計1千万円を支払った。

年12〜24%と説明された利息や配当はしばらく支払われたが、
間もなく停止。疑う気持ちはあったが、女性に「どんなことが
あってもパートナーとして行動します」とLINEのメッセージを送った。
しかし、女性から突然別れを告げる返信が届き、
連絡がとれなくなった。
「適当な言葉で慰めて、優しい自分に自惚(うぬぼ)れてる
だけでしょう。あなたは偽物よ。さようなら」

その後、同じ社債の購入で同様の被害を訴える記述をネットの
掲示板で発見。別の1人を含む女性2人が、少なくとも32人の
男性に社債を購入させていたことがわかった。交際していたはずの
女性が、同じ日に別の男性とデートしていたことも明らかになった。

男性らの訴訟代理人の佐藤嘉寅弁護士は「同じ女性が複数の
婚活サイトに登録し、同時期に複数の男性に社債を売っていた。
組織的な詐欺の可能性がある」と話す。男性が社債を購入した
会社の代表を務める男性は、取材に「名義を貸しただけ。
詳しいことは分からない」と答えている。

市場調査会社シード・プランニング(東京)によると、
「婚活サイト」の市場規模は12年の30億円から17年には
58億円に膨らむという。利用者を狙って出資や不動産の
購入を持ちかける「デート商法」は後を絶たないといい、
立正大学の西田公昭教授(社会心理学)は、「ネットの出会いは
紹介者がおらず、相手の素性が保証されない。
リスクを認識しなくてはいけない」と話す。
(小寺陽一郎、高田正幸)


コメントです

これ、残念ながら男性がしっかりと相手を見極めて
だまされないようにしないといけないですね。
本文にもありますが、詐欺氏女性が一日に何人も

掛け持ちしていたら、ちょっとした不振な動作で
わかると思います。



posted by salsaseoul at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

理想と現実の差が生んだ悲劇(きょうも傍聴席にいます)

朝日新聞 2016年8月25日


「人助けがしたい」と強く願った男が空回りの果てに
行き着いたのは、殺人の罪だった。大学の再受験を
めざしていた恋人を手にかけた男が、法廷で語った言い分とは。


2016年6月20日、東京地裁725号法廷で開かれた
裁判員裁判の初公判。被告の男(26)は黒いスーツに
青ネクタイ姿で法廷に立ち、緊張した面持ちで起訴内容を認めた。

 被告「間違いありません」

起訴状によると、被告は昨年2月14日、東京都内の自宅で
交際していた女性(当時24)の首を絞めて殺害したとされる。

被告はなぜ恋人を殺してしまったのか。冒頭陳述や被告人
質問などから、事件の経緯をたどる。

被告は福島県出身。きょうだいと共に両親に育てられた。
法廷で被告は、幼い時から抱えていた悩みを明かした。

被告「6歳ごろからきつ音の症状があり、まわりの友達と
うまくつきあいができませんでした」

言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりするきつ音。
母親は法廷で「被告が小学生の時に病院に行ったが、
問題はないと言われた」と証言したが、被告にとっては
大きな問題だったという。

被告「中学3年の壮行会で試合への抱負を述べる時、
きつ音のせいではじめから最後までうまくしゃべれなかった。
人生で一番の失敗。悔しくて苦しかった」

被告は「きつ音による負の印象を払拭(ふっしょく)したい」と
高校時代は東大を目指して受験勉強に打ち込んだという。
希望はかなわず、浪人して大学進学をめざしたが、断念。
アルバイトなどの後、2014年、地元・福島を離れて上京した。

弁護人「東京でどんな仕事をしたかったのですか」

被告「人の相談を聞いて、悩みを解決する仕事です」

弁護人「その仕事とは」

被告「探偵です」

契約社員やアルバイトなどで収入を得ながら、探偵事務所の
開業を目指した。両親から仕送りを受けることもあったという。

被害者の女性とはツイッターを介して知り合った。
大学卒業後、就職していた女性が、仕事をやめ、大学を
再受験しようとしていることを知り、被告は14年10月、
生活の支援を申し出た。

被告「生活面でも精神面でもサポートできるかもしれない。
支えてあげたいと思いました」

 弁護人「どうしてですか」

 被告「自分と似た状況なのに、大学受験を目指すという
前向きなところに共感しました」

 弁護人「自分と似た状況、とは」

 被告「社会的に弱い立場にあることです」

 被告は、ツイッターでのつぶやきから「女性は対人恐怖症」と
いう印象を持っていたという。まもなく交際が始まり、2人は
同居するようになった。生活費は被告が全額負担するという
約束だった。だが、被告には被害者に話していない借金があった。

 弁護人「借金はいくらあったんですか」

 被告「160万円ほどです」

 弁護人「なぜ借金を」

 被告「友人や以前勤めていた会社の先輩に貸していたのと、
半分は自分の生活費です」

 弁護人「なぜ借金してまで、先輩や友人に貸したのですか」

 被告「先輩や友人は他に頼れる人はなく困っていたので、
貸してあげようと思いました」

 結局、同居する中で、被害者に借金を知られてしまう。

 弁護人「被害者は何と?」

 被告「『本当に返済しきれるの?』と心配していました」

 弁護人「あなたはどう思っていたのですか」

 被告「返せると思っていました」

 アルバイトを掛け持ちし、早朝から深夜まで働いていたという被告。
15年2月3日には、探偵会社で正社員の試用期間として働くことに
なった。だが、働き始めて4日目の2月6日、被告は職場の
先輩の車を運転中に物損の追突事故を起こし、
約90万円を支払うことに。2日後、会社を休職することになった。

 被告「今後の生活について不安に思いました。
安定した生活ができるようになるのか、と」

 一方、女性は学費を準備できず、その年の大学受験を断念。
同じ頃、かつての勤務先の会社で働き始めた。
被告が借金の支払いができずに女性を頼ったことなどから、
仕事や金銭面での考えの甘さを指摘し、同居解消を
ほのめかしていた。

 そして、2月14日早朝。目を覚ました被告と女性は、
借金と生活費の話になる。

 弁護人「被害者からはどんな話を」

 被告「『借金は返済できるの?』
『この先、安定した収入は得られるの?』と。それを聞いて、
この先どうしたらいいのかと思いました」

 弁護人「被害者はなんて」

 被告「『見通しが甘いよね』と」

 女性は再び眠りについた。被告は横で思いをめぐらせたという。

 被告「これからの生活のことを考えていました。
いつもなら前向きに考えられるが、この日はできなかった。
人生を終わらせようという考えになりました」

 弁護人「被害者については」

 被告「1人にするのは心配で不安だと思いました」

 弁護人「そのほかは」

 被告「正直、自分ひとりで死ぬことへの恐怖もありました」

 被告は隣で横になっている女性の首に手をかけた。
女性は驚いた表情で両手を動かしたが、被告は力を緩めず、
両手で首を絞め続けた。

 殺害後、被告は2〜3時間はぼうぜんとしていたという。
午前11時すぎ、被告は被害者のLINEに
「ご帰宅は何時ごろです?」などとメッセージを送る。

 被告「警察に行って出頭しようと思いましたが、
自白できなければ失踪届を出そうと思いました。
(LINEは)自白できなかったときのために、
失踪届の参考になると思いました」

 結局、被告は午後になって警察署に行ったが自白はせず、
「彼女が帰ってこない」などと相談。
ただ、被告の言動を不審に思った警察官が被告とともに
自宅に行き、事件が発覚した。

 裁判官は殺害の動機をいぶかしんだ。

 裁判官「どうして首を絞めたのかが理解できない。
最初は自分1人で死のうと思ったんですよね?」

 被告「はい。(事件の)ほんの数分間の間に、
死のうとする気持ちの増大がありました」

 被害者の勤務先の上司の調書によると、被害者は
仕事も同僚とのコミュニケーションもうまく出来ていたという。
被害者は被告の借金などの問題から家を出ることを
検討していたが、「深刻な様子はなく、退社時も笑顔だった」と
上司は振り返る。

 質問は、被告が法廷で繰り返した「人を助けたい」と
いう思いにも及ぶ。

 検察官「事件前、あなた1人でも生活し切れていない状態でしたよね」

 被告「そうだと思います」

 検察官「そんな状態で被害者の生活をサポート
するのは無理だったのでは」

 被告「思いだけで動いていました」

 弁護人「弱い人を放っておけないのは、いつからですか」

 被告「きつ音の出始めた6歳ごろからです」

 弁護人「なぜ」

 被告「自分がきつ音の苦しさを経験するうちに、
他の人の苦しみも理解できたのだと思います」

 弁護人「彼女との関係ではどうですか」

 被告「自分という人間の限界を知りたいと思いました。
きつ音を持っていても、人並み以上に生活できる人間に
なりたいという思いがありました」

 被告の精神鑑定をした医師は、法廷で被告について
「自己愛性パーソナリティー障害」と指摘。「相手を弱者に
固定する傾向がある」といい、自分が借金をしてまで人に
金を貸す行為などを「人を救済したいという欲求のために、
人を利用している」と述べた。きつ音についても
「過度にとらわれすぎている」と言った。

 弁護人「何を間違えていたと思いますか」

 被告「他の人の生活をサポートできる人間で
ありたいと強く願いすぎた結果だと思います」

 弁護人「当時、何を受け入れられていなかったのだと思いますか」

 被告「等身大の自分です」

 被告の母親は法廷で、「親としてできる償いをしたい」と
被害者や遺族への謝罪を述べ、「私の体が続く限り、
何とか息子を更生させたい」と誓った。

 被害者の母親は、検察官に代読してもらう形で意見を述べた。

 「被告は私の一番大事なものを奪いました。
私は絶対許しません。娘のためにも、被告を死刑にしてください」

 6月22日。検察側は、「動機はあまりに身勝手で短絡的。
被害者に落ち度はない」として懲役17年を求刑。
一方の弁護側は、「突発的な犯行で、被告は事件当時、
疲労を蓄積し、精神的にも不安定だった」として懲役9年が
相当と主張した。

東京地裁は6月27日、被告に懲役14年の判決を言い渡した。
裁判長は「動機や経緯には必ずしも明瞭でない部分がある」と
指摘し、「自らの身勝手な判断から、何ら落ち度のない
被害者を殺害した。独りよがりで誠に理不尽な犯行だ」と
厳しく非難した。きつ音については触れなかった。

 判決は確定した。(塩入彩)




posted by salsaseoul at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

2016年08月13日

私たちは「買われた」展 女子中高生のSOSを知って

朝日新聞  2016年8月9日

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18歳の女性の手記。友人に誘われ、乱交パーティーに行ったことなどが
つづられている。「行く場所があるだけで安心してた」


援助交際や風俗、JKビジネスなどで「売春」をした中高生たちが、
自らの体験や思いを伝えたいと企画した「私たちは『買われた』展」が
11〜21日、東京都新宿区で開かれる。写真や文章、日記などを
通して彼女たちは訴える。
「私たちが、いま、ここで生きていることを知ってほしい」

主催するのは、居場所のない女子高校生らを支援する一般社
団法人Colabo(コラボ)と、コラボが支援する24人。1
4〜26歳の中高生や女性らで、北海道から九州で暮らす。
かつて立っていた街角、体をくっつけて暖を取った自動販売機、
リストカットを繰り返して傷だらけになった腕――。
自分の体験が深く関わる場所や場面を再現した写真のほか、
思いをつづった日記や絵、体験談など約100点を展示する。

関東地方で暮らす高校1年のあいさん(16、仮名)は中学生の
とき、母親と自分に暴力を振るう義父のいる家に帰りたくなくて、
新宿に出た。ひとりで下を向いて歩いていたとき、
男の人に声をかけられた。

 「ひとり?」。うなずいた。「お金欲しいんでしょ? 
あげるからついておいで」。怖くて体が固まった。
手を引っ張られ、そのまま部屋に連れ込まれた。
男がくれた5千円で上履きや文房具を買った。

あいさんは今回の企画展を準備する中、過去と向き合って
過呼吸になったり、涙が止まらなくなったりした。それでも多くの
人に企画展に来てほしいと願う。「断れなかった自分が悪いと、
ずっと自分を責めてきた。でも、そういうところに行くしか
なかったことをわかってほしい」

発案したのは、コラボにかかわっている20代の当事者の女性。
昨秋、戦時中のインドネシアで「慰安婦」とされた女性たちの
写真展を、コラボ代表の仁藤夢乃さん(26)と一緒に見に
行った。つらい体験を訴え、カメラをまっすぐ見据えた年老いた
女性たちの姿に圧倒されたという。「私たちも何かできないか」。
そこから輪が広がり、中高生を含む24人が参加を申し出た。
昨秋から少しずつ準備を進め、全国から寄付を募って
開催にこぎつげた。

仁藤さんによると、ある大学で学生たちに売春する中高生の
イメージを尋ねたところ、「快楽のため」「遊ぶ金がほしいから」
などの答えが返ってきたという。企画展は、そのイメージに
一石を投じたいとの思いも込められている。仁藤さんは
「中高生の売春は自己責任論でとらえられがちだが、
決して彼女たちだけの責任ではない。

彼女たちが買われるまでには背景や過程がある。
それを知ってほしい。暴力的な性行為も少なくなく、
彼女たちは心身ともにその傷を生涯背負う。女の子たちの
SOSに気づける人が増えてほしい」と話す。

新宿区矢来町158の神楽坂セッションハウス2階ギャラリーで、
正午〜午後8時(最終日は午後5時まで)。
入場料は一般1500円、高校生以下は無料。
詳しくはコラボのウェブサイト
http://www.colabo-official.net/別ウインドウで開きます)。
(編集委員・大久保真紀)

■当事者の女性たちの声(手記などによる)

「小さいころから母は帰って来ず、妹と2人暮らしだった。
家はごみ屋敷。お金はなく、駅前で物乞いをした。
中学生になって母が再婚すると、今度は暴力を振るわれた。
街で男に『どうしたの?』と聞かれ、事情を話すと
『おなか、すいているでしょ』と言われた。男はコンビニで
おにぎりを買い、手を握ってきて、家に連れ込まれた。
怖くて抵抗できなかった」(15歳、中学生)

「小学校ではトップの成績だった。名門校と言われる私立の

女子中学校に入ると、私より良い点数を取る人たちがいた。
親は『成績が悪い』と怒鳴り、私を殴り、蹴った。
学校でいじめられ、不登校になった。そんなころ、ネットで
知り合った男の人に『会いたい』と言われて、うれしかった。
カラオケに連れて行かれ、最後までした。2回売春した」
(18歳、高校生)

「私には知的障害がある。健常者の妹が生まれてから、
家族とは食事や洗濯なども別にされた。学校でもいじめられた。
誰にもほめられたことがなかった。ネットでやさしく声をかけて
くれた男と遊ぶと、ホテルに連れ込まれた。
男はコンビニで食べ物を買ってくれた。性を売るとほめて
くれる人がいた。必要とされていると思える気がした」
(21歳、フリーター)

「学校でいじめられていることを先生に訴えたが、
何も変わらず、不登校に。居場所は家にもなかった。
ネットで知り合った25歳の男性は、私の話を聞いてくれ、
私を否定しなかった。唯一の心の支えで、体だけでも
求められたのがとてもうれしかった。私の存在価値を感じた。
いまは後悔ばかり。あのとき私に逃げ場があれば、
男性と関係をもつことはなかった」(14歳、中学生)

「両親が離婚し、祖母の家で暮らしていた。中学2年から、
夜になると、おじが部屋に来た。家を出る高校2年まで
性的虐待を受けた。周囲に訴えても、誰も信じてくれなかった。
家にいたくなくて、15歳で夜の仕事を始めた。
雇い主から言われた指定の場所に行き、売春した。
週2回、乱交パーティーで5〜6人のおじさんを相手に
する仕事もした」(18歳、フリーター)


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展示される20歳の女性の写真。成人式で着た着物の袖から、
無数の切り傷とたばこの火を押しつけた痕がのぞく


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「ママも頑張ってるんだからアンタも頑張って我慢しなさい」。
あいさん(16、仮名)が親から言われた言葉を作品に書き込んだ


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「産まなきゃよかった」「迷惑だ」「だれの金で飯食ってると思ってんだ」……。
女性たちが親や先生などに言われて傷ついた言葉を書いた作品

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15歳の中学生が描いた絵。「死にたかった」などの言葉もある


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21歳の女性がつづった食事ノートと日記。「寂しくて誰かの温(ぬく)もりが欲しくて……。
自分に負けた」。援助交際の相手に買ってもらったお菓子などの写真も貼られている

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あいさん(手前)と企画展の打ち合わせをする仁藤夢乃さん




posted by salsaseoul at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会