厚生労働省の研究班による、当事者への初の意識調査の
結果がまとまった。産む前に、ダウン症など胎児の
染色体異常を調べる「新型出生前診断」が広がる中、
当事者のことをよく知ってもらうことで、適切なカウンセリングや
支援体制につなげる狙いで行われた調査だ。
調査は昨年10〜12月、日本ダウン症協会の協力を得て、
協会員5025世帯にアンケートを送付。12歳以上の852人
(平均年齢22・9歳)が回答した。働いている人が約6割だった。
「毎日幸せに思うことが多いか」との質問には「はい」が
71%、「ほとんどそう」が20%だった。「友達をすぐ
作ることができるか」との質問にも、計74%が肯定的に
回答した。海外で過去に行われたダウン症の当事者の
研究結果ともほぼ一致する。米国で284人の当事者に
聞いた調査(2011年)でも、99%が「幸せ」と回答していた。
日本ダウン症協会の水戸川真由美理事は「ふだん接している
我々からすれば驚くべきデータではないが、数値化されたことに
意味がある。当事者は自分の障害を深刻に受け止めている
わけではないことを知って欲しい」と話している。
新型出生前診断は、導入から3年で計3万615人が
受け、染色体異常が確定した417人のうち94%が
中絶を選択した。
ダウン症は、知的発達の遅れや心疾患を伴うことが多い。
発達はゆっくりだが、豊かな感性や知性を発揮して
活躍する人もいる。調査を担当した三宅秀彦・京都大特定
准教授(遺伝医療)は「検査を受けるかどうか決める前に、
ダウン症の実態を知って欲しい」としている。
■人生に厚み、子のおかげ
東京都に住むダウン症の加藤錦さん(33)は2001年から、
都内のパン屋で契約社員として働く。月給は約10万円。
結婚に備えて貯金し、休日にはカラオケでKinKi Kidsの
曲を歌う。「毎日、仕事のみんなと仲良くできるのが楽しい」と
話す。
母の美代子さん(67)は、錦さんの生後約1カ月で
ダウン症の告知を受けた。「障害児なんていらない」との
思いがよぎったが、「ゆっくりだが普通に成長できる」と
いう担当医の言葉で前向きに考えられたという。
美代子さんは「この子のおかげで、私の人生には厚みや
幅がでた。錦がダウン症だったことは、私にとって
プラスになりました」と話している。
(岡崎明子)