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2017年05月01日

「トランプをホワイトハウスに入れた男」の偽ニュース

朝日新聞 2017年4月29日

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ポール・ホーナー(38)。株のネット取引などで稼ぐかたわら、abcnews.com.co▽cnn.com.de▽nbc.com.co――といった、
大手メディアに似せたサイトを次々と開設。
でっち上げのニュースを選挙序盤から発信した。

最も反響を呼んだ一つが、クリントン陣営がカネで人を集め、
トランプの集会に「抗議者」として送り込んだという記事だ。
「3500ドルを支払われ、トランプの集会で抗議した
反トランプ派が暴露」との見出しで拡散。
トランプの次男や現大統領顧問の
ケリーアン・コンウェイもツイートした。
米ネットメディア「バズフィード」の分析では、投票直前の
3カ月間にフェイスブックで反響があったフェイクニュースの
第11位に。シェアやコメントの総数は約38万件に達した。
同時期の上位20位までの反響数の合計では、
フェイクニュースは871万件にのぼり、737万件の
「リアルニュース」を上回っていた。
トランプが大統領選で勝利すると、米内外のメディアから
取材が殺到。「トランプをホワイトハウスに入れた男」などと
報じられた。だが、ホーナーは「俺はトランプが嫌いだ。
後押しするつもりはなかった」と主張する。
では、なぜフェイクを広めたのか。自らの発信を
「Artwork(芸術作品)」と言うホーナーに動機を聞くと、
「トランプの言葉をうのみにする人も批判するメディアも、
自分たちの信じたいことのみを受け入れ、伝えている。
何が真実なのか、みんなに突き詰めてほしかった」。
ホーナーは発信後に「実はフェイクだ」と明かしたことも
あったという。だが、「一度本当だと信じた人の考えを
変えることはできなかった」と振り返る。
大統領となったトランプは、約2800万のフォロワーを
もつツイッターなどで「お前たちこそフェイクだ」と発信し、
大手メディアに矛先を向けている。
「メディアは信じるに値しないという価値観が広がっている」。
ワシントン・ポスト紙記者でホワイトハウス報道を担当する
デビッド・ナカムラ(46)は世論の風圧を感じている。
署名記事を書くと、メールやSNSでトランプそっくりの
口調で批判が寄せられる。

「お前、それはフェイクだろう」
「その話こそ、うそじゃないの」
作り話と事実の区別がつかないまま情報が
拡散する社会。人々はどう受け止めているのか。
手がかりを求め、米北東部のペンシルベニア州に向かった。
かつて栄えた炭鉱や鉄鋼業が衰退し、「ラストベルト」と
呼ばれる一帯だ。昨年の大統領選では、前回はオバマに
投票した人たちも含め、トランプ支持に大きく傾いた。
「ヒラリーが3500ドルを渡し、トランプ集会で抗議させた
記事は覚えている。私は信じているわ」
同州東部ドラムスの高級住宅地に暮らす女性(54)は
、そう言い切った。記者が「発信者に取材をしたら
フェイクと認めた」と伝えても、
「その話こそ、うそじゃないの」と笑われた。
女性は「メディア全体がトランプを大統領に
したくなかったから、あら探しばかりした。
リベラルに偏ったフェイクニュースはたくさんある」とも
訴えた。近くの小都市ヘイズルトンの男性(52)も
メディア不信を口にした。「テレビも新聞もほとんど見ない。
うそとミスリードばかりだ」。21年間勤めた
ガソリンスタンドを3年前に解雇され、失業中。
民主党員だが、「チェンジが欲しい」とトランプに投票した。

男性は「不法移民は食料配給カードを何枚も持っている。
この国で生まれた俺たちの方が割を食っている」と
不満をもらす。情報の出どころを尋ねると、
「知り合いの警察官から聞いた」と自信ありげに答えた。
長く地域で暮らす他の白人たちも「ドラッグ絡みの
殺人事件が増えた」などと、この15年で人口の半
数に増えたヒスパニック系移民への不満を口にした。
ただ、メディアに不信感を抱くのは移民たちも同じだ。
8年前、ドミニカ共和国から移ってきた歯科医の
アデル・ヌネス(38)はこう話す。「犯罪が起きても、
容疑者が移民なら連日報じられ、古くからの住民だと
報道は1度だけ。フェアじゃない」同州の地元紙
タイムズ・トリビューン記者の
ボーリス・クロウチェニューク(56)は、メディア不信の
背景にはメディア側の問題もあると語る。
「情報の受け手が信じたいものだけを選ぶのは
今も昔も同じ」としつつ、「最近は一部のメディアが
受け手の望むものに合わせてニュースを発信する
傾向が出てきた」。
メディアへの信頼低下とフェイクの氾濫(はんらん)。
米メディアの動向に詳しいハーバード大
ショレンスタイン・センター所長の
ニッコ・ミリ(39)は「ネットの発達もあって、
この15年間で全米の新聞社のスタッフ数は
半分以下になった。既存メディアのニュースは量も
質も低下し、権力に立ち向かうパワーも落ちた。
その隙間に入り込んだのがフェイクニュースだ」と分析する。

 偽の情報はいま、世界を席巻している。

「マクロン候補をサウジアラビアが支援」
仏大統領選の投票が迫った3月、有力候補で
前経済相のマクロンがイスラムとつながっていると
する記事がSNSで一気に拡散。
ベルギー紙・ルソワールに似せたサイトに
掲載されたが、実際はフェイクだった。
日本も無縁ではない。1月中旬、
大韓民国民間報道」と名乗るサイトがこんな
見出しの記事を掲載した。
「韓国、ソウル市日本人女児強姦(ごうかん)事件に
判決、一転無罪へ 被害者は日本にいるため
無罪とする」「2000年に11歳と9歳の
日本人女児2人がソウル市内のデパートで強姦される」
事件があったのに「無罪が言い渡された」との内容だった。
しかし外務省は「そういった事件は聞いていない」
と否定する。発信源のサイトを運営する男性は後に、
この記事が「フェイク」だったと認めた。
だが、掲載直後から「韓国司法は腐りきっている」
「ゴキブリ民族の国」といった激しい言葉とともに
SNSなどで広がった。

横浜市に住む自営業の男性(39)は1月下旬、
フェイクとは思わず、自らのフォロワー約800人に
向けてリツイートしたという。
「新聞報道には事実と主義主張が交じっている」と
語る男性は、全国紙など3紙を購読。
慰安婦問題などで韓国の対応には不信感を持っていた」と
いい、拡散させた理由について
「あの国なら十分あり得るという先入観があったと思う」と振り返る。

法政大准教授でジャーナリストの藤代裕之(44)は
12年前、徳島新聞記者から「新しいジャーナリズムに
関わりたい」とネットメディアの世界に転じた。
だが今は「取材に3カ月かけて書いた記事と不確実な
情報が混在し、読み手は気づかないうちに都合のいい
情報ばかりを集め、タコツボに陥っている」と感じている。
藤代は語る。「どうやってフェイクの拡散を防ぎ、
民主主義の土台である言論空間を守るのか、
メディアに携わる人たちが責任持って考えていくべきだ」

=敬称略(荻原千明、井上裕一)



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posted by salsaseoul at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米