
ゾウの密猟撲滅を訴え、焼却される大量の象牙=ナイロビ近郊、三浦英之撮影
ケニア政府は4月30日、象牙を目的としたゾウの密猟撲滅を
訴えるため、密猟・密輸者から押収した象牙約105トン
(約8千頭分)を焼却処分した。首都ナイロビの空に、炎と煙が
高く立ち上った。アフリカゾウは密猟で激減。
ケニヤッタ大統領は象牙取引の全面禁止を今秋の
国際会議で訴える方針で、国内取引が続く日本にも
影響が及ぶ可能性がある。(ナイロビ=三浦英之)
関連記事です。
密輸象牙、規制すり抜け 輸入禁止の中国、香港通じ流入

ショーケースに多くの象牙製品が並ぶ専門店。日本語や韓国語での
案内も出ていた=香港・上環、延与光貞撮影
アフリカで、ゾウの密猟が止まらない。
象牙の密輸や密売に対する国際的な規制が、
骨抜きにされているからだ。
最大の消費地は中国とみられている。
それぞれの現場で、記者が実態を追った。
中国語では象牙の「象」と吉祥の「祥」が同じ発音に
なり、縁起が良いとされる。宝石ほど高価ではないが、
独特の光沢に人気があり、役人などへの贈答品と
しても使われるという。
国際社会の批判を受け、中国では2015年秋から
19年まで、これまで輸入の口実にされてきた
狩猟ツアーの記念品も含め、商業名目での象牙の
輸入を全面的に禁止した。
国内の販売にも厳しい目が向けられている。
南部の広西チワン族自治区柳州。周辺国から密輸象牙が
流入する同自治区でも、昨年の輸入禁止後、中心部の
古美術品市場から象牙が消えたという。
正当な証明書などがないからだ。
だが車で10分ほど離れた玉石や家具などを売る市場では、
「うちにはないけど、向かいの店には売っているよ」と
耳打ちされた。
女性店員に尋ねると、奥からプラスチックケースに
入った象牙を出してきた。中には、ネックレスや腕輪、
仏像、印章など十数個が入っている。
「全部新品の天然物だよ」
長さ7〜8センチの印章は約2万2千円、100玉ほど
連なるネックレスは約6万7千円、15センチほどの
仏像は約17万円だった。
こうした象牙密輸の中継地とされる香港は、世界最大の
象牙販売拠点だ。ワシントン条約で輸出入が禁止され、
発効した1990年より前に輸入された象牙は、政府に
登録した業者に限り、香港内での売買ができる。
大通り沿いの象牙専門店では、仏像などの置物、
結婚祝いに人気のはし、マージャンパイなど数百の
象牙製品が並べられている。はしは約1万4千円前後、
大きな置物では約2800万円を超えていた。
香港外に持ち出すのは違法だが、記者が身分を
明かさずに「中国本土に持ち帰ることはできるか」と聞くと、
店員は「購入したお客様は、持ち帰れるとおっしゃって
いましたよ」と答えた。
業界関係者によると、90年代には日本や欧米の客も
多かったが、5年ほど前から中国の富裕層が主な顧客だ。
中国への持ち出しは禁じられているのではと尋ねると、
「色んな方法があるさ」と笑った。
世界自然保護基金(WWF)香港などは昨年9月、
覆面調査によって密輸象牙が大量に売られていた
実態を公表した。「10トン以上だって、いつでもアフリカから
輸入できる」と豪語する業者もいたという。
WWF香港の労敏恵・高級主任は「制度に欠陥があった」と
指摘する。登録されるのは象牙の種類別の総重量などで、
加工した商品ごとの番号や写真は 不要。販売した分だけ
密輸すれば登録量は変わらず、いつまでも売り続けることが
できるというわけだ。象牙問題に取り組んできた立法会
(議会)の葛珮帆議員 は「香港で違法な象牙が
ロンダリング(合法化)されている」と話す。
(広西チワン族自治区・柳州=延与光貞)
■アフリカ 当局者の汚職、背景か
象牙の供給元であるアフリカ。密輸ネットワークの解明は
難航している。
3月、東アフリカ・タンザニアの港湾都市ダルエスサラーム。
裁判所の廊下に、官吏に付き添われた中国人女性が現れた。
ヤン・フェン・グラン容疑者(逮捕時66)。
昨年秋、少なくとも約700本(約3億円相当)の象牙を
密輸出したとして、タンザニア当局に逮捕された。
東アフリカと中国とを結ぶ巨大な密輸ネットワークを築き、
「象牙女王」との異名をとっていたとされる。
ヤン容疑者は70年代に通訳としてタンザニアに入国。
ダルエスサラームで中華レストランなどを経営し、
2006年ごろから象牙の密輸を始めたとみられる。
米CNNは、中国とタンザニアの交流を進める
ビジネス協議会の事務総長を務めていたと報じた。
捜査関係者によると、東アフリカ一帯で密猟された象牙は、
ダルエスサラームから東南アジアを通じて中国に
密輸されているとみられる。しかしヤン容疑者は
裁判で「象牙の密輸に関わったことはない」と容疑を
否認。地元紙のタウシ・アリー記者(35)は
「彼女が否認を続ける限り、組織の全容解明は難しいだろう」。
密猟や密輸が続く陰には、アフリカ各国の政府関係者の
汚職があるとの指摘も根強い。国際的な野生生物保護団体
「環境調査エージェンシー」(EIA)は、象牙の密猟や密輸に
当局者が関与しているとの見方を公表。14年には
「中国の習近平(シーチンピン)国家主席がタンザニアを
訪問した際、随行団が大量の象牙を購入した」との
報告書を発表した。
タンザニア当局は、EIA報告書に関する朝日新聞
の取材を拒否。当局幹部がケニアで開かれた会議に
出席した際に尋ねると、「EIAの報告書はすべてウソで
デタラメだ」と答えた。
(ダルエスサラーム=三浦英之)
◆キーワード
<象牙取引の現状> アフリカゾウは密猟で年3万頭
前後減り続け、現在は約50万頭ほど。象牙の国際取引は
1989年にワシントン条約で禁止された(発効は90年)。
米国は2014年に国内の取引を原則禁止。
中国も昨年9月、米中首脳会談で「商取引を
停止させるための有効な措置を行う」と合意した。
日本ではワシントン条約発効前の輸入象牙は、
所有者が環境相に登録すれば取引できる。
ただ海外の自然保護団体からは、ネット上での
取引が違法売買の温床となっている、
などの批判が寄せられている。
コメントです
象牙の密輸入に関しては、
ここでも何度か掲載しましたが、
いつまでたっても
「中国本土で欲しがる」―「香港経由」の
強固な構造が崩れることはありません。
日本での爆買いでもわかるように、中国人の
物欲の異常さは理解しがたいものがあり、
(日本を含む東アジア諸国は象牙に関して
グレーゾーンですが)
そのためなら環境破壊や、赤サンゴの密猟、
アフリカ象に関して言うなら、種の絶滅などを
まったく気にせず、ひたすら自分たちの欲望に
まかせて行動します。
それと、何か都合が悪いときに「香港」が
あたかも中国のマジックハンド的役割を
はたす構造も変わりません。
象牙なんて、だれも欲しがらなかったら、
密猟者だっていなくなるはずなんですけどね。
すべては欲しがる人間の責任です。