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2015年12月20日

市民参加6年半、初執行 裁判員判決による死刑

朝日新聞 2015年12月19日


法務省は18日、2人の死刑を執行した。
うち1人は、2009年に川崎市のアパートで3人を
殺害した殺人の罪で、11年に横浜地裁の裁判員裁判で
判決を受けて確定した津田寿美年死刑囚(63)。
09年5月に裁判員制度が始まって以来、市民が判断に
加わった死刑囚に刑が執行されたのは初めて。
東京拘置所で執行された。

裁判員裁判で死刑判決を受けたのは26人、
このうち確定者は今回の執行前までに7人。
津田死刑囚は2番目に早く確定していた。

死刑執行による裁判員の精神的な重圧は、制度設計時から
指摘されていた。だが、法務省幹部は「制度が定着する中、

執行を避けていては、逆に市民に失礼だと考えた」と話す。

では、誰から執行するのか。最初の確定者は共犯者が逃亡中で、
執行が難しかった。津田死刑囚は公判で「命で償う」と語り、

弁護人が控訴したものの、自ら取り下げて確定していた。

省内には「プロの裁判官が裁く高裁、最高裁の審理も経て
確定したケースが望ましい」という声もあったが、
「自ら控訴を取り下げたことは、罪の内容に疑いがないことを
意味する」。ある幹部はこう説明した。

今回の執行で、収容中の確定死刑囚は126人。
うち90人余りが再審請求中だ。請求中は執行しないのが
慣例となっており、津田死刑囚が請求していなかったことも、
執行に踏み切った理由の一つとみられる。

14年までの10年間に執行された死刑囚について、確定から
執行までの平均期間をみると約5年5カ月。津田死刑囚は
確定から4年5カ月が経過していた。

     ◇

法務省は18日、裁判官のみで判決を出した
若林一行死刑囚(39)の刑も執行した。06年、岩手県洋野町の
上野紀子さん(当時52)と次女友紀さん(同24)を絞殺。
現金2万2千円などを奪って遺体を山林に遺棄したとして、
強盗殺人などの罪で12年に確定していた。

 ■一生背負う・苦しみ消えない 裁判員経験者ら

津田死刑囚の裁判で裁判員を務めた20代男性は、判決から
約2年後の取材で、死刑執行のニュースのたび、誰が
執行されたのか気が気でない日々を送っていると語った。
「自分の出した結論で一人の命を絶つわけだから気が重い。
このつらさは、裁判員にしか分からない」とも話していた。

この日の執行を死刑判決にかかわった各地の裁判員経験者は
どう感じたのか。

埼玉県の 50代女性は「いつかこうした日が来るとは思っていた。
ついに来たかという感じ」と話す。「国民の判断によって一人の命が
なくなったわけで、改めて責任は 重大だと思う」。
自分が担当した事件を、今でも思い出す。今月、死刑が確定する
ことを知った直後も寺に行って被害者に報告した。
「私は一生背負っていく覚悟でいる」

宮崎市の会社員男性(44)は裁判官が判決を告げるときには
体や手が震え、自宅に帰っても涙が止まらなかった。
「死刑が執行されれば、裁判員の自分たちが殺すようなもの。
その苦しみは一生消えない。二度と裁判員はやりたくない」

愛知県小牧市の20代男性は裁判員になるまで、法律が
認める以上、死刑はあっていいと考えていた。
今は揺れている。
「罪と向き合い、一生背負い、被害者や遺族に償う。
苦しみながらでも、生きた方がいいと思うことがある」

 ■<解説>心のケアなお課題

司法に市民感覚を入れようと導入された裁判員制度は、
死刑で市民に重い負担を負わせるという懸念が当初から
あった。開始3年後に見直しが検討された際には、経験者の
意見などから、死刑求刑事件を対象から外すことも
議論されたが、「重大事件こそ市民の目で」と維持された。
今年3月までに裁判員を務めた人は約5万8千人にのぼり、
法務省は今回、一歩を踏み出した。
だが、その一方で裁判員候補者のうち6割が辞退しており、
負担の軽減や心のケアといった課題はなお未解決だ。

また、悩み抜いた選択が現実となった今回の執行でも、
従来通り執行の詳細は明らかにされていない。刑場は
民主党政権下で一度、公開されたのみだ。「究極の刑」に
向き合う市民に、情報公開は不可欠だ。(金子元希)

 ■<考論>負担と向き合う必要

裁判員制度の 設計に関わった元検事総長の松尾邦弘
弁護士の話 設計時、死刑に関わる裁判員の負担は
大きなポイントとして議論されたが、この制度は
「司法への国民参加」 の柱で、死刑を抜きにすることは
考えられなかった。開始から時間が経ち、死刑に関わることも
含めて国民は受け入れてくれている。
来るべき時が自然と来たということだろう。執行で制度が
揺らぐことはないが、裁判員の負担という課題には、
検察、裁判所ともに、今後も向き合っていかなければならない。

 ■<考論> 死刑制度考えるとき

元東京高裁判事の木谷明弁護士の話 今回の執行を、
死刑制度について国民に本気で考えてもらう機会と
捉えるべきだろう。世論調査では死刑存置論が依然と
して多数だが、国民が死刑の可否を判断するための
情報は、あまりにも少ないのが現状だ。執行の順序、
再審請求の状況、死刑囚の処遇、世界の潮流といった
情報を知らずに的確な判断はできないだろう。
だれもが裁判員になる可能性がある。無期懲役や
終身刑のあり方も含めて、議論していく必要がある。



コメントです
市民参加による裁判員制度が始まって、
市民が判断に加わった死刑囚に刑が初めて
執行されました。
重い内容ですが、記録記事として掲載しておきます。


posted by salsaseoul at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会
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