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2015年11月01日

1冊6万円謎の本[亞書(あしょ)]、国会図書館に「代償」136万円

朝日新聞 2015年11月1日

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ギリシャ文字などを無作為に打ち込んだ1冊6万4800円(税込み)の
シリーズ本が、国立国会図書館に78巻納本された。
納本された本の定価の一部などを発行者に支払う仕組みがあるため、
すでに42冊分の136万円余が発行者側に支払われている。
納本は法律で義務づけられているが、ネットでは疑問の声が上がり、
同館も支払いが適正だったのか調査を始めた。

問題の本は、りすの書房(東京都墨田区)が発売した「亞書(あしょ)」。
同社によると2月にネット書店「アマゾン」で販売を開始。
112巻まで作成し、最終的には132巻まで出す予定という。
A5サイズで480ページのハードカバー。各ページとも縦12センチ、
横9センチの枠内にギリシャ文字やローマ字が並び、ページ数は
振られておらず、全く同じ内容のページもある。国会図書館へは
3月ごろから10月にかけて78巻までが1部ずつ納本された。

同館は納本された本の定価の5割と送料を「代償金」として
発行者に支払うことが国立国会図書館法 などで定められている。

2014年度は、約15万点に対し約3億9千万円の代償金を支払った。
「亞書」は目録作成中のため館内での閲覧はまだできないが、
同館のホームページの蔵書リストに載ると、ネットで
「代償金目当てでは」と炎上。りすの書房は10月26日以降、
アマゾンでの販売を取りやめている。

同社は2013年3月に設立され、代表取締役の男性(26)が
1人で運営。男性は朝日新聞の取材に対し「自分が即興的に
パソコンでギリシャ文字を打ったもので、意味はない。
本そのものが立体作品としての美術品とか工芸品。
長年温めてきた構想だった」と説明。
題名も「ひらめいて付けた。意味はない」。
著者のアレクサンドル・ミャスコフスキーは「架空の人物で、
作品のイメージとして記載した」と話した。

各巻20部を自らレーザープリンターで印刷し、装丁。
「1冊の作成に3万円強かかっているため、1冊あたりの利益は

アマゾンへの支払いを差し引くと6千円」で、価格は妥当だとし、
「まだ1冊も売れていないが、代償金目当てではない」と語った。

納本したのは「出版した者の義務だ」としたうえで、
「2年ほど前に10万円の楽譜を作ったが、『高くて買えないから
国会図書館に納本してほしい』と匿名の客から電話があり、
それ以降、納本を続けている」と話した。

出版物の納本は国立国会図書館法で発行者に義務づけられている。
広く行きわたらせること(頒布)を目的に、相当部数作成された
資料が対象で、チラシや手帳といった簡易なものは対象外だ。

同館によると、納本は知的活動の記録を後世に伝えるための
制度で、「図書館側が内容に踏み込んで納本の可否を
判断することはない。『頒布』や『相当部数』の基準は
ケース・バイ・ケース」という。今回は、ネット書店で売られて
いたことや装丁がハードカバーで簡易でないことなどから、
納本すべき出版物 としての要件を満たすと判断したと説明する。

ただ、ネットでの炎上を受け、同館は10月28日、男性に連絡。
返却に向け協議したいと伝えたという。

これまでこうしたトラブルの例は把握しておらず、
「頒布の実態があったのか調査する。ネットで注文を受けて
製作するオ
ンデマンドという新たな本の作り方について、
価格の元となる費用算定の経験値が国会図書館としても
十分でなかった」という。
男性は「(国会図書館から返本された場合は)返金する」と
話している。(塩原賢、竹内誠人)

田村俊作・慶応大学名 誉教授(図書館情報学)の話 
「納本制度は文化や情報の自由に貢献しようという、発行者側と
国会図書館との合意が前提だ。
本の内容から納本の適否を判断することは、検閲につながるので
やってはならないが、米英などには代償金の仕組みはない。
想定外のことだが、この仕組みを悪用しようとすれば、
できてしまいそうなことが明らかになった」

関連記事です。
「ネットの指摘はいわれなき中傷」 「亞書」制作の男性
「亞書」を制作した、りすの書房代表取締役の男性(26)との
一問一答は次の通り。

――ギリシャ語のわかる人が見ても、まったく意味がわからないと
言っていますが、どういう内容なのですか。

自分で書きましたが、パソコンでギリシャ文字をランダムに即興的に
打ち込んだものなので、意味はないです。メッセージも特にない。
デザインですね。題名も意味はなく、ひらめいて自分で付けました。
作者は自分のペンネームであり、作品のイメージで名づけた架空の
人物です。

 ――全く同じ内容のページもありますが?

 同じ部分が入っているところは意図的にしています。
 面白みを出すためです。

 ――出版の意図は?

112巻まで作りましたが、132巻まで出したいと思っています。
しかし本当は(分冊せずに)全部で1冊の分厚い本にしたかったんです。
美術作品 や工芸作品という感じですね。1冊1冊それ自体が、
本というより立体作品。昨年12月から制作を始めましたが、
構想は学生の頃からずっと温めていたもので す。

 ――誰に読んでもらおうとしているのですか。

 分かってくれる人が見てくれればいいです。

 ――どうやって作ったのですか。

ページのかがりもカバーも、取り寄せた材料で自分で作りました。
印刷はレーザープリンターでやりました。

 ――値段は高すぎませんか。

1巻につき20部作っていますが、1冊あたり3万円強かかって
います。アマゾンで売れたとしても、制作費を差し引けば、
利益は6千円しか残りません。

 ――1冊3万円とすると、制作費はすでに6千万円以上
かかった計算になります。資金はどうしたんですか。

自分の貯金だけでは足りず、迷惑をかけましたが両親から
援助してもらいました。

 ――売れていますか。

アマゾンで96巻まで発売しましたが、1冊も売れていません。
高額の本は他にも出していて、聖書をアイスランド語に
翻訳した7万円の本が1冊売れました。

 ――「亞書」の販売をやめたのはどうしてですか。

ネットで騒ぎになり、レビューに誹謗(ひぼう)中傷が
たくさん来たから、10月26日にやめました。
同時に会社も臨時休業にするとホームページで発表しました。

 ――国会図書館に納本した経緯は?

義務ですから。2年くらいまえに、10万円の楽譜をつくったら、
匿名の電話があって、高くて買えないから納本してほしいと
言われた。その時から納本をしています。

 ――ネットでは「代償金目当てではないか」との疑問の
声も出ています。

ネットでの指摘はいわれなき中傷です。
代償金目当てではありません。代償金は原価に相当するものなので、
もらえるならばありがたいです。
(もし仮にすべて返本されて返金するように言われたら)
そのときは返金します。国会図書館から電話があり、返却について
話がありました。「分かりました」と答えましたが、
「本自体が芸術なんです」と伝えました。

 ――これまでに何点くらい本を出しているのですか。

今回、「亞書」を発行した「ユダ書院」も含め四つのレーベルから
200点以上出していると思います。正確な数字は覚えていないのですが。

 ――出版社としての売り上げは?

年商で、一昨年が70万円くらい、昨年が420万円、今年は
これまでに300万円です。出版だけではもうからないので、
印刷を請け負ったり、ネットに商品のレビューを書いたりしています。
(聞き手・塩原賢、竹内誠人)


コメントです
弊社(紫陽花文庫(株))でも法令に基づいて、
国立国会図書館に納書しています。
弊社の場合は、すべて寄贈扱いでお願いして
いるので、代償金は受け取っていません。
国立国会図書館できちんと管理、保管して
いただけるだけで、ありがたいと思っています。
また、納書制度に関しても、上記理由から
感謝すべき法律だと思っています。

さて、今日の話題についてですが、日本も
今回の事例をきっかけに、米英に見習って
代償金について見直し検討をしたほうが
いいでしょう。
少し想像力を働かして考えればわかることですが、
国立国会図書館が納書された書物をきちんと
保管する費用は、おそらく代償金として支払った
金額と比べて多額なもののはずです。
(原則永久保存の為)
代償金を廃止すれば、少しでも保存費用の足しに
なるはずです。



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posted by salsaseoul at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会
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