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2013年04月21日

「逆転プロセス」で砂糖減らさずエタノール生産 海外からも問い合わせ殺到

「逆転プロセス」で砂糖減らさずエタノール生産
海外からも問い合わせ殺到

産経新聞  4月21日(日)

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サトウキビから砂糖とバイオエタノールをつくる際、特殊な酵母を使い、
従来とは逆の順番で生産すると、どちらの生産量も約2倍になる−。
こんな新手法が開発され、注目されている。「逆転生産プロセス」と
呼ばれるもので、今年の「地球環境大賞」の大賞にも輝いた。
アサヒグループホールディングスの豊かさ創造研究所
(茨城県守谷市)、小原聡バイオエタノール技術開発部長(40)に、
開発秘話や新手法で実現したい夢などを聞いた。
(月刊ビジネスアイENECO編集長 本田賢一)
−−逆転生産プロセスとは
 「サトウキビには、砂糖の原料になるショ糖と、原料にならない
還元糖(果糖・ブドウ糖)の2種類の糖分があります。従来の工程では、
サトウキビの搾り汁からまずショ糖を結晶化させて砂糖を生産し、
残った糖蜜(ショ糖の残りと還元糖)に酵母を加えて発酵させ、
エタノールを生産するのが一般的でした。新プロセスでは生産順序を
逆にして、エタノールを生産した後で砂糖を生産するので、逆転生産
プロセスと呼んでいます」
 −−特殊な酵母を使うとか
 「従来使われている酵母では、還元糖とともに砂糖の原料である
ショ糖もエタノールに変えてしまいます。そのため、先にエタノールを
生産すると、砂糖が回収できなくなる。そこで逆転生産プロセスでは
還元糖だけをエタノールに変える酵母(ショ糖非資化性酵母)を
使います。先に還元糖だけエタノールに変え、残ったショ糖で
砂糖を生産します」
 −−原料のサトウキビも品種改良で作り出した

「普通のサトウキビでエタノールをたくさん作ろうとすると、砂糖の
生産を減らしてしまう。砂糖とエタノールを両方ともたくさん生産
できるように、まずサトウキビの品種改良に取り組みました。
その結果、還元糖を多く含み、たくさん収穫できる高バイオマス量
サトウキビを作り出しました」
 −−砂糖、エタノールとも平均で2倍取れるようになった
「高バイオマス量サトウキビは還元糖を多く含むため、還元糖だけ
食べる酵母により従来の約2倍のエタノールが作れます。
また、逆転生産プロセスでは砂糖づくりを阻害する還元糖を先に
エタノールに変えるため、従来の方法と比べて砂糖の回収率が
平均で約2倍、最大4倍に増えます」
 −−国内外の反響が凄い
「世界の砂糖産業が抱える問題の1つは、原料であるサトウキビの
収穫を増やせないこと。品種改良により収量の多いサトウキビを
作り出しても、必ず還元糖を多く含むため、砂糖の回収率が
低くなる。畑を拡大するにも土地の問題があり、限界があります。
しかし逆転生産プロセスを使うと、収量の多いサトウキビから
砂糖もエタノールも増産できる。これは世界の砂糖産業が
待ち望んでいた技術です。タイ、オーストラリア、インドネシア、
ブラジルなどからは技術開発の現状について問い合わせが
来ています。また国内の砂糖会社や商社からは、将来技術を
使用したい、あるいは共同事業を行いたいという声も
いただいています」
 −−開発の経緯は
 「2001年9月、柱となる新規事業につながる研究を行うため、
研究所内にR&D本部が発足しました。アルコール以外の
食・健康・環境分野で研究を進めることになり、私はバイオ
エタノールの研究を提案しました。バイオエタノールは当社の
得意とするアルコール製造技術が生かせるので、親和性が
あると考えたからです」
 −−開発では農家に配慮したとか
「サトウキビには原料代が高いという課題がありました。
原料代を安くすれば、生産者である農家を泣かせることになり、
事業の持続性がなくなります。どうやったら高い原料代でも
安いエタノールを作れるかを考えたとき、収量の多い
サトウキビによって原料の生産量を増やせば農家の利益にも
つながり、さらに付加価値の高い砂糖を同時生産して
エタノール生産での原料代負担を軽減しようとなりました。
WIN−WINの関係を築かない限り、エタノール事業の
持続性はありません」
 −−目標は2015年に実用化ですが
「現時点で2015年実用化という計画に変更はありません。
それまでに国内の製糖会社に協力してもらい、製糖会社の工場で
連続的に逆転生産プロセスの実証試験を行いたい。実証が
成功すれば砂糖作りは世界中一緒ですので、どこでも逆転
生産プロセスが出来ることになる。実用化までの2年間で、
逆転生産プロセスが砂糖工場でトラブルにより止まることなく
動かせるようにします。実際の砂糖工場は24時間ずっと
動いていますので。あと、エタノール生産に使う酵母は生き物
ですので、その働きをすぐ止められるかですね。すぐに
止められない装置だと、生産現場の判断が鈍るんです。
すぐ止められ、すぐ動かせるかはまだ試してないので、
そのことを担保できるようにしたい」
 −−具体的にどのような形で実用化されるのでしょう
「この技術は汎用性が高く、選択肢が多いのが特徴です。
既存の砂糖工場に逆転プロセスの技術を売るというのも
あるでしょう。はたまたジョイントベンチャーのような
方法もある。たった1つの技術ですが、汎用性が非常に
高いので、事業を展開する国や地域、パートナーによって
いろいろな実用化の可能性がある」
 −−地球温暖化への効果は
「CO2(二酸化炭素)排出量の削減効果は大きいですね。
まず、サトウキビ自体が光合成でCO2を吸収する能力が高い。
さらに、電力や重油など外部の燃料を一切使わないので
非常にクリーンです。生産工程で出るサトウキビの搾りかす
(繊維)をボイラーで燃やし、電気と蒸気を作る。
蒸気からは熱を回収して利用します」
「サトウキビの茎は7割が水で、残り3割が糖分と繊維。
砂糖工場ではサトウキビを搾った汁を煮詰めて砂糖を
作りますが、副産物として蒸発水(真水)が出ます。
砂糖工場は“水工場”でもあり、その水を工場内で
使っています。外部で水を作ると、その工程で結構
CO2が出ますので、砂糖工場での水利用はCO2
排出量の削減効果が非常に高いといえます」
 −−具体的なCO2削減量の試算は
「逆転生産プロセスでの試算はまだできていないのですが、
高バイオマス量サトウキビから砂糖とエタノールを生産した
場合の試算はあります。従来と比べて、畑1ヘクタール
当たりのCO2排出量の削減効果は年間40トンです」
 −−逆転生産プロセスを使っての夢は
 「砂漠やこれから砂漠化しそうな地域など条件の悪い土地でも
原料をたくさん取れるようにして、逆転生産プロセスを入れたい。
どこでも同じようにできるようになれば、砂漠化を食い止める
緑化をしながら、産業を育んでいくことができます。
世界人口が増え続ける中で、食糧やエネルギーが足りなく
なってくるわけですから、条件の悪い地域で逆転生産プロセスを
導入し、これまでサトウキビを植えていた条件の良い土地は
他の作物に譲っていく。それが夢ですね」
(インタビューの詳細は月刊ビジネスアイENECO5月号に掲載)
【プロフィール】 小原 聡(おはら・さとし)1972年大分県生まれ。
東大大学院修士課程(工学系研究科化学システム工学専攻)修了。
99年アサヒビール入社し、排水処理研究を担当。2001年より
バイオエタノールの研究開発に従事し、12年より現職。工学博士。
40歳。
■砂糖・エタノール逆転生産プロセス サトウキビの搾汁には砂糖に
なるショ糖と、砂糖製造を阻害する還元糖が含まれる。逆転生産
プロセスは特殊な酵母(ショ糖非資化性酵母)を利用して還元糖
だけをエタノールに変換した後、砂糖を高効率に製造する。
「砂糖製造⇒エタノール製造」という順序を世界で初めて
逆転させた画期的な生産プロセスで、温室効果ガス
排出削減にも効果的であることを確認している。


関連記事です。

砂糖とエタノールを同時増産
「逆転生産プロセス」ヒントはパチンコだった

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従来のサトウキビ(左)に比べ、新開発した品種は茎の本数が多く長い
ことから、より多くの砂糖とエタノールを採取することができる(提供写真)

アサヒグループホールディングスは昨年10月、サトウキビから
生産できる砂糖の量を大幅に増やしながら、バイオエタノールも
併せて生産する技術を開発した。

トウモロコシなどからも作れるエタノールは化石燃料の代替品と
して需要が高まるが、大量生産をすれば食糧不足を招く恐れが
指摘されていた。同技術を使えば、食糧の生産量を減らさずに
エネルギーを生産できることから、食糧とエネルギーの双方の
問題解決につながると期待が高まっている。

独立行政法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との
共同開発で生まれたこの技術は、砂糖とエタノールを従来と
逆の順序で作る「逆転生産プロセス」と呼ばれる。

サトウキビにはショ糖、ブドウ糖、果糖の3種類の糖が含まれて
いるが、砂糖を生成するのはショ糖のみ。従来工程では、
サトウキビの絞り汁をショ糖とそれ以外の糖分(還元糖)に
分解した上で、ショ糖のみを砂糖として回収し、残った還元糖に
酵母を加えてエタノールを生成していた。

だが、エタノールの元となる還元糖はショ糖生成を阻害する
働きがあるため、還元糖の含有率が高いサトウキビは砂糖の
生産性を著しく落とす性質が問題視されていた。
還元糖の含有率が低い品種は1〜3月にしか収穫できず、
台風で折れた粗悪なサトウキビなどから効率よく砂糖を取り出す
ことは、精糖会社や農家にとって課題だった。
また、そうした性質が砂糖の生産コストやサトウキビの
価格高騰を招く要因にもなった。

同社は、こうした問題に対応するため、06年から農研機構と
共同で沖縄県の伊江島で本格的にエタノールに関する研究
開発をスタート。単一面積で砂糖とエタノールを従来の
1・5〜2倍採取できる新品種を開発するなど成果をあげた。

しかし、精糖会社にとってエタノールを生成する還元糖は
砂糖生成を阻害する“不要”なものとして受け止められ、
還元糖を多く含む新品種の評判は芳しくなかった。

「還元糖だけを除去できれば、どんなサトウキビからも効率よく
砂糖を採取できるのだが…」。バイオエタノール技術開発部の

小原聡部長は頭を抱えた。同年の夏。妙案が浮かばないまま
都内に戻り、気分転換にパチンコを打ちに行った。

「パチンコはまず役物の羽根を開かせ、その中にある大当たりの
穴を目指す。玉を入れる順番と重要度が逆だな」。
何気なくパチンコ台を眺めているうちに、
この関係がエタノールと砂糖の関係にリンクした。

「重要でないエタノールを先に生成できれば、残りはショ糖
だけになるのではないか」。「逆転生産プロセス」の糸口と
なる発想を閃いた瞬間だった。

以前読んだ文献で、還元糖だけを分解する酵母が存在することを
思い出し、すぐに実証実験が始まった。サトウキビの絞り汁に
還元糖だけを選択的に発酵する特殊な酵母を加えることで、
ショ糖と還元糖をほぼ完全に分離することに成功。還元糖を
エタノールに変換・除去した後、絞り汁に残る高純度のショ糖から
砂糖を効率良く生産することが可能になった。

これにより、ショ糖成分の10〜15%しか砂糖にならなかった
品種でも、新技術により最大で約4倍となる65%以上も
砂糖に転化することもできた。

さらに、ショ糖取り出した後に残った糖蜜から砂糖を作ることも
できれば、従来の酵母を加えることでエタノールの生成も
できようになり、需要に応じて砂糖とエタノールの生産比率
調整をも可能にした。

「サトウキビは栄養分の少ない土地でも育つ植物で、
土地の緑化にも貢献する大きな可能性を持っている」と
小原さん。今後は15年をめどに同技術の実用化を目指し、
砂糖とエタノールの自社生産や技術販売などさまざまな形での
ビジネスチャンスを模索する。


コメントです。
エタノールの増産可能な新技術についての
話題です

確かに画期的な技術なようですが、それが
何か他の形で環境等に負担などかけない
少し心配です

また、精製された砂糖の品質についても
何か問題がないことも。
いずれにしても、画期的な技術開発に
負の副産物が付属するケースは多々
ありますから、それらの問題提起及び
解決策も同時進行で研究を進めて
欲しいですね。





posted by salsaseoul at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境
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