米国立保健研究所(NIH)は、がん細胞の遺伝子を解析して、
効き目の高い抗がん剤を選ぶ新しい治療法の開発に乗り出す。
胃や肺など臓器ごとに開発された抗がん剤を、がんの原因と
なる遺伝子異常の組み合わせに応じて処方する。
患者に最適な抗がん剤を処方できるようになるとともに、現在、
臓器別に行われている治療を根本的に変える可能性がある。
NIH傘下の米国立がん研究所(NCI)を拠点に、標準的な
治療で使われる抗がん剤が効かなかったがん患者
約3千人からがん細胞を採取、がんに関係する143個の
遺伝子の4千カ所以上の部分を網羅的に解析する。
見つかった遺伝子異常の組み合わせに対応して別の
抗がん剤を投与する臨床試験を行う。患者の募集を近く始める。
抗がん剤では現在、たんぱく質の異常な働きを阻害する
「分子標的薬」が次々登場している。通常、がんのできる
臓器ごとに開発・承認されるが、原因となる遺伝子異常が
同じなら、異なる臓器のがんでも効く可能性がある。
例えば乳がん用に開発された分子標的薬トラスツズマブは
HER2遺伝子の異常を標的にしているが、胃がんや
肺がんでも同じ遺伝子の異常が原因になっている
ケースがあることがわかっている。
臨床試験では、製薬企業の協力のもと20種以上の
抗がん剤やその組み合わせを試す。NCI所長代理の
ダグラス・ローウィー博士は声明で「がん治療を変える
可能性がある」などと述べた。将来は、事前に遺伝子
異常を調べて最適な抗がん剤を選べる可能性があるという。
(ワシントン=小林哲)
■日本も解析、比較可能に
日本でも米国と同じく143の遺伝子の4千カ所以上を
解析して抗がん剤の選択につなげるプロジェクトが
今年春に始まった。国立がん研究センターが全国の
医療機関や製薬企業と提携して進める「スクラムジャパン」で、
2年間で肺がん消化器がん患者4500人が参加を予定する。
米国とは違って臨床試験が同時に設定されていないため、
結果をもとに患者に効果がある可能性のある抗がん剤を
使った臨床試験があれば担当医に伝える。
参加条件を満たせば投与を受けられる可能性がある。
今回のプロジェクトで1人分の解析費用は約40万〜50万円。
参加する13の製薬会社が負担する。日米で同じ種類の
遺伝子異常を調べているためデータが比較できる利点もある。
国立がん研究センターの土原一哉トランスレーショナル
リサーチ分野長は「患者の遺伝情報と効き目や副作用などの
臨床情報のデータが蓄積すれば、新たな抗がん剤開発にも
役立つ」という。
将来的には、臓器別に分類されている現在のがんの概念が、
遺伝子異常のパターンに応じた分類に変わる可能性もある。
(瀬川茂子)
平均寿命、女性3年連続世界一…男性は3位タイ
日本人の平均寿命が女性86・83歳、男性80・50歳で、
いずれも過去最高を更新したと発表した。
女性は前年より0・22歳延び、3年連続で長寿世界一。
男性も0・29歳延び、世界3位タイとなった。
平均寿命は、その年に生まれた0歳児が平均何歳まで
生きるかを 予測した数値。海外の最新統計と比べると、
女性は香港(86・75歳)を上回り、3年連続の世界第1位。
男性のトップは香港(81・17歳)、2位はアイ スランド
(80・8歳)で、日本はシンガポールやスイスと並んで
3位だった。
厚労省によると、平均寿命が延びたのは、女性は
心疾患や脳血管疾患で、男性はがんや肺炎で、亡くなる人が
減ったり、亡くなる時期が遅くなったりしたことが要因とみられる。
がん、心疾患、脳血管疾患の「3大疾患」で亡くなる確率は、
男性は52・2%(前年比0・22ポイント減)、
女性は47・8%(前年比0・66ポイント減)だった。
コメントです。
がん治療の最新記事です。
最近よく聞く、
「日本でがんにかかる人は3人に1人… 」。
このように、昔とくらべて「がん」という病気が
特別なものでなくなった今、治療法がどんどん
進歩していくのは頼もしいかぎりです。
参考までに、2015年版・日本の平均寿命に
ついての記事も掲載しました。
平均寿命が延びた分、できるだけ自己努力で
健康維持に努め、なるべく公的機関
(医療・福祉介護等)のお世話にならないで
毎日を過ごせたらいいですね。