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2015年02月07日

(世界発2015)サンバの国、リンチの闇 ブラジル、「犯罪」に集団暴行

2015年2月6日 朝日新聞

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南米初の五輪を来年に控えた世界第7位の経済大国ブラジルで、
「リンチ」が深刻な社会問題となっている。司法の手続きを経ずに、
市民が路上などで「犯罪者」に集団暴行を加え、最後には殺害して
しまうケースも少なくない。陽気な「サンバの国」のイメージとほど
遠い陰惨な暴力が、なぜ繰り返されるのか。その実態と背景を探った。

 ■誘拐犯と誤認、主婦を撲殺

ブラジル南東部の都市グアルジャ。この町で昨年5月、ブラジル
社会を震撼(しんかん)させる事件が起こった。33歳の
主婦ファビアニ・マリア・デジェズスさんが突然、地域の住民から
殴る蹴るの激しい暴行を受け、2日後に死亡したのだ。

きっかけは、その1カ月ほど前からソーシャルメディア上に流れた
「この地域で子供を誘拐している女がいる」というデマだった。

ファビアニさんはその日、路上で男の子にバナナをあげた。
それを見た住民が、ファビアニさんを「誘拐犯」と勘違いした。

近くに住む女性(39)は、男たちがファビアニさんの手と足を
ひもでしばり、「殺せ」と叫びながら運んでいく様子を見たという。
「200人以上が取り囲んでいた。彼女は鼻が折れ、体から血を
流し、何が起こったのかもわからない様子だった」と振り返る。

ファビアニさんは熱心なカトリック教徒で、教会に置き忘れた聖書を
取りに行った帰り道だった。パトカーや救急車が駆けつけたが
住民に阻まれ、すぐに救出できなかったという。

夫のジャイルソン・アルベス・ダスネベスさん(40)は、

「こんなことが起こるとは想像もしなかった。13歳と1歳の娘を
持つ優しい母親で、誘拐犯のわけがない。狂っている」と唇をかむ。

これまでに、殺人の疑いで住民5人が逮捕された。
めいのアンドレッサ・デオリベイラさん(24)は「もっとたくさんの住民
が暴行に加わっていた。この国は、法律がないのと一緒だ」と憤る。

 ■強盗未遂、裸でさらす

ブラジルでは凄惨(せいさん)なリンチが後を絶たない。
最も多いのは、窃盗や強姦(ごうかん)などの容疑者が、その場で
住民らに取り押さえられ暴行を受けるケースだ。

リオデジャネイロで学校を経営するイボニ・ベゼハ・デメロさん(67)は
昨年1月の夜、市内の路上で、街灯の柱に裸のまま鎖で
縛り付けられた15歳の少年を見つけ、救急車を呼んだ。
少年は体中を殴られ、耳の一部がちぎられていた。

通行人に強盗をしようとしたとして、30人ほどの若者から袋だたきに
されたという。イボニさんは「悪いことをしたら、その場でリンチしても
いいのか。若者たちは正しいことをしたつもりでも、実に危険な
行為だ」と語る。

イボニさんはその後の一部の市民の反応にも驚いている。
少年を助けたことをソーシャルメディア上で書くと、
「お前が縛られた方がいい」「殺してやる」といった書き込みが
相次ぎ、家にまで脅迫電話がかかってきた。イボニさんは
「社会に怒りや不満が満ちている。簡単に殺人やリンチが
起こりかねない危険な状況だ」と嘆く。

 ■低い処罰率、司法へ不満

リンチの問題に詳しいサンパウロ大学・暴力研究所(NEV)の
アリアジニ・ナタウ氏は「市民が暴力を振るう背景には、恐れや
不安だけでなく、犯人が逮捕されなかったり、十分な刑罰を
受けなかったりする警察や司法への不満がある」と指摘する。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)のまとめでは、2012年の
ブラジルの殺人発生率は人口10万人あたり25・2人で、
先進国や新興経済国で構成する主要20カ国・地域(G20)の
中でも南アフリカに次いで2番目に多い。

一方で、ブラジル犯罪学協会(ABC)によると、同国で殺人犯が
逮捕され処罰される割合は、全体の5〜8%に過ぎない。
米国の65%、イギリスの90%、フランスの80%などと
比べ、低さが際だっている。

ナタウ氏は「国が処罰できないから、自分たちで手を下す。
悪者は排除してもよいという人権意識の欠如が、その状況に
拍車を掛けている」と言う。

NEVの統計では、1980〜2006年に報道された同国内の
リンチ事件は1179件。ただ、報道されるのは都市部で
起こった事件に集中しており、実際にはこれよりも
はるかに多いとみられている。

ナタウ氏によると、リンチは米国や欧州諸国ではあまり
見られない一方で、アフリカ諸国やラテンアメリカの一部の
国でも起こっている。地元メディアは「過去60年間で100万人の
ブラジル人が何らかの形でリンチに加わった」とする専門家の
話まで紹介している。

80年代には泥棒がリンチの対象になることが多かったが、
その後は殺人や強姦などにも広がり、現在では交通事故を
起こした人が、住民や親族からリンチに遭うケースも珍しくない。
最近は、発生件数が増加傾向にあるとみられている。

ブラジル社会でじわりと広がる不満が、背景になっている
可能性もある。ブラジルは2010年ごろまでは高成長を
続けていたが、その後は成長率が年1〜2%程度に
落ち込んだ。物価上昇率は6%前後で高止まりし、
いらだつ市民は少なくない。

「問題は、リンチに加わる人が正義を実行していると
信じていることだ」とナタウ氏は言う。
「リンチは憎しみによる報復であって、正義とは違うことを
よく理解すべきだ」(サンパウロ=田村剛)

コメントです

古代ローマ人は、闘技や残酷な処刑を娯楽としていたと
聞いたことがあります。
また、現在のことですが、一部の共産国では、やはり処刑を
見せしめと称して、暗黙に娯楽としている報告もあります。

さて、今日はブラジルの私設報復(リンチ・私刑)の話題ですが、
現地では、明らかに正義の名を借りた娯楽化としています。

経済発展もいいですが、もう少し法の整備を含めた社会の
インフラをきちんと機能するようにしないと、いつまでたっても
先進国とは一線を引かれてしまいます。


posted by salsaseoul at 02:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 中南米
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