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2013年08月26日

高齢患者紹介ビジネス横行 「先生いい話あります…」

高齢患者紹介ビジネス横行 「先生いい話あります…」
朝日新聞 2013年08月25日

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【沢伸也、月舘彩子】
高齢者施設で暮らす患者をまとめて紹介してもらい、
見返りに診療報酬の一部を紹介業者に支払う医師が増えている。
訪問診療の報酬が外来より高いことに着目した「患者紹介ビジネス」に
加担している形だ。法令の規制はなく、厚生労働省は「患者をカネで
買うような行為は不適切」として規制の検討に乗り出した。

紹介業者は高齢者施設の患者を一挙に大量獲得し、訪問診療を
する開業医に話を持ちかけることが多い。紹介料の相場は、
患者1人あたり診療報酬(月約6万円)の2割だ。

兵庫県の診療所。毎週金曜日、午前の診察が終わると、待合室
製薬会社や医療機器メーカーの社員らが医師に次々と自社製品を
売り込む。昨夏、ひとりの営業マンが「患者を紹介したい」と
切り出した。医師は意外な提案に驚き、順番を後回しにして
最後に彼だけを応接間に招き入れた。

「先生にいい話を持ってきました。喜んでもらえると思います」

営業マンは医師と患者を「マッチング」させていると言った。
「これからは在宅医療の時代ですね」と笑顔で話し、高齢者施設で
暮らす患者を紹介するから訪問診療してほしいと提案した。
そして続けた。

「収入(診療報酬)が入ったら、2割をコンサルタント料として
頂きます。ウチは完全成功報酬制です」

さらに診療所のリストを見せ、「たくさんのお医者様にも契約して
頂いています」と続けた。関西の医師50人ほどの名がある。
訪問診療をしている医師をインターネットで調べて営業していると
明かした。1時間粘ったが、医師は断った。

福岡県の診療所にも別の業者が来た。医師は不審に思い、
ひそかに録音した。営業マンの声は柔らかい。

「コンサルタントフィーという形で、毎月税込み合わせると1人
1万5750円をちょうだいさせて頂きます。検査で先生の報酬が
どんどん上がっても、うちは1万5750円と固定にさせて
頂いているんですよ」

ただし、紹介者が20人を超えると、紹介料は1人2万円に
上がると付け加えた。1回の訪問で診る患者が多いほど、
効率良く診療報酬を得られるからだ。

「この市場はちょっとしたバブルでして。パイの取り合いというか、
いろんな業者が参入してきて大変なんですよ」

営業マンは「今のところグレーゾーン。規制が入るかもしれない」と
危機感を見せる一方、「いくらなら折り合えますか」
「顔を見てもらえるだけでいいと言う患者さんもいます」と
食い下がった。30分後、断る医師に「あきらめてません。
またうかがいますので」と言うところで録音は終わっている。

朝日新聞の取材に少なくとも医師6人が業者と契約したことを
認めた。紹介先はサービス付き高齢者住宅や有料老人ホーム
入居者がほとんど。一度に多く診ることができる場所だ。

ある医師は疑問を感じつつ、話に乗った。診療所を開いて数年。
「患者を得るため業者を利用してしまった。外来だけでは
経営が苦しかった」と打ち明けた。

■厚労省、規制を検討

厚労省は
(1)医師が過剰な診療をする可能性がある
(2)患者が医療機関を選ぶ自由を奪うことから
「不適切な医療」と判断し、情報収集を進めている。
担当者は「想定していなかった。医者がそんなことをする
はずはないと思っていた」。業者の規制は難しく、医師への
規制を検討し始めた。

     ◇

〈訪問診療〉 緊急時に患者の求めで行く往診とは異なり、
医師が通院困難な患者が住む自宅や施設へ定期的に
出向く診療。1人を診て得る訪問診療料は1回8300円。
これに処方箋(せん)料や検査料などが上乗せされる。
24時間体制の診療所から月2回以上訪問すると
月4万2千円加算され、医師が得る合計は月6万円を超す



関連記事です。
「患者、金づるか」 紹介ビジネス、過剰診療の恐れ

高齢者施設で暮らす患者は、施設が薦める医師の診察を
受けることが多い。患者紹介ビジネスに組み込まれて
「売買」されていても、気づいていない人がほとんどだ。
そればかりか、過剰な診療を受けたり、診療水準が
落ちたりする恐れもある。 

「施設に入ると医者は決まっていました。お願いする
しかありませんでした」

茨城県にある有料老人ホームに入所していた女性(82)の
長女(55)は、3カ月前を振り返る。

医師は血圧と血糖値を測って「現状維持です」と伝えるだけで、
母はどんどんやせた。家族が声をかけても母の反応は
にぶくなっていった。長女は不安にかられ、2カ月後に
施設を変えた。今は別の医師から丁寧な診察を受け、
自分で食事をし、会話もできるようになった。

「いま考えれば、粗末な診療でした。私たちが払った
医療費から紹介料が払われているのなら、許せません。
いい金づるなんでしょうか」

通院することが難しい患者を月2回訪問したら、医師が
受け取る診療報酬は6万円を超える。外来の15倍だ。
高齢者施設の30人をまとめて訪問すれば月180万円が入る。
業者はその2割程度を毎月、自動的に手に入れることができる。

東京都世田谷区の診療所には、3年前に紹介業者が
訪ねてきた。「患者を紹介するので、料金を払って欲しい」。
医師が医師仲間にメールで相談すると、仲間の診療所にも
同じ業者が営業に来ていた。

厚生労働省にも複数の情報が寄せられている。
愛知県では、有料老人ホームの運営会社自体が、医師に

入所者を優先的に紹介する見返りとして診療報酬の
20%の支払いを要求していたという。

NPO法人高齢社会をよくする女性の会・樋口恵子理事長は
「高齢者や病人の人身売買だ。体が弱っていく時期に、
営利だけを追求する人々の利権によって食い物にされるのかと
思うと許せない」と憤る。

一方、紹介業者の多くは「うちだけでない。ほかもたくさん
やっている」と言う。大阪府の業者は「医師の要望で始めた。
医師支援の一環だ。我々も人件費などコストがかかって
いるので(紹介料を)もらっている」と反論した。

訪問診療には、通院できない患者が住み慣れた場所で
安心して診察を受けることができるなどの利点もあり、
誠実に向き合う医師は少なくない。

著書やテレビ出演、講演活動で知られる
長尾和宏医師は、
700人以上の患者を自宅で
みとるなど在宅医療に取り組んできた。

「患者さんが住み慣れた地域で、最期まで自宅で穏やかに
過ごせるように力を入れてきた。金もうけしか考えない業者や
一部の医師によって在宅医療がおとしめられるのは悲しい」

■国の施設推進策につけこむ

患者紹介ビジネスが広がる土壌は、国が旗を振る
社会保障政策によって作られた。
その一つが高齢者施設の建設促進だ。

特別養護老人ホームは自治体の財政難で建設が進まず、
高齢者施設は大きく不足。2011年、厚労省や国土交通省は
「サービス付き高齢者住宅(サ高住〈こうじゅう〉)」制度
設け、規制をゆるめた。1年半で11万戸超が完成した。

サ高住はさほど重症ではない患者を一度に多く
確保できる。
ある紹介業者は「サ高住の患者は建設前から
奪い合いだ」と明かす。

兵庫県のサ高住は、通院できる要支援の患者を
含む約30人全員に訪問診療を受けさせている。
全国在宅療養支援診療所連絡会の新田国夫会長は
「介護度から見ると、サ高住の入居者で通院できないのは
10%程度。過剰診療と考えてもおかしくはない」と指摘する。

もうひとつの要因は、国が訪問診療の報酬を次々に
上げてきたことだ。

厚労省は高齢者の社会的入院を減らし、受け皿として
訪問診療に着目。「住み慣れた地域で最期まで暮らす」
ことを重点政策に掲げてきた。訪問診療を担う医師を
増やすため、06年の診療報酬改定では、24時間体制で
自宅や有料老人ホームなどへ往診する診療報酬を倍増。
その後も2年に1回の改定ごとに増額し、訪問診療に
たずさわる診療所は7年間で1・4倍の約1万4千に増えた。

巨額を投じて急速に進めた政策の「ゆがみ」を業者は狙ってくる。

厚労省の担当者として診療報酬改定にたずさわった
中村秀一・医療介護福祉政策研究フォーラム理事長は
「診療報酬だけで政策誘導するのは限界。行政は社会の
変化についていけていない」と指摘。「診療報酬を適切に
運営するには、さまざまな問題を予防する規制や仕組み
作りも同時に進めることが大切だ」と話す。

11年度の医療費は約38兆円。直近の5年間を見ると、
毎年7千億円から1兆4千億円増えている。

安倍内閣は今秋から診療報酬改定の議論を本格化させ、
来年2月に決める予定だ。消費増税を視野に、医療・介護
制度の議論も進める。21日には消費増税に伴う社会保障
改革の手順を示すプログラム法案の骨子を閣議決定し、
在宅医療を進めるのに必要な措置を17年度までに
行うことを盛り込んだ。

その足元で、患者紹介ビジネスが横行している。
厚労省も危機感を強めており、診療報酬改定に向けて
規制のあり方が議論になるのは必至だ。

posted by salsaseoul at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会
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