中国、インドだけではない。中東イランも深刻な大気汚染に苦しむ。
汚染の主な原因は車の排ガスだ。排ガスを減らすため、政府は
交通規制を強化。それをかいくぐろうと、ドライバーたちが
あの手この手の回避策を繰り広げている。
富士山のような円錐(えんすい)形をしたイラン最高峰の
ダマバンド山。東京ならスカイツリーにあたる首都テヘランの
ミラッド・タワー。いずれも茶色い大気に覆われ、テヘランの
街中からは輪郭すら見えない。
イラン政府は微小粒子状物質(PM2・5)などの正確な数値を
明らかにしていない。だが2013年には、PM2・5の値が
世界保健機関(WHO)の基準を超えた日が298日あったと
される。
保健省は13年、大気汚染をはじめとする公害が原因の死者が
年間約8万人に上り、死因の21%を占めていると発表した。
テヘラン市当局は、「汚染の原因は7割超が車の排ガスだ」と
している。北側に4千〜5千メートル級のエルブルズ山脈が
そびえ、空気の逃げ場に乏し い。大気汚染はかねて問題
だったが、この数年でさらに悪化した。核開発に対する制裁の
強化で経済が停滞。粗悪なガソリンが出回り、排ガスを
減らす性能に乏 しい車両の置き換えが進まない。
テヘラン市当局は先月から、高齢者や子どもに外出を控える
ように呼びかけている。小学校や幼稚園の登校禁止も
計6日に上り、採石場やセメント工場は操業を中止。
サッカーのプロリーグの試合もとりやめになった。
だが副大統領を兼ねるエブテカール環境庁長官は先月26日
「大気汚染は非常事態レベルにはない」と発言。
反発した国会議員107人が「政府は対策不足だ。
汚染から国民を救え」とする書簡をロハニ大統領に提出した。
イランでは2月26日に国会議員選がある。ロハニ氏の
ライバルにとって、大気汚染も巻き返しのチャンスと
映るようだ。13年の大統領選でロハニ氏らと争った
ガリバフ・テヘラン市長も「地下鉄の導入を進めたいが、
政府が予算を出さない」と批判を強める。
ロハニ氏は「関心の高まりはもっともだ」と述べ、緊急対策を
発表。汚染のひどい日は、車のナンバー規制を中心部
から市全域に拡大すると決めた。
■規制逃れ、ナンバー隠し横行
これに対し、市民は規制逃れに走った。
テヘラン南部の幹線道路と交差する側道。入ってきた車の
5台に1台ほどが道の真ん中で停車する。
車から降りてきた人は、周囲をきょろきょろと見回しながら
車体後部のナンバープレートに細工をし、再び走り去る。
ここは監視カメラの設置場所だ。排ガス抑制のため、祝日の
金曜日を除き、月、水、土曜はナンバーの末尾が偶数、
他の曜日は奇数の車しか走れない。 警察は市内110カ所で、
車の後ろ姿を常時撮影する。罰金は違反1回で20万イランリアル
(実勢レートで約670円)。
平均月収が約4万円とされるイランでは少なくない額だ。
そのため、ナンバーをボール紙や毛布で隠す車が続出した。
違反の多さに当局は「罰金を倍にし、悪質な場合は
懲役刑にする」と通達。すると、ひげそりクリームを塗ったり、
同乗者が荷台に乗って足で隠したりする手法が新たに
広がりだした。地元紙によると、「5万リアルでナンバーが
映らないように監視カメラの前を走る」という商売も現れた。
ナンバー隠しをしていた人に話を聞いた。市職員という
男性(35)は「どうしようもないんだ。タクシーは高いうえに、
通勤ラッシュ時はつかまらない」。薬局勤務の男性(37)は
「みんなやってることだよ」と苦笑した。
(テヘラン=神田大介)
コメントです
本文にもありますが、中国、インドに続き、イランも
大気汚染で苦しんでいるようです。
ずいぶん昔ですが、ネパールを訪れたとき、
途上国(注・先進国ではありません)が払い下げた
程度の軽式内燃機関(耕運機等に使われているエンジン)を
再利用したオート三輪や簡易バスが数多く走っているのを
見かけました。
すると、そのような旧式の機械は何の規制も施されて
いないので、街中で有害な排ガスを排出し放題の状態で、
大気汚染はそうとう酷かったのを覚えています。
それに対して、日本国内は環境基準や車検制度、
そして税制などで旧式車の買い替えを促進する政策で、
大気汚染は昔より改善しているようです。