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2016年07月15日

南シナ海、中国の権利否定 独自境界「法的根拠なし」 仲裁裁判判決

朝日新聞 2016年7月13日

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中国や周辺国が領有権を争う南シナ海問題で、オランダ・ハーグの
常設仲裁裁判所は12日、中国が独自の権利を主張する
境界線「9段線」に国際法上の根拠はない、との判決を出した。
南シナ海問題を巡る初の司法判断で、提訴したフィリピンの
主張をほぼ全面的に認める判決となった。
中国は反発しており、周辺国や米国などとの緊張が
高まる可能性がある。 

 ■中国、受け入れず

判決によって、中国が進める人工島造成は正当性の法的な
支柱を失った。フィリピン政府は判決を「歓迎する」と述べたが、
中国外務省は「(判決は)無効で拘束力はなく、
中国は受け入れない」との声明を出した。上訴はできず、
9段線などの国際法上の判断は定まるが、仲裁判決を
強制的に履行させる手段はない。

仲裁裁判は2013年1月に提訴。中国が「歴史的権利」として、
南シナ海のほぼ全域に権利が及ぶと主張する「9段線」が
国際法上、認められるかどうかが最大の焦点だった。
判決は「歴史的権利」について「(中国がこの範囲の海域を)
排他的に支配してきた証拠がない」と退け、
「法的な根拠がない」と結論づけた。

 そのうえで、中国が9段線の内側の南沙(英語名スプラトリー)
諸島の七つの岩礁や浅瀬を埋め立てて築いた人工島は、
排他的経済水域(EEZ、200カイリ以内)、大陸棚が
認められる「島」ではないと判断。そのうち3カ所は満潮時に
海に沈んでしまう「低潮高地」で、領海(12カイリ以内)も
認められないとした。南沙の海域にそもそも法的な
「島」はないとも判断した。

中国は仲裁手続きに参加しなかった。ただ、14年12月に
自国の立場を表明する文書を公表したため裁判所は
これを判断材料に加えた。

判決は各国の主張が絡んで複雑化した問題に国際法と
いう基準をあてはめた。ベトナムなどほかの国々との
権利の調整でも基準となるとみられる。
(マニラ=佐々木学、ハーグ=吉田美智子)


 ■判決の骨子

・中国が主張する南シナ海の境界線「9段線」には
法的根拠がない

・中国が岩礁を埋め立てた七つの人工島は「島」ではなく、
排他的経済水域(EEZ)、大陸棚の権利を主張できない

・南沙海域に法的な意味での「島」はない

・中国の埋め立てや、中国船による違法な漁業が、海の
環境を守る義務に違反

・中国船が、フィリピンのEEZ内などでフィリピンの
石油探査や漁業を不法に妨害


 ◆キーワード

 <南シナ海問題> 海上交通の要衝で豊かな漁場でも
ある南シナ海は、石油・天然ガス資源の存在も指摘され、
南沙諸島には中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、

ブルネイが領有権などの権利を主張する。中国は南シナ海の
ほぼ全域に権利が及ぶと主張。南沙諸島に人工島造成を
進め、軍事拠点化と推測される動きを見せている。

関連記事です。

(時時刻刻)9段線「違法」、中国は猛反発 南シナ海問題


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南シナ海の領有権をめぐり、フィリピンが中国を相手取った
仲裁裁判で、「9段線」などこれまでの中国側の主張が
否定された。中国は強く反発し、判決を受け入れないと表明。
今後も実効支配を進める構えで、さらなる強硬措置に出る
可能性もある。

 ■判決「歴史的支配の証拠ない」

判決の最大の焦点は、中国が自国の権利が及ぶ範囲とする
「9段線」という独自の考え方が、合法か違法かということだった。
裁判所は9段線に法的根拠はないとし、さらに中国が埋め立てた
人工島もふくめ、中国が南シナ海の大半において一切の権限を
持つことはできないと判断した。

中国は「中国人民の南シナ海における活動は2千年余りの
歴史がある」(外務省)と主張。地図上に九つの破線をUの
字に並べ、その枠内で自国の権利が及ぶと主張してきた。
南シナ海のほぼ全域が含まれ、中国は七つの岩礁を
埋め立て、人工島などを造成してきた。

1947年に当時の中華民国が刊行した地図に破線が記載され、
中華人民共和国の地図に引き継がれた。当時は「11段線」
だったが、ベトナム戦争時に中国が支援していた北ベトナムの
軍事活動を妨害しないよう2線が削られた。周辺国では
その形状から「牛の舌」「中国の赤い舌」とも呼ぶ。

だが判決は中国の主張を否定。「歴史的に中国が南シナ海を
排他的に支配してきた証拠はない」と判断した。

 ■埋め立てた岩礁、島と認めず

もう一つの焦点は、中国が埋め立ててきた南シナ海の七つの
岩礁の地形についての判断だった。「島」なのか「岩」なのかに
よって主権者の権利が大きく異なるためだ。

国連海洋法条約では、島なら12カイリ(約22キロ)の範囲を
「領海」とし、他国による漁獲や上空飛行が認められない
範囲にできる。200カイリ(約370キロ)以内の
「排他的経済水域(EEZ)」では資源の探査や人工島の
設置などの権利を持ち、EEZの海底にあたる「大陸棚」でも
開発ができる。だが、「岩」なら領海しか認められず、干潮時に
しか海面上に見えない「低潮高地」や人工島にはいずれの権利もない。

判決は「(南沙海域に)EEZと大陸棚をもつ『島』はない」と
判断した。中国は七つの岩礁を埋め立ててきたが、これらも
島ではなく「低潮高地」や「岩」とされ、中国には周辺の天然
資源探査などの権利はないという判断だ。中国による人工島の
建設や埋め立て、フィリピンのEEZ内での漁業妨害も違法だと
判断された。

東北大学大学院の西本健太郎准教授(国際法・海洋法)は、
中国が主張する「9段線」は国際法の完全な枠外にある
中国独自の主張だとし、「こうした独自の考え方が、判決で
真正面から否定されたことには大きな意義がある」と指摘。
中国が受け入れを拒んでいることについては
「聞く耳を持たない国を判決に従わせる手立ては、現状の
国際法上の制度ではないのが実情だ。各国が一致して
政治的な圧力をかけ続けていくしかない」と話す。
(鈴木暁子)

 ■実効支配、今後も進める構え

「中国の国内法と国連海洋法条約などの国際法に基づき、
中国は南シナ海の島しょに領海、排他的経済水域、
大陸棚を有する」。中国政府は判決後に声明を出し、
判決に反論。王毅(ワンイー)外相や李克強(リーコーチアン)
首相も判決を批判し、習近平(シーチンピン)国家主席は
欧州連合(EU)首脳らとの会談で「中国は仲裁裁判の
判決に基づく主張と行動を受け入れない」と表明するなど
最大限の反発を示した。

また、中国で放送されていたNHKのニュースは判決を
伝える部分で画面が真っ暗に。北京市内では12日夜、
フィリピン大使館周辺に厳戒態勢が敷かれ、
緊張感が漂っている。

中国はいかなる判決も受け入れない姿勢を鮮明に
してきたが、中国の立場が認められない場合も見据えて
手も打ってきた。北京の外交筋などによると、中国は
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に判決を評価する
コメントを出さないよう働きかけ、共同声明は見送られる
方向になった。

その他の国にも中国の立場への支持を表明してもらう
外交戦を展開し、王毅外相は12日、中国の立場を
理解・支持する国が60カ国以上あると表明した。

中国は同時に、軍事力を背景に南シナ海での実効支配も
強めてきた。「9段線」についていかなる判決が出ようと、
既成事実として突破していくためだ。

中国は判決を控えた5〜11日、ベトナムなどと領有権を
争う西沙(英語名パラセル)諸島を含む中国・海南島の
南東海域で軍事演習を実施。昨年の演習には西沙は
含まれておらず、今回は約100隻の艦船や数十機の
軍用機を動員し、中国海軍トップの呉勝利司令官が
異例の現場指揮をした。

中国国防省は12日、演習は「海上で起こりうる状況に
対応するため」だったとし、「いかなる仲裁結果が出ようと、
中国軍は国家主権と海洋権益を断固守る」と強調した。

今後、軍事的にも関係を深めつつあるロシア海軍との
合同軍事演習を初めて南シナ海で行うとの情報もある。

中国は南シナ海で米軍の軍用機や艦船を牽制(けんせい)
するため、人工島に地対空・地対艦ミサイルや戦闘機の
配備も進めていくとみられ、南シナ海での防空識別圏
(ADIZ)設定に踏み切る可能性もある。中国の空軍少将の
一人は「国際社会は判決に注目しているが、実際には
何もできない。我々はあらゆる準備をしている」と話す。
(北京=倉重奈苗)

 ■フィリピン新政権、対話探る

フィリピンのパーフェクト・ヤサイ外相は12日の判決直後に
会見し、「この画期的な判決を尊重することを強く確認する」と
述べた。「全ての当事者は行動の抑制を」と、中国を
含めた関係国に冷静な対応を求めた。

3年前、当時のアキノ大統領は、中国の強引な海洋進出を
ナチス・ドイツに重ねあわせ「いま国際社会が不正に沈黙したら、
事態の悪化をどう防ぐのか」と述べ、同盟国の米国の
後ろ盾を頼りに、提訴に踏み切った。

だが、6月30日に就任したフィリピンのドゥテルテ新大統領は、
今月5日の演説で「戦争をするつもりはない。

我々に有利な判決が出たら、(中国と)話し合いを始めよう」と
語り、柔軟に向き合う構えをみせた。政権幹部は、南シナ海で
中国と資源の共同調査を行う可能性も示唆する。中国から
鉄道建設支援の提案があったといい、地元の政治アナリストは
「米国と中国とどちらにつくのが有利か現実的に吟味して
いるのでは」とみる。(マニラ=佐々木学)


 ◆キーワード

<仲裁裁判> 国連海洋法条約は、紛争の平和的な
解決の手段として国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)や
国際海洋法裁判所(ドイツ・ハンブルク)、仲裁裁判所などへ
提訴できると定めている。国際的な裁判を始めるには通常、
当事国双方の合意が必要とされるが、仲裁は一方の
申し立てだけで開始できる規定がある。フィリピンはこの
規定を使って中国を提訴。審理は、常設仲裁裁判所
(ハーグ)で行われ、裁判官はガーナ、オランダ、
フランスなど第三国出身の5人が担った。


 ■南シナ海をめぐる動き

<1992年> 中国が周辺海域の権益を主張する領海法を
制定。在フィリピン米軍が冷戦終結などを受けて撤退

<95年> フィリピンが領有権を主張するミスチーフ礁を
中国が占拠

<2002年> 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が
紛争防止のための行動宣言を採択

<12年> スカボロー礁で中国とフィリピンの船がにらみ合い

<13年> フィリピンが国連海洋法条約に基づき中国との
仲裁を提起

<14年5月> 中国が西沙で石油掘削を始め、南沙の
埋め立てを本格化

<15年10月> 米軍艦が南シナ海を通過する
「航行の自由作戦」

<16年1月> 南沙の人工島の滑走路で中国機が試験飛行

コメントです
いくらグローバルスタンダードで裁こうと思っても、
結局最後はチャイニーズスタンダードですべて
自国都合で押し切ってしまうでしょう。
戦争にまでは至らないと思いますが、
何かの形で、大きな国際間摩擦が発生するはずです。





posted by salsaseoul at 06:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国・台湾