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2015年10月03日

アサド政権の延命狙う IS拡大脅威 ロシア空爆

朝日新聞 2015年10月1日

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プーチン大統領が30日、シリア領内の過激派組織「イスラム国」
(IS)への空爆に踏み切った。ISがロシアにとって無視できない
脅威となっていることは事実だが、中東でロシアが影響力を発揮
するための足場となってきた、シリアのアサド政権の延命を
狙っていることは明らかだ。

空爆は、プーチン大統領がニューヨークで開かれている国連総会
から帰国した翌日というタイミングで始まった。プーチン氏はわずか
半日のニューヨーク滞在中、オバマ米大統領のほか、イラン、
イラク、トルコ、サウジアラビアの首脳と相次いで会談した。
いずれもシリア問題やIS問題に深くかかわっている国々で、
ロシアの対シリア政策をプーチン氏から直接説明したとみられる。

ロシア軍は8月末からシリアに戦闘機を配備するなど、急速に
軍事支援を進めていた。国連での首脳外交を終えた時点で
空爆に踏み切ることを、このころから想定していたとみられる。

ウクライナ東部での親ロ派武装勢力とウクライナ政府軍の衝突は、
これと軌を一にして沈静化している。モスクワ・カーネギー研究所の
トレーニン所長は「おそらく偶然ではない」と指摘する。
ロシアがシリアに専念せざるを得ない状況になったという見方だ。

ロシアはシリアの地中海沿岸タルトスに海軍の補給基地を
持っている。地中海に海軍を展開するための貴重な拠点だ。
武器取引やエネルギー分野でもロシアと深い協力関係に
あったアサド政権が崩壊し、欧米からの支援を受けた反政府
勢力主体とする政権が誕生することは、プーチン氏にとっては
容認できない事態だ。

また、ISにはロシアから約2400人が参加しているとされており、
ISの勢力拡張がロシアにとって深刻な脅威となっていることも
背景にはある。

プーチン氏は30日、アサド氏に対して「自国と自国民のために、
譲歩に向けた柔軟性を発揮することを期待している」と述べた。
政権の崩壊を避けて、事態を軟着陸させたい意向をにじませた。

 (モスクワ=駒木明義)

 ■安保理で米国を牽制

国連安全保障理事会で30日午前(日本時間同日夜)、
シリアやイラクで勢力を拡大するISなど、国際テロの脅威に
ついての自由討論が始まった。直前にシリアでの軍事介入に
踏み切ったロシアは、シリアのアサド政権も含めた関係国との
協力の必要性を強調した。昨年来、アサド政権の同意なく
空爆を続ける米主導の軍事作戦への牽制(けんせい)とみられる。

安保理の9月の議長国はロシアで、ラブロフ外相が議長席に
座った。ラブロフ氏は演説で、シリア軍だけでなく、イラク軍や
クルド人勢力、シリアの一部反体制派の力を結束する必要が
対テロとの取り組みには必要だと述べた。また、プーチン
大統領がシリア国内での武力行使の同意を議会から
得たことも説明した。ロシアはシリアで始めた空爆について、
米国や、米国の有志連合への参加国にも報告済みで、
作戦の効果を最大化するため、各国との情報交換を密に
する姿勢を示した。

ラブロフ氏は、ロシアが対テロで各国が結集する趣旨の
安保理決議案を提出すると宣言した。米主導の対IS作戦が
行き詰まる中、ロシアが主導権を握る意欲を示した形だ。

欧州に流入する難民危機については「根本原因を除去
しなければ、解決できない」として、残虐行為を繰り返す
IS打倒の必要性を重ねて強調した。

一方、米国のオバマ大統領は29日、国連本部でIS対策の
ハイレベル会合を開き、シリアでISを打倒するには
「新しい指導者とシリアの人々を結束できる政権が必要だ」と
述べ、アサド政権の「退陣」を求める姿勢を改めて示した。

オバマ大統領によると、米国主導の有志連合への参加国は
約60カ国に増加しているという。

 (ニューヨーク=金成隆一)

 ■シリア領内での対IS空爆

 <14年9月>

米とサウジアラビアなど中東5カ国の有志連合が空爆開始

シリアのアサド大統領が空爆開始を受け「テロと戦う
国際社会の努力を支持する」と発言

 <15年6月>

有志連合の9カ月間の空爆でIS戦闘員1万人以上を
殺害したと米が表明

 <8月>

 トルコが空爆に参加

 <9月>

 豪、仏が空爆に参加

 ロシアも空爆を開始

関連記事です。
ロシア、IS以外も空爆 シリアで続行、米は懸念

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ロシアが1日、シリア領内で過激派組織「イスラム国」(IS)以外の
過激派の拠点を空爆した。AFP通信が伝えた。9月30日に空爆を
始めた際には、標的をISに限定すると説明していた。

シリアのアサド政権延命のため、米国が支援する反体制派を
攻撃している可能性もあり米国とロシアの対立が深まる恐れがある。

AFP通信によると、シリアの治安当局者は1日、ロシアが、シリア
北西部イドリブ県にある国際テロ組織アルカイダ系組織の拠点を
攻撃したと話した。

ロシアのラブロフ外相も同日、米ニューヨークでの会見で
「ロシアはISやその他のテロリストを攻撃している」と述べ、
空爆の対象を拡大する意向を示した。ISへの空爆を大義名分に、
他の反体制派の拠点を攻撃している疑いがある。

30日にシリア中部ラスタンなどで行った空爆でも、米欧などが
支援するシリア反体制派の統一組織「シリア国民連合」の
ハーリド・ホジャ議長が「ロシア軍はISもアルカイダもいない
場所を襲撃した」と、ツイッターに投稿した。米国のカーター国防
長官も「恐らくISの軍は存在しなかった」と話すなど、ロシア側の
説明には疑念が出ていた。

また、ロシアのノーボスチ通信によると、ロシア外務省高官は1日、
イラク政府から要請があれば、イラク領内のISへの空爆も検討
すると述べた。ただ、ラブロフ氏は1日の会見で現時点ではイラクでの
空爆は計画していないとした。

ロシアは、8月末からシリアに自軍の戦闘機を配備するなどアサ
ド政権を支える立場だ。シリアの地中海沿岸に海軍の補給基地を持ち、
武器取引やエネルギー分野でも関係が深い。米国の求めるアサド
大統領の退陣が実現し、欧米が支援する反体制派主導の政権が
誕生することは避けたい。

一方、シリアとイラクの領内では、米国主導の有志連合が昨年から
ISに空爆を続けている。米国のケリー国務長官とラブロフ氏は30日、
ニューヨークで会談。米軍とロシア軍の偶発的な衝突を避けるため、
対話することで一致した。(モスクワ=中川仁樹)

■内戦5年目、入り乱れる

5年目に突入し、国内外で数百万人が避難したシリア内戦は、
様々な勢力が入り乱れて複雑化している。

欧米やトルコが「穏健な反体制派」とみなして支援してきた
「自由シリア軍」は統率力と求心力に欠け、諸勢力はバラバラに
戦っている状態が続いた。その間に台頭したのが戦闘力の
高いアルカイダ系「ヌスラ戦線」。今春以降、自由シリア軍、
ヌスラ戦線を含む集団が反アサド連合を組み、シリア北西部の
イドリブ県のほぼ全域を掌握した。

昨年6月にカリフ(預言者ムハンマドの後継者)制国家を
宣言したISは、今年5月には中部の要衝パルミラをアサド
政権軍から奪った。領域拡大を図るISはヌスラ戦線など
他のイスラム過激派ともたびたび戦闘している。

米軍主導の有志連合はISを標的に昨年9月から空爆を始めたが、
ISの勢いは衰えていない。米国はアサド大統領の退陣を
求める立場だが、アサド政権軍が仮に崩壊した場合、
ISが支配領域を拡大する懸念もある。(カイロ=翁長忠雄)

コメントです。
ロシアの中東への軍事介入の話題です。
誰かが仲介して攻撃の足並みをそろえないと、
むちゃくちゃな状態に陥ってしまうでしょうね。
それでなくても、民間人への誤爆が多数報告
されていますから。




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(世界発2015)飛び越えた「壁」の先に ベルリン「初の亡命」警備隊員

朝日新聞 2015年10月1日

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生前のコンラートさん(右)とクニグンデさん=クニグンデさん提供

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東西ドイツを隔てる「ベルリンの壁」の建設が始まったばかりの
1961年8月、鉄条網を飛び越え東から西へと逃れた東独の
警備隊員がいた。当時19歳だったコンラート・シューマンさん。
壁の建設後「初の亡命者」と英雄視されたが、自身は東独の
秘密警察におびえ続け、98年に自ら命を絶った。
10月3日で東西ドイツ統一から25年。
家族や友人の証言からその人生をたどった。

 ■19歳の決断「自由の象徴」

東西ベルリンの境界だったルピナー通りとベルナウアー通りの
交差点。東独が壁建設を始めた2日後の61年8月15日、
まだ高さ1メートル弱の鉄条網しかなかった。東独の警備隊員
だったコンラートさんは、同僚らがそばを離れた隙を突いて
ジャンプ。10メートルほど離れた西側の警察車両に走り込んだ。
一瞬の出来事だった。

本人は「直前の2時間で悩み抜いた末に腹を決めた」と後に
語った。鉄条網の向こうで西側メディアが大勢カメラを構えて
いた。「警備隊員も発砲しづらい」と考えたコンラートさんは、
鉄条網の張り具合を確かめるふりをして少しずつ踏みつぶした。
「来い、来い」。西側から呼びかける声が聞こえ、
「条件は整った」と思ったという。

「鉄条網を越えようとする人々を撃てと命じられても、
私には絶対できなかった」。
コンラートさんは亡命の理由をそう語った。

ジャンプの瞬間をとらえた西独の写真家、
ペーター・ライビングさん(2008年死去)は
「乗馬の障害物競走を撮影した経験がいきた」と後に語った。
「自由への跳躍」と題した写真は、冷戦下の西側で
「自由の象徴」となった。

 ■新生活、秘密警察におびえ

コンラートさんは亡命後、独南部バイエルン州ギュンツブルクの
病院で看護の仕事に就く。

当時の下宿先の子供で6歳年下のルートビッヒ・クロイツェルさん
(67)は、コンラートさんを兄と慕った。
羊飼いの経験があるコンラートさんは、 木上の小屋の作り方を
教えてくれた。苦手な野菜料理が食卓に並ぶと、牛の鳴きまねを
して下宿先の一家を笑わせた。「ユーモアのある人だったが、
急に黙り込 んで寂しそうな時もあった」という。

コンラートさんは東独の両親に宛てて、「無事でやっている」と
だけ書いた手紙を何通も出した。秘密警察の追及を恐れ、
差出人の欄には何も書かなかった。

そんな時、勤め先で看護師のクニグンデさん(76)と出会い、
結婚。子供も生まれた。その後、大手自動車会社に機械工の
職を得て生活は安定したが、東独の記憶は離れなかった。

見知らぬ車両や人物を見ると、東独の秘密警察が捕らえに
来たと疑った。夜間の車の運転も避けた。
「事故に見せかけて殺される」と警戒したからだ。 西側メディアの
取材や講演、式典出席の依頼があったが、多くを断った。
クニグンデさんは振り返る。「『自分は英雄なんかじゃない』。
それが夫の口癖でし た」

 ■統一後、むしばんだ「亡霊」

転機は89年11月9日、ベルリンの壁崩壊だった。その晩、
コンラートさん夫妻は新聞社の手配でベルリンへ。ハンマーで
壁をたたく若者たちを前にコンラートさんは泣き崩れ、

繰り返した。「信じられない」

東西統一が実現した90年、コンラートさんは約30年ぶりに
故郷ツショッハウ村を訪れた。父はすでに他界。
母と息子は抱き合って涙を流していたという。

幼なじみのフランク・フォークトさん(68)は「亡命は村人全員が
知っていたが、口に出せば秘密警察に何をされるか分からない。
コンラートの家族も何事もなかったように振る舞った」と言う。

秘密警察は東西統一と共に、消滅した。コンラートさんは周囲に
「ようやく本当の自由を感じている」と語ったという。

だが実際は、東独の「亡霊」に苦しんでいた。旧東独出身者を
見るたびにスパイではないかと身をこわばらせた。
4週間も不眠の日々が続き、仕事も休みがちになった。

うつ病だった。

「壁が開いたことで、旧秘密警察や自分に恨みを持つ昔の
仲間が簡単に報復できるようになった。夫はそう考えた
のでしょう」とクニグンデさんは言う。

統一から8年後の98年6月20日。コンラートさんが自宅近くの
果樹園で首をつっているのを、クニグンデさんが見つけた。
遺書はなかったが、ポケットに紙片が1枚。
「魂が泣くとき……」とだけ書かれていた。

葬儀の後、クニグンデさんの元に差出人不明の手紙が届いた。

「裏切り者がようやく報いを受けた」。そう書かれていたという。
「夫は心底苦しんでいたんだと、そのとき本当に分かった
ような気がしました」

ドイツ統一から四半世紀。再開発が進む旧東西ベルリンの
境界には今、コンラートさんの写真や像が飾られ、
土産物店には関連グッズが並ぶ。

コンラートさんが生きていたら、欧州最大の経済大国となった
今のドイツをどう思うか。クニグンデさんは、
しばらく考えてからこう答えた。

「分からない。でも夫はお金のあるなしよりも、家族が
離ればなれにならずにすむ世界を望んでいました」

 (独南部ギュンツブルク=玉川透)

 ◆キーワード

 <ベルリンの壁> 
第2次大戦でドイツが敗れベルリンは東西で分断統治された。
東独の共産主義政 権は1961年8月13日、市民の亡命
阻止などのため総延長150キロ以上、高さ約3メートルの
壁の建設を始めた。東西冷戦下のドイツ分断の象徴となった。
壁を越えようとして射殺されるなどした犠牲者は130人以上。
89年11月9日に壁の検問所が開放され、壁は崩れた。
約1年後の90年10月3日、ド イツは再統一された。

 ■コンラート・シューマンさんの生涯とドイツの歩み

 <1942年3月> 独東部ツショッハウに生まれる

 <45年> ドイツ敗戦。その後、東西に分断

 <60年> 東独警察の警備隊に勤務

 <61年8月> 西独の境界を警備中、西独に亡命

 <61〜63年>独南部のクロイツェル家に下宿。病院勤務

 <62年> クニグンデさんと結婚

 <70年>大手自動車会社アウディで機械工として勤務

 <87年>米レーガン大統領の招待でベルリンの式典出席

 <89年11月> ベルリンの壁崩壊

 <90年10月> 東西ドイツ統一

 <98年6月> 自宅近くの果樹園で首つり自殺

 <2015年10月> 東西ドイツ統一25周年


コメントです。
東西ドイツ分断時に、東から西へ逃げ込んだ警備員の
その後の話題です。
本文から、ずいぶん神経をすり減らして生活されたのが
うかがえます。
ここで東西ドイツの甲乙については割愛しますが、
西側からすれば、コンラート・シューマンさんを
シンボル化することによって、
統一に向けての
活動をするのに彼の存在はずいぶん有益だったと
思われます。



posted by salsaseoul at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州

(時時刻刻)VW・米当局、攻防1年超 不正発覚、大学の研究きっかけ

朝日新聞 2015年10月3日

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規制逃れを証明する試験を手がけたウェストバージニア大学の研究チームの一人
9月23日、ロイター



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独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による不正な排ガス規制
逃れの影響が、世界中に広がっている。9月に米環境保護局
(EPA)が問題を明らかにするまで、実は1年以上にわたって、
疑惑を突きつける米当局と否定するVWとの激しい攻防が
あったことがわかった。
米下院は8日、VW幹部を呼んで真相究明のための公聴会を開く。

 ■説明拒否、一転し認める

発覚のきっかけは、米ウェストバージニア大の研究だ。
2012年、研究チームは欧米が拠点の非営利組織
「クリーン輸送のための国際会議」(ICCT)の依頼で、
ディーゼル車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を
測定することになった。
5万ドル(約600万円)の研究委託費がついた。

「VWの規制逃れを暴こうなんて思っていなかった。欧州車が
いかに環境性能に優れているか立証し、普及に一役買おうと
思っていた」。5人のメンバーの一人、
アービンド・ティルベンガダムさんは朝日新聞の取材に振り返る。

13年春、カリフォルニア州で実験を始めた。
実際に道路を走りながら計測する装置を活用した。

結果は想定外だった。VW「ジェッタ」から基準の15〜35倍、
「パサート」から5〜20倍のNOxが出た。
「予想と正反対で驚いた」とティルベ ンガダムさん。
何度やり直しても同じデータが出た。
「達成感より、VWへの失望が強い」。
14年5月、EPAやカリフォルニア州の大気資源委員会
(CARB)などに報告した。

当局は「報告書の精度が高い」と判断。翌6月にVWと
協議を始めた。朝日新聞の取材に、CARB幹部は
「実は11年ごろから、VWに限らず欧州のディーゼル車の
データに疑いを持ち、欧州当局と話し合っていた。
報告書は大いに助けになった」と明かす。

当局側は様々なデータを用意したが、協議は難航した。
大学の調査結果についてVWは説明を拒否し、何があったのか
語ろうとはしなかったという。

このため、CARBもウェストバージニア大の協力を
得ながらVW車のテストを重ねた。そ
してエンジニアたちは「ディーゼルエンジンの
非常におかしな動作」に気づく。

ハンドルを動かさない通常の試験では排ガスを浄化する装置が
作動し、ハンドルを動かしたときは作動しなかった。
違法なソフトが組み込まれていることが明確になった。

今年7月上旬、「おかしな動作」をVWに示した。
それでも「技術者や幹部は私たちが見つけた事実を
認めなかった」(CARB幹部)という。

転機は突然訪れた。8月下旬、カリフォルニア州で開かれた
環境関連の会議の場で、VW側がEPA幹部に内々に
「不正を認める」趣旨を伝えた。

9月3日。10度目ほどになった両者の協議で、VWは正式に
不正を認めた。EPAは9月18日、VWに米国で発売した
約48万2千台のシステムを改修するよう求めたと発表した。
VWの一大スキャンダルが、世界に伝わった。

なぜVWは一転して不正を認めたのか。
CARB幹部は理由を明かさない。
ただ、EPAは「このままでは16年に販売を予定する
ディーゼル車の新モデルに承認を与えない」と伝えていた。
これが決定打になった可能性がある。(ニューヨーク=畑中徹)

 ■8日、幹部呼び公聴会

VWは今年1〜6月のグループ世界販売台数で、トヨタ自動車を
抜きトップに立った。
だが、9月の不正発覚後は様々な代償がのしかかり始めている。

米国で10月1日に発表された9月の新車販売台数は、全体が
前年同月比15・8%増で好調な中、VWは0・6%増と
伸び悩んだ。英証券会社アナリ ストは「欧州の最新の
規制を満たす車そのものに不正はないとされるが、
信用失墜による影響が懸念される。VWの7〜9月期
決算は赤字に転落する可能性がある」とみる。

市場も反応している。VWの株価は、米当局の発表から
1日までに約4割下がった。米当局が最大180億ドル

(約2兆1600億円)の制裁金を科す可能性があり、
不正車の改修費も膨らみそうだからだ。

ドイツ国 内は、名門企業の不祥事に混乱気味だ。
独検察当局は9月28日、最高経営責任者(CEO)だった
マルティン・ウィンターコルン氏(25日に引責辞任)を詐欺
容疑で捜査し始めたと発表。だが、その後に正式な捜査
ではないと修正した。当局の広報担当は10月2日、
朝日新聞の取材に「当初の発表は間違い。捜査対象から
外したわけではないが、容疑者を現時点で特定している
わけでもない」と話した。

VWは、不正ソフトを積んだ可能性があるのは
「世界で約1100万台」と発表した。その後、様々な地域で
対象となる台数が判明している。ディーゼル車が普及する
欧州が中心だが、韓国などアジア地域にも広がっている。

ウィンターコルン氏の後任のマティアス・ミュラーCEOは
今週初め、ドイツの本社で幹部ら約1千人を前に、
創業78年で「最大の試練」と語った。

専門家などは、VWが不正をしたのは、苦戦する米国で
ディーゼル車の排ガス対策費が膨らむのを嫌ったため
などと指摘している。だが、当のVWはいまのところ口を
閉ざしている。8日の米下院公聴会にはVWの米子会社
社長らが出席する予定だ。どう説明するか、注目されている。
(ベルリン=寺西和男)

 ■排出上限、日欧の半分

ディーゼル車への米国の排ガス規制は厳しい。
特に窒素酸化物(NOx)の排出が許される上限量は、
測定方法は異なるものの、日欧の半分ほどだ。

早大理工学術院の大聖(だいしょう)泰弘教授(自動車工学)に
よると、NOxはガソリン車よりディーゼル車の排ガスに多く
含まれるが、米国は原則 同レベルだ。「燃料に関わらず
有害物質の排出は一律に規制する。二重基準を嫌う
国民性が出ている」という。結果、ディーゼル車の基準達成には
強力な浄化装置が必要で、コスト高になりやすい。

一方、欧州や日本は、特性を考慮し、ディーゼル車の基準は
ガソリン車より甘めになっている。


参考
ディーゼル車の排ガス規制

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■環境(かんきょう)や健康を守るため、有害物質の排出量に
上限がある

アウルさん ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が破ったと
いう排ガスの規制ってどんなもの?

A ディーゼル車の排ガスには、光化学スモッグや酸性雨につながる
窒素酸化物(NOx)や、大気汚染の原因になる粒子状物質(PM)と
いった有害物質が多く含まれている。地球環境や人の健康に悪い
影響を与えるので、自動車メーカーはこうした物質の排出を
抑えるルールに従う義務があるんだ。

 ア 規制の内容はどうなっているのかな。

 A 国や地域によって違いがあるけれど、主に二つの基準が
あるのは共通している。両方を満たさなければ ならない。
一つは、車が1キロ走る間に出していい有害物質の量の上限。
もう一つは、その排ガスを浄化する機能を維持 できる走行距離だ。
米国の場合、NOxの上限量は1キロあたり0・044グラムで、
その上限を19・2万キロ走っても超えないようにする必要がある。

 ア どう調べるの?

 A テストのための屋内施設があって、装置の上で車を走らせる。
各国の交通事情などに合わせた 走行プログラムに従って、
テストドライバーがアクセルやブレーキを踏む。そうして燃費や、

排ガスからの有害物質を測る。

 ア なんで実際の道路を走らないの?

 A テストを受ける全ての車が同じ条件で走らないとデータの
公平性を保証しにくいからだ。でも、プログラムが国ごとにバラバラで
あることや、実際に走るときのデータとかけ離れているといった
批判もある。

 ア どうするのかな。

 A いま、国連のもとで世界共通の排ガス試験のための
走行プログラムがつくられている。日本は2018年の
排ガス規制の更新時にそれを採用する。
欧州では、道路でのテストを採り入れることも検討している。
(榊原謙)


コメントです
フォルクスワーゲンのディーゼル車の不正問題です。
この不正の発覚、フォルクスワーゲンの環境に
対しての有効性を測定しようと思ったら、逆に
問題のある数値を見つけてしまったようです。
なんとも皮肉な話ですね。
そして、この問題はフォルクスワーゲンの
役員幹部クラスの人を除く「社員さん」
尊厳も深く傷つけてしまったかもしれません。
なぜならば、トップの意向でずっと沈黙しなければ
ならなかったからです。
さて、日本についてですが、社員数名の町工場なら
ともかく、大手企業では絶対にありえないですね。
たくさんの社員の中から、たぶん声を上げる人が
でてくると思います。
(雪印食品の偽装牛肉内部告発・等)

さしずめフォルクスワーゲンのトップクラスは、
大手のやることだから、たとえ不正でも大量数は
スタンダード…… などど判断したのでしょうかね。
The end justifies the means. ウソも方便


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