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2013年08月15日

歯のカルテ、統一へ 大災害の発生時、迅速に身元確認

歯のカルテ、統一へ 大災害の発生時、迅速に身元確認
朝日新聞  2013年8月14日

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厚生労働省は、大規模な災害や事故が起きたときに
身元確認のために遺体の歯の治療記録を使いやすくするため、
歯科の電子カルテのフォーマット(形式)の統一を進める。
フォーマットがばらばらで照合に時間がかかった東日本
大震災の反省を踏まえたもので、将来は全国的な
統一データベースも視野に入れている。

遺体の損傷が激しくても、残っている歯の治療痕と、
かかりつけ歯科医師が持つカルテを照合することで
身元がわかる。古くから行われている手法だが、
東日本大震災ではあまりうまくいかなかった。

津波で多くの遺体が広い範囲で流され、かかりつけ
歯科医師がわからないケースが多かったことや、
カルテ自体が失われたためだ。さらに、歯科医師が
使っている電子カルテの入力項目などのフォーマットが
メーカーごとに異なり、照合が難しかった。データの
再入力が必要になるなど混乱を招いたため、厚労省は
歯の統一電子カルテづくりを進めることにした。

同省研究班(研究代表者=小室歳信・日本大教授)に
よる調査で、500人分のサンプルデータについて32本の
歯を「虫歯あり」「金属で一部修復」「全て修復」「欠損」
など六つに分類して検索すると、96%は1人に特定できた。
この手法で全国89カ所の歯科医療機関でモデル事業を行う。

個人情報保護などの問題もあるが、統一データベースが
できると遺体の歯の治療痕の情報を入力・検索すれば、
絞り込みができるようになる。

■治療痕、日航機事故で注目

歯の治療記録による身元確認は、1985年に乗客・乗員
520人が死亡した日航ジャンボ機墜落事故で注目された。
一般的に、災害で身元がわからなくなった遺体の1割程度は、
これが身元確認の決め手になるとされ阪神大震災でも役立った。

東日本大震災で、岩手、宮城、福島の被災3県で亡くなり、
身元が確認された1万5678人のうち、8%にあたる1
238人は、この手法で身元が判明。混乱したとはいうものの、
指紋照合で判明した370人より多かった。

南海トラフ沿いで起きるとされる巨大地震では、最悪の場合、
東海、近畿、四国、九州で約32万人が亡くなると
想定されており、統一電子カルテは、身元確認を効率化する
手法の一つと考えられている。

日本歯科医師会は歯科カルテのデータベースの必要性を
訴え、今回の厚労省の動きにつながった。

関連記事です。

「歯」の電子カルテの「データベース」構想
遺体の「身元確認」のために必要なのか?

弁護士ドットコム

津波被害の大きかった東日本大震災では、遺体の損傷が
ひどく、容姿や衣服などから「身元」を特定できない場合が
少なくなかったという。そんな中で頼りにされたのが「歯」の情報だ。
しかし、資料となるカルテの多くが津波でなくなってしまったうえ、
紙や電子のかたちでカルテが残っていても、形式が統一されて
いなかったため、照合に時間がかかってしまった。

こうした反省から、厚生労働省は遺体の身元確認に歯の情報を
活用するため歯科医の電子カルテの標準化に動きはじめたようだ。
さらに将来、歯の電子カルテがデータベース化されれば、災害時の
身元確認が円滑に進むことが期待されるという。

しかし、見方を変えると、データベース化は、歯医者を通じた国民の
管理といえなくもない。電子カルテの標準化やデータベース化には、
どのような法的な問題があるのだろうか。
歯科医師の資格も持つ元橋一郎弁護士に聞いた。

●「身元確認のための電子カルテ標準化」は本質的な議論ではない

「災害被災者の身元特定のために歯科電子カルテの仕様統一を
図るという提案は、眉唾な話ではないかと思います」

このように元橋弁護士は疑問を呈する。そのうえで、歯のデータの
提供に関する法的側面について、次のように説明する。

「身元確認のための歯科診療情報提供は、本人の同意が得られて
いない場合でも個人情報保護法23条1項3号の『公衆衛生の向上』に
あたるとして、警察等に診療情報を提供する余地はあります。
歯科医師には刑法上の守秘義務(刑法134条1項)がありますが、
正当業務行為(同法35条)として解除されるかもしれません」

身元確認をスムーズにおこなうために「歯の電子カルテ」の
標準化をおこなうというプランには、どのような意味があるのか。

「たしかに、歯科電子カルテの仕様が統一されていれば、
遺体の歯の抜け方(残り方)や歯の治療跡等のデータと
照合する作業がいまよりも容易になるでしょう。
しかし、遺体の身元は、これらだけでは確定できず、
写真やレントゲン、模型等が必要です。

すなわち、カルテが電子化されるだけでは、レントゲン等の提供
までは容易にならないので、身元確認のために歯科電子カルテの
様式を統一しようというのは、本質的な議論ではありません」

●電子カルテの標準化のメリットとは何か?

このように元橋弁護士は指摘する。では、「歯の電子カルテ」の
標準化は必要ないのか。元橋弁護士は「そうではない」という。

「歯科電子カルテの仕様統一には、次のようなメリットがあります。
(1)診療報酬の電子請求が容易になる
(2)歯科カルテの記述が不十分であることの改善策となる

(3)歯科カルテは自費診療と保険診療の診療録が
分かれているが、その統一が図られ、診療報酬の
二重請求や診療経過の不明確性が改善される

(4)インプラントやパーセレン冠等の高額自費診療の際の
患者への説明、患者の同意が、歯科カルテ上に明確に
記載される可能性がある」

つまり、災害時ではなく、日常的な診療の場面を
考えても、歯科カルテの電子化や標準化は推進する
意義があるというのだ。

「歯科カルテの電子化や仕様統一は、災害時の遺体の
身元特定という例外的な事項から論じるのではなく、
歯科医療を患者にとってより分かりやすいものと
することができるか、社会全体のコストを抑えることが
できるか等の観点から、推進の是非を論じていくべき
問題と考えます」

最近は、歯科診療の場面でも、電子カルテは当たり前の
光景になりつつある。社会全体のIT化の流れからすれば
当然といえるが、デジタルデータは流出したら簡単に
拡散してしまうというリスクもあるので、個人情報保護に細心の
注意をはらいながら、有効活用をしていってもらいたい。



posted by salsaseoul at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療
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