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2016年08月28日

(小さないのち)子どもの死、防ぐために 事故・虐待の記録、朝日新聞と専門家が分析

朝日新聞 2016年8月28日

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過去10年間の子どもの死/解剖記録からみた子どもの死因/予防につながる要因がある死


 小さないのちを守りたい――。睡眠時の窒息、浴室での溺れ、
転落などで、子どもの命が失われている。痛ましい虐待や自殺も
後を絶たない。朝日新聞は、過去10年間に亡くなった子どもの
うち約5千人について、原因などが書かれた解剖記録を専門家と
分析した。約1900人の記録から、今後起こりうる事故や虐待を
防ぐための手がかりが見えてきた。

「母親の腕枕で就寝。目を覚ますと母親の左腕が覆いかぶさり
意識がない状態」。2014年に亡くなった0歳男児の記録からは、
母親の添い寝中に起きた窒息だったことが読み取れた。

同じ年には、家族4人が「川の字」で寝ていたところ、0歳男児に
きょうだいが覆いかぶさり、亡くなった。分析では、添い寝や
川の字で寝ていて亡くなった例が110件あった。

また、窒息などを引き起こす危険が指摘されている「うつぶせ」
状態も240件あった。その8割近くは、まだ寝返りを打つのが
難しいとされる「生後180日以内」だった。

このような睡眠時の事故は全体で469件あり、分析した中で
最も多かった。リスクを減らすには、うつぶせ寝ややわらかい
寝具を避けたり、なるべくベビーベッドを使ったりすることが
有効とされる。こうした情報が社会でさらに共有されていけば、
同じような事故を減らしていくことができるかもしれない。

今回、分析を試みたのは、05〜14年に行われた
司法・行政解剖のうち14歳以下の子どもの記録4952件。
事件性の判断や死因の解明のために解剖されたもので、

亡くなった子ども約4万6千人の約1割にあたる。記録は
法医学者の間で研究用に共有されており、非公表だ。
氏名などの個人情報はなく、原因や状況がある程度記されている。

事故予防に詳しい山中龍宏医師、日本子ども虐待防止学会長の
奥山真紀子医師の協力を得た。日本小児科学会は今年、
東京などの368の死亡例を、予防につながる要因があるか
どうかの観点で試行的に分析しており、その手法や、子どもの
死の検証制度がある海外の事例などを参考にした。

その結果、今後起きうる事故の予防につながる要因が
読み取れたのは849件。睡眠時に次いで多かったのは

浴室やプールでの溺死(できし)、転落・転倒、食べ物を
気管に詰まらせる誤嚥(ごえん)などだ。

 一方、虐待や無理心中、自殺など、社会的な対応に
よっては防ぎうる要因を見いだせる記録も1067件あった。
うち379件と最多だったのが、出産直後の赤ちゃんを
遺棄するなどの「産み落とし」だった。
産み落としの全体を把握する国の統計はない。

 ■<視点>海外には検証制度

いまの社会はまだ、一人ひとりの子どもの死ときちんと
向き合えていないのではないか。

「子を失うと親は自分を責め、周囲からも責められる。
でも一番つらいのは、うちの子の存在がなかったことになること」。
取材した多くの遺族たちの思いだ。責任を追及することよりも、
子どもの命を少しでも守るためにできることを考えたい。

米国や豪州などでは、事故や虐待、自殺などによる子どもの
死亡について、医療機関や捜査機関などが情報を持ち寄って
検証する制度が定着している。予防につながる要因がある
ケースを「プリベンタブル・デス(予防可能な死)」ととらえる考えが
広がり、事故などを減らす対策や啓発活動につなげている。

日本には、こうした検証制度はまだない。厚生労働省の人口
動態統計によると、子どもの事故死は減りつつあるとはいえ、

同じような事故が繰り返されている。厚労省研究班の11年度の
報告書によると、日本の新生児の死亡率は先進19カ国で
最も低い水準だが、1〜4歳児では中位になってしまう。

今回分析した記録では、死に至る経緯が比較的詳しく
書かれている一方で、家庭環境などの情報はほとんどなく、
検証には限界があった。私たちの分析も十分とはいえない。

政府は6月、事故死の情報を共有・分析する連絡会議を
立ち上げたが、本格的な検証制度づくりを考える時期に
きている。(板橋洋佳、座小田英史)

 ◇かけがえのない子どもの命について考える企画
   「小さないのち」を始めます。


コメントです
こどもの事故死の記事です。

事例について少しでもデータベース化を
進めて、防止策を強化して欲しいですね。



posted by salsaseoul at 12:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療

どんな時に食べ物を捨てますか? 食品ロス、半分は家庭



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ごみ袋を開き、種類ごとのバケツにより分けた京都市の調査の様子=2012年、市提供


どんな時に食べ物を捨てますか? 
「食べ物は命」「世界には飢えている人が大勢いる」と、
叱られた覚えのある人もいるでしょう。食べられるのに捨てられる
「食品ロス」。世界では毎年、生産される食料の3分の1に
あたる13億トンが捨てられているそうです。
朝日新聞デジタルのアンケートの声と、自治体の取り組みを
紹介します。

京都市が2012年秋に実施した食品ロスの調査では、マスクと
手袋をつけた市職員らが、家庭からのごみ袋をブルーシート上で
ほどき、種類を書いたラベルを貼ったバケツに分けました。

重量で見ると、捨てられたごみのうち4割が生ごみで、さらに
その39.4%がまだ食べられる、「食品ロス」にあたるそうです。
最も多かったのは野菜類で、肉類、魚介類、パン類、
ごはんなどが続きます。手つかずのまま捨てた「直接廃棄」が
半分あり、残りは食べ残しでした。

直接廃棄のうち、おいしく食べられる時期を示す賞味期限が
読み取れるものを調べると、3割は賞味期限前に捨てられ、
期限後2週間以内も3割ありました。

京都市ごみ減量推進課廃棄物企画係長の新島智之さんは
「『高齢で買い物の頻度が減り、まとめ買いが増えたので
食品が使い切れない』といった悩みや『子どもが自立し、
料理の適量が分からない』という声をよく聞きます」と言います。

食品ロスの調査は、長野県松本市も実施しています。
13年秋から冬にかけて計7日間、100戸の家庭から出された
生ごみの内容を調べました。食品ロスは、生ごみのうち3割。
皮むきなど調理の時に食べられるのに捨ててしまった部分が
14.5%、ごはんやおかずなどの食べ残しが11.1%。
手つかずの直接廃棄は4.5%で、このうち賞味期限つきが
56.6%で、期限を過ぎたら食べない方がいいとされる
消費期限つき食品28%の2倍ありました。

賞味期限つきのうち半分近くは、期限前か、期限後1カ月
以内に捨てられていました。松本市環境政策課主任の
丸山祐太郎さんは「同時期に行ったアンケートでは、
『消費期限と賞味期限の違いを知っている』という答えが
80%だったが、正しい理解が広まっていなかったかも
しれない」と言います。

京都市と松本市の数字の違いは、「過剰除去」の扱いと
いった統計の取り方の違いによるところが大きいようです。

環境省は今年3月、家庭から出る食品ロスについての
初めての全国調査を発表しました。食品ロス量を把握
するための調査を実施している市区町村は全体の3%でした。
環境省は、この調査を元に国内の家庭からの食品ロスを、
全食品ロスのほぼ半分の302万トンと推計しています。
食品ロスの実態把握や削減の取り組みは緒に就いた
ばかりです。

市民アンケートで京都市が「食品ロスを出さないために
気をつけていること」を尋ねたところ、多かったのは
「冷蔵庫内を買い物前にチェックする」(51%)、
「買い物メモを持参する」(43%)などでした。
市は、家庭の食品ごみを削減するため
@買った食品を使いきる
A食品を食べきる
Bごみを捨てる際に水をきることを、「生ごみ3キリ運動」と
して呼びかけています。

松本市は、毎月30日を期限の近い物や残り物を使い切る日、
10日を今までは捨てていた野菜の茎などを料理に

使う日とするよう、市民に呼びかけています。幼稚園、
保育園、小学校へ出前授業を実施し、子どもたちの
食べ残しが減ったといいます。子どもを通じて家でも
食品ロスが減るのを期待しているといいます。
(浜田知宏、神田明美)

■国連計画でも半減めざす

日本の食料自給率は、カロリーベースで39%。
G7(主要7カ国)で最低です。農林水産省によると、
年間約5300万トンの食料を海外から輸入しています。

食品ごみは家庭系と事業系を合わせて1676万トンで、
うち632万トンはまだ食べられるのに捨てられる
「食品ロス」なのだそうです。これは、日本人が年間に食べる
小麦の量に匹敵し、国連の世界食糧計画(WFP)が昨年、
飢餓に苦しむ人などに支援した食料320万トンの
2倍にあたります。

食品ロスは、日本の食料安全保障にも絡む問題なのです。

環境省は、家庭から出る食品ごみが年間870万トン、
うち食品ロスは302万トンと推計しています。手を
つけないまま捨てられる「直接廃棄」、厚くむきすぎた
野菜の皮などの「過剰除去」、「食べ残し」が、
ほぼ3分の1ずつとなっています。

全国の家庭から出るごみは年間約2400万トンで、
生ごみは約4割と言われています。市町村などは
一般ごみの処理に年間1兆9400億円を使っています。
1人当たりでは年約1万5千円です。市町村にとって、
食品ごみや食品ロスを減らすことは、倫理的な問題というより
経費節減という自治体の財政に直結する問題なのです。

食品ロス削減は、国際的にも大きな問題です。
昨年9月に採択された2030年に向けた国連の
行動計画「持続可能な開発目標(SDGs)」では、
「2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の
1人当たりの食料の廃棄を半減させ、食品ロスを
減少させる」という目標が掲げられました。

この春に日本で開かれたG7の農相会合や環境相会合でも、
食品ロスは重要課題として位置づけられています。

 私たちの食卓は、世界につながっているのです。

■アンケートに寄せられた意見は

 こんな時に、食べ物を捨ててしまう。
そんな体験がアンケートに寄せられています。

●「野菜を一番捨てることが多いです。できるだけ保
存可能な根菜を購入し、生食はひとり分しか購入しない
ようにしています。それでも牛乳は飲みきれず捨て、
漬物系もよく残ってしまい捨てています。や
はり、また買えばいいや、とどこかで考えてしまっている

からでしょう。まずはこの意識をかえられるような
生活にしたいです」(東京都・30代女性)

●「安売りの食品を見るとつい買ってしまう。
その後冷蔵庫の奥深く入り込んだ食品はいつしか
忘れ去られ、冷蔵庫の余り物料理を作ろうと整理し
気付いた時には傷んでしまっている。毎日使うものだけ
買えばいいと分かってはいるのだが、ものぐさな私は
、3〜4日分の食材を買ってしまう。買った食材を冷凍
保存出来るよう工夫するといいのだが、加熱して食すより
生で食べる方が好き。冷蔵庫の中の物を使い切ってから、
買い物に行くことを心がける。安売りに飛びつかない。
今の私に出来ることは、この2点に尽きる」
(東京都・60代女性)

●「両親・祖父母から食べ物を粗末にするな、米粒は一粒
たりとも残すな、と言われて育ったので、消費期限切れの
食品を廃棄するときはいつも罪悪感を感じている。
ただ、もったいないからといって無理に食べて食中毒を
起こすのは馬鹿らしいので、割り切って捨てている」
(岐阜県・50代男性)

●「年寄りになると、安い時に買った野菜類が消化しきれずに、
傷んで捨てる場合があります。毎日買い物に行ければ
いいのですが、年金生活者には厳しく、特売日に買い物に
行き安くてうまいものを買う習慣がつき、消化しきれない
野菜があります」(北海道・60代男性)

●「冷凍庫に入れて忙しい時に食べようとするのですが、
半年後にそのまま捨ててしまうことがよくあります。
そのたびに、あーあ、と思います」(埼玉県・40代女性)

●「自分で買ったものは食べたいから買うのでそんなに
忘れませんが、頂いたものというのは意識の中にないので、
気がついたら消費期限が切れていたりします。
未開封ならまだしも、せっかく頂いたからと封を開けて
一度だけ食べてそれきりというパターンが多いです。
本当は、相手の好みをよく知っているのでない限り、
あまり食品は贈らない方が良いのかもしれないと思います」
(東京都・40代女性)

●「調味料:おいしいかと思って買ってもあんまり好みでないとき、
そのまま冷蔵庫に放置して消費期限が切れたら捨てる、
というケースがある。香辛料:珍しい料理を作るために
買った香辛料をその時だけ使ってほとんど残したまま放置、
そのまま消費期限切れになって捨てる、という場合もある。
(最近は小分けのスパイスも売られているので、少なくなったが)」
(兵庫県・50代女性)

●「仕事をしていると毎日買い物に行くのは不可能なので
買いだめをするが、特に野菜は保存のきく状態にする
下処理にまた時間がかかる。賞味期限や消費期限は
あまりうのみにしないで自分の鼻や目で確認するが、
毎日3食のための食品管理は想像以上に大変なこと。
かといって保存料がたっぷりの食品は避けたいという
ジレンマも。現代は冷蔵庫等の保存機能も充実しているし、
食べ物があふれているので、もったいない精神が欠如している」
(東京都・40代女性)

●「病気をしてから時々とても体調の悪い時がある。
食材を買ったのに調理できず、結局捨ててしまうことになる。
罪悪感と無駄になったお金と食材を思うと、とても落ち込む。
多少の日付は過ぎていても、においや見た目で食べるけれど、
時々自分に劣等感を覚える。悲しい」(千葉県・60代女性)


コメントです
食品の食べ残しの統計記事です。

苦手な方には興味がわかないかもしれませんが、
数字で発表していただくと、危機感を表示しやすいです。




posted by salsaseoul at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境

婚活サイトでトラブル続々 出資をしたら「さようなら」

朝日新聞 2016年8月23日


「婚活サイト」で知り合った女性に社債の購入や出資を持ちかけられ、
トラブルになるケースが相次いでいる。約束された配当は得られず、
交際に前向きだったはずの女性との連絡は途絶えてしまう。
結婚を望む人たちの出会いの場を利用した詐欺まがいのビジネス、
との指摘もある。

関東地方に住む会社員の男性(38)は今月3日、6人の男性と
ともに計約1億円の損害賠償請求訴訟を起こした。
相手は、婚活サイトでそれぞれ知り合った2人の女性や、
女性の勧めで購入した社債の発行会社など。詐欺容疑で
警視庁への告訴も考えているという。

男性は2013年3月、無料婚活サイトを通じて20代の女性と
出会った。東京・新宿の喫茶店で待ち合わせた女性は、
花柄の華やかなワンピース姿で指にはサファイアの指輪。
会社の秘書役で両親は投資家、と自己紹介した。

「イイ旦那さんになりそう」などとメールをもらい、交際が始まった。
3回目のデートで、「将来の2人のために」と、女性が役員を
務める人材派遣会社の社債購入を持ちかけられた。
男性は交際を続けるため、申込書に署名。
ほかの社債も購入し、計1千万円を支払った。

年12〜24%と説明された利息や配当はしばらく支払われたが、
間もなく停止。疑う気持ちはあったが、女性に「どんなことが
あってもパートナーとして行動します」とLINEのメッセージを送った。
しかし、女性から突然別れを告げる返信が届き、
連絡がとれなくなった。
「適当な言葉で慰めて、優しい自分に自惚(うぬぼ)れてる
だけでしょう。あなたは偽物よ。さようなら」

その後、同じ社債の購入で同様の被害を訴える記述をネットの
掲示板で発見。別の1人を含む女性2人が、少なくとも32人の
男性に社債を購入させていたことがわかった。交際していたはずの
女性が、同じ日に別の男性とデートしていたことも明らかになった。

男性らの訴訟代理人の佐藤嘉寅弁護士は「同じ女性が複数の
婚活サイトに登録し、同時期に複数の男性に社債を売っていた。
組織的な詐欺の可能性がある」と話す。男性が社債を購入した
会社の代表を務める男性は、取材に「名義を貸しただけ。
詳しいことは分からない」と答えている。

市場調査会社シード・プランニング(東京)によると、
「婚活サイト」の市場規模は12年の30億円から17年には
58億円に膨らむという。利用者を狙って出資や不動産の
購入を持ちかける「デート商法」は後を絶たないといい、
立正大学の西田公昭教授(社会心理学)は、「ネットの出会いは
紹介者がおらず、相手の素性が保証されない。
リスクを認識しなくてはいけない」と話す。
(小寺陽一郎、高田正幸)


コメントです

これ、残念ながら男性がしっかりと相手を見極めて
だまされないようにしないといけないですね。
本文にもありますが、詐欺氏女性が一日に何人も

掛け持ちしていたら、ちょっとした不振な動作で
わかると思います。



posted by salsaseoul at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

理想と現実の差が生んだ悲劇(きょうも傍聴席にいます)

朝日新聞 2016年8月25日


「人助けがしたい」と強く願った男が空回りの果てに
行き着いたのは、殺人の罪だった。大学の再受験を
めざしていた恋人を手にかけた男が、法廷で語った言い分とは。


2016年6月20日、東京地裁725号法廷で開かれた
裁判員裁判の初公判。被告の男(26)は黒いスーツに
青ネクタイ姿で法廷に立ち、緊張した面持ちで起訴内容を認めた。

 被告「間違いありません」

起訴状によると、被告は昨年2月14日、東京都内の自宅で
交際していた女性(当時24)の首を絞めて殺害したとされる。

被告はなぜ恋人を殺してしまったのか。冒頭陳述や被告人
質問などから、事件の経緯をたどる。

被告は福島県出身。きょうだいと共に両親に育てられた。
法廷で被告は、幼い時から抱えていた悩みを明かした。

被告「6歳ごろからきつ音の症状があり、まわりの友達と
うまくつきあいができませんでした」

言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりするきつ音。
母親は法廷で「被告が小学生の時に病院に行ったが、
問題はないと言われた」と証言したが、被告にとっては
大きな問題だったという。

被告「中学3年の壮行会で試合への抱負を述べる時、
きつ音のせいではじめから最後までうまくしゃべれなかった。
人生で一番の失敗。悔しくて苦しかった」

被告は「きつ音による負の印象を払拭(ふっしょく)したい」と
高校時代は東大を目指して受験勉強に打ち込んだという。
希望はかなわず、浪人して大学進学をめざしたが、断念。
アルバイトなどの後、2014年、地元・福島を離れて上京した。

弁護人「東京でどんな仕事をしたかったのですか」

被告「人の相談を聞いて、悩みを解決する仕事です」

弁護人「その仕事とは」

被告「探偵です」

契約社員やアルバイトなどで収入を得ながら、探偵事務所の
開業を目指した。両親から仕送りを受けることもあったという。

被害者の女性とはツイッターを介して知り合った。
大学卒業後、就職していた女性が、仕事をやめ、大学を
再受験しようとしていることを知り、被告は14年10月、
生活の支援を申し出た。

被告「生活面でも精神面でもサポートできるかもしれない。
支えてあげたいと思いました」

 弁護人「どうしてですか」

 被告「自分と似た状況なのに、大学受験を目指すという
前向きなところに共感しました」

 弁護人「自分と似た状況、とは」

 被告「社会的に弱い立場にあることです」

 被告は、ツイッターでのつぶやきから「女性は対人恐怖症」と
いう印象を持っていたという。まもなく交際が始まり、2人は
同居するようになった。生活費は被告が全額負担するという
約束だった。だが、被告には被害者に話していない借金があった。

 弁護人「借金はいくらあったんですか」

 被告「160万円ほどです」

 弁護人「なぜ借金を」

 被告「友人や以前勤めていた会社の先輩に貸していたのと、
半分は自分の生活費です」

 弁護人「なぜ借金してまで、先輩や友人に貸したのですか」

 被告「先輩や友人は他に頼れる人はなく困っていたので、
貸してあげようと思いました」

 結局、同居する中で、被害者に借金を知られてしまう。

 弁護人「被害者は何と?」

 被告「『本当に返済しきれるの?』と心配していました」

 弁護人「あなたはどう思っていたのですか」

 被告「返せると思っていました」

 アルバイトを掛け持ちし、早朝から深夜まで働いていたという被告。
15年2月3日には、探偵会社で正社員の試用期間として働くことに
なった。だが、働き始めて4日目の2月6日、被告は職場の
先輩の車を運転中に物損の追突事故を起こし、
約90万円を支払うことに。2日後、会社を休職することになった。

 被告「今後の生活について不安に思いました。
安定した生活ができるようになるのか、と」

 一方、女性は学費を準備できず、その年の大学受験を断念。
同じ頃、かつての勤務先の会社で働き始めた。
被告が借金の支払いができずに女性を頼ったことなどから、
仕事や金銭面での考えの甘さを指摘し、同居解消を
ほのめかしていた。

 そして、2月14日早朝。目を覚ました被告と女性は、
借金と生活費の話になる。

 弁護人「被害者からはどんな話を」

 被告「『借金は返済できるの?』
『この先、安定した収入は得られるの?』と。それを聞いて、
この先どうしたらいいのかと思いました」

 弁護人「被害者はなんて」

 被告「『見通しが甘いよね』と」

 女性は再び眠りについた。被告は横で思いをめぐらせたという。

 被告「これからの生活のことを考えていました。
いつもなら前向きに考えられるが、この日はできなかった。
人生を終わらせようという考えになりました」

 弁護人「被害者については」

 被告「1人にするのは心配で不安だと思いました」

 弁護人「そのほかは」

 被告「正直、自分ひとりで死ぬことへの恐怖もありました」

 被告は隣で横になっている女性の首に手をかけた。
女性は驚いた表情で両手を動かしたが、被告は力を緩めず、
両手で首を絞め続けた。

 殺害後、被告は2〜3時間はぼうぜんとしていたという。
午前11時すぎ、被告は被害者のLINEに
「ご帰宅は何時ごろです?」などとメッセージを送る。

 被告「警察に行って出頭しようと思いましたが、
自白できなければ失踪届を出そうと思いました。
(LINEは)自白できなかったときのために、
失踪届の参考になると思いました」

 結局、被告は午後になって警察署に行ったが自白はせず、
「彼女が帰ってこない」などと相談。
ただ、被告の言動を不審に思った警察官が被告とともに
自宅に行き、事件が発覚した。

 裁判官は殺害の動機をいぶかしんだ。

 裁判官「どうして首を絞めたのかが理解できない。
最初は自分1人で死のうと思ったんですよね?」

 被告「はい。(事件の)ほんの数分間の間に、
死のうとする気持ちの増大がありました」

 被害者の勤務先の上司の調書によると、被害者は
仕事も同僚とのコミュニケーションもうまく出来ていたという。
被害者は被告の借金などの問題から家を出ることを
検討していたが、「深刻な様子はなく、退社時も笑顔だった」と
上司は振り返る。

 質問は、被告が法廷で繰り返した「人を助けたい」と
いう思いにも及ぶ。

 検察官「事件前、あなた1人でも生活し切れていない状態でしたよね」

 被告「そうだと思います」

 検察官「そんな状態で被害者の生活をサポート
するのは無理だったのでは」

 被告「思いだけで動いていました」

 弁護人「弱い人を放っておけないのは、いつからですか」

 被告「きつ音の出始めた6歳ごろからです」

 弁護人「なぜ」

 被告「自分がきつ音の苦しさを経験するうちに、
他の人の苦しみも理解できたのだと思います」

 弁護人「彼女との関係ではどうですか」

 被告「自分という人間の限界を知りたいと思いました。
きつ音を持っていても、人並み以上に生活できる人間に
なりたいという思いがありました」

 被告の精神鑑定をした医師は、法廷で被告について
「自己愛性パーソナリティー障害」と指摘。「相手を弱者に
固定する傾向がある」といい、自分が借金をしてまで人に
金を貸す行為などを「人を救済したいという欲求のために、
人を利用している」と述べた。きつ音についても
「過度にとらわれすぎている」と言った。

 弁護人「何を間違えていたと思いますか」

 被告「他の人の生活をサポートできる人間で
ありたいと強く願いすぎた結果だと思います」

 弁護人「当時、何を受け入れられていなかったのだと思いますか」

 被告「等身大の自分です」

 被告の母親は法廷で、「親としてできる償いをしたい」と
被害者や遺族への謝罪を述べ、「私の体が続く限り、
何とか息子を更生させたい」と誓った。

 被害者の母親は、検察官に代読してもらう形で意見を述べた。

 「被告は私の一番大事なものを奪いました。
私は絶対許しません。娘のためにも、被告を死刑にしてください」

 6月22日。検察側は、「動機はあまりに身勝手で短絡的。
被害者に落ち度はない」として懲役17年を求刑。
一方の弁護側は、「突発的な犯行で、被告は事件当時、
疲労を蓄積し、精神的にも不安定だった」として懲役9年が
相当と主張した。

東京地裁は6月27日、被告に懲役14年の判決を言い渡した。
裁判長は「動機や経緯には必ずしも明瞭でない部分がある」と
指摘し、「自らの身勝手な判断から、何ら落ち度のない
被害者を殺害した。独りよがりで誠に理不尽な犯行だ」と
厳しく非難した。きつ音については触れなかった。

 判決は確定した。(塩入彩)




posted by salsaseoul at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会