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2016年03月11日

(世界発2016)豊かなカースト、不満爆発 就職で「不公平」、デモ暴徒化 インド

朝日新聞 2016年3月8日

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暴徒に略奪されて火を放たれた商店=いずれも2月23日、ロータク、貫洞欣寛撮影


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インドの首都ニューデリー近郊で2月、被差別カースト向けの
優遇策の適用を求めたデモが暴徒化し、日系企業の操業停止や
首都での断水につながる騒ぎが起きた。
デモをしたのは、比較的豊かなカーストの人たち。
「持てる者」の反乱の背景には何があるのか。

 ■公務員に優先枠「自分たちも後進階級に」

「税務署の採用試験で僕は395点も取ったのに205点の者が
採用された。こんな不公平は許せない」

首都近郊のハリヤナ州ロータク。2月23日、大学前で座り込みを
していたスニート・ナンダルさん(28)が語った。
伝統的に農業に従事してきた「ジャート」というカーストに属する。
ジャートの学生や住民らが19日、公務員採用の優先枠を
自分たちにも割り当てるよう求めて、デモを開始。
ナンダルさんも加わった。

近くには黒こげの車が転がり、焼き打ちされ、略奪された商店が
見える。デモ隊はやがて暴徒化し、19日夕には商店などを襲い、
各地で道路を封鎖したのだ。暴動は軍や武装警官隊が
派遣された22日まで続き、28人が死亡した。

インドでは、かつて「不可触民」と呼ばれ過酷な差別を受けた
カーストや、カーストの枠外の少数民族に、政府が公務員採用や
大学進学で優先枠を設け てきた。1990年代以降は
「その他後進階級(OBC)」と呼ばれるカーストの人たちにも
同様の優遇をし、公務員採用のおよそ半分が優先枠となった。

ジャートは今回、自らもOBCと認めるように求めた。自作農が多く、
同州で人口の3割を占める。動員力があり、
政治家も「集票マシン」とみなしてきた。

2004年の州議会選で、ジャートへの優先枠適用を公約に
掲げた国民会議派が勝ち、ジャートのフダ氏が州首相になった。
フダ氏は14年の州議会選の直前に優先枠の適用を発表したが、
選挙に敗れて退陣。最高裁は昨年、「ジャートはOBCではない」と
適用を取り消す判決を出した。

プラデープ・フダさん(27)は昨年、優先枠で決まりかけた公務員

採用が最高裁判決で取り消された。大学でコンピューター科学の
修士号を取ったが良い仕事に就けず、公務員を目指していた。
「我々にも優先枠を適用するか、制度そのものをやめるべきだ」

ハリヤナ州には多くの日系企業が進出している。
在インド日本大使館などによると、近くの工業団地から
帰宅できなくなった邦人駐在員ら26人が軍のヘリで救出された。
スズキは道路封鎖などで部品の納入が困難になり、
20日午後から23日午前まで二つの工場で操業を停止した。

暴徒がニューデリーの水源となる用水路などを一時占拠
したため、首都の広い範囲で断水が続き、国鉄も運行が
妨害されて約100万人の足に影響が出た。

インド商工会議所連合会は、商店の焼き打ちや工場の
操業停止、断水などによる経済的な損害を
計1800億〜2千億ルピー(約3千億〜3400億円)と見積もる。

 ■「農業に未来ない」…転職に壁

比較的豊かとされるカーストの優先枠の要求は昨年、
西部グジャラート州でもあった。「パテル」と呼ばれる人々が
最大都市アーメダバードなどでデモを繰り返し、警官隊との
衝突で死者も出た。パテルも伝統的に農民で、
かつ村の「徴税役」を意味する。

なぜ、「持てるカーストの反乱」が続くのか。ネール大学の
スリンダル・ジョドカ教授(社会学)は、背景に社会の変化をみる。

ジョドカ教授によると、インドでは、品種改良などで穀物を
増産した60年代以降の「緑の革命」で農村が豊かになり、
自作農のジャートやパテルが経済的、政治的に力を得た。

だが、政府が91年に経済開放政策をとると、94年に
就業人口の61%を占めた農業は、13年には50%に低下。
14年に発足したモディ政権は製造業を振興して経済成長と
雇用創出を目指す政策を進め、農地の買収手続きを
簡素化しようとしている。こうした変化に「農業に未来はない」と
いう考えが、ジャートやパテルの間で広がっているという。

だが、民間企業に就職しようにも、上層部は伝統的に
司祭や商人だったカーストの人たちが占め、公務員採用での
競争率は高い。ジョドカ教授は「こうした人々が見つけた
出口が優先枠だ」と話す。

 ■根強いカースト意識

50年に施行されたインド憲法は、カーストによる
差別を禁じている。

ただ、姓がカーストや出身地を示していることが多く、カーストを
意識せずに暮らすのは難しい。新聞などに掲載される結婚相手を
募集する広告も、「同じカースト限定」といった記載があることが多い。

そのため、姓を非公開にしたり、カーストがわからないように
改姓したりする人も少なくない。
こんな現実が、騒動が起こる土壌としてあるとも言えそうだ。

NGO社会調査センターのランジャナ・クマリ理事長は
「カーストが集団のアイデンティティーと なり、他の国の民族集団と
似た役割を果たしている」とみる。
インドでは近年、女性への性暴力事件が問題になっているが、
多くは異なるカースト間で起こると いう。
「仲間と見なさないから起こる。90年代のユーゴ内戦で
異民族への強姦(ごうかん)が相次いだのに近い」と話す。
(ロータク=貫洞欣寛)

 ◆キーワード

 <カースト> 
バラモン(司祭)を頂点に、かつて不可触民と呼ばれた
被差別カーストを底辺とする形で区分けされた身分制度。
職業や地域などで細分化され、数千のカースト集団が
あるとされる。インド政府はカースト差別を禁じる憲法に
基づき、被差別カーストを「指定カースト(SC)」、少数民族を
「指定部族(ST)」、SC・STに次いで社会的に疎外された
カーストを「その他後進階級(OBC)」として、公務員採用や
大学進学で優先枠や奨学金などを設けている。
SCはインド総人口の17%を占める。OBCは4割程度とみられる。



コメントです
インドのカースト制度についての話題です。
このトピックに関しては、掘り下げていくと
書物何冊分になるかわからないぐらい
膨大な時間と情報量です。
今日はそのうちのほんの少しだけですが、
興味深い記事があったので掲載しました。



posted by salsaseoul at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 南アジア・インド周辺国
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