ICIJ (朝日新聞 7月18日)

死体組織の国際取引の流れ
死体から皮膚や骨、腱(けん)などの組織を集め、
歯科インプラントや美容形成、スポーツ医療用製品の
原材料として国際的に取引する動きが活発だ。
高まる需要の中で死体組織の不正な入手も横行し
始めており、米国の国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は
世界11カ国で8カ月間取材し、取引の不透明な実態に迫った。
人体組織の取引を監視する法律がないため出所のはっきりしない
死体組織をめぐる感染症被害の危険性を指摘する声もある。
人体組織そのものを売り買いすることは禁じられているが、
遺族の同意に基づく「献体」などにより遺体の組織が提供され、
非営利団体の組織バンクなどを通じて医療現場に届くのが
本来の形だ。ところが、「人体組織ビジネス」は急成長を続け、
規制の甘い旧ソ連・東欧が人体組織の「供給源」として
狙われている。中には、公的機関が言葉巧みに遺族から同意を
取り付けて死体の組織を不正に確保するケースも表面化した。
「肋骨(ろっこつ)2本、アキレス腱2本、左右のひじと鼓膜、
歯2本……。気味が悪すぎて最後まで読めなかった」。
てんかん発作のため息子を35歳で亡くした母親は、
ウクライナ警察に遺体から取り除かれた箇所のリストを
見せられた。同警察は今年2月24日、地方法医学局から
この男性らの人体組織をクーラーボックスの中に詰め込んで
白いミニバンで運びだそうとしているところを押収した。
荷札に書かれた運搬先は、米国で昨年1億6900万ドル
(約135億2千万円)を売り上げ、株式上場もしている
医療企業の系列ドイツ工場。母親は、わずかな組織提供を
するとしか聞かされていなかった。
ウクライナ警察は2008年にも別の法医学施設から月に1千を
超える人体組織が違法に盗まれ、第三者経由でこの工場に
運ばれたとして刑事事件化した。しかし、主犯格のウクライナ人
医師が判決前に死亡し、真相は闇の中だ。
米食品医薬品局(FDA)は11年、この工場から米国に輸入
されたウクライナ人の人体組織が、「ドイツ製」と記されている
ことを把握し、輸入元の上場医療企業に是正を求めた。
人体組織の最大の市場である米国では、年間約200万の
人体組織由来の製品が売られているとみられ、この10年で
2倍となった。業界関係者によると、病気のなかった死体は、
1体8万〜20万ドルで取引されるという。角膜移植は盲目の
人に光を与え、腱と靱帯(じんたい)をリサイクルした製品は、
アスリートの復活を可能にする。
皮膚は死体から手際よく長方形に切り取られる。大きければ
約5580平方センチを得られる。細菌感染を防ぐために水分を
取り除いてすりつぶし、精製されてがん患者の乳房再建術に
使われる。ところが、多くの米国などの整形外科医らは、
再建術に使う製品が死体の組織を使っていることを患者に
打ち明けない。
ICIJが情報公開請求によって入手した資料によると、FDAは
02年以降、組織移植後の感染を1352件把握し、40人は
死に至っている。米疾病対策センター(CDC)によると、
人体組織を使う製品には、肝炎やHIVなど感染症のリスクが
避けられない。血液については規制が厳しくなっているが、
死体から作られる製品にはほとんど規制法がないという。
CDCのマット・キーナート博士は「感染を見つけるシステムがない」
として、監視体制の必要性を訴える。
◇
朝日新聞社は、米国の国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)と
提携することを決め、初めて記事の提供を受けた。
ICIJは、1989年に創設された米国の非営利調査報道機関
「センター・フォー・パブリック・インテグリティー(CPI)」の
国際報道部門にあたる。CPIはこれまで、米エネルギー大手
ハリバートン社などイラク復興事業参入企業と米政権との癒着を
明らかにするなど数々の実績を上げている。
ICIJは、米ワシントン・ポスト紙やAP通信などとも提携。
世界の主要メディアでは、CPIを含む調査報道NPOから
記事提供を受ける動きが進む。
記事は無償で、ICIJの取材によることを明記することが
掲載条件。提供記事の主要部分を翻訳し、紹介する。
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生活保護者は献体?
同意がないまま市によって、学生の解剖実習などのため
日本歯科大の新潟生命歯学部(新潟市)に引き渡されて
いたことが分かった。市によると、遺族が引き取りを断り、
大学への引き渡しを了承した。
引き取り手がない遺体の扱いは、生活保護法などで市町村に
よる埋葬を定める一方、死体解剖保存法では大学への提供、
解剖も認めており、市の対応は違法ではないが、識者や
弁護士から「法の不備で遺体の扱いに差がある。本人同意の
ない身体の提供は倫理的に問題」との声が出ている。
富山市などによると、男性は4月22日、市内のアパート自室で
死亡しているのが見つかった。県警は事件性がないと判断し、
警察署に一時安置。市の依頼を受けた大学が24日に引き取った。
市社会福祉課は「受け入れ先が見つかった以上、(市の)
仕事は効率的、経済的にすべきだと判断した」としている。
遺族に生活保護法に基づき葬祭扶助が出るという説明は
しなかったという。
日本歯科大は「これまでも複数回引き受けたが、今後は
やめることを検討している」とした。これは、臓器移植を
進めるか否か、と同じベクトルの、価値観の問題と言える。
遺体をモノと考えるか、さっきまでは生きていた人間として
尊重するかどうか。火葬するということは、本人の意思と
あまり関係なく、文化的背景にもとづいて、日本では
火葬されるのだが、その場合は、遺体をいつまでも
「大切に」扱っていたら火葬し損ねてしまう。
しかし解剖用に遺体を使用する献体については、これは誰も
が献体するという文化的な了解があるわけではない
だから火葬と同列で考えてはいけない。むしろ、死後、
「利用可能な臓器」を「再利用する」、移植治療をどう
考えるかという問題と同じであるように思われる。
献体は、すぐに火葬・葬儀となるわけではなく、その間に
かなり長い時間的スパンを経て存在し、解剖の用に
供されるのである。利用されるのである。本来なら
死後数日を経ずして荼毘に付されるべき死体を、
そのようにはせずして、他の用途に用いて後に、
火葬するのである。死から火葬までの間に、それが
再利用される部分があるのである。
移植治療はどうか。心臓死、脳死のいずれでも、臓器等の
提供のために、死から火葬までの間に、再利用の場面が
組み込まれてくる。目下、臓器移植法案の改正案A案
(実質新法といっていい)が衆議院を通過し、今後の
動向が注目されるところではあるが、臓器の利用を
承諾するか否か、やはり故人の意思は全く顧みられない
わけではないのである。献体もやはり故人の意思は
尊重されてしかるべきであろう。万人に等しく強制
されるものではないはずだ。今回の件について、
遺族が引き取りを拒んだ場合、それが直接に、献体に
許可が出されたかのような扱いを、亡くなった生活
保護男性は受けたのである。この世にあるときも、
あの世に行ったときも、社会からのあまり温かくはない
対応をされたということになる。
「今後はやめることにしている」というのは、法律上は
責任がなくとも、やはり道義的、倫理的責任を感じて
いるからにほからならないのだ。
コメントです
米国の国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)発、
朝日新聞経由の提携記事です。
やはり、日本の新聞社の記事と比べて、独自の
視点に違いを感じさせる内容ですね。
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