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2016年09月06日

(小さないのち)ある日、突然:7 命つなげて 立ち上がる、社会を動かす

朝日新聞 2016年9月4日

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事故防止に向け活動する栗並秀行さん(右)、えみさん夫妻=愛知県碧南市

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生前の寛也ちゃん=栗並さん提供


かけがえのない子を亡くし、悲しみや後悔を抱えながらも、
失われた命を少しでも次につなげようと努力する人たちがいる。

「今動かないと子どもの死がなかったことになる。そんな気持ちで
活動してきた」と話すのは、愛知県碧南市の栗並秀行さん(37)、
えみさん(37)夫妻だ。

2010年10月、1歳4カ月だった長男寛也ちゃんが市内の
認可保育園でおやつの幼児用カステラをのどに詰まらせて
意識不明となり、約40日後に亡くなった。当初、保育園側は
「隣で見守りをしていた」と説明した。腑(ふ)に落ちないことが
多く、園に十数回通って保育士たちから話を聞いた。
すると、だれも寛也ちゃんを見ていない時間があったことや、
保育士の目が届きにくい「詰め込み保育」だったことがわかった。

栗並さん夫妻は3万人の署名を集め、第三者による調査を県に

求めた。事故から1年7カ月後、県と市による委員会ができた。

 国が動くきっかけにもなった。保育施設などでの重大事故の
防止策を話し合う国の検討会で、えみさんは委員となり、
遺族として発言した。検討会は昨年末、重大事故が起きた
場合に検証を促す報告書をまとめ、国から自治体に通知した。
今春には予防策や事故時の対応についてのガイドラインも出た。

だが、国の通知に法的拘束力はない。認可外施設には
事故の報告義務もない。

大きな一歩だが、まだ不十分だと、えみさんは感じている。
「だれに責任があったかを追及するのでなく、子どもが
亡くならないための包括的な仕組みづくりをしていくべきだ」

 (編集委員・大久保真紀)

 ■学会で体験談

7月、日本小児救急医学会などが主催した仙台市でのセミナーで、
生後10カ月の息子を亡くした一人の女性(35)が語り始めた。

「4年半過ぎましたが、息子の動きに気づけなかった自分への
強い嫌悪感や後悔は消えません」

事故は11年秋、東北地方の温泉旅館で起きた。和室で
くつろいでいると悲鳴が聞こえ、振り返るとテーブルの
電気ポットが倒れ、息子が全身に熱湯をかぶって座り込んでいた
。搬送された病院では治療できず、大学病院へ。
泣き声はどんどん小さくなっていき、1日半後に息を引き取った。

息子はつかまり立ちができるようになっていた。女性はポットに
ロックがかかっているのを確認し、安心していた。

同じような事故が起きてほしくないと、地元の市の窓口に相談し、
メーカーに連絡してもらった。だがメーカーからは
「構造上の問題ではない」と回答があったという。

「子どもが思いも寄らない動きをする危険を知ってほしい。
万一の事故に備え、応急処置を学べる場ももっとあるといい」。
息子への愛情と、せめてもの償いの気持ちから、つらい体験を
語り始めた。「息子のことを、いなかった命にしてほしくない。

少しでも失われる命が少なくなればいいと願っています」

 (山田佳奈)

 ■保育士、遺族とともに

子どもの安全を願うのは親だけではない。

60代の女性保育士は数年前、勤め先の都内の保育園で、
1歳の男の子がおやつをのどに詰まらせた現場にいた。
「だれか来て!」。担任の叫び声で駆けつけ、救急対応をしたが、
数日後に亡くなった。事故を受け、都からの指導で、緊急時の
マニュアル作成や模擬訓練などに取り組んだ。

だが、懸命に動く中で心にあったのは「園を批判から
守ることばかりだった」。

事故から1年後、マニュアルの完成を遺族に知らせると、
言われた。「うちの子が死ぬ前にやってほしかった」。
遺族のためにできることをやろうと決めた。

 昨年秋。大阪であった事故予防を考える講座に参加した。
子どもを亡くした親など約100人が会場を埋める中、
震える手を挙げて発言した。

「事故があった園の保育士です。同じような事故をどうしたら
なくせるか、考えたくて来ました」。責任を問われかねない立場での
発言は怖かったが、ある遺族は受け止めてくれた。
「遺族の前で声を上げてくれたことがうれしい」

 施設側のさまざまな情報を共有できれば、より細やかな
予防策につながると感じている。今後も遺族とともに
事故予防を考える会に参加するつもりだ。

 (板橋洋佳)




posted by salsaseoul at 07:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療
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