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2016年01月05日

ネオナチ糾弾の歌、22年の時を越え1位に 難民を応援

朝日新聞 2016年1月3日

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シェーネ牧師(左端)の指導を受け、ギターを練習する難民たち
2015年12月、独ラーテノー、玉川透撮影

東西統一後まもない1993年のドイツで、移民を襲うネオナチを
糾弾し、人々の共感を集めた歌があった。
「シュライ・ナハ・リーベ(愛への叫び)」。
この曲が昨秋、22年の時を越えヒットチャート1位に輝く
「奇跡」が起きた。

歌うのは、過激な表現が持ち味の男性3人組ロックバンド
「ディ・エルツテ」。このバンドの研究本を書いた
フランク・ゴイケさん(54)は「愛への叫び」について
「物議を醸すこともあった彼らが、初めて強い政治的な
メッセージを込めた曲」と話す。

曲の中で、荒ぶるネオナチにこう呼びかけた。

おまえの暴力は愛への無言の叫びにすぎない/
おまえの軍靴は愛情を切望する

異例のリバイバルには、「仕掛け人」がいた。

独北部オスナブリュック在住のソフト開発者、
ローランド・タプケンさん(33)。昨年8月末、友人の
結婚パーティーでディ・エルツテの曲が流れたのを聞いて
ひらめいた。「『愛への叫び』を難民への応援歌にできないか」

シリアなどから欧州への難民流入が激化する中、
極右勢力による保護施設襲撃や放火が増えていた。

タプケンさんの提案は、ソーシャルメディアで反響を呼んだ。
友人の音楽教師ゲルハルト・トルゲスさん(46)が
専用ホームページをつくり、CD購 入やラジオへの
リクエストを呼びかけると、支援の輪は急速に広がった。
ディ・エルツテ自身も、曲の収益を難民支援団体に
寄付する考えをサイトで示した。

発表当時でも最高位9位だった曲が、昨年9月には
ドイツの週間ヒットチャートで1位に。独語圏の
オーストリアでも1位、スイスでも上位に入った。
ドイツのチャート集計会社は「これだけ長期間を
経て再び成功した曲は、過去に例がない」と驚いた。

一方、トルゲスさんの元には、極右勢力からと
みられる脅迫の電話やメールが相次いだという。

ドイツは今、岐路に立っている。

あまりの難民の数に、歓迎ムードは下火に。難民に
寛容な姿勢を示したメルケル首相への政治的な圧力も
強まるばかりだ。極右勢力による難民への攻撃や
排斥デモも、やむ気配はない。

歌の面でも変化が起きている。ドイツでは戦後しばらく、
大ヒット曲の多くは英語で歌われてきた。若者たちが
ナチスの台頭を許した親の世代を嫌悪し、自国文化から
距離を置いたことが背景にあるといわれる。

ポピュラー音楽・ビジネス大学(独マンハイム)の
ウード・ダーメン教授は「当時の若者たちは、国や家族から
解放された自由の楽園を求めた。
その象徴が英語の曲だった」と見る。

だが政治・経済両面でドイツの存在感が増す中、
独語の曲がチャート上位を占めるように。2015年6月には
史上初めて上位10曲全てを独語の曲が占めた。
独音楽産業協会のフロリアン・デュリュッケ氏は
「自国の物を愛する欲求が高まっている」と分析する。
ナショナリズムの過度の高揚を警戒する声もある。

それでも、タプケンさんやトルゲスさんが「愛への叫び」
復活に込めた思いは、確かに伝わっている。

昨年12月、難民約700人が身を寄せる独北部ラーテノーの
保護施設。寒空の下、ギターの音が響くと人々に笑みが
こぼれた。中東やアフリカから逃れた十数人が
不慣れな手つきでギターやキーボードを奏でる。

地元の牧師ウォルフ・シェーネさん(53)が呼びかけ、
11月から演奏を教えている。
楽器は地元の住民らが寄付してくれた。

シリア南部シュワイダー出身のシャディル・ナセルさん(24)は
「ドイツ語は勉強中。会話はうまく通じないけど、音楽なら
笑いあえる。早くうまくなりたい」と声を弾ませた。

シェーネ牧師は言った。「将来、難民のバンドを結成し、
みんなで『愛への叫び』を演奏します」(ベルリン=玉川透)

     ◇

〈欧州への難民流入〉 紛争地シリアやアフガニスタン
などから欧州に渡る難民が、2015年に急増。
国連難民高等弁務官事務所などによると、同年だけで
100万人を超えた。多くは受け入れに積極的なドイツなどを
目指している。欧州連合(EU)は加盟国に受け入れの
割り当て義務化を決めたが、東欧など一部の国は反発している。


コメントです
旧東欧の崩壊も、西側から流れてくる、音楽にのせた
自由の叫びが引き金になったといわれています。
また、音楽を媒介に、しばしば大規模なチャリティーの
呼びかけが行われることがあります。
もちろん、自然発生ではなく、仕掛け人がいてのことですが、
それがうまく働けば、得られる成果は莫大なものです。




posted by salsaseoul at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州
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