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2017年05月08日

「おれ、なんで捨てられたの?」 問う息子を抱きしめた

2017年5月7日 朝日新聞

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開設から10年になる慈恵病院(熊本市)の
「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)。
月日を重ねた分、預けられた子どもは大きくなっていく。
中には、新たな家庭で育てられている子どもたちがいる。

西日本で暮らす女性は、小学校低学年になる
息子と初めて出会った日のことを懐かしく思い出す。
3人の子育てが一段落し、「もう一人育てられる」と
思って、育ての親が戸籍上も親となる
特別養子縁組を希望した。乳児院で面会したのは、
生後10カ月の頃。「めちゃくちゃかわいい」。
赤ちゃんは輝いて見えた。緊張した様子だったが、
2時間ほど一緒にいると、ひざに乗るようになった。
抱っこし、ミルクを飲ませてあげた。1歳になる前に家に
やってきて、親子としての時間を紡いでいった。
小学生になった今、ドッジボールや「けいどろ」で
遊び回り、ご飯をもりもり食べる。
「あなたを産んでくれたお母さんがいる」。
初めてそう話したのは、3歳の誕生日。
そこから、日常の中で生い立ちを伝えてきた。
「ゆりかご」に預けられたこともその一つ。
息子から聞いてくることもたくさんある。
「なんでお母さんは産んでくれなかったの?」
「(生みの母は)どこにいるの?」
「もともとの自分の名前は?」。
女性にも答えられない質問もある。
ある時、息子はこんなことを言ってきた。
「おれ、なんで捨てられたの? 
要らなかったの? 要らなかったんでしょ?」
女性はこう返した。
「どうしても命を助けたい、あなたを大事に
したいと思ったのよ。お陰で家族になれてうれしい」。
ぎゅっと抱きしめると息子も力強く抱き返してくれた。
小さな体で一生懸命受け止め、考えているのだと思う。
小学校では、子どもたちが自身の生い立ちを発表する
機会があるという。どうすればよいかと思う。
息子はいずれ、生みの母に会いたくなるかもしれないし、
思春期に入って自分のルーツに悩むかもしれない。
母親として、一つ一つ、息子が納得できるよう、
一緒に向き合っていくつもりだ。
                 ◇
「お父さん、お母さんに『ゆりかご』を通して
出会えたのは奇跡だなと思う」
西日本で暮らす別の男の子はそう語る。
両親は、優しいが、悪いことをすると
しかってくれる「普通の親」だ。
「ゆりかご」のことは、幼い頃から
包み隠さず聞かされていた。
男の子にとって、育ての母も生みの母も大切だ。
「お母さんが2人いてもおかしくない」
その思いを、両親も大事にする。父親は、息子とともに
生みの母が暮らしていた街を訪ね、誓った。
「命をかけて守ります」。
元気に素直に育っている
自慢の息子。
もし駐車場や山の中に置かれていたら――。

「やっぱり『ゆりかご』で命が守られたんだ」と
父親は思う。
今の男の子の夢は、子どもたちにかかわる仕事だ。
両親は願う。
「(息子には)血のつながりがある人がいない。
幸せな結婚をしてほしい」。
家庭ができるのを楽しみにしている。
(岡田将平)

■「出自を知る権利は」悩む病院
匿名で子どもを預かる「ゆりかご」は、病院職員の
声かけや児童相談所による調査で半数以上は
親の身元がわかっているが、
不明のままの子も少なくない。
「子どもから出自を知る権利を奪う」という課題は
開設当初から重く横たわる。
慈恵病院の元看護師長、下園和子さん(65)は、
初めて預け入れに立ち会った光景が忘れられない。
保育器の赤ちゃんの横で、
若い看護師たちが泣き崩れていた。
「山や林に捨てられて死んでいたかもしれない。
これで良かったんよ」と肩を抱いて励ましたが、
内心では「これで本当にいいの?」と感じた。
「私たちはこの子の人生に全く責任を持てない。
それなのに助けたなんて言えないと思った」
開設前は、安全に赤ちゃんを保護できるか
どうかだけに神経が向いていた。
だが、預けられた子どもたちに向き合ううち、
「赤ちゃんたちはいずれ成長し、自分の祖先が
分からないことに悩むだろう。幸せとはいえない」と
思うようになったという。
開設から3年間かかわった元熊本県
中央児童相談所課長の黒田信子さん(66)も、
出自の問題に懸念を持っていた。
とにかく親を捜そうと、預け入れのあるたび、
一緒に置かれていた紙袋や子どもを包んでいた
タオルなどわずかな手がかりから調査した。
親がわからないままの子に
「なぜもっと捜してくれなかったの」と
言われるような気がする。
「(ゆりかごでは)肉体的な命は助けられても、
心は救えていない」と訴える。(岡田将平、山田佳奈)




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posted by salsaseoul at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会