【6月13日 AFP】ホッキョクグマがイルカを食べているところが
初めて観察された報告をノルウェーの科学者たちが発表した。
ホッキョクグマが主に餌とするのはアザラシで、科学者たちは
餌とする生物の範囲が広がっているのは、気候温暖化の
影響だと指摘している。

ノルウェー北極研究所(Norwegian Polar Institute)の
ヨン・アーシ(Jon Aars)氏は、ホッキョクグマに食べられる
イルカの写真を撮影し、この発見について今月、専門誌
「極地研究(Polar Research)」最新号に発表した。
AFPの取材に対し同氏は「ホッキョクグマの食餌に
これまでとは違う生物種が加わっているのは、気候変動に
より新たな種が北方に向かっているからだ」と述べた。

ホッキョクグマがイルカを捕食するのが初めて確認された
のは2014年4月で、アーシ氏の研究チームが、2頭の
ハナジロカマイルカの死がいを食べるホッキョクグマに遭遇した。

北極海のノルウェー領では、氷が融解している夏季にはイルカは
日常的に観察されるが、海面が氷で覆われている冬季や
春季に観察されたことはそれまでなかった。

しかしここ数年は氷が大幅に減少し、うち2年はほとんど
氷が張らない冬だった。そのために北へ移動してきたイルカが、
突然の北風でフィヨルドに運び込まれた厚い氷に閉ざされて
立ち往生したのではないかと、報告は述べている。

アーシ氏は撮影したホッキョクグマについて、狭い氷の隙間を
通って呼吸のために海面に浮上したイルカを捕獲したの
ではないかと述べ「そこでホッキョクグマに気がついても、
イルカたちにはどうしようもなかった」のだろうと語った。

写真では目に見えてやせ細った、年老いた雄の
ホッキョクグマがイルカのうちの1頭にかぶりついているが、
もう1頭のイルカは後で食べるために雪の下に隠して
いたようだ。こうした行動はこれまで観察されたことが
ないという。アーシ氏は「このホッキョクグマは、他の
ホッキョクグマやキツネや鳥に見つか らないよう、
イルカを雪の中に隠そうとしたのだと思う。
最初の1頭が消化できた後、翌日や翌々日に食べる
ことができるようにだ」と語る。

2014年の最初の観察以降、イルカがホッキョクグマに
捕獲され食べられた例は、さらに5例が報告されている。
アーシ氏は、これはホッキョクグマ の食習慣における
「激変を意味するものではなく、単にこれまで遭遇したこと
のなかった生物種に遭遇しているというだけのこと」だと述べた。

北極の食物連鎖の頂点に位置するホッキョクグマは
非選択的捕食者といわれ、機会さえ生じれば、小型のクジラを
捕食することも知られている。(c)AFP

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参考

「頂点捕食者」

(ちょうてんほしょくしゃ、上位捕食者、英: Apex predator
英: Top-level predators)とは実質的に自分自身を捕食
するものがいない、食物連鎖の頂点に位置する上位種のことである。
一般に上位の捕食者ほど個体数が少ない。

(太字部分に関して言えば、人間はあてはまりません)


「非選択的捕食者」
 雑食性