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2015年12月20日

化学工場で5人膀胱がん 約40人勤務、発がん性物質扱う

朝日新聞 2015年12月19日

厚生労働省は18日、染料や顔料のもとを製造する事業場で
5人が膀胱(ぼうこう)がんを発症したと発表した。
発がん性がある「オルト―トルイジン」を含む複数の化学物質を
扱っていた事業場で、働いていた約40人のうち40〜50代の
男性4人と退職した1人が、昨年から今年にかけ相次いで
膀胱がんを発症した。国は原因の特定を急ぎつつ、業界団体に
防止対策をとるよう要請した。

厚労省は事業場名を公表していない。
関係者によると、がんの発症者が出たのは、化学製品を
つくる企業の北陸地方の工場だ。

厚労省によると、現職でがんを発症した人の就労歴は
18〜24年。退職した40代の男性1人も発症し、事業場が
今月3日に労働局に報告した。死亡者はいないが、
発症者が労災保険を請求する動きが出ている。

発症者はオルト―トルイジンなど「芳香族アミン」に分類される
化学物質を反応させたり、生成物を乾かしたりする作業を
していた。オルト―トルイジンは発がん性を指摘されており、
事業者には法令で、空気中の濃度が有害にならないように
するために物質を密閉して使うことなどが求められている。
この企業の担当者は取材に「マスクで防護をしている」と話した。
厚労省などは、作業実態や発症の原因を調べている。

オルト―トルイジンなどを年1トン以上扱う事業場は国に
届け出る必要がある。経済産業省によると、2013年には
31事業場が利用を届け出た。従業員の数は、多いところで
1500人近くいた。厚労省は31事業場の実態についても調べるという。
(末崎毅、北川慧一)

関連記事です。
「顔や服、粉で真っ白」 化学工場、がん発症の男性証言


北陸地方の従業員約40人の化学工場で、昨年から今年に
かけて4人の従業員と1人の退職者が相次いで膀胱(ぼうこう)
がんを発症した。厚生労働省が18日、業界団体に対策を
とるよう要請した化学物質「オルト―トルイジン」は発がん性
が指摘されており、現場からも会社側に取り扱い中止を
求める声が上がっていた。

「会社に作業の危険性を何度も訴えたのに無視された」。
今年11月に膀胱がんを発症した男性従業員(56)は言う。
工場で正社員として約18年間勤務し、塗料やインクの原料となる
顔料のもとを製造する現場で働いていた。

男性によると、「芳香族アミン」に分類されるオルト―トルイジン
など液体状の化学物質を混ぜ合わせて固体化し、乾燥させて
粉状の製品にする。乾燥や袋詰めの作業では、粉状の
化学物質が作業場に飛び散った。仕事を終えると顔や
作業服は小麦粉のような粉で真っ白になったという。

防毒マスクをして作業し、現場には集じん機も設置されて
いたが、「袋の詰め替えや乾燥機の修理は、特に集じん
機能が働かない場所で作業する危険な状態だった」という。
この工場では4年前、会社から「芳香族アミンは動物に
対して発がん性がある」という文書が配られていた。
男性は「そんな危険な物質は使わないでほしい」と訴えたが、
会社側は「人間の健康に影響があるわけではない」と
操業を続けたという。

男性に自覚症状はなかったが、今年11月14日、起床後の
トイレの際に血尿が出た。勤務を休んで病院に直行。
膀胱がんと診断された。昨年3月には同僚の発症が判明。
今年に入り本人を含め4人が発症した。

「会社には化学物質のリスクを調べる専門部署があり
以前から危険性を知っていたはずだ。
なぜ危険な作業を中止しなかったのか」

発覚のきっかけは、男性の労働組合「化学一般関西地方本部」
(大阪市)への相談。今年9月、男性が「職場でがん患者が
急に増えている」と訴え、組合の勧めで会社側に労災申請の
意向を伝えると、会社側は今月に入って厚労省に相談した。

発症した5人は平均20年程度勤めており、袋詰めの
作業などに従事していた。会社の担当者は「工場では
操業から27年間、局所排気などの改善を続けてきたが、
従業員が膀胱がんを発症したのは事実。関係機関の
調査に全面的に協力していくとともに、改善努力を続けていく」と
話している。

 ◆キーワード

 <オルト―トルイジン> 薄い黄色の液体で、染料や顔料の
原料や、接着剤の一種である樹脂の硬化剤として使われる。
芳香族アミンの一種。国際がん研究機関(IARC)は
「人間への発がん性がある」と位置づけており、膀胱がんを
引き起こすと指摘している。




関連記事です。
胆管がんを労災認定へ 発症メカニズムほぼ解明

厚生労働省は14日、大阪市の印刷会社に勤務し
胆管がんを発症した16人について月内に労災認定する
ことを決め、元従業員らは早期認定に安堵の表情を
見せた。同省の専門家検討会は化学物質による発がん
メカニズムをほぼ解明。ただ、労災の判定基準を示すには至
らず、同省は残る労災申請者について職場な どの
実態を踏まえて個別に判断していく方針だ。

検討会がまとめた報告書によると、胆管がん発症の
原因とされたのは化学物質
「1、2ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」。
印刷機のインクを落とす洗浄剤に大量に含まれていた。
検討会は2つの化学物質について「発症原因と医学的に
推定される」とした。

この2つの化学物質を吸入すると解毒作用のある肝臓で
主に分解されるが、高濃度になると肝臓だけでは追いつかず、
胆管内にある酵素も分解に加わる。この分解の過程で
胆管の細胞ががん化すると考えられるという。

海外の文献などから、胆管内の酵素も働く高濃度の
状態は1、2ジクロロプロパンが150〜250PPM
(PPMは100万分の1)、ジクロロメタンが
400〜500PPMと推測している。

大阪市の「サンヨー・シーワィピー」の元従業員ら16人は、
3年8カ月〜13年2カ月の長期間にわたり
1、2ジクロロプロパンが高濃度になる換気が不十分な
地下作業場で作業しており、発症との因果関係を認めた。

厚労省によると、印刷会社に勤務し、胆管がんを発症したと
して労災申請したのは2月末現在で64人
(うち申請時の死亡39人)。今回の16人(同7人)を除く残る
48人(同32人)が検討会で今後判断される。

厚労省幹部は今回の労災認定で「一律に基準や目安が
定まったわけではない」と説明。労災申請が出ている他の
45社の労働環境は明らかになっておらず、「調査報告を
待って個別に判断していく」としている。

今回の問題では同省研究班による疫学調査も進行中。
検討会座長を務めた産業医学振興財団の桜井治彦
理事長は「化学物質と胆管がんの関係が十分解明されているとは
言い難く、新たな知見の収集に努める必要がある」としている。

サンヨー・シーワィピーの代理人弁護士は14日、今後の
対応について「労災決定され次第、可及的速やかに
記者会見する」とコメントした。

申請の時効なくすべき

胆管がん問題の調査にあたった熊谷信二・産業医科大
准教授の話
 労災認定は当然。職業病の場合は
潜伏期間が長いため、退職後に発症するケースや
発症しても職場環境が原因と気付かないケースも多く、
労災申請の時効はなくすべきだ。

未規制の化学物質についても一定の基準を超えていれば
対策を取るように求める必要がある。
悲劇が起こってから規制するのでは遅い。


コメントです。
化学工場で使用されている化学物質「オルト―トルイジン」

原因で膀胱(ぼうこう)がんを
発病する内容の記事です。

少し前に、印刷工場で使われていた洗浄液に含まれる
「1、2ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」が原因で
胆官がんを発病、そして労災認定されましたが、
今日の記事もこれに類似します。
今後も、これまで汎用で広くいきわたってる化学物質が
原因でがん発病するケースが発生するかもしれませんね。

posted by salsaseoul at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療

市民参加6年半、初執行 裁判員判決による死刑

朝日新聞 2015年12月19日


法務省は18日、2人の死刑を執行した。
うち1人は、2009年に川崎市のアパートで3人を
殺害した殺人の罪で、11年に横浜地裁の裁判員裁判で
判決を受けて確定した津田寿美年死刑囚(63)。
09年5月に裁判員制度が始まって以来、市民が判断に
加わった死刑囚に刑が執行されたのは初めて。
東京拘置所で執行された。

裁判員裁判で死刑判決を受けたのは26人、
このうち確定者は今回の執行前までに7人。
津田死刑囚は2番目に早く確定していた。

死刑執行による裁判員の精神的な重圧は、制度設計時から
指摘されていた。だが、法務省幹部は「制度が定着する中、

執行を避けていては、逆に市民に失礼だと考えた」と話す。

では、誰から執行するのか。最初の確定者は共犯者が逃亡中で、
執行が難しかった。津田死刑囚は公判で「命で償う」と語り、

弁護人が控訴したものの、自ら取り下げて確定していた。

省内には「プロの裁判官が裁く高裁、最高裁の審理も経て
確定したケースが望ましい」という声もあったが、
「自ら控訴を取り下げたことは、罪の内容に疑いがないことを
意味する」。ある幹部はこう説明した。

今回の執行で、収容中の確定死刑囚は126人。
うち90人余りが再審請求中だ。請求中は執行しないのが
慣例となっており、津田死刑囚が請求していなかったことも、
執行に踏み切った理由の一つとみられる。

14年までの10年間に執行された死刑囚について、確定から
執行までの平均期間をみると約5年5カ月。津田死刑囚は
確定から4年5カ月が経過していた。

     ◇

法務省は18日、裁判官のみで判決を出した
若林一行死刑囚(39)の刑も執行した。06年、岩手県洋野町の
上野紀子さん(当時52)と次女友紀さん(同24)を絞殺。
現金2万2千円などを奪って遺体を山林に遺棄したとして、
強盗殺人などの罪で12年に確定していた。

 ■一生背負う・苦しみ消えない 裁判員経験者ら

津田死刑囚の裁判で裁判員を務めた20代男性は、判決から
約2年後の取材で、死刑執行のニュースのたび、誰が
執行されたのか気が気でない日々を送っていると語った。
「自分の出した結論で一人の命を絶つわけだから気が重い。
このつらさは、裁判員にしか分からない」とも話していた。

この日の執行を死刑判決にかかわった各地の裁判員経験者は
どう感じたのか。

埼玉県の 50代女性は「いつかこうした日が来るとは思っていた。
ついに来たかという感じ」と話す。「国民の判断によって一人の命が
なくなったわけで、改めて責任は 重大だと思う」。
自分が担当した事件を、今でも思い出す。今月、死刑が確定する
ことを知った直後も寺に行って被害者に報告した。
「私は一生背負っていく覚悟でいる」

宮崎市の会社員男性(44)は裁判官が判決を告げるときには
体や手が震え、自宅に帰っても涙が止まらなかった。
「死刑が執行されれば、裁判員の自分たちが殺すようなもの。
その苦しみは一生消えない。二度と裁判員はやりたくない」

愛知県小牧市の20代男性は裁判員になるまで、法律が
認める以上、死刑はあっていいと考えていた。
今は揺れている。
「罪と向き合い、一生背負い、被害者や遺族に償う。
苦しみながらでも、生きた方がいいと思うことがある」

 ■<解説>心のケアなお課題

司法に市民感覚を入れようと導入された裁判員制度は、
死刑で市民に重い負担を負わせるという懸念が当初から
あった。開始3年後に見直しが検討された際には、経験者の
意見などから、死刑求刑事件を対象から外すことも
議論されたが、「重大事件こそ市民の目で」と維持された。
今年3月までに裁判員を務めた人は約5万8千人にのぼり、
法務省は今回、一歩を踏み出した。
だが、その一方で裁判員候補者のうち6割が辞退しており、
負担の軽減や心のケアといった課題はなお未解決だ。

また、悩み抜いた選択が現実となった今回の執行でも、
従来通り執行の詳細は明らかにされていない。刑場は
民主党政権下で一度、公開されたのみだ。「究極の刑」に
向き合う市民に、情報公開は不可欠だ。(金子元希)

 ■<考論>負担と向き合う必要

裁判員制度の 設計に関わった元検事総長の松尾邦弘
弁護士の話 設計時、死刑に関わる裁判員の負担は
大きなポイントとして議論されたが、この制度は
「司法への国民参加」 の柱で、死刑を抜きにすることは
考えられなかった。開始から時間が経ち、死刑に関わることも
含めて国民は受け入れてくれている。
来るべき時が自然と来たということだろう。執行で制度が
揺らぐことはないが、裁判員の負担という課題には、
検察、裁判所ともに、今後も向き合っていかなければならない。

 ■<考論> 死刑制度考えるとき

元東京高裁判事の木谷明弁護士の話 今回の執行を、
死刑制度について国民に本気で考えてもらう機会と
捉えるべきだろう。世論調査では死刑存置論が依然と
して多数だが、国民が死刑の可否を判断するための
情報は、あまりにも少ないのが現状だ。執行の順序、
再審請求の状況、死刑囚の処遇、世界の潮流といった
情報を知らずに的確な判断はできないだろう。
だれもが裁判員になる可能性がある。無期懲役や
終身刑のあり方も含めて、議論していく必要がある。



コメントです
市民参加による裁判員制度が始まって、
市民が判断に加わった死刑囚に刑が初めて
執行されました。
重い内容ですが、記録記事として掲載しておきます。


posted by salsaseoul at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会