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2015年10月12日

保護された姉妹、1カ月ぶり入浴 親子が月4万円で生活

朝日新聞 2015年10月10日

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6畳ほどの面談室に、すえた臭いが広がった。

2年前の9月。関東地方にあるDV被害者のシェルターの職員は、
39歳の母親と7歳の長女、4歳の次女を迎えた。

差し出したオレンジジュースを、姉妹は一気に飲み干した。
白とピンクの長袖シャツはあかで灰色に変わり、頭には
シラミがいた。

一家の手荷物は、ランドセルとポリ袋二つ。サイズの合わない
シャツ、穴の開いた靴下や下着が、汚れたまま詰め込まれていた。

風呂は約1カ月ぶりだという。翌日から一緒に入り、姉妹の
髪をとかし、数百匹のシラミをつぶした。

「お姉ちゃん、もうこれでいじめられなくなるね」。
次女がそう言うのを何度も聞いた。

いま、3人は母子生活支援施設で暮らし、自立を模索する。

保護されるまでの暮らしぶりを、母親は振り返って語る。

夫はトラック運転手や倉庫管理など10年で10回以上転職した。
年収は200万円前後。家賃や光熱費以外は酒やたばこに消え、
自分の事務職の給料などでやりくりしていた。

9年前に長女が生まれてから、「頭が悪い」「ダメな女」などと
毎日なじられた。洗濯物がたためない。
ご飯を作りながら、子どもに気を配れない。
酒が入ると、胸ぐらをつかまれ殴られた。
後に分かることだが、母親には二つのことが同時にできない
「広汎(こうはん)性発達障害」などがあった。

6年前に次女が生まれた後、「能力不足」との理由で解雇された。
次の職が見つからず、家計は悪化。夫の失業で約2年間は
生活保護も受けたが、夫が再就職すると打ち切られた。
夫は給料を家計に入れず、月約4万円で生活した。
長女が小1になったころから電気、ガス、水道のどれかが
止まるようになった。

母(41)と姉妹の生活は、夫のDVや失業などでより
一層苦しくなっていった。

朝食はパン1枚。夕食はご飯と冷凍ギョーザか納豆。
夏休みの学童保育のお弁当は、おにぎり1個だった。

「おなか痛い。今日は休む」。嫌がる長女を、集団登校の
待ち合わせ場所に引っ張っていく日も増えた。
そんな日は保健室登校になった。理由を聞くと
「くさい、毎日同じ服って言われた」と泣かれた。

「シラミがいるみたいよ。駆除してあげて」。
長女が小2になった夏、同級生の母親から指摘され、
薬局に走った。
薬は2千円。手が出なかった。

夫の叱責(しっせき)は続き、うつ状態になった。
警察署に通報したのは夫だった。
「子どもの前で妻にDVしてしまう。彼女たちを保護してください」。
シェルターにつながり、夫とは別れた。

「つらいことなんてなかったよ。学校もおうちも楽しかったんだよ」。
そんな長女の言葉を、母は自分への気遣いだと推し量る。

母は母子生活支援施設の職員から勧められ、精神障害者
保健福祉手帳を取得した。
生きづらさの訳がわかり、自分を責める気持ちは薄らいだ。
長女からいろいろ要求されても、「一つずつ言ってね」と
言えるようになった。

カレーライスや肉うどん。料理は苦手だが、職員と一緒に
夕食を作り、一家3人で食卓を囲むようになった。
ときどき姉妹が職員に「味見して」と料理 を差し入れる。
「よくできたね」と褒められると、跳びはねて喜んだ。
「ここがいい。職員さんや他の子もいるから」と長女は言う。

子どもが18歳まで施設にいられるのが原則だが、利用者の
約6割が2年未満で退所する。生活保護を受け始める人が多く、
施設費用との二重措置期間を短くしたい行政の思惑もある。

母も生活保護を受けながら週3回、障害者の作業所で働く。
施設に来て2年。退所後の生活は描けていない。
(山内深紗子)

■専門家「貧困から抜け出せない連鎖が広がっている」

子どもの貧困に詳しい首都大学東京の阿部彩教授に
現状や課題を聞いた。

親の経済状況でいや応なく不利を背負った子どもが、大人に
なっても貧困から抜け出せない連鎖が広がっている。
低所得の背景にある非正規労働は拡大している。

親自身が抱える困難もある。
労働政策研究・研修機構の調査では、子ども時代に、
親の生活保護受給や離婚、虐待、父との死別を
一つでも
経験した母親は、未経験の母親に比べて
貧困率が
約2〜3倍だった。
母子世帯の母親のうつ傾向も、配偶者のいる
母親の2〜3倍だ。

病気やうつ、失職、離婚などが一つでも起きると、
今そうでない人も貧困になりうる。この母子のように、
要因が複数になると深刻な事態に陥りやすい。

子どもは、人権の剝奪(はくだつ)と言わざるを得ない
ほどの衣食住の不足、不健康、低学力、孤立やいじめ、
非行、不登校、自尊心の低下などのリスクにさらされる。
日本ではこうした問題について、何十年も親の資質や
しつけなどの面から論じ、背後にある貧困をきちんと
直視してこなかった。

将来の社会の担い手である子どもの貧困を放置すると、
社会的損失になる。
(注:これはあくまでも副産物的な損失
   第一に、子供の尊厳・尊重を確保するべき)
児童扶養手当の拡充など経済的支援は必須だ。
そのうえで、教育や医療面での支援など、親を含めた
包括的対策が求められている。(中塚久美子)

     ◇

 《子どもの貧困》 
厚生労働省によると、日本の子どもの貧困率は
16・3%(2014年発表)で、過去最高を更新している。
実数換算すると約328万人。貧困率と は、世帯収入から
国民一人ひとりの所得を子どもを含めて試算し順に並べた
とき、まん中の人の所得の半分に届かない人の割合。
ひとり親など大人が1人の家庭に限ると54・6%と、
先進国でも最悪の水準に達する。
中でも深刻なのは母子世帯だ。
母子世帯になる原因の8割は離婚で、養育費が払われて
いるのは約2割。8割の母親は働いているが、同居親族も
含めた年間世帯収入は平均291万円(10年)。

コメントです
貧困世帯で子供の生活が窮地している話題です。
少し掲示板等を見てみましたが、上記にあるように
将来の社会の担い手である子どもの貧困を放置すると、社会的損失になる

という意見が数多くありました。
確かに正論ですが、それ以前に、もっとシンプルに
日本国憲法で保障されている基本的人権を
ベースに貧困対策を強化してほしいですね。

ただ、現状ではその対策のひとつの「生活保護」の
審査が十分でないケースもよくあるようで、
場合によっては就労するより高額な支給額例も
あり、そうなると、支給世帯主は生活保護費と
引き替えに就労意欲を失います。



posted by salsaseoul at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会
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