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2016年05月19日

新車が実質2千円 ふるさと納税、富裕層の節税策に

朝日新聞 2016年5月16日


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給与年収1億円のAさん(専業主婦の妻と2人暮らし)が
千葉県大多喜町に400万円ふるさと納税すると…



房総半島の中央にある人口約1万人の千葉県大多喜町。
返礼品は町で使える金券で、ふるさと納税をする富裕層には
有名な自治体だ。2014年12月に金券を贈り始め、15年度の
寄付額は前年度の40倍近い約18億円に急増した。
4月下旬、ネット上で高級ブランド品販売をうたい、
金券の使用先として富裕層に人気の「店」を訪ねた。
建物の2階に「大多喜百貨店」の看板。入り口がわからず、
1階の飲食店で尋ねると「鍵を預かっています」。案内された
アパートの一室には千円のサングラスやしゃもじが並ぶ。
案内してくれた女性は「普段は誰もいません。
専らネット通販の会社だそうです」という。

 「店」はなぜ人気か。

例えば、給与年収1億円の男性が昨年、町に400万円を
ふるさと納税したとする。自己負担は2千円で、399万8千円は
男性の所得税と住民税から減額される。
町からは寄付額の7割、280万円分の金券が贈られ、
2千円を引いた279万8千円分が「もうけ」になる。
金券を資産に換えれば節税完了だ。

「大多喜百貨店」は客に金券を郵送させ、高級品を送るのが
売りだった。東京の業者が町に「支店」を登記したのは15年4月。
町は金券を扱える業者 として登録した。業者が持ち込んだ金券は
町が換金する。業者は「町にまずはネット販売でいいと言われた」。
最近になってネット通販はやめたという。

町は3月から、寄付に対する金券の額の割合を7割から6割に
下げるなど規制を始めたが発行は続く。

■金券の束、町内の店に次々

千葉県大多喜町に2015年末に現れた
「大多喜ウォルマーケット」もふるさと納税で贈られた金券を扱い、
ネットで家電製品の多様な品ぞろえを宣伝する。だが、店内を
のぞくと陳列棚には歯ブラシやシャンプー。建物は廃業した
ラーメン店で、看板に「ら〜めん かぞく」の文字が浮かぶ。
敷地は雑草だらけだ。店の関係者は開業の理由について
「金券の利用も念頭にあった」と言う。

こうした業者が町に進出するのは、町が刷った大量の金券と
市場規模が釣り合っていないこともある。町が15年度に贈った
金券は約12億円。町の年間の町税収入の10億円を上回る。
小売業売上高が90億円ほどの町に多額の金券をさばける店は
多くないからだ。

「ふるさと納税の目的は節税」。
「100%得をする ふるさと納税生活」の著者、金森重樹氏(46)は
断言する。年収は7億円にのぼるといい、15年度にふるさと
納税した額は約1300万円。うち約1千万円は大多喜町へ。
「大多喜百貨店」を中心に通販で高級腕時計やシャンパン
など数百万円分を買ったという。

 大多喜町のほかのお店にも足を運んでみた。

大型連休初日の4月29日、家族経営の電器店。

川崎ナンバーの高級外車でやってきた自営業の男性と妻が、
最新の冷蔵庫など約25万円分を選んでいた。大半を金券で購入。
男性は「町を4回訪れ、大きな買い物はここでした」と話した。

町の複数の電器店が、事実上の通信販売も行ってきた。
この店にも全国から注文メールが押し寄せ、対応にてんてこ舞いだ。
多くの客は実質負担2千円で高額の家電製品を買っている
ことになるが、店主は「ネットで価格を比べて、価格に
かなり敏感だ」と語る。

町の中心部のスーパー「いなげや」では、別の夫婦がカートを
連ね、かご四つに山盛りの買い物をしていた。レジで渡したのは
分厚い金券の束だった。

町内のある業者はここ数カ月で200万〜700万円の新車を
数台、全額金券で売った。業者は「町がからんだ、お金持ちの
合法的な節税対策が行われている。これでいいのかと
迷いながら販売した」。

総務省は4月、金券や家電製品など資産性の高い返礼品を
贈らないよう自治体に通知。
しかし、大多喜町は金券発行を続け、自治体の競争は過熱する。
町の担当者は「金券は町内使用が前提。
一般的な『金券』には当たらない」とみる。

総務省の通知に逆行するように4月、千葉県勝浦市と
群馬県渋川市は金券を返礼品に加えた。金券で潤う近隣の
自治体に追随した。勝浦市の担当者は「隣が大多喜町。
寄付や市内の消費が流出するおそれがあった」と打ち明けた。

■「自治体にとっては麻薬」

ふるさと納税は、菅義偉官房長官が第1次安倍政権で
総務相の時、「都会の人もふるさとに恩返ししたい思いがある」と
創設を求めた。しかし、菅氏が2007年に設けた研究会で
返礼品競争への懸念はすでにあった。
豪華な返礼品を贈る自治体ばかりに寄付が集まる半面、
節度を保つ自治体では、地方の都市でも税収が
失われてしまう。

本来、「寄付」は見返りを求めない。実際、熊本地震後、
熊本県南阿蘇村には、返礼品を贈れないのにふるさと納税に
よる寄付は数週間で15年度の4倍の額が集まった。
見返りが前提の今の制度はこうした寄付の理念をゆがめる。

一部では高所得者の「節税対策」の形で利用されている。
国や地方に納められ、福祉や子育てなどに充てられるべき税は、
返礼品に化けて目減りする。街づくり専門家の木下斉氏は
「返礼品頼みのふるさと納税は財源のほしい自治体にとって
麻薬。業者も返礼品を買い集めてくれる役所に依存する。
地方経済のためにならない」と話す。(青山直篤、杉浦幹治)

コメントです
結論から言うと、ふるさと納税のシステムをつくった政府も、
富裕層も問題ないです。
きちんとした手順で節税を行っているわけですから。

問題は、節操なく高率な返礼品で富裕層を引きつける
一部の地方自治体に有り、ですね。




posted by salsaseoul at 03:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2016年05月14日

「新耐震」でも崩れた 激震2回、26棟が全壊・倒壊 熊本・益城、惣領南部地区では

朝日新聞 2016年5月14日


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益城町惣領南部地区の建物被害状況<グラフィック・甲斐規裕>


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益城町惣領南部地区の被害状況



熊本地震で震度7を2回観測した熊本県益城(ましき)町で、
朝日新聞は被害が大きかった惣領(そうりょう)南部地区の
全ての建物の損壊状況を調べた。激震の連続で、
「新耐震基準」の建物26棟も含め、地区内の約2割の
139棟が倒壊か「全壊」状態になっていた。
地盤が弱い川沿いの埋め立て地だけでなく、古くからの
宅地も含めて被害が広がっていた。専門家は
「新耐震でも十分ではない場合がある」と警鐘を鳴らすが、
国土交通省は基準の見直しについて慎重だ。

復旧工事に関わる車などで、日中は渋滞しがちな県道の
南側に広がる住宅街。惣領南部地区は、一歩足を踏み
入れると、ぺしゃんこに崩れ落ちた家々が 四方に
広がっていた。電柱は倒れかかり、電線は地上近くまで
垂れ下がったまま。車1台がやっと通れる道路は、
がれきで埋まっていた。

倒壊した建物が最も多かったと複数の町民がいう
この地区で、朝日新聞は、県建築士会の協力を受け、
地区内の建物全667棟を独自に調査。約2割の139棟が
倒壊したり建て替えが必要なほど損壊したりしていた。
うち26棟は新耐震基準の建物だった。これらの家屋は
地区内にまんべんなく広がっていた。

 ■資産価値ゼロに

1カ月前まで、暮らしの息吹が感じられたはずの場所は今、
静まりかえっている。そんな中、主婦の佐野幸子さん(66)は
黙々とがれきの片付けをしていた。

夫(69)の定年を見据えて、1989年に木造2階建ての家を
建てた。81年の建築基準法改正を受け、震度6強〜7程度で
倒壊しないことが目標の新耐震基準が適用された。
2人の子が独立し、「これから夫婦でゆっくりできる」。
そう考えていた矢先だった。

4月14日夜の前震で被害はなかったが16日未明に本震が
襲う。2階部分の柱は大きく傾き、大半の窓ガラスが割れた。
外壁に約1メートルの亀裂がいくつも入り、1階の風呂の壁は
崩落した。「資産価値はなくなった。夫の退職金をつぎ込んで、
やっとローンを払い終えたのに。ほんの数十秒で全てを奪って
しまうんですね」。佐野さんは肩を落とす。

佐野さん宅について、同会は「建て替えが必要。市町村の
罹災(りさい)証明の調査で『全壊』と認定される可能性が高い」と
指摘した。

政令指定都市の熊本市中心部から南東へ約9キロ。
地区は近年、熊本市内に通うサラリーマンらのベッドタウンに
なりつつあるという。地元の建設会社長(66)は「以前は重い
瓦屋根の古い家が多い地域だったが、近年は空き地に
新しい家が建ち始めた」と話す。

 ■「離れたくない」

岩下仁作さん(85)宅もそんな家の一つ。63歳で会社を退職後の
95年、古い自宅の隣に新耐震基準の家を建てた。妻と2人で
暮らすには古い家でも十分だったが、「いつか自分の力で
建てた家に住みたい」と、こつこつためた約1千万円をつぎ込んだ。
孫やひ孫が遊びに来られるように部屋は八つ。
将来は息子に譲るつもりだった。

そんな自慢の家は、2度の激震で全壊状態になった。
巨大な瓦屋根が地上付近まで落下。
1階部分は完全に押し潰された。

「やっとの思いで建てた家。この場所を離れたくない」。
岩下さんは時折、涙を浮かべて話した。

福岡大学工学部の古賀一八教授(建築防災学)によると、
建物の被害は町内でも県道の熊本高森線と秋津川の間の
惣領南部地区で特に大きい。「一帯は河川や扇状地を
埋め立てた地盤の弱い地域を宅地化しており、液状化の
現象もあちこちで起きた」と指摘する。

朝日新聞の調査で、倒壊したり建て替えが必要な状態
だったりした139棟のうち、「旧耐震基準」で建てられた家は
90棟あった。

旧耐震で倒壊した家は重い瓦屋根が目立つ。
荒牧不二人さん(当時84)は瓦ぶき木造2階建ての自宅の
下敷きになって死亡した。近所の主婦(71)は「昔、この辺りで
一番立派な家だった」と話した。

町内にある工務店の社長(70)は「旧耐震の家も新耐震の
家もまんべんなく壊れている印象だ」と語る。

 ■震度7級、耐震性3〜4割に低下

震災への最大の備えは耐震化だ。建物が壊れたとしても、
少なくとも人命は守ることを目的に、耐震基準は大地震の
たびに強化されてきた。
建物被害が目立った熊本地震は耐震化の重要さを改めて
示すとともに、新たな課題も突きつけた。

耐震基準は1978年の宮城県沖地震を機に、81年に大幅に
引き上げられた。それ以前の建物は、新しい建物と比べて
耐震性が劣るものが多い。日本木造住宅耐震補強事業者
協同組合が全国で耐震診断した約2万棟の結果を集計した
ところ、80年以前の建物の98%が震度6強以上で倒壊する
可能性があったという。

熊本地震の被災地を調査した建築研究所の槌本敬大
上席研究員は「揺れの大きかったと思われる地域では、土壁の
家や、筋交いがない家はほぼ間違いなく壊れていた」と話す。

新耐震も万全ではない。益城町の約200棟を調査した
宮澤健二・工学院大名誉教授(耐震工学)によると、
新耐震で建てたとみられる住宅約120棟のうち約70棟が
倒壊か大破し、被害は2000年以前の建物に集中していた。
この年は、95年の阪神大震災を受けて、柱と土台、はりを
つなぐ金具や、壁の配置に関する規定が厳格化された。
「新耐震でも金具が十分でないものがある」と言う。

さらに、日本建築学会九州支部が益城町で行った2600棟
規模の調査では、00年以降に建てられたとみられる
木造家屋でも全壊したものが約50棟あった。

原因分析はこれからだ。木造の場合、震度7級の揺れで
10センチ程度変形し、耐震性能は3〜4割に落ちる。
強い揺れの繰り返しが被害を拡大した可能性がある。
また、造成した盛り土が崩れて倒壊したり、弱い地盤によって
局地的に揺れが増幅されたりした可能性も指摘されている。

 ■基準見直し、国は慎重 建設コストが増加、住宅価格に影響も

東京理科大の井口道雄名誉教授(耐震工学)は「現在の
耐震基準は震度7の地震が連続して起きる事態を想定して
いない。耐震基準は命を守るための最低限の基準。
国や業界は住民が安心できる基準作りの議論を始める
べきだ」と指摘する。

だが、基準の見直しについて、国土交通省は現段階では
慎重だ。同省幹部は「新しい住宅で倒壊したものは一部。
原因も分からず、基準の見直しを検討する段階ではない」と
話す。

同省は専門家を現地に派遣し、倒壊家屋を調べている。
別の同省幹部は「原因を特定し次第、現在の基準が十分か
どうか予断を持たずに検証したい」という。

仮に基準が見直されれば、横揺れに強い壁の量を増やす
必要がある。約5200万戸ある既存の住宅の改修は強制には
ならないとみられるが、新築は義務づけられる。
阪神大震災をきっかけに耐震改修促進法ができ、81年以前に
建てた旧耐震基準の住宅について耐震診断や耐震工事の
費用を一部補助する仕組みがある。だが、2013年時点で
耐震性不足の住宅は全国に約900万戸ある。

不動産コンサルタント会社「さくら事務所」(東京都)の
朽木裕二建築士は「耐震基準を強化すれば、建設コストが
増し住宅価格は上がる。
ハウスメーカーや消費者への影響は大きい」という。

コメントです。
熊本大地震で新耐震基準でも家屋が倒壊した話題です。

大地震のたびに耐震基準が見直されたと本文にありますが、

自然災害が相手ですから、どこで線を引くかは困難ですね。
基準を上げすぎたら建設コストが膨れ上がるし、現状でいくと
大地震に耐えられない。
いずれにしても、今回の熊本大地震、2度の本震など
これまであまり聞かなかった事例ですから、今日の記事にも
あるように、今後、より多くの教訓を与えてくれることでしょう。


posted by salsaseoul at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

「死刑にうちの製品使うな」 ファイザーが販売を限定

朝日新聞 2016年5月14日

米製薬大手のファイザーは13日、自社製品が死刑執行に
用いられないように、流通を規制すると発表した。米国では、
麻酔薬などの注射による死刑執行が一般的だが、
死刑を廃止している欧州との関係などから製品の使用を拒む
製薬会社が相次いでおり、ニューヨーク・タイムズによると、
通常の流通ルートで執行のための薬物を購入することは
これでできなくなる。

死刑を維持している米国の州の間では、第三者を通じて薬物の
購入を試みたり、電気椅子や射殺などの方法を検討したりする
動きが出ており、今後も拡大するとみられる。

ファイザーは昨年、執行に使われている薬物などを製造してきた
ホスピラ社を買収した。13日の声明では「製品は患者の命を救ったり、
良くしたりするためだけに製造しており、極刑の執行で用いられる
ことに強く抗議する」と表明。今後は、死刑執行のために販売しない
ことを条件に、執行に使われる可能性がある薬物は限定した
業者にしか販売しないという。(ダラス=中井大助)


コメントです。
ファイザーの表明及び方針は

@欧州市場を意識したもの
A死刑反対を示唆したもの
B企業イメージの改善
いろいろと考えられますが、
実際、死刑で使用される薬剤の売り上げと
企業イメージダウンを天秤にかけたら、
営利企業としては当然後者を優先します。
いずれにしても、薬剤の流通を規制したところで、
それが死刑執行の妨げになるかといえば、
代替方法はいくらでもあるので、なりませんね。


posted by salsaseoul at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米

(世界発2016)元IS戦闘員、覚めぬ悪夢 だまされシリアへ 訓練強要、最前線に

朝日新聞 2016年5月12日

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過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員だったタジキスタン人の
男性が朝日新聞記者の取材に応じた。若者は出稼ぎ先の
ロシアの経済が悪化する中で、誘い出された。彼が語ったのは、
仲間が消耗品のように殺されていく狂気の光景だった。

 ■勧誘受け旅行気分で

「旅行に行き、仕事も見つかればいいと思った」。
ボボジョン・カラボエフさん(30)は、シリアに向かった
経緯を話し始めた。

イスラム教徒が多いタジキスタンの首都ドゥシャンベ郊外出身。
学校を中退後、2006年からモスクワで働いた。建設作業員と
タクシー運転手を掛け持ちし、多い月は約32万円を稼いだ。

だがロシア経済が悪化。15年、賃金不払いに見舞われた。

落ち込んでいた時、建設現場で「ハリド」と名乗る同胞と知り合った。

ハリドは「ここよりISでの生活の方がいい」と繰り返した。
IS支配地域は平穏だとし、「工場建設」や「道路舗装」の様子の
ビデオを見せた。「まずは旅行に行き、気に入れば働けばいい」と
提案した。

シリアの知識は何もなかったが、昼夜問わず誘われるうち、
5日後には行こうと決めた。いまにして思えば、ハリドは
ISに若者を送り込む勧誘員だった。

15年4月末、航空券を渡され、1人でトルコのイスタンブールに
飛んだ。協力者に指示されてバスでガジアンテップへ。
キルギス人の家族らと合流し、10人でタクシー2台に分乗して
シリア国境に着いた。有刺鉄線が切られた部分から歩いて越境した。

バスで近くの小学校跡に連れて行かれた。聞いていた状況と
違うと、すぐに分かった。自動小銃を構えた戦闘員がパスポートや
携帯電話を取り上げた。

翌日、ISが首都と称するラッカに着いた。男性は地下室に入れられ、
女性と子どもはどこかに連れて行かれた。地下室には中東や
旧ソ連諸国、米国や欧州から150人以上の若者がいた。
大半がだまされて来たようだった。「イスラム教の講義だ」
として略奪の方法を教えられた。

3日目にチュニジア人が倒れ、病院に運ばれた。その後、
「逃走したのでスパイ容疑で殺された」と聞かされた。
恐ろしくて、誰も不満を口にできなかった。

 それでも、いつかここから逃げ出すと決めた。

 ■司令官「なぜ生き残った」

1カ月半後、旧ソ連諸国の出身者で編成された部隊に
配属された。パルミラでは「訓練はいやだ」と反抗し、
監獄に5日間入れられた。戻ってみると、同じ部隊にいた
タジキスタン人20人のうち16人が軍事訓練の間に
死んでいた。理由の説明はなかった。

初めての戦闘では最前線に配置された。砂ぼこりで敵の姿は
見えない。砲弾が近くに落ち、とっさに地面に伏せた。
「突撃しろ」と無線で指示されたが、そのまま10時間過ごした。

拠点に戻ると、恐怖でパニックになった戦闘員はみな
「戦いたくない」とロシア南部ダゲスタン出身の司令官に
抵抗した。「逆らうと殺す」と言われてもおさまらず、
味方同士で戦う寸前までいった。

次の戦闘では、最前線に行くふりをして物陰に身を潜めた。
司令官が突撃命令を出すと、参謀が「彼らはすぐに死ぬ」と
言い、2人で食事の相談を始めた。約70人が戦闘から戻ると、
司令官は「なぜ生き残ったのか」と怒った。
戦闘員は無意味に死ぬだけだった。

一方、幹部はBMWやトヨタなどの高級車を乗り回し、
エアコン付きの家に住んだ。遺跡や街で略奪を繰り返し、
気に入らない者は殺した。市街地の通りに生首が転がり、

死体がつり下げられた。幹部はイスラム教を名目に正当性を
強調したが、本当の教えでないのは明らかだった。

同年8月、支給された50ドル余りを使い、トルコ国境近くまで
乗せてくれるタクシーを見つけた。検問所ではIS発行の
証明書を見せ、「ISに加わる知人を迎えに行く」と言って逃げた。

いまはタジキスタンに戻り、建設会社で働く。だがシリアのことを
知った友人からの連絡は途絶えた。
結婚したくても、「そんな男と娘を結婚させられない」と親に
拒否される。

「もう100回以上、後悔した。ただ普通の生活がしたい」

 ■過激派へ流出、対策懸命 タジキスタン

タジキスタンはアフガニスタンに隣接し、ロシアなど
旧ソ連諸国にとってはISなどの過激派組織に対する
防衛線だ。昨年5月、治安警察のハリモフ司令官が
ISに参加したことが判明しており、ISなどの浸透を
防ぐのに懸命だ。

ISで戦うタジキスタン人は約1千人と言われる。
タジキスタン捜査当局は、同国人のIS戦闘員の95%を
特定したとし、写真と名前などを記載したリストを作成。
戦闘員らの逮捕だけでなく、帰国を促すためにも使われる。

昨年には、自らの意思で過激派組織から抜けて帰国した
場合は罪に問わないとする法律もつくられた。
カラボエフさんにも適用され、内務省などの取り調べ後に
釈放された。

ただ国内で取り締まりを強めても、ISへの流入を断つのは
難しい。9割がロシア経由で参加しているとみられるからだ。
旧ソ連諸国からは5千人以上が過激派組織に参加して
いるとの見方もある。

ロシア移民局によると、出稼ぎ労働者など中央アジアから
ロシアへの転入者は16年2月時点で約380万人。
不法滞在者も100万人近いとみられる。ロシア経済が
悪化する中、ロシア大統領直属のイスラム学センターの
ファイズーロ・バロゾダ所長は「長年働いてきた人が
職を失えば、ISに向かいやすくなる」と指摘する。

 (ドゥシャンベ=中川仁樹)


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2016年05月10日

貧困救った幸せのバッグ 日本企業、途上国従業員を厚遇

朝日新聞 2016年5月9日


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バッグの仕上げをするホセインさん。収入は召使時代の2・5倍になった=ダッカ郊外


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マザーハウスの工場。従業員180人ほどがバッグをつくっていく=ダッカ郊外

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マザーハウスの工場でバッグを縫う従業員。増えた収入で自宅を建て、
息子の結婚費用も出せたという=ダッカ郊外、福田直之撮影

■2030 未来をつくろう

古びた自動車や人力車が行き交うバングラデシュの首都ダッカ。
渋滞で車が止まると、物売りや物乞いが窓を小突く。そんな街の
中心部から車で1時間半ほど西に行った郊外に、180人ほど
が働く工場がある。布や革を切り出し、ミシンで縫い上げ、
バッグを仕上げていく。

国連によると、バングラデシュは1日1・25ドル(約134円)
未満で生活する人が人口の4割超(2010年)を占める貧困国だ。
13年、違法に増築された衣料品工場が入るビルが崩落し、
1千人あまりが亡くなった。先進国の衣料品メーカーが安い
労賃を求めて拠点を構える「世界のアパレル工場」と言われる
裏で、労働環境の劣悪さが見逃されていた。

だが、このバッグ工場は様子が違う。仕上げ担当の
ジャハンギール・ホセインさん(27)は、富裕層の家で召使を
していた。そこから転職してきて7 年。月収は1万タカ
(1万4千円)を超えた。前職の2・5倍だ。
「冷蔵庫やテレビがある大きい部屋に住めて家族も養えています」。
最近、家を建てるため の土地も買った。

平均給与は業界平均の7800タカより5%ほど高い。
責任者のモハマド・マイヌル・ハックさん(38)は
「医療保険も完備していて、大きなお金が必要なときは
会社の無利子ローンも使えます」。検品部門の明るい
照明をまねするなど、他社が待遇面の参考にし始めている。

工場の所有者は日本のベンチャー企業「マザーハウス」
(東京都台東区)だ。大手メーカーと異なり、デザインから
製造、販売まですべて責任を持つ。現地調達した革や
植物のジュートでバッグをつくり、手厚い待遇で従業員を
貧困から救う。デザインも担う山口絵理子社長(34)は
「途上国発の世界に通じるブランド」をめざす。

工場から約5千キロ離れた東京都心。ナチュラルな内装の
マザーハウス本店に並ぶバッグは、革素材ながら軽く、
デザイン性の高さなども女性に喜ばれている。
2万〜5万円ほどで決して安くないが、それでも貧困を
減らす新しい支援のかたちに魅力を感じる消費者に
支えられ、経営は軌道に乗り始めた。

■倫理性を重んじる消費者が支持

貧困や格差といった課題の解決に役立つ製品・サービスを
提供する企業、それを選ぶ消費者が増えている。
国連による2030年までの「持続可能な開発目標
(SDGs)」にも一役買う新たな動きだ。

2日午後、東京都台東区のマザーハウス本店。8日の母の日が
近づき、買い物客らがプレゼントを探していた。
20代の女性は「バングラデシュで働く人のためにもなる。
商品選びのプラス材料です」。

こうした考え方は「エシカル(倫理的)消費」と呼ばれる。
売り上げの一部がカカオ産地の児童労働を防ぐ取り組みに
寄付される森永製菓のチョコレート、原材料の安全性テストに
動物を使わない英ラッシュの美容用品――。
倫理性を重んじる消費者の支持こそ、マザーハウスの強みだ。

同社は3月、創業10年を迎えた。ダッカの大学院で開発学を
学んでいた山口絵理子さんが、単なる資金援助では貧困を
解決できないと考え、布の材料になる現地の植物ジュートを
使った「かわいい」バッグを輸出しようと起業した。

順風満帆ではなかった。当初は工場の確保もままならず、
買い付けた素材を丸ごと持ち逃げされたこともあった。
それでも、できた商品は消費者が意義を感じて買ってくれた。
開発拠点にしてきた工房の退去を迫られたのを機に、
いまにつながる自社工場を建てた。

品質とデザインにこだわる。山崎大祐副社長(35)は
「自社企画だから良いものがつくれる。なるべく在庫を持たず、
セールもしません」。ただ、そ れが現地で十分に給料を支払い、
職人を育てている対価であるというストーリーとなり、ファンを
増やした。経営的には、ここ4年でようやく安定し、直近の

年間売上高は10億円、営業利益は1億円をそれぞれ超えた。

生産地や品目は増えている。09年に進出したネパールでは、
地元名産のシルクやカシミヤを使ったストールを、糸紡ぎから
染色まで一貫生産する。さらに源流を追って養蚕にも
乗り出す予定だ。15年には、インドネシアのジョクジャカルタに
伝わる線細工フィリグリーを使ったジュエリーの生産も始めた。

売り上げは、ほとんどが直営店での販売だ。日本の18店の
ほか、台湾に6店、香港に2店を構える。「途上国から世界に
通用するブランドをつくる」という哲学への共感は、海外の
顧客にも広がる。

台湾の会社員、曹斯永さん(33)も、そんなうちの一人だ。

「品質やデザインにもひかれています。友達や家族にも
薦めているところ」という。昨年、台北でマザーハウスが開いた
イベントで山口さんに頼み、特注の結婚指輪をつくってもらった。

山口さんは「『人生とつきあうブランドにしたい』と思い始めた
ところでの依頼でした。結婚という場なら、きちんと表現できる」
と話す。起業当初、採用面接したバングラデシュの女性は
「15人の家族のために頑張ります」と言った。最近、
途上国では「家族の絆こそがすべての核」と改めて思っていた。

途上国での経験と、消費者との対面が、商売の新たな
コンセプトを生み出しつつある。マザーハウスは今夏、
オーダーメイドによる指輪の受注を始めるつもりだ。
(ダッカ=福田直之)

     ◇

《持続可能な開発目標(SDGs)》 
昨年9月の国連総会で決められた、2030年までの
15年間で取り組む行動計画。今年1月にスタートし、
30年末までの達成を目指す。「貧困をなくす」
「ジェンダー平等」といった17項目からなる。
国連は01年に「ミレニアム開発目標(MDGs)」をまとめ、
15年の達成期限までに途上国の貧困改善などに
成果を上げた。その後継としてSDGsがつくられ、

従来の途上国支援に加え、気候変動への対策など
幅広い課題も盛り込まれた。法的拘束力はないが、
国連を中心に進み具合を監視していくことになっている。




posted by salsaseoul at 01:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 南アジア・インド周辺国

2016年05月08日

あのPC―98が高値で売られてた 意外な場所で活躍中

朝日新聞 2016年5月4日

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日本のパソコンの代名詞だった、往年の名機「PC―98」シリーズ。
スマホとタブレットがひしめく21世紀に、いまだ中古市場で根強い
人気を誇る。たった80MBしかないハードディスクが1万数千円する
など、周辺機器も高値で取引され続けている。どういう人たちが
買っているのか? 専門通販ショップ店主に聞いた。

■家庭向け本格PCの先駆け

PC―98は、NECが 80年代から販売していた16ビットマシン。
当時としては高精細なグラフィック処理を得意とし、旧来の
ビジネス用途のほか対応ゲームソフトもたくさん出回 り、家庭向け
本格PCの先駆けとも言える存在だ。ピーク時の国内シェアは
少なくともビジネス向けで8割、個人向けで5割以上あったとされる。

しかし、インターネット時代に適応したマイクロソフトのOS
「ウィンドウズ95」の登場や、より汎用(はんよう)性の高い
共通規格のDOS/V機(いわゆるウィンドウズPC)が国内外の
メーカーから多く出回るようになると、独自のソフトやハードが
逆に足かせとなりシェアが低下。旧来の規格を土台にウ
ィンドウズに対応していったが、ウィンドウズ98SEを積んで
2000年6月に発売された「PC―9821NR300/S8TB」が
最終モデルとなった。

■ジャンク品でも数万円で出品

さらに時代は下って、ウィンドウズPC の全盛期も過ぎて
情報通信の主役がモバイル端末に移りつつある2016年。
完全に使命を終えたかに思えたPC―98だが、ネット通販などでは
根強いニーズ に裏打ちされた高値取引が続く。オークションサイト
大手「ヤフオク!」では、「PC―98」カテゴリーで1400件超の
出品がある(5月4日時点)。動作 を保証しないジャンク品で
さえ数万円で売り出されている。

 今もって愛用し続けているのは、一体どういった人たちなのか?

PC―98シリーズを専門に扱う修理販売ショップ「PC―98のミシマ」
(静岡県伊豆の国市)の店主・井口智晴さん(34)によると、
工場での生産ライン管理や、部品を設計・製図するCAD(キャド)
システムを動かすのに活躍しているという。

■PC―98が組み込まれた生産ライン

80年代後半―90年代前半のバブル経済期 に設備投資された
工場設備は、開発コストを抑えるため、当時の汎用機だった
PC―98でシステムを組むケースが多かったという。
その後、不況に見舞われる などしてシステムを更新する
タイミングを逸して当時のまま使い続けている工場こそが、
今もPC―98が活躍する現場だ。

そう聞くと、設備投資に費用をかけられず最新デバイスにも
なじめないような町工場の高齢経営者を想像してしまう。
しかし意外にも、ロングセラー商品を作っているような大企業ほど、
古い設備の更新に膨大な費用がかかるため、古いPCを
使い続けるケースが多いという。

ほとんどがウィンドウズ以前の「N88―BASIC」や
「MS―DOS」といった当時のOSで動いている。
ミシマの顧客には「自動車やインフラ、電車製造など、
みんな知ってる有名な会社さんもいます」とのこと。

■倉庫には1千台のPC―98

ちなみにNECによると、PC―98の保守期間は2010年10月に
終了している。新品の買い替えが不可能なうえにパーツ供給も
ないため、ユーザーは既存の機器やパーツを修理しながら
使い続けるしかない。

そのためミシマでは、倉庫にPC本体だけで約1千台を確保。
CADのデータを読み書きするためのフロッピーディスクドライブは
2千台近くあるとい う。仕入れ時にはジャンク品同然だったり
するものも、分解して部品交換したり顧客の求める仕様に
カスタマイズしたりしながら、きちんと動くようにして一日
に数台のペースでコンスタントに売っている。

■「生産ラインが止まった」駆け込む工場担当者も

こういった専門業者に頼るしかない現場のニーズは切実だ。
なかには「PC―98が壊れたせいで生産ラインが止まってしまった」と、
アタッシェケースに入れて持ち込み修理に駆け込んできた
工場担当者もいたという。

周辺機器も引っ張りだこだ。1万800円の未使用品のマウスは
在庫切れ。ハードディスクは内蔵タイプの80MBモデルが
1万2960円だ。

業務用のバーコードリーダーは4万8600円。
LED式の最新型を、変換アダプターを介してPC―98に
接続できるように加工している。自動車部品工場で、
出荷時のタグの読み取りに用いられるという。

■まるでヴィンテージカー

さらに、近年は個人客からの問い合わせもある。
ロールプレイングゲームやシミュレーションゲームなど
80年代のレトロゲームがマニアの間で静かな人気だ。
ミシマでも、「懐かしい」「昔に持っていたのと同じマシンが欲しい」と
買い求める個人客が年に数人ぐらいいるという。

ただ、井口さんは「ブームはありがたい」としながらも、
「ファミコンと同じ感覚では(ハードを)維持できない」とクギを
刺す。たとえば、当時のゲームソフトである古いフロッピー
ディスクにはカビが生えてしまっていることも少なくなく、
そのまま挿入するとドライブが使えなくなってしまう。

まるでヴィンテージカーのごとく、専門知識やきめ細かい
メンテナンス、丁寧な取り扱いが求められる。

■製造元のNECは

知る人ぞ知るロングセラーとなっている中古のPC―98。
製造元のNECはどう思っているのか。

NECコーポレートコミュニケーション部の担当者は、
「(PCの知識が豊富で)よくお分かりになっている方に
お使いいただいているのだろう。大切に末永くご愛顧
いただきたい」と話している。(北林慎也)

コメントです
実際、製造現場では設置30年を超えた設備が多くあります。

もちろん大手企業でも、たとえばラック倉庫とか更新すれば
億円単位の費用がかかり、そして現状、特に問題もなく
稼動していれば、あとは、それを動かす頭脳部の旧式PCが
いちばんの要となり、今日の記事にあるようにその当時の
PCが必要となってきます。
極端に言えば、たった10数万円のパーツが手に入らないために、
億円単位の設備が産業廃棄物となる可能性もあるわけです。

ウィンウィンの関係かもしれませんが、このように当時のPCを
相当数在庫、修理、販売していただいている企業がある
ことによって、日本の製造現場担当者はものすごく安堵感を
抱いているはずです。



posted by salsaseoul at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境

2016年05月05日

歩道にオートバイ、体張って「ストップ」!インドネシア女性に称賛

AFP 2016年05月05日

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インドネシアの首都ジャカルタで、歩道を走るバイクドライバーらに怒り、両手を広げて
止めようとするインドネシア人女性アルフィニ・レスタリさん(2016年5月2日撮影)。
(c)AFP/THE JAKARTA POST/DHONI SETIAWAN

【5月5日 AFP】交通渋滞の激しいインドネシアの首都ジャカルタで、
歩道を走るオートバイに怒り、両手を広げて止めようとした
インドネシア人女性の画像がインターネット上で広まり、
話題となっている。

女性は34歳の調理師、アルフィニ・レスタリ(Alfini Lestari)さん。
今週、ジャカルタの大通りでラッシュアワーに歩道を駆け抜ける
多数のオートバイに腹を立て、両手を広げて文字通り、
体を張ってドライバーたちを止めようとした。このときの画像が
国営紙の一面を飾ると、すぐにインターネット上でも拡散された。

公共交通の乏しいジャカルタの交通渋滞は世界的にも激しく、
歩行者が快適に歩ける地域はほとんどない。歩道をオートバイで
走るのは違法だが、違反するオートバイの運転手は多く、
歩行者の命を危険にさらしているとして非難されている。

レスタリさんはAFPの取材に対し「多くのオートバイの運転手が
私に腹を立て、どけと言われたり、『狂った女』などと言われたり
したけど、気にしない。私の方が正しくて、彼らの方が
間違っているんだから」と述べた。

ネットユーザーたちはレスタリさんを称賛。ツイッター(Twitter)では、
「Save the Pedestrians(歩行者を救え)」のハッシュタグが
設けられている。(c)AFP


コメントです。
もちろん彼女の行為は賞賛に値しますが、
うまく撮影したな、って感じが伝わってきます。
ベストショットですね。
もちろん、「やらせ」などではなく、
アクションの瞬間に、彼女の身が危険に
さらされた代償としてこれほど注目を
集めたわけですから、この行為、
問題提起として成功ですね。



posted by salsaseoul at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 東南アジア

(人口減にっぽん 海外から考える:上)子だくさん、厚い支援 高い出生率、フランスは

朝日新聞 2016年5月3日
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32年間で162人の子どもの面倒をみてきた
保育ママのフローランス・キュイサールさん=パリ市

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2月に公表された2015年の国勢調査で、日本の人口は
5年前より100万人近く減った
。「保育園落ちた」の匿名ブログ問題は、子を産み育てにくい
日本の状況を改めて浮き彫りにした。
少子化・人口減に歯止めをかける有効な手立てはあるのか。
先進国では高い出生率を維持するフランスを訪ねた。

 ■保育ママ31万人/税優遇

パリ郊外に住む会社員、ギャラト・ビルジニーさん(35)は、
小学2年の長男を育てているシングルマザーだ。長男が
小さいときは、託児所に空きがなく、家で子どもを預かる
「保育ママ」に頼んだ。
「充実した保育サービスがなければ、仕事は続けられなかった」

フランスでも3歳以下の子ども約240万人のうち、託児所に
入るのは1割に過ぎない。それをカバーするのが保育ママ
の存在だ。国内に31万人いる。

「子どもたちの成長をみるのは、生きがい」。
パリ市東部の自宅マンションで、幼児3人を預かる保育ママの
フローランス・キュイサールさん(61)は話す。
32年間で162人の面倒をみてきた。

保育サービスに加え、給付面も手厚い。フランスで は、子育て
する家庭向けの代表的な家族手当は、2人以上の子どもが
いる家族だと、2人目に対し月約130ユーロ(約1万6千円)が出る。
子どもが14歳に なると加算され、20歳まで支給される。
子が3人以上になるとさらに手当が増える。保育ママを利用して
働く親には補助として手当も支給され、家族が多いほど
所得税が優遇される制度もある。

フランスでは、家族手当が医療や年金と並ぶ社会保障の柱の
ひとつだ。7千超の団体の71万家族が所属する非営利組織
「全国家族協会連合」や、政府や労組、有識者らでつくる
首相直属の「家族高等評議会」など、必要な家族政策を
実現させる「政治力」もフランス特有のものだ。

家族手当を支給する全国家族手当金庫の担当者は
「子育て支援は、将来年金を払ってくれる人の確保につながる」と
話す。フランスが現在の2程度の出生率を維持すると、
2060年の総人口のうち65歳以上の割合は3割以下に
抑えられ、推計で約4割に達する日本と大きな差が出る。

フランスでは、2度の大戦で隣国ドイツと戦った教訓として
出産奨励策が戦後に本格化した。70年代以降は、女性の
社会進出を支援することが家族政策の大きな目的になっている。

フランスの出生率は70年代半ばに2を割り込み、日本を
下回る時期もあった。政策効果が表れ、1・6台で底を打ったのは
90年代。2008年に「2」を回復するまで34年かかった。

 ■不景気、手当削減も

そのフランスの 家族政策も試練の時を迎えている。
今年1月に公表された15年の出生率(速報値)は1・96と、
10年ぶりの低水準。低下を招いたとみられているのが不景気と
緊縮財政だ。失業率は10%と高い水準が続く。財政赤字を
減らすため、家族手当の削減も始まっている。
これまで子どもの数に応じて同額支給されていたが、昨夏から
所得制限が設けられ、年収約6万7千ユーロを超える
世帯は手当が半額、約8万9千ユーロ超の世帯は4分の1となった。

仏西部ナント郊外に住む会社員ナデージュ・ケディラックさん(40)は、
共働きの夫と子ども2人と暮らすが、昨年、家族手当を
月約200ユーロから約50ユーロに減らされた。
「税金はたくさんとられているのに、どうして手当を
減らされるのか」と不満げだ。

リヨン第3大学のジャック・ビショ名誉教授は「老人が多くなり
年金は削りにくいが、家族手当は減らしやすい。富裕層の
出生率には手当削減の影響が出るだろう」と指摘する。

 ■<視点>政党は財源の具体像示せ

「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログが共感を呼んだ
日本の状況をフランスの母親たちに伝えると、
「考えられない。保育ママもベビーシッターもいる」との
声が返ってきた。

日本経済研究センターによると、フランスでは、子育ての

負担よりも、手当や税制優遇など給付が多く、
年収3万ユーロの家庭で第3子まで育て上げると
「給付超」の額は計約3900万円に達する。
家族政策への財政支出(国内総生産比)は
日本の1%台に対しフランスは3%近い。

同センターの試算では、日本が出生率2・1と仏並みの
手当や保育サービスを目指すなら年間13兆円の
財源が必要。消費税率を5%幅上げ、すべて子育てに
回す計算だ。増税に頼らず社会保障を組み替えるなら、
医療費の窓口負担増など、社会保障費のうち
高齢者向けの割合を8割台から7割台に減らす必要がある。

ブログ問題後、与野党は競うように子育て支援の充実を
訴える。その財源を増税で賄うのか、高齢者へのサービス
削減で賄うのか。本気で取り組むなら「負担」の具体像を
示すことこそ政治の仕事ではないだろうか。
(編集委員・堀篭俊材)

コメントです

フランスをやり方を取り入れることができるかといえば、
必ずしもそうではないですが、それでも参考にはなりますね。
いい記事です。



posted by salsaseoul at 11:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州

(世界発2016)5兆円開発、中国が丸抱え 港湾や発電所整備 パキスタン

朝日新聞 2016年5月3日

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中国の支援で建設されたパキスタン南西部のグワダル港=武石英史郎撮影


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成長著しい新興国インドと制裁解除で投資熱に沸くイラン。
その間に挟まれたパキスタンに、空前の開発ブームが訪れている。
総事業費は約5兆円。
その内実は、アラビア海への出口を求めて
南下する友好国・中国の「丸抱え」だ。

ペルシャ湾の入り口、ホルムズ海峡から東へ約600キロ。
アラビア海に面したパキスタン南西部のグワダルは、2001年から
中国の支援で港が建設されている町だ。
インド洋に点在する中国の戦略拠点「真珠の首飾り」
一つとして注目されてきた。

町外れの空港から、ホテルの送迎バスに乗った。数人の乗客の
うち外国人は私だけだが、自動小銃で武装した警察官4人が
乗るトラックが警備のため先導。すべての交差点に警察官が立ち、
バスが猛スピードで通過するまで一般車両を通行止めにした。

グワダルでは04年に中国人の技師3人が地元の分離独立派に
よる爆弾テロで死亡しているが、治安が悪いパキスタンでは
珍しいことではない。町は軍の管理下に入っており、異例の
厳重警備はグワダルがいかに特殊な町かを物語る。

中国が建設した港には接岸中の船は一隻もなく、人影も
ほとんど見えない。大小のクレーンが稼働せずに立っている
ほかは、前回訪れた03年と何も変わっていないように見えた。

グワダルは、最も近い国内の都市カラチから500キロ以上も
離れた砂漠地帯にある。8万人の人口をまかなう水源がなく、
電気、ガソリン、生鮮品はイランからの輸入。07年に港の
一部が完成して以来、開発が止まった状態が続いていた。

その空気が一変したのは昨年4月。
中国の習近平(シーチンピン)国家主席がパキスタンを
訪問し、シャリフ首相と会談。
グワダル港と中国新疆ウイグ ル自治区を結ぶ輸送路の
建設と、沿線のインフラ整備からなる事業規模約450億ドル
(約5兆円)の中パ経済回廊計画を発表した。
グワダル港と海岸沿いの約 8平方キロの土地の管理を
40年間、中国国有の港湾企業にゆだねる契約も結ばれた。

以来、町の警戒態勢は一気に強化され、中国が管轄する用地は
フェンスで区切られ、中国が造る新空港の建設準備も始まった。
グワダル地区議会のバ ブー・グラブ議長は「5月には、中国の
関係者が大挙やって来る。ただ、どう開発が進むのか、
明かされない部分が多い」と話した。地元の不動産業者に
よる と、01年からの港湾建設で不動産ブームが起きたが、
バブルはまもなく崩壊し、地価はピーク時の1割程度まで
下落した。だが最近、再び8割程度まで急回復 したという。

 ■砂漠に太陽光パネル、原発1基分

インドとの国境に近いチョリスタン砂漠。荒れ地を切り開いた
真新しい一本道に、パキスタンと中国の無数の国旗が
はためく。厳重警備の検問所を抜け、建物の屋上に案内された。
見渡す限り、太陽光発電のパネルが広がっている。

敷地は40平方キロ。すでに100メガワット分が稼働を始め、
17年までに13億ドル(約1400億円)を投じて、1千メガワットに
増強する計画だ。原発1基分に匹敵する発電能力で、
太陽光発電所としては世界最大規模になる。

建設に当たるのは中国の通信大手「中興通訊」系列の
「中興能源」。約800人の中国人と、2千人のパキスタン人が
住み込みで建設作業を続けている。

中国にとって中パ経済回廊計画は、習近平指導部が進める
シルクロード経済圏構想「一帯一路」の代表例との位置づけだ。
多数のインフラ事業からな り、起点となるグワダルの空港
などの整備にかかる8億ドルは、中国からの無償援助や
無利子融資が大半を占める。さらに、グワダルから中国へ
国内を南北に貫 く道路網を整備する計画で、建設費1
0億ドルは中国からの低利融資でまかなわれる。

金額的に最も大きいのが回廊の沿線に造られる発電所だ。
パキスタンは地域によって1日に10時間以上停電するほど
電力不足が深刻で、その解消のた め24カ所の
発電所建設に344億ドルが投じられる。両国の
合弁企業による投資と説明されているが、事業主体や
業者の選定、契約内容の詳細は明らかにされ ていない。

チョリスタンの太陽光発電所は、その中の優先プロジェクトに
位置づけられている。現地責任者のムハマド・アスカリ氏は
「太陽光パネルの価格は世界的に下がっている。
いい時期に建設できた」と話す。太陽光発電ブームだった
欧州の景気減速で、大量の過剰在庫を抱えた中国企業に
とってパキスタンでの大量受注は救いだったとみられる。

回廊計画とともに中国人が急増し、地元紙によると
内務省は国内に滞在する中国人は15年の約8千人から
倍増すると見込む。首都イスラマバードの旅 券事務所では、
ビザの更新に訪れる外国人の6割近くを中国人が占める。
中国人の安全を確保するため、軍と警察は1万7千人
規模の専門警護部隊を創設した。

 (グワダル=武石英史郎)


真珠の首飾り戦略

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真珠の首飾り戦略(英語: String of Pearls)とは、香港から
ポートスーダンまで延びる中国の海上交通路戦略である。
海路は、海軍が戦略的な関心を持っているパキスタン、
スリランカ、バングラデシュ、モルディブ、ソマリアだけでなく、
戦略的チョークポイントであるバブ・エル・マンデブ海峡、
マラッカ海峡、ホルムズ海峡、ロンボク海峡などを通っている。
この表現はアメリカ国防総省部内報告書の
"Energy Futures in Asia"で使われていた。
"真珠の首飾り"は中国の南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、
ペルシャ湾までの港と空港へのアクセスの増加のための努力、
特殊な外交関係の構築、近代化した軍事力の伸張を通した
地勢的な影響力の向上の兆候を表している。

 

中国の国家主席胡錦濤は中国の海軍戦略のゴールを
「調和の海」、「中国は覇権を求めないし、他国との
軍事力拡大や軍拡競争も求めない」としている 。
しかし、いくらかのインド人は真珠の首飾りはインドを
軍事的な不利益に押し込めると感じており、これに対する
インドの大戦略の喪失は中国にインド洋沿岸諸国との
関係の拡大を許していると考えている。

コメントです

つい、数ヶ月前の報道で、中国がギリシャの主要港を
抑えたとありました。
ここから欧州への進出が容易になります。
そして、今日の記事によると今度はパキスタンです。
中国は、航路やエネルギー供給を着々と確保して、
最終的に世界制覇を目指しているのでしょうか?
余談ですが、韓国、済州道も中国がそうとう触手を
伸ばしている場所です。過疎化が進むことに
つけこんで、土地を買い漁る動きがみられます。

韓国政府は、もう少し緊張感を持つべきですね。




posted by salsaseoul at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 南アジア・インド周辺国

2016年05月02日

進行性うつ病、認知症初期症状の恐れ 研究

AFP 2016年05月02日

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進行性うつ病、認知症初期症状の恐れ 研究
仏東部アンジェルビリエの老人ホームで親族の手を握るアルツハイマー病患者の女性
(2011年3月18日撮影、資料写真)。(c)AFP/SEBASTIEN BOZON

【5月2日 AFP】55歳以上で進行性のうつ病を患っているケースでは、
将来の認知症リスクが高まる恐れがあるとの研究論文が4月30日、
発表された。論文は、特定のうつ病について、認知症の初期症状で
ある可能性があるとしている。

うつ病と認知症が強い相関関係にあることは、これまでの研究で
知られていたが、その詳細については分かっていなかった。
今回の研究論文では、初めてうつ病のタイプによって、
その関係性に違いがあることが示されている。

うつ病には、一度のみ発症するものや何度も再発するものの

他にも、時間の経過とともに症状が軽減するケースや
逆に悪化するケース、さらには慢性的 なケースもある。
また、その原因をめぐっては、日常生活での有害事象に対する
反応であったり、脳内化学物質や情報伝達機能の異常で
あったりとさまざまだ。

英精神医学専門誌ランセット・サイキアトリー(Lancet Psychiatry)に
掲載された研究論文では、オランダの研究チームが1
993〜2004年に、55歳以上を対象に収集した3325人分の
データを分析。その後10年間にわたる追跡調査を行った。

研究開始当初、対象者全員にうつの症状がみられたが、
認知症患者は一人もいなかった。
最終的には434人が認知症を発症し、このうちの348人が
アルツハイマー病と診断された。

研究チームは、患者のデータをうつ病の種類に応じて

5グループに分類した。進行性のうつ病がみられた
グループでは、255人のうち55人が認知症を発症していた。
他のグループの発症率は約10%であったのに対し、
このグループでは約22%と約1.5倍高かった。

論文の執筆者らは声明を発表し、一定の年齢以上に
おける進行性のうつ病が認知症の初期症状である
恐れがあるとしながら、また、認知症と一部のうつ病では、
その原因が同じである可能性を研究は示唆していると
述べた。(c)AFP


コメントです
進行性うつ病と認知症の関係についての記事です。

まだまだわかっていない点が多いですが、
少しでも解明することによって、治療に向けての
研究材料になればいいですね。
今や、誰にとっても「人ごと」ではありませんから。



posted by salsaseoul at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療

象牙密猟、認めない ケニア政府、撲滅訴え105トン焼却

朝日新聞 2016年5月2日

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ゾウの密猟撲滅を訴え、焼却される大量の象牙=ナイロビ近郊、三浦英之撮影


ケニア政府は4月30日、象牙を目的としたゾウの密猟撲滅を
訴えるため、密猟・密輸者から押収した象牙約105トン
(約8千頭分)を焼却処分した。首都ナイロビの空に、炎と煙が
高く立ち上った。アフリカゾウは密猟で激減。
ケニヤッタ大統領は象牙取引の全面禁止を今秋の
国際会議で訴える方針で、国内取引が続く日本にも
影響が及ぶ可能性がある。(ナイロビ=三浦英之)



関連記事です。

密輸象牙、規制すり抜け 輸入禁止の中国、香港通じ流入
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ショーケースに多くの象牙製品が並ぶ専門店。日本語や韓国語での
案内も出ていた=香港・上環、延与光貞撮影

アフリカで、ゾウの密猟が止まらない。

象牙の密輸や密売に対する国際的な規制が、
骨抜きにされているからだ。
最大の消費地は中国とみられている。
それぞれの現場で、記者が実態を追った。

中国語では象牙の「象」と吉祥の「祥」が同じ発音に
なり、縁起が良いとされる。宝石ほど高価ではないが、
独特の光沢に人気があり、役人などへの贈答品と
しても使われるという。

国際社会の批判を受け、中国では2015年秋から
19年まで、これまで輸入の口実にされてきた
狩猟ツアーの記念品も含め、商業名目での象牙の
輸入を全面的に禁止した。
国内の販売にも厳しい目が向けられている。

南部の広西チワン族自治区柳州。周辺国から密輸象牙が
流入する同自治区でも、昨年の輸入禁止後、中心部の
古美術品市場から象牙が消えたという。
正当な証明書などがないからだ。

だが車で10分ほど離れた玉石や家具などを売る市場では、
「うちにはないけど、向かいの店には売っているよ」と
耳打ちされた。

女性店員に尋ねると、奥からプラスチックケースに

入った象牙を出してきた。中には、ネックレスや腕輪、

仏像、印章など十数個が入っている。
「全部新品の天然物だよ」

長さ7〜8センチの印章は約2万2千円、100玉ほど
連なるネックレスは約6万7千円、15センチほどの
仏像は約17万円だった。

こうした象牙密輸の中継地とされる香港は、世界最大の
象牙販売拠点だ。ワシントン条約で輸出入が禁止され、
発効した1990年より前に輸入された象牙は、政府に
登録した業者に限り、香港内での売買ができる。

大通り沿いの象牙専門店では、仏像などの置物、
結婚祝いに人気のはし、マージャンパイなど数百の
象牙製品が並べられている。はしは約1万4千円前後、
大きな置物では約2800万円を超えていた。

香港外に持ち出すのは違法だが、記者が身分を
明かさずに「中国本土に持ち帰ることはできるか」と聞くと、
店員は「購入したお客様は、持ち帰れるとおっしゃって
いましたよ」と答えた。

業界関係者によると、90年代には日本や欧米の客も
多かったが、5年ほど前から中国の富裕層が主な顧客だ。
中国への持ち出しは禁じられているのではと尋ねると、
「色んな方法があるさ」と笑った。

世界自然保護基金(WWF)香港などは昨年9月、
覆面調査によって密輸象牙が大量に売られていた
実態を公表した。「10トン以上だって、いつでもアフリカから
輸入できる」と豪語する業者もいたという。

WWF香港の労敏恵・高級主任は「制度に欠陥があった」と
指摘する。登録されるのは象牙の種類別の総重量などで、
加工した商品ごとの番号や写真は 不要。販売した分だけ
密輸すれば登録量は変わらず、いつまでも売り続けることが
できるというわけだ。象牙問題に取り組んできた立法会
(議会)の葛珮帆議員 は「香港で違法な象牙が
ロンダリング(合法化)されている」と話す。

 (広西チワン族自治区・柳州=延与光貞)

 ■アフリカ 当局者の汚職、背景か

象牙の供給元であるアフリカ。密輸ネットワークの解明は
難航している。

3月、東アフリカ・タンザニアの港湾都市ダルエスサラーム。
裁判所の廊下に、官吏に付き添われた中国人女性が現れた。

ヤン・フェン・グラン容疑者(逮捕時66)。
昨年秋、少なくとも約700本(約3億円相当)の象牙を
密輸出したとして、タンザニア当局に逮捕された。
東アフリカと中国とを結ぶ巨大な密輸ネットワークを築き、
「象牙女王」との異名をとっていたとされる。

ヤン容疑者は70年代に通訳としてタンザニアに入国。
ダルエスサラームで中華レストランなどを経営し、
2006年ごろから象牙の密輸を始めたとみられる。
米CNNは、中国とタンザニアの交流を進める
ビジネス協議会の事務総長を務めていたと報じた。

捜査関係者によると、東アフリカ一帯で密猟された象牙は、
ダルエスサラームから東南アジアを通じて中国に
密輸されているとみられる。しかしヤン容疑者は
裁判で「象牙の密輸に関わったことはない」と容疑を
否認。地元紙のタウシ・アリー記者(35)は
「彼女が否認を続ける限り、組織の全容解明は難しいだろう」。

密猟や密輸が続く陰には、アフリカ各国の政府関係者の
汚職があるとの指摘も根強い。国際的な野生生物保護団体
「環境調査エージェンシー」(EIA)は、象牙の密猟や密輸に
当局者が関与しているとの見方を公表。14年には
「中国の習近平(シーチンピン)国家主席がタンザニアを
訪問した際、随行団が大量の象牙を購入した」との
報告書を発表した。

タンザニア当局は、EIA報告書に関する朝日新聞
の取材を拒否。当局幹部がケニアで開かれた会議に
出席した際に尋ねると、「EIAの報告書はすべてウソで
デタラメだ」と答えた。

 (ダルエスサラーム=三浦英之)

 ◆キーワード

<象牙取引の現状> アフリカゾウは密猟で年3万頭
前後減り続け、現在は約50万頭ほど。象牙の国際取引は
1989年にワシントン条約で禁止された(発効は90年)。
米国は2014年に国内の取引を原則禁止。
中国も昨年9月、米中首脳会談で「商取引を
停止させるための有効な措置を行う」と合意した。
日本ではワシントン条約発効前の輸入象牙は、
所有者が環境相に登録すれば取引できる。
ただ海外の自然保護団体からは、ネット上での
取引が違法売買の温床となっている、
などの批判が寄せられている。


コメントです
象牙の密輸入に関しては、

ここでも何度か掲載しましたが、
いつまでたっても
「中国本土で欲しがる」―「香港経由」の
強固な構造が崩れることはありません。

日本での爆買いでもわかるように、中国人の
物欲の異常さは理解しがたいものがあり、
(日本を含む東アジア諸国は象牙に関して
グレーゾーンですが)

そのためなら環境破壊や、赤サンゴの密猟、
アフリカ象に関して言うなら、種の絶滅などを
まったく気にせず、ひたすら自分たちの欲望に
まかせて行動します。

それと、何か都合が悪いときに「香港」が
あたかも中国のマジックハンド的役割を
はたす構造も変わりません。
象牙なんて、だれも欲しがらなかったら、
密猟者だっていなくなるはずなんですけどね。
すべては欲しがる人間の責任です。



posted by salsaseoul at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | アフリカ