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2015年12月07日

(戦後70年 エピローグ:1)縮む世界、開く心の距離

朝日新聞 2015年12月6日

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多様な文化の共生を掲げてきた欧州で、外からは見えにくい分裂が
広がる。何が起きているのか。

旧オランダ領の南米・スリナムなどからの移民が多い
オランダ・アムステルダム南東地区。
元区長のマルセル・ラローズ(64)は、地域にかかわるなかで
一つのことに気がついた。

様々な民族や文化集団が同じ地域に住んでいるようにみえるが、
「身近」にいるだけでは多様性があるとは言えないのではないか、
ということだった。

自身も約40年前にオランダに来た。移民の文化を尊重する国と
感じた。自国の文化伝統への同化を移民に強いるフランスなど
とは違っていた。でも「尊重」は無関心に転じやすい。
住民同士の間に横たわる「心の距離」を感じた。

地元の高校の子どもたちに、スマートフォンの通信アプリなどで
普段やりとりする相手を聞いた。多くが、離れた場所に住む
「同じエスニック(民族)集団の人」と答えた。クラスで机を並べて
いるから、当たり前にやりとりが生まれていたわけではなかった。

スマホのおかげで、移民やその家族が、インターネットで他の
地域にいる「母国」の友人や親族とつながりやすくなった。
それ自体は悪いことではないが、ラローズは「技術の発展で
世界の距離が縮まったが、異なる文化や民族の人と直面して
生きていく必要がなくなった」とみる。

いま、欧州評議会が2008年から始めた文化の多様性を
生かす街づくり政策の相談役として、様々な背景を持った
個人が同じ地域社会に参加する意識を育もうとしている。
一方、パリ同時多発テロなど「距離」を遠ざける事件も続く。

欧州ではグローバル化が進むなか、マイノリティー集団への
差別意識が高まった。ヘイトクライム(憎悪犯罪)や
ヘイトスピーチが吹き荒れた1990年代以降、規制を
導入・拡大するなど理念の実践にも力を入れてきた。
それでも分裂は収まらず「心の距離」を埋めるのに
苦しんでいる。

(アムステルダム=高久潤)


■団地自治会、役員に中国人

外国人をどう受け入れるか。日本でも模索が続いている。
約4千人が暮らす埼玉県川口市の芝園団地だ。最寄り駅から
東京駅まで30分の立地。会社勤めの中国人らが増え、
中国人世帯数が日本人を上回った

ゴミを分けない。声が大きい。路上で小便をする。自治会に
苦情が相次ぐようになったのは05年ごろだ。ネットでは
「中国団地」との悪口も飛び交った。

街づくりを研究する岡崎広樹(34)が14年に移り住み、
自治会に加わった。防災が共通の関心事項だとつかみ、
防災教室を開いた。行事に誘って顔見知りを増やしながら、
マナーも呼びかけた。苦情は減り、ネット上の中傷もやんだ。

岡崎は今年、共生の知恵を探ろうとオランダの団体で
インターンをした。面倒をみてくれたのがラローズだった。
欧州ではテロがあったが、「顔の見える関係づくりを地道に
やっていくしかない」と思う。摩擦の原因は文化の違いではなく、
生活習慣の違いにあると考えるからだ。

芝園団地自治会には今年度初めて中国人の役員が誕生した。
高齢化と国際化を先取りする団地を応援したいと、大学生の
グループもできた。市の協力を得て、中国語による情報の
ネット配信も始まった。

断絶から生まれた憎悪がテロに結びついた欧州と日本の状況は、
比べものにならない。だが、断絶と共生の最初の分かれ目は、
小さなことかもしれない。
住民どうしの接点を増やす芝園団地の試みはつづく。

 ■異文化理解、進むか

日本に暮らす外国人は過去最多の約217万人。
雇用されているのは約79万人だ。政府は単純労働者は
受け入れないとしながら、例外を増やしてきた。

日本は70年代まで移民を送り出していたが、85年からの
円高やバブル景気で、世界中から人が集まった。90年には
3世までの日系人に定住が認められ、来日があいついだ。
事実上は単純労働の「技能実習」制度は拡充されている。

家族と日本で暮らす人たちを地域の一員として迎え入れようと、
総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定
したのは06年だ。霞が関には政策づくりの機運が生まれたが、
2度の政権交代を経て、今は「冬の時代」といわれる。

NPO法人「多文化共生センター大阪」の代表理事、
田村太郎(44)は「自治体とNPOが必死に取り組んで
大きな社会問題にならなかったのをよいことに、政府も
国会も外国人との共生を議論せずにきた」と指摘する。

戦前からの在日韓国・朝鮮人に、中国人や日系人、
フィリピン人。共生相手の多国籍化はさらに進んでいるが、
日本人だけの方がうまくいくという考え方は依然として根強い。
文化人類学者で、国立新美術館長の青木保(77)は
「それは『思い込みの秩序』にすぎない」と指摘する。

思い込みだと気がつけるか。青木は「多様な人がいることで、
社会が豊かになり、才能も育つと捉えることが重要だ。
そのためには自文化の発信と異文化理解に丹念に
取り組むことが必要だ」と話す。

 =敬称略

 (北郷美由紀)


 ■取材後記

ネットで連絡も買い物もできる時代。他者と顔を合わせる時の
心理的な負担が相対的に増している。
相手が外国人だったら、なおさらだ。それでも話し てみる。
聞いてみる。取材を通じて、共生の取り組みが多くの地域で
積み重ねられてきていることを知った。日本語指導や
学習支援を受けた人たちが、今度はつ なぎ役として
活動している。私たちの社会は大きな資産を手にしている。
このことを今後も伝えていきたい。

 (北郷美由紀)


コメントです。
日本国内にいる在日外国人とのコミニュケーションについての
話題です。
東南アジアの人材が、日本国内の介護市場で必要とされていて、

実際には相当数の外国人がすでに就労しています。
さて、今日の話題ですが、しばらくは日本も「利害関係の一致」で
今後、就労するための外国人が増えると思います。

そこでうまく共存できるかどうかはわかりませんが、問題をひとつずつ
ピックアップして妥協点を探していくしかないですね。


posted by salsaseoul at 01:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会