決着がつかず裁判で争う人もいる。
父や母の「最後の意思」はどこにあったのか。
2007年に亡くなった母の遺言を目にしたときのショックを、
神奈川県の60代男性は忘れられない。息子である男性と妻、
孫と長年暮らした家も、預貯金もすべて、母の妹(おば)に
遺贈する内容だった。
実母を早く亡くした男性は、子どもの頃から実母の姉に
育てられた。授業参観や遠足にも来てくれた。
「私にとっては実の母と同じ」。男性は12年前に、正式に
養子となった。
母とおばは親しく親類づきあいをしていた。とはいえ全財産を
譲るのが母の真意とは――。男性はおばを相手取り、
横浜地裁に訴訟を起こした。
東京高裁は10年7月、母は認知症だったとして
遺言を無効とした。
判決などによると、遺言作成までの経緯はこうだ。
男性は母と30年間同居し、妻が母を介護した。
母は04年ごろから認知症が疑われる症状が進んだ。
知り合いの顔がわからない。昼夜逆転し、深夜にテレビの
音量を上げる。現金や通帳の管理が難しくなり、
「お金がなくなった」と訴える。
05年3月には認知症と診断されていた。
男性が知らぬ間に遺言が作られたのは、母が数カ月間、
施設に入っていた時。05年12月、当時87歳の母とおばは、
司法書士と一緒に公証役場に行った。
「不動産、預貯金その他一切の財産を○○(おばの名)に
遺贈する」。遺言にはそう明記されている。
だが判決は、母がはっきり述べた内容を遺言にしたからと
いって、息子たちが暮らす家までおばに渡すという重大性を
理解して、遺言を残す能力があっ たとはいえないと
結論づけた。母は遺言時、「(男性夫婦に)財産をやらない」とも
おば側に語っていた。こうした発言も「被害妄想の一つの表れ」と
判断した。
男性は「判断能力が落ちた母が翻弄(ほんろう)された」と憤る。
おば側が引き出した預貯金の返還を求めて別の裁判も
起こした。昨年末、約2千万円の返還命令は出たが、
おば側の経済事情から手元には戻っていない。
■作成時の症状、証拠集めに奔走
遺言時に認知症だったのかどうか、どの程度の症状
だったのか、死後に判断するのは容易ではない。
東京都のケアマネジャーの女性(60代)は、90歳で
亡くなった父の遺言の無効を求め、姉を相手に訴訟を
起こした。遺言には不動産など数千万円相当の遺産を
すべて姉に相続させるとあった。
70歳まで会社勤めを続けた父。
まじめを絵に描いたような人だった。だが女性によると、
晩年は、突然意味不明なことをしゃべったり、街で徘徊
(はいかい)して警察に保護されたりした。遺書を書いた
ときは有料老人ホームに入居していたという。
父が遺言を書けたとは思えず、仕事の合間をぬって
証拠集めに奔走した。まず確認したのは筆跡。父が書いた
銀行の振込用紙などを見つけ、遺言は「本人の筆跡でない」との
鑑定を得た。病院や介護施設にも文書で請求し、
脳のMRI画像や介護記録なども手に入れた。
資料は500枚以上に。筆跡や医師の鑑定に
約100万円かかるなど、収入の多くを費やした。
裁判で「遺言書の存在が不可解」などとする医師の
鑑定書を提出すると、姉側の態度が一転。
昨年12月、姉妹で折半する内容で和解した。
父の死から4年半が過ぎていた。
姉妹は絶縁状態のまま。
「父が元気な間に相続について話しておけば、
こんなことにならなかった」との思いが女性の胸に残る。
◇
〈相続と遺言〉 民法の規定では、例えば配偶者と子が
相続人の場合は、遺産の半分を配偶者、残り半分を子が
受け継ぐ。遺言があると、その内容に基づく遺産分割が
優先される。「自筆証書遺言」は全文と日付、氏名を自分で
書き、押印する。死後、家裁で相続人らが立ち会って
確認する「検認」手続きが必要。「公正証書遺言」は
証人2人以上が立ち会い、遺言者の口述を公証人が
文書にする。複数の遺言がある場合は、種類によらず
新しい遺言が優先される。
■健康なうちに協議を
認知症であっても残した遺言がすべて無効になるわけ
ではない。症状が軽い場合や症状に波がある場合などで
遺言能力が認められることがある。遺言内容の複雑さや
結果の重大さなどによっても判断は変わる。
相続に詳しい弁護士らによると、トラブルを防ぐため、
遺言時に心身の状態を医師に診察してもらう例もあるという。
争いを避ける基本は、何より家族の事前の話し合いだ。
「心身が健康なうちに、遺産分割に ついて家族の間で
共通認識をもつことが大事」と小堀球美子弁護士は言う。
遺産の話は、受け取る側からはしにくい。
「盆や正月など家族が集まる時 に親から話をしてみては」
と提案。家族の理解を得たうえで、生前に贈与する方法もある。
(沼田千賀子、坂井浩和、佐藤実千秋)
コメントです。
今日の話題は、故人が生前元気な時は、
家族間であまり話題にしたくない内容ですが、
当然先では避けられないことです。
また、事前にきちんと話をしておいても、
揉めている事例もたくさんあるようです。
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