労働力不足で社会は崩壊、それでも恐ろしい疫病に「恩恵」はあった
またたく間に世界を大きく変えてしまった新型コロナウイルス感染症。
わたしたちの暮らしや社会が今後どうなるのか心配な人は多いだろう。
犯人がいずれにせよ、交易路を介して、
最初に感染が広まったのは大きな商業都市だった。
そこから近隣の町や村へと放散し、
さらに田舎へと広がった。
中世の主な巡礼路も黒死病を運び、
各地の聖地は、地域内、国内、国家間の
伝染の中心地になった。
ペスト菌が人々の家庭に忍び込むと、
16〜23日後になってようやく発症し、
その3〜5日後には患者が死亡する。
コミュニティーが危険に気づくのは
さらに1週間後で、その頃にはもう手遅れだ。
ペスト菌は患者のリンパ節に移行し、
腫れ上がらせる。
患者は嘔吐し、頭痛に苦しみ、高熱に
よりガタガタと震え、せん妄状態になる。
当時の町では「すぐに逃げろ、急いで
遠くに行け、戻るのはあとにするほど
よい」と言われていた。
この助言にしたがって避難する余裕ある
人々の多くが田舎に逃げたため、
悲惨な結果になった。避難した人々も
すでに感染していたり、感染者と一緒に
旅をしたりしたため、自分たちが
助からなかったばかりか、それまで
感染者がいなかった遠隔地の村に
病気を持ち込むことになってし
まったのだ。 黒死病の犠牲者は
膨大な数に上ったと推定されているが、
具体的な数字については論争がある。
パンデミック前のヨーロッパの
人口は約7500万人だったが、
1347年から1351年までの間に激減
して5000万人になったと見積もられている。
死亡率はもっと高かったと見る研究者もいる。
人口が激減したのは、黒死病に罹患した人々が
死亡しただけでなく、畑や家畜や家族の
世話をする人がいなくなり、広い範囲で
社会が崩壊したからだった。
中世のパンデミックが終わったあとも
小規模な流行は続き、ヨーロッパの人口は
なかなか回復しなかった。
ようやく人口増加が軌道にのってきたのは
16世紀頃だ。
大災害の影響は生活のあらゆる領域に及んだ。
パンデミック後の数十年間は労働力不足に
より賃金が高騰した。かつての肥沃な農地の
多くが牧場になり、丸ごと打ち捨てられる村もあった。
英国だけで1000近い村が消えた。
とはいえ、悪い面ばかりではなかった。
地方から都市に向かって大規模な
移住が起きたため、都市は比較的速やかに
回復し、商業は活気を取り戻した。
田舎に残った農民は遊休地を手に入れ、
土地を持つ農民の権力が増し、
農村経済が活性化した。
実際、歴史学者たちは、黒死病から
新しい機会や創造性や富が生まれ、
そこからルネサンスの芸術や文化や
概念が開花し、近代ヨーロッパが
始まったと主張している。
ひるがえって、いまの新型コロナウイルス
感染症のパンデミックによって、
何か新しい価値や社会が生まれるのだろうか。
災いを福に転じられるかどうかは、
これからを生きるわたしたちにかかっている。
最初に感染が広まったのは大きな商業都市だった。
そこから近隣の町や村へと放散し、
さらに田舎へと広がった。
中世の主な巡礼路も黒死病を運び、
各地の聖地は、地域内、国内、国家間の
伝染の中心地になった。
ペスト菌が人々の家庭に忍び込むと、
16〜23日後になってようやく発症し、
その3〜5日後には患者が死亡する。
コミュニティーが危険に気づくのは
さらに1週間後で、その頃にはもう手遅れだ。
ペスト菌は患者のリンパ節に移行し、
腫れ上がらせる。
患者は嘔吐し、頭痛に苦しみ、高熱に
よりガタガタと震え、せん妄状態になる。
当時の町では「すぐに逃げろ、急いで
遠くに行け、戻るのはあとにするほど
よい」と言われていた。
この助言にしたがって避難する余裕ある
人々の多くが田舎に逃げたため、
悲惨な結果になった。避難した人々も
すでに感染していたり、感染者と一緒に
旅をしたりしたため、自分たちが
助からなかったばかりか、それまで
感染者がいなかった遠隔地の村に
病気を持ち込むことになってし
まったのだ。 黒死病の犠牲者は
膨大な数に上ったと推定されているが、
具体的な数字については論争がある。
パンデミック前のヨーロッパの
人口は約7500万人だったが、
1347年から1351年までの間に激減
して5000万人になったと見積もられている。
死亡率はもっと高かったと見る研究者もいる。
人口が激減したのは、黒死病に罹患した人々が
死亡しただけでなく、畑や家畜や家族の
世話をする人がいなくなり、広い範囲で
社会が崩壊したからだった。
中世のパンデミックが終わったあとも
小規模な流行は続き、ヨーロッパの人口は
なかなか回復しなかった。
ようやく人口増加が軌道にのってきたのは
16世紀頃だ。
大災害の影響は生活のあらゆる領域に及んだ。
パンデミック後の数十年間は労働力不足に
より賃金が高騰した。かつての肥沃な農地の
多くが牧場になり、丸ごと打ち捨てられる村もあった。
英国だけで1000近い村が消えた。
とはいえ、悪い面ばかりではなかった。
地方から都市に向かって大規模な
移住が起きたため、都市は比較的速やかに
回復し、商業は活気を取り戻した。
田舎に残った農民は遊休地を手に入れ、
土地を持つ農民の権力が増し、
農村経済が活性化した。
実際、歴史学者たちは、黒死病から
新しい機会や創造性や富が生まれ、
そこからルネサンスの芸術や文化や
概念が開花し、近代ヨーロッパが
始まったと主張している。
ひるがえって、いまの新型コロナウイルス
感染症のパンデミックによって、
何か新しい価値や社会が生まれるのだろうか。
災いを福に転じられるかどうかは、
これからを生きるわたしたちにかかっている。