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2016年04月03日

(興流インド)大国志向:下 HIV治療、変えた後発薬 価格「1日1ドル」、南ア向け進出

朝日新聞 2016年3月31日

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簡素な家々が立ち並ぶカエリチャ地区で暮らすアンディールさん。
自らHIV感染者であることを公表し、感染者らの支援活動もしている
南アフリカ・ケープタウン、都留悦史撮影

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 南アフリカのケープタウン郊外にある黒人居住区カエリチャ。
簡素な家々が密集する地区では、失業率は4割を超える。
アンディールさん(38)は月2回、近所のプレハブの診療所に通い、
エイズウイルス(HIV)の病状進行を抑える治療薬を受け取る。
「薬を飲み始めて、すこぶる体調はいい」

HIVが陽性と診断されたのは、頭痛や下痢などの症状が続いて
いた12年前。当時美容師だったアンディールさんの月収は約1万円。
妻と3歳の娘を養うので精いっぱいだった。「医療費が払えない。
一時は首をつって死のうとしたが、妻に止められた」という。

救われたのは、インド製の後発医薬品(ジェネリック薬)の
おかげだった。新薬を使えば月1千ドル(約11万円)の
支払いが患者側に生じるが、安価なジェネリック薬は政府が
購入し、低所得者に無償提供する。
1日1ドル前後で暮らす患者も多く、命綱となっている。

カエリチャで医療支援を続ける「国境なき医師団」の
エリック・ゴーマエル医師も「私たちが使う薬の8割がインドの
ジェネリック薬。インドなしでは活動は立ちゆかない」と話す。

世界のHIV感染者は、その60%以上がアフリカ大陸南部に
集中する。
人口5300万人の南アは感染率が最も高い国の一つ。
感染者数は約640万人にも上ると言われる。

インド製のジェネリック薬が、この国で本格的に普及し始めたのは
2000年以降だ。特許で守られた新薬は値段が高すぎて治療が
受けられず、年25万人のエイズ患者が亡くなる状況を改善しようと、
政府が安価な医薬品を輸入できるように薬事法を改正した。

特許を持つ欧米の製薬会社は「新薬が売れなくなる」と反発したが、
インドのジェネリック薬大手シプラ社は「1人1日1ドルでエイズ
治療薬を販売する」と表明。年間約1万2千ドルかかった薬代に
価格破壊をもたらし、南アでは約220万人のエイズ患者が新たに
治療を受けられるようになった。南アのモ ツァレディ保健相は
「インドは私たちのヒーローだ」と持ち上げる。

「エイズ治療薬の供給をきっかけに、政府との結びつきが強まった」と
シプラ幹部。14年には総額20億ランド(約150億円)分のエイズ
治療薬を 17年まで南ア政府向けに提供する契約を交わした。
昨年11月には約400種類のジェネリック薬の供給基地を
ケープタウンに建設し、攻勢を強める。
インドの同業他社にとっても、南アは成長市場だ。

 ■政府後押し、途上国への「外交ツール」

インドは近年、世界の医薬市場で目を見張る存在となっている。
製薬企業は3千社を超え、200カ国以上にも輸出。
世界のジェネリック薬の5分の1がインドで生産されている。

背景には、公衆衛生上の目的で手頃な価格で医薬品を
供給するという政府の方針がある。1970年に定めた
特許法では、医薬品の成分に与える「物質特許」を認めず、
医薬品の作り方についての「製法特許」だけを保護対象にしてきた。

このため、インドの製薬企業は、他国では物質特許で守られた
新薬でも、成分を調べて違う作り方をすれば、合法的に
同じ効能の薬を製造、販売できた。

世界貿易機関(WTO)のもとで95年に発効した協定で、
医薬品の特許保護が強化され、インドも05年の特許法改正で
物質特許を認めるようになったが、それでも欧米に比べて
特許の付与には厳しいとされる。

インドの姿勢に対し新薬を開発する欧米や日本などの不満は強い。
しかしWTOの協定は、公衆衛生の保護を促進する権利を
加盟各国に認めており、貧困層を多く抱えるインド側にも一理ある。
インド政府が先進国の圧力に屈し、特許法をすぐに再改正
するとの見方は少ない。

インドのジェネリック薬大手ルピンのニレシュ・グプタ社長も
「守るべき知的財産は守るというインドの特許法は公平だ」と
主張。米国や日本などに加え、ブラジルやメキシコ、南アなど
成長が見込める新興国や途上国で事業拡大を急ぐ。

そんな動きを途上国はとりわけ歓迎する。エイズだけでなく、
結核やマラリアなどの患者を多く抱える一方で、高価な薬に
手が届く国民は少なく、医薬は国家の将来にもかかわる。

ジェネリック薬の世界展開は、インドに経済面だけでなく、
外交上の利益にもつながるとの見方もある。

昨年10月、ニューデリーで開かれた「インド・アフリカサミット」。
アフリカから40カ国以上の首脳が参加した会議で、大きな
関心事の一つは医薬だった。

モディ首相は「インドとアフリカの医薬の発展に協力する」と
明言。医療や教育、農業分野の開発支援を官民一体で
進めるため、今後5年間で総額100億ドルを融資すると申し出た。

インドのNGO「CUTSインターナショナル」のプラディープ
事務局長は「国連安全保障理事会で常任理事国入りを
目指すインドにとって、ジェネリック薬は、途上国や新興国の
支持を取りつける外交ツールになり得る」と指摘する。

 (ケープタウン=都留悦史)


コメントです。
匿名条件で複数の薬剤師を招いた
座談会に参加したことがありますが、
ジェネリック薬を使用するかというと、
あくまでも主観的な意見ですが、
「自分は使いたくない」と発言する方が
ほとんどでした。

さて、余談はさておき、インドの製薬産業が
実力をつけてきて、結果的に貧困国の
医療に貢献している話題です。
確かに、貧困国では安価で薬が調達できることが
患者の命綱になりますし、がん治療等で使用する
高額な薬が後発薬の効き目が
十分期待できるのなら、
先進国でも、少しでも医療費を抑えたい政府にとって
インド製後発薬の使用は必須になっていくはずです。






posted by salsaseoul at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 南アジア・インド周辺国
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