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2016年05月14日

「新耐震」でも崩れた 激震2回、26棟が全壊・倒壊 熊本・益城、惣領南部地区では

朝日新聞 2016年5月14日


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益城町惣領南部地区の建物被害状況<グラフィック・甲斐規裕>


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益城町惣領南部地区の被害状況



熊本地震で震度7を2回観測した熊本県益城(ましき)町で、
朝日新聞は被害が大きかった惣領(そうりょう)南部地区の
全ての建物の損壊状況を調べた。激震の連続で、
「新耐震基準」の建物26棟も含め、地区内の約2割の
139棟が倒壊か「全壊」状態になっていた。
地盤が弱い川沿いの埋め立て地だけでなく、古くからの
宅地も含めて被害が広がっていた。専門家は
「新耐震でも十分ではない場合がある」と警鐘を鳴らすが、
国土交通省は基準の見直しについて慎重だ。

復旧工事に関わる車などで、日中は渋滞しがちな県道の
南側に広がる住宅街。惣領南部地区は、一歩足を踏み
入れると、ぺしゃんこに崩れ落ちた家々が 四方に
広がっていた。電柱は倒れかかり、電線は地上近くまで
垂れ下がったまま。車1台がやっと通れる道路は、
がれきで埋まっていた。

倒壊した建物が最も多かったと複数の町民がいう
この地区で、朝日新聞は、県建築士会の協力を受け、
地区内の建物全667棟を独自に調査。約2割の139棟が
倒壊したり建て替えが必要なほど損壊したりしていた。
うち26棟は新耐震基準の建物だった。これらの家屋は
地区内にまんべんなく広がっていた。

 ■資産価値ゼロに

1カ月前まで、暮らしの息吹が感じられたはずの場所は今、
静まりかえっている。そんな中、主婦の佐野幸子さん(66)は
黙々とがれきの片付けをしていた。

夫(69)の定年を見据えて、1989年に木造2階建ての家を
建てた。81年の建築基準法改正を受け、震度6強〜7程度で
倒壊しないことが目標の新耐震基準が適用された。
2人の子が独立し、「これから夫婦でゆっくりできる」。
そう考えていた矢先だった。

4月14日夜の前震で被害はなかったが16日未明に本震が
襲う。2階部分の柱は大きく傾き、大半の窓ガラスが割れた。
外壁に約1メートルの亀裂がいくつも入り、1階の風呂の壁は
崩落した。「資産価値はなくなった。夫の退職金をつぎ込んで、
やっとローンを払い終えたのに。ほんの数十秒で全てを奪って
しまうんですね」。佐野さんは肩を落とす。

佐野さん宅について、同会は「建て替えが必要。市町村の
罹災(りさい)証明の調査で『全壊』と認定される可能性が高い」と
指摘した。

政令指定都市の熊本市中心部から南東へ約9キロ。
地区は近年、熊本市内に通うサラリーマンらのベッドタウンに
なりつつあるという。地元の建設会社長(66)は「以前は重い
瓦屋根の古い家が多い地域だったが、近年は空き地に
新しい家が建ち始めた」と話す。

 ■「離れたくない」

岩下仁作さん(85)宅もそんな家の一つ。63歳で会社を退職後の
95年、古い自宅の隣に新耐震基準の家を建てた。妻と2人で
暮らすには古い家でも十分だったが、「いつか自分の力で
建てた家に住みたい」と、こつこつためた約1千万円をつぎ込んだ。
孫やひ孫が遊びに来られるように部屋は八つ。
将来は息子に譲るつもりだった。

そんな自慢の家は、2度の激震で全壊状態になった。
巨大な瓦屋根が地上付近まで落下。
1階部分は完全に押し潰された。

「やっとの思いで建てた家。この場所を離れたくない」。
岩下さんは時折、涙を浮かべて話した。

福岡大学工学部の古賀一八教授(建築防災学)によると、
建物の被害は町内でも県道の熊本高森線と秋津川の間の
惣領南部地区で特に大きい。「一帯は河川や扇状地を
埋め立てた地盤の弱い地域を宅地化しており、液状化の
現象もあちこちで起きた」と指摘する。

朝日新聞の調査で、倒壊したり建て替えが必要な状態
だったりした139棟のうち、「旧耐震基準」で建てられた家は
90棟あった。

旧耐震で倒壊した家は重い瓦屋根が目立つ。
荒牧不二人さん(当時84)は瓦ぶき木造2階建ての自宅の
下敷きになって死亡した。近所の主婦(71)は「昔、この辺りで
一番立派な家だった」と話した。

町内にある工務店の社長(70)は「旧耐震の家も新耐震の
家もまんべんなく壊れている印象だ」と語る。

 ■震度7級、耐震性3〜4割に低下

震災への最大の備えは耐震化だ。建物が壊れたとしても、
少なくとも人命は守ることを目的に、耐震基準は大地震の
たびに強化されてきた。
建物被害が目立った熊本地震は耐震化の重要さを改めて
示すとともに、新たな課題も突きつけた。

耐震基準は1978年の宮城県沖地震を機に、81年に大幅に
引き上げられた。それ以前の建物は、新しい建物と比べて
耐震性が劣るものが多い。日本木造住宅耐震補強事業者
協同組合が全国で耐震診断した約2万棟の結果を集計した
ところ、80年以前の建物の98%が震度6強以上で倒壊する
可能性があったという。

熊本地震の被災地を調査した建築研究所の槌本敬大
上席研究員は「揺れの大きかったと思われる地域では、土壁の
家や、筋交いがない家はほぼ間違いなく壊れていた」と話す。

新耐震も万全ではない。益城町の約200棟を調査した
宮澤健二・工学院大名誉教授(耐震工学)によると、
新耐震で建てたとみられる住宅約120棟のうち約70棟が
倒壊か大破し、被害は2000年以前の建物に集中していた。
この年は、95年の阪神大震災を受けて、柱と土台、はりを
つなぐ金具や、壁の配置に関する規定が厳格化された。
「新耐震でも金具が十分でないものがある」と言う。

さらに、日本建築学会九州支部が益城町で行った2600棟
規模の調査では、00年以降に建てられたとみられる
木造家屋でも全壊したものが約50棟あった。

原因分析はこれからだ。木造の場合、震度7級の揺れで
10センチ程度変形し、耐震性能は3〜4割に落ちる。
強い揺れの繰り返しが被害を拡大した可能性がある。
また、造成した盛り土が崩れて倒壊したり、弱い地盤によって
局地的に揺れが増幅されたりした可能性も指摘されている。

 ■基準見直し、国は慎重 建設コストが増加、住宅価格に影響も

東京理科大の井口道雄名誉教授(耐震工学)は「現在の
耐震基準は震度7の地震が連続して起きる事態を想定して
いない。耐震基準は命を守るための最低限の基準。
国や業界は住民が安心できる基準作りの議論を始める
べきだ」と指摘する。

だが、基準の見直しについて、国土交通省は現段階では
慎重だ。同省幹部は「新しい住宅で倒壊したものは一部。
原因も分からず、基準の見直しを検討する段階ではない」と
話す。

同省は専門家を現地に派遣し、倒壊家屋を調べている。
別の同省幹部は「原因を特定し次第、現在の基準が十分か
どうか予断を持たずに検証したい」という。

仮に基準が見直されれば、横揺れに強い壁の量を増やす
必要がある。約5200万戸ある既存の住宅の改修は強制には
ならないとみられるが、新築は義務づけられる。
阪神大震災をきっかけに耐震改修促進法ができ、81年以前に
建てた旧耐震基準の住宅について耐震診断や耐震工事の
費用を一部補助する仕組みがある。だが、2013年時点で
耐震性不足の住宅は全国に約900万戸ある。

不動産コンサルタント会社「さくら事務所」(東京都)の
朽木裕二建築士は「耐震基準を強化すれば、建設コストが
増し住宅価格は上がる。
ハウスメーカーや消費者への影響は大きい」という。

コメントです。
熊本大地震で新耐震基準でも家屋が倒壊した話題です。

大地震のたびに耐震基準が見直されたと本文にありますが、

自然災害が相手ですから、どこで線を引くかは困難ですね。
基準を上げすぎたら建設コストが膨れ上がるし、現状でいくと
大地震に耐えられない。
いずれにしても、今回の熊本大地震、2度の本震など
これまであまり聞かなかった事例ですから、今日の記事にも
あるように、今後、より多くの教訓を与えてくれることでしょう。


posted by salsaseoul at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会
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