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2016年02月16日

(時時刻刻)重力波、未知の窓開く 装置改造、2日後の成果 米「LIGO」初観測

朝日新聞 2016年2月13日

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アインシュタインの「最後の宿題」とされた重力波を初めて観測
したと米研究チームが報告した。
重力波を使えば、これまでの望遠鏡では見えなかった天体現象や
初期の宇宙に迫ることができる。今後の成果に期待が高まるが、
国際的な観測態勢づくりや観測予算の確保といった課題もある。

「ガリレオが400年前に望遠鏡で宇宙を見た。同じように、
我々は今日、重力波による天文学の窓を開いた」。
研究チームのデービッド・レイツェ博士は、ワシントンで
開かれた会見でこう喜びを語った。
さらに「本当にエキサイティングなのは次に来るものだ」と述べ、
今後の天文観測で予想される大きな発展に期待を寄せた。

観測装置「LIGO(ライゴ)」が重力波を観測したのは、
昨年9月の観測開始からわずか2日後だった。
二つのブラックホールが合体した瞬間に周りに生じた
「時空のひずみ」が波となり、13億光年先から地球に
届いていたことが解析で分かった。

米国の2カ所にある装置はそれまで6年間かけて
精度を上げる改造工事をしていた。そこに、ツキも味方した。
観測された波形は、予想される重力波の特徴と一致。
データの明確さに、物理学の研究者からは驚きの声が上がった。

重力波によるわずかなひずみをとらえるには、巨大な
施設による精密な観測が必要になる。1970年代に
研究構想が始まり、完成したのは99年。初代の装置は
性能の確認が主な目的で、重力波をとらえられるとしても
10年に1回程度という精度だった。2008年に始まった
大幅な改造で、1年に10回は観測できるほど精度が
飛躍的に向上した。

観測は今年1月まで続いたが、これまでに解析したのは
一部のデータに過ぎない。まだ、ほかのブラックホール
などから届いた重力波が埋もれているかもしれない。
装置は調整作業を経てさらに精度を高める。
運転を再開する7月以降も成果が期待される。

全米科学財団(NSF)がこれまでに投じた費用は
約11億ドル(約1240億円)。NSFのフランス・コードバ
理事長は会見で「米国が世界の先端知識のリーダーで
あり続けるため、開拓者に投資する」と述べた。

 ■ブラックホール・宇宙の初期、解明期待

重力波を観測すれば、光や電波を使う望遠鏡では
迫りきれなかった天体の新たな姿が見えてくる。
ブラックホールや中性子星がその例だ。
今回の発表は「重力波天文学」の幕開けでもある。

LIGOのチームがとらえたのは、二つのブラックホールが
互いの周りを回る「連星ブラックホール」が最後に合体
する現象。予想されていたが、実際に観測されたのは
初めてだ。合体では、太陽3個分の巨大なエネルギーが

放出されたとみられる。

岐阜県・神岡鉱山にある日本の観測装置KAGRA
(かぐら)が目標に挙げる一例が、ブラックホールの
誕生の瞬間だ。巨大な星が一生を終える「超新星爆発」が
起こると、その中心にブラックホールが生まれる。
ガスに包まれて光は遮断されるが、重力波は
すべての物質を通り抜けるので観測できる。

中村卓史・京都大教授(宇宙物理学)は
「本当に面白いのはブラックホールのぎりぎり近くまで
見えること」と話す。重力波でその様子を調べ、従来の
物理理論が成り立たないことがわかれば、理論の
書き換えにつながる可能性がある。

重力波はすべての物質を通り抜け、どれだけ遠くにも
到達するため、宇宙の初期の姿にも迫れる。

宇宙は138億年前に誕生した後、急膨張し、火の玉と
なった。光は飛び交う粒子に反射されて閉じ込められ、
やがて冷えて38万年後から外に出た。
「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれ、これより前の宇宙の
姿は光では観測できない。

宇宙の膨張で生じた「原始重力波」をとらえれば、
この空白期間を埋めることができる。直接、間接に
観測する計画が世界で進む。波長が長いため、複数の
人工衛星の間でレーザー光をやり取りして観測する
計画が欧州で進む。

ただし、重力波天文学には課題も多い。
重力波がやって来た方向を知るには3カ所以上の
施設で同時に観測する必要がある。観測施設が多い
ほど精度が上がり、国際協力が欠かせない。
観測所の建設費や運営費 も巨額だ。3月15日から
試験観測を始めるKAGRAの建設費は今年度までで
約155億円。LIGOに劣らぬ高い性能を誇るが、
存在感をどう発揮するか試練の時を迎える。

 ■日本人も貢献

 LIGOの論文には1千人以上の研究者が名を連ねた。
日本人は数少ないが、成果には大きく貢献した。

成功のカギとなった装置の改造にあたり、精度を上げる
ための機器の総合調整を担当したのが、

LIGOハンフォード観測所の河邊径太・統合テスト主任だ。
高精度の光検出器、出力が極めて安定したレーザー、
熱による振動が起きにくい鏡、地面の振動を遮断する
しくみなど一つずつ組み上げていった。

「新たな技術を開発しながら少しずつ改善していく作業。
車でいえば、車体もタイヤもハンドルもすべて組み付けられ、
エンジンも回っているのに、な ぜか走り出さないことも
たくさんあった」。まだ最初の観測を終えたばかり。
「最終的な性能には達しておらず、仕事はこれからも続く」

LIGO研究所の山本博章上級研究員は計画当初の94年
からチームに加わる。「初代の装置は予定の感度を達成
するまでに5年もの歳月がかかった。原因不明の雑音に
長い間悩まされた時期もあった。
その苦しい経験が生きた」と話す。

日本や欧州の観測が始まれば、連携して位置の精度が
高い観測が可能になる。2人ともその日を心待ちにしている。


関連記事です。
(いちからわかる!)重力波ってなに?

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 ■重い星などが動くと、宇宙空間がゆがんで起きる波だよ

 コブク郎 米国の研究グループが重力波を観測したと発表
        したけど、どんなものなの?

 A 重力波は、宇宙(うちゅう)の空間がゆがんで起きる波の
   ことだ。重い星やブラックホールが合体したり動いたりすると、
   周りの空間が伸び縮みし、そのゆがみが水面の波紋のように
   広がっていくんだ。

 コ 空間って伸び縮みするんだ。

  アインシュタインが存在を予言した現象だ。

   アインシュタインの一般相対性理論では、重さを持った
   物体の周りでは空間にゆがみが生じるとされる。

   米国の科学者のハルスとテイラーは、重力波が存在
   すれば起こるはずの天文(てんもん)現象を観測。
   間接的に重力波の存在を証明し、ノーベル賞を受賞した。
   その次は直接観測しようと、米国や欧州、日本のグループが
   それぞれ観測施設を造っていたんだ。

 コ どうやって観測するの?

 A 米国のグループは、L字形のトンネルの中央に置いた光源
   からレーザー光線を飛(と)ばし、4キロ先の両端に置いた鏡に
   反射させて往復させた。
   重力波が来たら、その影響によって光線が戻るタイミングが
   ずれるので、そのずれを測る仕掛けだ。

   しかし、重力波によって生じるゆがみは、太陽と地球の距離
   (1億5千万キロ)に対して水素原子1個(1千万分の1ミリ)分
   ほどしかない。観測機器を置いた地面の揺れなど、重力波と
   無関係の「雑音」を取り除くのが大変で、「観測に成功すれば
   ノーベル賞」と言われてきた。

 コ 日本でも観測を狙っていたんだ。

 A 東京大などのグループが、岐阜県の神岡鉱山の地下に
   「KAGRA(かぐら)」を建設(けんせつ)している。

   重力波の観測は、光や電波を手がかりにしてきたこれまでの
   天文学とは異なる学問の始まりだ。

                              (福島慎吾)


コメントです
重力波の話題です。
今後、もっとわかりやすい記事が
多く掲載されると思います。
現状では、今日の記事で精一杯です。





posted by salsaseoul at 03:07| Comment(0) | TrackBack(0) | その他
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