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2015年04月26日

身代金、家族が独自交渉 IS邦人人質事件を検証

2015年4月23日  朝日新聞

過激派組織「イスラム国」(IS)による邦人人質事件が最悪の結末を
迎えてから、3カ月が経とうとしている。人質解放をめぐり、日本や
ヨルダンの関係者らはどのように動いたのか。
人質の家族が身代金をめぐりISとやり取りしたメールや
イスラム過激派に詳しい現地研究者らの証言など、新たに
明らかになった経緯をもとに検証する。

 ■メールで支払額を提示 IS拒否「話にならない」

ISが1月20日に会社経営者湯川遥菜(はるな)さんと
フリージャーナリスト後藤健二さんの拘束映像を公開する前、ISとの
交渉の焦点は、後藤さんの妻による身代金をめぐるやり取りだった。

政府関係者によると、妻がISからの英文のメールに最初に
気付いたのは昨年12月3日だった。そこには
「前にもメールを送った」と書かれていた。
11月下旬には「夫を拘束した」という最初のメールが来ていたが、
「迷惑メール」に分類されていたため開封されなかったという。

ISは妻にメールで身代金の支払いを求めてきた。一方、日本政府は
妻に、政府として身代金の支払いには応じない方針を伝えた。
妻は後藤さんの知り合いだった豪州在住の危機管理
コンサルタントらと相談し、身代金の要求に独自に応じる考えを
ISにメールで返信した。妻がISに提示した金額は、
日本円に換算して億単位だったという。

後藤さんはシリアに渡る際、誘拐事件に巻き込まれた場合に

保険会社が身代金を代わりに支払う「誘拐保険」に加入していたと
いい、その保険を使って、身代金の支払いに充てる計画だったとされる。

だが、ISは「話にならない」などと妻からの打診を拒否。
「1500万ユーロ(約20億円)」の支払いを求め譲らなかったという。
妻とISは1月中ごろまで、身代金をめぐるやり取りを何度か続けた。
政府はこの間、メールの内容をほぼ把握していたが、妻や
コンサルタントと交渉内容をめぐって具体的な調整をすることは
なかった。

 ■首相声明、数種類を用意 政府

菅義偉官房長官は、後藤さんたちを拘束しているのがISだと
確信したのは「1月20日」と説明している。だが、複数の政府
関係者は、安倍晋三首相が中東歴訪に出発する1月16日よりも
前に、メールの発信元などからISによる犯行の可能性が極めて
高いと認識していたと証言する。

国家安全保障会議(日本版NSC)の事務局である国家安全
保障局は、ISが人質の拘束映像を公開する1月20日より前に、
ISの犯行を前提にして人質が殺害された場合などに首相が
出す声明文を数パターン用意していたという。

だが、官邸幹部は中東歴訪の取りやめなどは「全く考えなかった」と
話す。急きょ日程を変更すれば、テロに屈したとのメッセージを
発信することになりかねないためだったという。

首相は17日、訪問先のエジプト・ カイロで、「ISIL(ISの別称)と
闘う周辺各国に総額で2億ドル(約236億円)程度、支援を
約束する」と演説した。これに対し、ISは20日に公開 した
映像で「ISと闘うために2億ドルを支払うという馬鹿げた
決定をした」として、人質2人の解放に首相が表明したのと
同じ額の2億ドルの身代金を突きつけた。

 後藤さんを殺害したとする映像が公開された4日後の2月5日、
首相は参院予算委員会で「国連決議があるから、テロリストに
お金を国として払うことは決議に反することになる」と強調した。

国連安全保障理事会は2014年1月、加盟国がテロ組織に
対する身代金の支払いに応じないよう求める決議を採択した。
一方、決議を守らなかった場合の明確な罰則規定はない。
14年11月に安保理に提出された報告書によると、ISが
最近1年間で得た身代金の推定額は約41億〜53億円に
のぼり、「水面下の交渉」が行われているのは
「公然の秘密」と言われている。

■「日本、なぜヨルダンを頼ったのか」 
ハサン・アブハニヤ氏(イスラム過激派研究者)

中東の研究機関などでイスラム過激派の研究活動を行い、
アラブ圏で著名なヨルダン人の専門家ハサン・アブハニヤ氏は、
日本政府関係者の情報収集にも協力した。
日本人人質の映像公開前に「ISの犯行だ」と伝えていたといい、
「日本はヨルダンに頼るべきではなかった」との立場だ。

    *

 ――ヨルダンは日本からの解放交渉の依頼を
引き受けるべきではなかったと考えるのはなぜか。

ISに自国民の人質を取られていたヨルダンが日本のために
出来ることは少ない。自国軍パイロットと日本人の運命を
結びつけるべきではなかった。
日本も、ヨルダンがISとの間に問題を抱えていると知りながら、
なぜ頼ったのか。なぜトルコを頼らなかったのか。
日本もヨルダンも、対処を間違った。

 ――事件をめぐる日本政府の対応をどうみるか。

殺害予告までの間、何をしていたのか。本当に解放したいなら、
(解放に成功した)トルコやフランスのようにISと交渉すれば
出来ていた。安倍首相の(カイロでの)演説も、私ならISを
あまり挑発しないように助言していた。

 ――日本政府は、ISが犯人と確信したのは、日本人2人の
映像が公開された1月20日と説明している。

映像公開の約1カ月半前の12月ごろ、日本政府の担当者が
私を訪ねてきた。彼は人質がシリア、特に(ISが首都と称する
)ラッカのある地方で拉致されたと知っていた。
私はISの犯行だと言った。なぜ、もっと早く動かなかったのか。

 ――日本政府はどうすれば、良かったのか。

私はフランスの人質解放交渉で、仲介役の一人だった。
フランスは複数の交渉ラインがあり、一つがうまくいかなくても
他が機能する。政府が表立って交渉するのではなく、水面下で
インテリジェンス(諜報〈ちょうほう〉)のチームに対処させた。
スペイン、トルコも解放のために金を払ったという情報を、
ISと関係のある宗教指導者などから得ている。

――身代金を払えば、ISの組織拡大につながり、再び日本人が
狙われる恐れもある。それでも払うべきだったと考えるか。

私は払うべきだったと思う。ISが理解するのは、民主主義的な
外交ではなく、金と取引の言葉だけだ。テロ組織との交渉に
選択肢は多くない。国民を救うために金を払うか、断って
殺されるかだ。現にISは映像公開前に後藤さんの妻に
(身代金を求める)連絡をとっていた。政府が金を払って
人質を救出することもできたのではないか。

 ■誘拐保険「1日10万円」 後藤さん、出国前に語る

後藤さんはシリアへ向かう2週間前の昨年10月8日、
TBSの情報番組「ひるおび!」に出演した。現地取材に
基づくISの現状を説明する中で、自らが現地入りする際には
掛け金が1日約10万円の誘拐保険に加入していると話していた。

後藤さんは番組で、ISの収入源の一つである身代金について
「これまでに例のないような途方もない金額が請求されている」と
指摘。「60億円とか、フランスの4人で」と具体例を挙げていた。

さらに、「フランス、ドイツ、ベルギーやオランダ政府は、
払うという基本方針」との見方を披露する一方、
「米国英国は払わない。保険に入っていればカバーしてもらえるが
保険に入っていないと払われない」と保険の存在に言及。
「1日だいたい10万円くらいかかり、掛け捨て。
僕が使っているのは英国の会社」と説明した。

さらに、イスラム過激派に ついて「(米軍などによる)空爆が
始まってから非常にセンシティブ(敏感)になっている。
外国人に対してスパイ容疑をかけてくる」と話し、外国人が
現地に 入るリスクが高まっている現状を説いた。
また、「持ち物は徹底的に調べられるし、なぜここに来たのか
という明確な理由が説明できないと、一晩、二晩、三晩 と
拘束されることになる」と語っていた。

 ■<視点>政府の対応、十分だったか

ISによる邦人人質事件で、日本政府はいかなる情報をもとに
どのように対応したのか。この間、朝日新聞は取材班を組み
、国内外で取材を続けてきた。

これまでの取材でわかったのは、自国軍パイロットの解放に
向けてISと交渉を進めていたヨルダン政府に、日本政府が
かなりの部分を頼っていたことだ。また、後藤さんの解放に
つながる可能性もあった身代金をめぐる交渉で政府は直接の関与を
せず、後藤さんの妻が前面に立ってISとの交渉に当たっていた。

相手は卑劣極まりない過激派組織であり、「テロに屈しない」と
する政府の対応そのものを非難することはできない。
ただ、トルコ政府などヨルダン以外の国との連携はどれだけ
探っていたのか。政府による後藤さんの妻ら家族への
関わり方は適切だったのか。

同じような結末を二度と繰り返さぬために、5月中にも
報告書をまとめる政府の検証委員会がどのような答えを
出すのかに、目を凝らしたい。



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「おふくろがそんなこと…」 思わぬ遺言で相続争い

2015年4月26日 朝日新聞


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認知症の人が残した遺言をめぐり、親族間のトラブルが起きている。
決着がつかず裁判で争う人もいる。
父や母の「最後の意思」はどこにあったのか。
「おふくろがそんなことするはずがない」

2007年に亡くなった母の遺言を目にしたときのショックを、
神奈川県の60代男性は忘れられない。息子である男性と妻、
孫と長年暮らした家も、預貯金もすべて、母の妹(おば)に
遺贈する内容だった。

実母を早く亡くした男性は、子どもの頃から実母の姉に
育てられた。授業参観や遠足にも来てくれた。
「私にとっては実の母と同じ」。男性は12年前に、正式に
養子となった。

母とおばは親しく親類づきあいをしていた。とはいえ全財産を
譲るのが母の真意とは――。男性はおばを相手取り、
横浜地裁に訴訟を起こした。
東京高裁は10年7月、母は認知症だったとして
遺言を無効とした。

 判決などによると、遺言作成までの経緯はこうだ。

男性は母と30年間同居し、妻が母を介護した。
母は04年ごろから認知症が疑われる症状が進んだ。
知り合いの顔がわからない。昼夜逆転し、深夜にテレビの
音量を上げる。現金や通帳の管理が難しくなり、
「お金がなくなった」と訴える。
05年3月には認知症と診断されていた。

男性が知らぬ間に遺言が作られたのは、母が数カ月間、
施設に入っていた時。05年12月、当時87歳の母とおばは、
司法書士と一緒に公証役場に行った。
「不動産、預貯金その他一切の財産を○○(おばの名)に
遺贈する」。遺言にはそう明記されている。

だが判決は、母がはっきり述べた内容を遺言にしたからと
いって、息子たちが暮らす家までおばに渡すという重大性を
理解して、遺言を残す能力があっ たとはいえないと
結論づけた。母は遺言時、「(男性夫婦に)財産をやらない」とも
おば側に語っていた。こうした発言も「被害妄想の一つの表れ」と
判断した。

男性は「判断能力が落ちた母が翻弄(ほんろう)された」と憤る。
おば側が引き出した預貯金の返還を求めて別の裁判も
起こした。昨年末、約2千万円の返還命令は出たが、
おば側の経済事情から手元には戻っていない。

■作成時の症状、証拠集めに奔走

遺言時に認知症だったのかどうか、どの程度の症状
だったのか、死後に判断するのは容易ではない。

東京都のケアマネジャーの女性(60代)は、90歳で
亡くなった父の遺言の無効を求め、姉を相手に訴訟を
起こした。遺言には不動産など数千万円相当の遺産を
すべて姉に相続させるとあった。

70歳まで会社勤めを続けた父。
まじめを絵に描いたような人だった。だが女性によると、

晩年は、突然意味不明なことをしゃべったり、街で徘徊
(はいかい)して警察に保護されたりした。遺書を書いた
ときは有料老人ホームに入居していたという。

父が遺言を書けたとは思えず、仕事の合間をぬって
証拠集めに奔走した。まず確認したのは筆跡。父が書いた
銀行の振込用紙などを見つけ、遺言は「本人の筆跡でない」との
鑑定を得た。病院や介護施設にも文書で請求し、
脳のMRI画像や介護記録なども手に入れた。
資料は500枚以上に。筆跡や医師の鑑定に
約100万円かかるなど、収入の多くを費やした。

裁判で「遺言書の存在が不可解」などとする医師の
鑑定書を提出すると、姉側の態度が一転。
昨年12月、姉妹で折半する内容で和解した。
父の死から4年半が過ぎていた。

姉妹は絶縁状態のまま。
「父が元気な間に相続について話しておけば、
こんなことにならなかった」との思いが女性の胸に残る。

     ◇

〈相続と遺言〉 民法の規定では、例えば配偶者と子が
相続人の場合は、遺産の半分を配偶者、残り半分を子が
受け継ぐ。遺言があると、その内容に基づく遺産分割が
優先される。「自筆証書遺言」は全文と日付、氏名を自分で
書き、押印する。死後、家裁で相続人らが立ち会って
確認する「検認」手続きが必要。「公正証書遺言」は
証人2人以上が立ち会い、遺言者の口述を公証人が
文書にする。複数の遺言がある場合は、種類によらず
新しい遺言が優先される。

■健康なうちに協議を

認知症であっても残した遺言がすべて無効になるわけ
ではない。症状が軽い場合や症状に波がある場合などで
遺言能力が認められることがある。遺言内容の複雑さや
結果の重大さなどによっても判断は変わる。

相続に詳しい弁護士らによると、トラブルを防ぐため、
遺言時に心身の状態を医師に診察してもらう例もあるという。

争いを避ける基本は、何より家族の事前の話し合いだ。
「心身が健康なうちに、遺産分割に ついて家族の間で
共通認識をもつことが大事」と小堀球美子弁護士は言う。
遺産の話は、受け取る側からはしにくい。
「盆や正月など家族が集まる時 に親から話をしてみては」
と提案。家族の理解を得たうえで、生前に贈与する方法もある。
(沼田千賀子、坂井浩和、佐藤実千秋)

コメントです。

今日の話題は、故人が生前元気な時は、
家族間であまり話題にしたくない内容ですが、
当然先では避けられないことです。
また、事前にきちんと話をしておいても、
揉めている事例もたくさんあるようです。



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posted by salsaseoul at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

ひとり親への児童扶養手当、「事実婚」確認に基準 厚労省

2015年4月25日 朝日新聞

ひとり親に支給される児童扶養手当について、「事実婚」の状態か
どうか生活実態を確認して判断し、適切に支給するよう求める
通知を厚生労働省が各都道府県に出した。
シェアハウスに住んでいる場合など、自治体が判断に迷う
ケースが増えているためで、判断の具体例も示した。

児童扶養手当は一定の所得以下のひとり親や養育者に対し、
子ども1人の場合は最大で月4万2千円が支給される制度。
2014年3月末時点の受給者数は約107万3千人いる。
ただひとり親が事実婚の状態にある場合は支給されない。

通知を出したきっかけの一つは、東京都国立市の判断だ。
昨年12月、シェアハウスに長女と入居するひとり親の女性に対し、
別の部屋に親族以外の異性が同居していることを理由に
事実婚と見なし、児童扶養手当と都の児童育成手当の支給を
停止した。これに疑問が投げかけられ、国立市は支給を再開。
厚労省は、親族以外の異性との同居などを理由に手当を
支給するか判断に迷った例がなかったかどうか自治体に
調査したところ、約100件あった。

通知では「機械的な判断」はせず、生活実態を確認して判断する
ことを要望。居住形態ごとに事実婚かどうか判断する基準を8例
示した。例えば、シェアハウスでは「個室スペースに施錠が可能」
「光熱水費など生計を異にしている事実がある」場合は支給停止の
対象にならないとした。家の間取りや生活状況などを確認し、
個別に判断してほしいとした。

 (畑山敦子)

 ■事実婚とみなさない主な事例(厚生労働省通知から)

 住まいの形態/事実婚とみなさない条件

     *

異性が入居しているシェアハウスなどにひとり親家庭が住む場合
/入居者がそれぞれ別世帯であると賃貸借契約書で確認できたり、
光熱水費の利用料が案分されていたりする場合

離婚後、元夫は実際には住んでいないが住宅ローンの支払いの
ために住民票を移動していない場合/現地調査や元夫の今の
住居の賃貸借契約書など、同居していないことが確認できる

ひとり親と前夫が部屋は別だが同じマンションに住み、子どもが
定期的に行き来している場合/子どもが行き来するだけなら
事実婚とみなさない。頻繁に訪問しあったり、生活費を
したりしている場合は事実婚とみなす


コメントです。
最近、生活苦のために偽装離婚する方々も
増えていますが、今日の記事に関しても、それなりに
理由があって該当ケースが増えたことにより、
地方自治体も無視できなくなったのでしょうね。

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posted by salsaseoul at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・社会

2015年04月09日

失意の若者狙うイスラム過激派 戦闘員候補、巧妙に物色

2015年4月5日 朝日新聞

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日本人3人を含む外国人観光客ら21人が死亡した博物館
襲撃事件が起きたチュニジアの首都チュニス。この街に住む
運転手マルウェンさん(25)は数年前、失意の日々を過ごしていた。

親友を交通事故やがんで亡くし、自分も失業中。近所のモスク
(イスラム教礼拝所)に通い始めた。

祈りの後、男2人に声をかけられた。高級車に乗り、カフェで2度、
朝食をおごってくれた。男らはイスラム教について語り、
「世界で何が起きているか学んでほしい」とDVDを渡された。

映画のように凝ったつくりの映像。ビーチで遊び、酒を飲む若者らを
津波が襲うような場面があった。不信心者は災いに襲われるという
警告だ。2001年の米同時多発テロの映像や、聖典コーランの
言葉も出てきた。
「良いイスラム教徒ならば悪と戦わねばならないと思わせる内容だった」

その後、男の一人が「私はジハード(聖戦)に行く機会があれば、
決してノーとは言わない」と諭してきた。

マルウェンさんはたまたま臨時雇いの仕事を得て首都を離れた。
仕事は忙しく、夜はディスコで遊び、男からの電話は無視した。

チュニスに戻ると「なぜ電話に出なかった」と詰問され、殴られた。
そして男たちは姿を消した。戦闘員候補を物色していたのだ――。
マルウェンさんはそう確信している。

イスラム過激派が若者を誘い込む手口は欧州でも巧みだ。

ベルギーの 首都ブリュッセル西部モランベークサンジャン
(通称モランベーク)。モロッコ系住民が集中する地区の
アパートの一室に、10代の若者数人が集まっていた。
ホームレスに食糧を提供するなど慈善活動をしている
グループの会合だ。近くに住むモロッコ系のハサンさん(28)も
声をかけられ、参加した。

だが、この日はいつもと少し雰囲気が違う。すると、中心に座って
いたあごひげを蓄えた白人の男が参加者に語りかけた。
「君たちは負け組だ。何をすれば良いか分からないだろう。
一緒においで。美しい国だ。ここみたいに寒くない。ひと月の
訓練に3千ユーロ(約39万円)払おう。そして、シリアで闘うんだ」

ハサンさんは「まずお前が行け」と抗議した。
だが、その場にいたモロッコ系の少年(14)は後で、こう打ち明けた。
「ベルギーが自分の国のように思えない。僕は外国人。僕の
本当の祖国はイラクかシリアかあの辺りにある」

■失業率4割…若者絶望、つけ込む過激派

ベルギーの首都ブリュッセル西部のモランベーク区の地下鉄の
改札口を出ると、自動小銃を持った警察官4人がじっとこちらを
見た。近くの警察署玄関は鉄柵で囲われ、重武装した警官が
見張っている。そばには数十メートルごとにイスラム教の礼拝所
モスクがあり、周りはアラビア語の看板も目立つ。

モランべークは、ベルギーの捜査当局が1月、国内で大規模テロを
計画した容疑でイスラム過激派グループの拠点とみられる
計6カ所を捜索した街だ。

捜索は国内各地で行われ、ベルギー東 部ベルビエでは、当局との
銃撃戦の末、モロッコ系の移民2世、カリ・ベンラビ容疑者(23)が
射殺された。同容疑者はモランべークで生まれた。地元紙によると、
銃撃戦で死亡したもう一人の容疑者と、逃走中の首謀者の
アブデルアミド・アバウド容疑者(27)もモランべークの出身だという。

19世紀前半の産業革命以降、モランべークでは街の東を通る運
河沿いに工場が多く建設され、労働者が移り住んだ。
1960年代半ばから、不足した労働力を補うため政府が受け入れる
ようになったモロッコ人が住むようになった。モランべーク区によると、
現在は住民約9万5千人のほぼ半数がモロッコ系だという。

国の統計によると、モランべークの住民の12年の平均年収は、
国全体の6割の約1万ユーロ(約130万円)にとどまる。
区は「ブリュッセルの自治体で下から2番目に貧しい」と説明する。
失業率は30%近く(国平均8・5%)で若年層になると
4割を超えるという。

モランべークに住むハサンさん(28)は、ベンラビ容疑者の
幼なじみだった。親しみを込めて、容疑者を「カリ」と呼ぶ。
「カリ」はモロッコ人の一 般的な家庭に生まれた。
高校卒業後、スーパーの配達員を半年やったものの契約を
切られ、その後、窃盗などで逮捕されるようになった。

その「カリ」が1年ほど前、突然ハサンさんに電話をしてきて告げた。

 「ここには何もない。俺は出て行く」

ハサンさんは後に「カリ」がフェイスブックに掲載した写真で、
シリアに渡り、過激派組織「イスラム国」(IS)に加わったと
知った。ハサンさんは、「カリ」がいつ過激なイスラム教の思想に
のめり込んでいったのか、見当もつかなかったと語る。ISは2月、
英字機関誌「ダビク」に、射殺された「カリ」たちの写真を「英雄」
として掲載した。

ハサンさんも高卒で、生活は楽ではない。昼は公共施設、夜も
警備員として働いている。「イスラム教は平和の宗教」だから、
シリアに行こうとは思わないが、「カリ」の絶望は理解できる。
「この街で生まれ、学歴も、職も資格もなく、この先、将来が
良くなるという希望もない時、どうやってここから抜け出せるのか」

過激派の戦闘員になりたいという若者の相談に乗るブリュッセルの
中央モスクの説教師モハメド・ガライエ・ンディアイさんは
「良い学校に行けず、就職できず、犯罪に手を染めた若者に
過激派戦闘員のリクルーターが目をつけて、『殉教者になれば天国に
行ける』と誘っている。これは宗教ではなく、社会の問題だ」と指摘する。

ロンドン大学キングスカレッジによると、ベルギーからシリアや
イラクの反体制派の武装グループに440人が加わった。
人口比では西欧諸国では断トツに多い。

モランべークではイスラム過激派のグループとのつながりを
疑われまいと、誰もが口をつぐむ。

モランべークのフランソワ・シェプマン区長は、「モロッコ系という
マイノリティーが多すぎることで、住民全体の社会参加の意識が
希薄になってい る。自治体は文化や社会、教育分野の施策の
実行を通じて、若者の過激化を防ぐ必要がある」と語った。
(チュニス=翁長忠雄、ブリュッセル=吉田美智子)

■武器取引は、静かな住宅街の一角

カリ容疑者ら、過激派戦闘員は自動小銃などで重武装していた。
1月の仏連続テロやベルギーのテロ未遂事件などで、専門家らは
「ベルギーが武器調達先になっている」と指摘する。

モランベーク近郊。比較的静かな住宅街の一角にその電気工事
会社の作業場があった。元従業員の男性(26)は作業場を指さし、
「ここで武器取引をしていた」と証言した。

男性は、3年前の夕方、2人のチェコ人が通常の資材搬入のような
格好で車のトランクから毛布にくるまれた自動小銃を運んで
いたという。「AK47(自動小銃)が6丁以上あった」と話す。
会社の経営者の40代の男性が「副業」でやっていたのだという。
経営者に聞くと、ベルギーに住むチェコ人が東欧から武器を仕入れ、
車で運んで来ると教えてくれたという。自動小銃は1500ユーロ
(約19万6千円)で買い、3千ユーロで転売するというが、売り先に
ついては口を閉ざした。経営者はブリュッセル南西の高級住宅街に
住んでいるという。

男性は「工事の仕事をやっていると東欧系の労働者と接する
機会が多い。そこで武器取引の接点を持ったのではないか。
取引を見たのは1回だけだが、今もやっていると思う」と話す。

「経営者は普通の人で、武器は売るが使ったことはないはず。
中産階級の彼は、摘発のリスクも少ないと思う。武器市場は、
どこかに集中してあるわけではなく、分散して存在する」とも語った。

経営者に取材の依頼をしたが、拒否された。

一方、フランスでは移民が多く住むパリ郊外で容易に武器は
手に入ると人々は口ぐちに言う。パリ北西の町セルジーに住む
コンゴ共和国系の男性は武器取引の仲介ができるという。
「自分でなくても、移民街に住む者は大抵、知人をたどれば
行きつく」と話す。
「旧ユーゴスラビアの人たちの武器が一番質がいい。自動小銃も
手に入るが、銃弾が手に入りにくい。短銃は数百ユーロだが、
強盗に使われた銃は半値以下になる」と語った。
(ブリュッセル=杉山正)

■新たな脅威…軍事訓練受け帰国し、テロ実行

ISなどの過激派組織で戦闘に参加したり、軍事訓練を受けたり
した人々が帰国後にテロを起こす事件が相次ぎ、国境を越えた
脅威が広がっている。

国連安保理の専門家パネルの報告書は、ISなどに加わった外国人
戦闘員の規模は「100カ国以上からの2万5千人以上」と指摘している。

チュニジアからは最大の3千人以上がISなどの過激派組織に
加わっている。AFP通信によると既に約500人が帰国したという。
北アフリカで治安がよいとされていた首都チュニスでは、3月に
日本人3人も犠牲になった博物館襲撃事件が発生し、実行犯は
過激派組織が勢力を伸ばす隣国リビアで軍事訓練を受けていた。

また、欧州連合(EU)各国からは過激派思想に共鳴してシリアに
渡った人々は3千から5千人とされ、1千人近くが既にEU内に
戻っているという推定もある。

今年1月に起きたフランス連続テロ事件では、実行犯の兄弟は
イエメンを拠点とする「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」で
軍事訓練を受けたとされ、他の1人はISとの関連を自称していた。


コメントです
欧州で、移民系の若者が過激派組織にスカウトされる
関連の記事です。


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2015年04月03日

アジア投資銀に48カ国・地域 日米抜き、戦略欠き孤立

2015年3月31日 朝日新聞

20150402.jpg

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバーの
募集が31日、締め切りの期日をむかえた。欧州や韓国がなだれを
打って参加したことに、米国の孤立感は深まる。
日本にとって、待つのが得か、動くのが得か。

AIIBの融資基準や運営手法に懸念を示してきた米国だが、いまや
孤立は明らかだ。30日から31日にかけても、北欧からフィンランドに
ノルウェー、スウェーデンが次々と名乗りを上げ、台湾までも申請
することを発表した。

米政府内では当初から様々な意見があった。
だが、そうした意見を集約し、一貫した戦略を作った様子は
うかがえない。元政府高官は「ホワイトハウスの数人の強硬派の
意見が強く、財務省や国務省とうまく連携が取れていなかった」と
指摘。ある米政府関係者も「最初の段階から、もっと前向きに
対応すべきだった」と話す。

米国はオーストラリアや韓国などに対し、参加の判断を慎重に
するよう求めてきた。だが皮肉なことに、米国と最も緊密なはずの
英国の参加表明で、主要国が堰(せき)を切ったように中国側に
流れた。アジア開発銀行(ADB)関係者は「『一枚岩で対応しよう』と
主要国を引っ張る姿勢が米国にみえなかった。
AIIBという機関車に主要国が一緒に立ち向かうはずが、日米以外が
直前に逃げ出した」と話す。

AIIBを後押しした背景には、中国など新興国の発言権拡大を狙った
国際通貨基金(IMF)の改革が、唯一の拒否権を持つ米国の議会の
反発で進んでいないことがある。2010年にまとまった改革案が
通れば、中国の出資比率が6位から、米国、日本に次ぐ3位に
なるはずだった。米民主党のベテラン議会スタッフは
「米国のオウンゴールだ」と言う。

政治学者のイアン・ブレマー氏は「中国主導の枠組み作りが
成功すれば、米国主導の従来の国際秩序を弱体化させることに
つながる」と指摘する。「問題は、中国が米国主導の従来の基準に
追いつく前に大国になったことだ。長期的にみれば、自国の基準を
変えなければならなくなるのは米国だろう」(ワシント ン=五十嵐大介)

■加盟拡大、中国に制約も

各国が雪崩を打つように参加表明した流れをつくった英国。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、当初、日米との関係に
配慮する英外務省は反対していた。だが、オズボーン財務相が、
商業的な利益が外交上の懸念にまさると閣僚らを説得したという。

英国側が期待するのは、国際市場で増え続ける人民元取引を
取り込むことだ。英王立国際問題研究所のロデリック・ワイ氏は
「(金融街シティーがある)ロンドンの競争力につながるのも期待の
一つだろう」とみる。ルクセンブルクなどとの、AIIBの欧州拠点の
誘致合戦もささやかれる。

新興国の代表格「BRICS」から参加したロシアは当初、中国の
影響力が強まりすぎることへの警戒があった。だが、中国の
突出した経済力は無視できない。IMFや世界銀行が米欧主導に
なっていることへの不満も、共有している。
中国が進める「シルクロード経済圏」構想に参加するためにも、
AIIBに加わったという見方もある。

思惑通りの展開に見える中国だが、「本当に難しいのはこれから」
(国際金融筋)との声もある。参加国が増えればその分、中国の
発言権は薄まるからだ。

参加国には、銀行の運営に高い透明性を求め、中国の独走に
ブレーキをかける動きもある。オーストラリアは「理事会の権限が
確保され、一国が銀行を支配できないこと」を正式参加の条件とす
る。中国の楼継偉財務相は、運営の仕方について「西側の規則が
最良とは思わない」と述べており、「中国流」の運営にこだわりを
のぞかせる。
(ロンドン=寺西和男、モスクワ=駒木明義、北京=斎藤徳彦)

■日本、米の動向を様子見

31日午前、麻生太郎財務相は閣議後の会見で、AIIBへの参加に
ついて「極めて慎重な姿勢を取らざるを得ない」と述べ、改めて
不参加の方針を示した。

AIIBへの参加をめぐっては年明け以降、財務省のもとに、
中国・米国双方から水面下で接触があった。中国側が参加を
要請する一方、米国側は直接的に不参加を求めてきたわけでは
ないという。「別に要請はなかったが、『そうだよな』で(話は)
終わった」(麻生財務相)という。

財務省のある幹部は「米国とこじれると何をされるか分からない。
それは避けたい」と明かす。中国の経済成長に伴い、米中は
安全保障分野だけでなく、経済分野でも覇権を争う。その米国と
たもとを分かち、日米で主導するADBのライバルのもとに走る
選択肢はそもそも取りえなかった。

政権は当面、参加表明国がAIIBの設立協定を結び、組織の運営や
出資比率などが決まる6月末までは「様子見」の姿勢だ。
不参加の場合、AIIBの融資を受けた案件の入札で日本企業が
不利な扱いを受けかねない、との懸念もある。経済同友会の
長谷川閑史代表幹事は31日の会見で「インフラビジネスが不利に
なることだけはないようにしていただきたい」と注文をつけた。

米国が突然態度を翻して参加に転じ、日本がはしごを外されないとも
限らない、との見方も政府内にはある。
「米国が入るなら日本が入らない選択肢はない」(官邸幹部)と、
「半身」の姿勢だ。

安倍晋三首相は31日午前、自民党の外交部会の幹部に対し、
AIIBに対する日本のスタンスについて「大いに活発に議論して
欲しい」と指示したという。同日午後には官邸に財務省の
山崎達雄財務官や浅川雅嗣国際局長らを呼んで話を聞いた。

     ◇

〈アジアインフラ投資銀行(AIIB)〉 中国が提唱し、今年12月末
までの設立をめざしている。本部は北京に置き、拡大するアジアの
インフラ需要に対応することを目的にしている。昨年10月の設立
覚書には中国やインド、東南アジアなどの21カ国が調印した。
その後、英国やドイツな ど欧州の主要な国々も参加を表明。
これまでに48カ国・地域が創立メンバーに手を挙げている。
法定資本金は1千億ドル(約12兆円)で、出資比率は各国の
経済規模などをもとに話し合うと言われている。4月中旬に
創立メンバーが確定。
5月ごろに設立協定策定の最終会合があり、6月末までに
協定署名のための閣僚大臣会合が開かれる。



コメントです
今日は余談から始めます。
現在、中国は漢民族と55の少数民族から
なります。
そして、国境付近に自治区を設けて、
少数民族の文化および生活を尊重しています(おそらく…)
これは、諸説がありますが、中国4千年の歴史で、
他民族の進入を防いで国境を守るのに莫大な費用と
労力を費やしたからだと言われています。
(実際、日本の将棋は駒が生き返りますが、中国将棋の
駒は生き返りません。それだけ、他民族との争いが
激しかったのでしょう)
さて、あまりにも余談が長くなりましたが、今回の中国主導の
銀行設立。
確かに参加しないことで、今後日本企業の海外進出時等に
不利益を被ることもあるでしょうが、やはり、根本では
日本は独自性を保ちたいですね。
それより、なし崩しで参加を表明した他国は、自ら金融植民地
支配を申し出た感じさえします。

これらの理由から、日本政府の判断は正解だと思います。


posted by salsaseoul at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本・政治 経済