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2013年10月27日

(ザ・コラム)医療費抑制 「命の値段」英国の仕組み 有田哲文

(ザ・コラム)医療費抑制 「命の値段」英国の仕組み 有田哲文
朝日新聞 2013年10月27日

人の生命には値段がつけられない。命は地球より重い、
というではないか。
しかし、英国には値段があるようだ。1年あたり、だいたい
2万〜3万ポンド(314万〜471万円)である。

あなたが英国人で重い病気にかかったとする。Aという薬を
使えば、これまでの実績からいって数年間は延命できそうだ。
1年の延命にかかる費用が2万ポンド未満であれば、
その治療を受けられる可能性が高い。
しかし、5万ポンドであれば望み薄だ。

治療のたびに自己負担のある日本と違い、英国は国民
保健サービス(NHS)
で誰でも無料で医者にかかれる。

しかし、費用に見合うだけの効果がなければ、簡単には
高い薬を出してもらえない。

   *

数年前、乳がんにかかり、望んだ薬を拒否された女性の
手記がある。NHSへの非難がつづられている。

「NHSはこの薬を認めないことで、人々が死んでいく間に
お金を節約できるのです」
「がんに関する限り、NHSは東ヨーロッパの官僚主義と同じです」
(Barbara Clark「The Fight of My Life」)

薬を手に入れるためには家を売るしかない。彼女は当局への
異議申し立てを始めた。運動は政治家を動かし、最後は
治療が認められた。しかし、高すぎるという理由で
拒否される薬は今もある。

乳がんの早期発見や治療の情報を提供している慈善団体
「ブレークスルー・ブレストキャンサー」は、二つの抗がん剤
NHSで使えるようにしてほしいと求めている。
政策担当のサリー・グリーンブルックさんは言う。
「この薬で完治はしません。でも、これがあれば家族や友人と、
数カ月の間、比較的いい状態で過ごせるんです」

政府は臨時のがん基金をつくって、高額治療への支援を
している。しかし、これも2016年までの時限措置である。

英国らしい、合理的だが冷たい仕組み?でも、医療費
抑えようと、多くの国が、この制度から学ぼうとしている。
費用対効果分析を担当する国立医療技術評価機構(NICE)の
幹部、カリプソ・チョルキドウさんは言う。

「海外の省庁から要望が来るんです。『あなたたちのやって
いることに興味がある。招待するから教えてほしい』と。
とくに中国は強い関心があるようです」。
NICEは、他国に助言するための部署を設けた。

英連邦オーストラリアではすでに同じような制度がある。
韓国も独自の費用対効果分析を進めている。

英国の制度では、1年の延命という効果は、さらに細かく
分析されている。
寝たきりだったり苦しみがひどかったりすれば
生活の質が低い」
「治療の効果が小さい」とされ、1年分とは見なされない。
マイナス要素が強くなるにつれ、0・8年分、0・7年分……となり、
その分、認められる治療費も下がる。

まるで命に値札をつけているようだ。
そう聞くと、チョルキドウさんは言った。

「値札ではありません。医療サービスの生産性を表示して
いるんです。教育でも投資でも、生産性を示す数字は
あるでしょう。もちろん、一般の経済活動にくらべれば
表示するのは簡単ではありませんが」

分析を一歩進め、幅広い社会の便益や費用を計算に
入れることも検討されている。病気が治って仕事に
戻ったことの便益をどう考えるか。
家族の介護負担はどうか。
しかし、識者たちはこの議論が進むことに、ある危惧を持つ。

「病人が2人いて、1人は平均的な収入、もう1人は10倍の
収入があるとする。前者には薬が使えないが、後者には
使えるということにならないか?」
サウサンプトン大のジェームズ・ラフトリー教授)

   *

英国のこの制度、ちょっと寒々とする。やさしい感じはしない。
でも、目をそむければいいとも思わない。限られる医療費
効率的に使おうとする意思が、そこにはあるからだ。

コレステロール抑制では、通常使われるのは月約1ポンド
(157円)の薬だ。効果が少し上がるだけの高い薬は認めない。
疾患のない普通の若者がインフルエンザになっても
タミフル
を出さない。休養すれば治るからだ。

日本の医療費は、国内総生産(GDP)比で英国と同じ9%台。
米仏独よりかなり低い。日本人の生活習慣が良いことも
あるだろうが、とりあえず結果は悪くない。

しかし、これからはどうか。医療費は毎年1兆円を上回る
ペースで増えている。理由は高齢化だけではない。
医療の高度化もそれに劣らず影響している。
いいことのようだが、そこに薬漬けのようなムダはないか。
不当に製薬会社や機器メーカーをもうけさせてはいないか。

医療費抑制はかけ声だけでは実現しない。
どうやって、どんな理由で抑えるか、道具が必要だ。

やさしさを取り繕うのではすまない。
私たちはそんなところに来ている。


コメントです。
英国・国民保健サービス(NHS)の話題です。


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posted by salsaseoul at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州
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