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2015年01月28日

(時時刻刻)仏連続テロ、結束の陰で 「シャルリー批判、テロリスト扱い」


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連続テロ事件に抗議する370万人の大行進で、フランスは世界に
「結束」を示した。その一方で、疎外感を深めているムスリム
(イスラム教徒)たちもいる。ムスリムの若者たちはテロには反対
しながらも、風刺画や社会への反感を心の中にくすぶらせる。

 ■イスラム教徒、疎外感

北アフリカ系移民家庭に育った30代の会社員男性は、仏週刊新聞
「シャルリー・エブド」の襲撃事件の翌日から「違和感」を感じ始めた。

リュックを背負って地下鉄のホームに立っていると、周りの人が自分から
露骨に離れているのが分かる。
そして、遠巻きに不審な目でじろじろ見られる。

男性は肌色や風貌(ふうぼう)から北アフリカ系か中東系だと分かる。
がっちりとした体形で、顔つきも鋭い。これまでもレストランでの接客や
職場など日常生活で小さな差別をいくつも感じてきた。それがいま、
一気にエスカレートしているように肌で感じる。

事件はイスラム教徒全体への反発につながると直感し、すぐに母親に
電話をかけて、こう告げた。
「安全のためしばらくモスクに行かないほうがいい」。
実際、連続テロの発生以降、モスクやイスラム教徒への発砲や放火、
脅しなどが100件以上に上る。

男性は連続テロについて、「暴力に訴える戦いは現実逃避だ」と話す。
一方で、「シャルリー・エブドは全イスラム教徒を侮辱していた。
報復に値するとも思った。絶対に公言しないが、
こう考えるイスラム教徒は少なくない」と複雑な思いも口にした。

フランスではいま、パリ郊外のシャルル・ドゴール空港から街中まで
「私はシャルリー」の文字があふれている。
テロに屈せず、表現の自由を守ろうと、襲撃された「シャルリー・エブド」を
支持する動きは広がり続けている。

パリのシャルリー・エブドの事務所近くには、追悼に訪れる人々が
後を絶たない。
ブルーノ・ローダさん(49)は「『私はシャルリー』というのは、
自分が自由でいたいことを意味する。イスラムだけではなく、
いかなるものでも批判できるのを望むということだ」と話した。

ただ、一色に染まった仏社会に冷めた見方をする人もいる。

パリに住む銀行員アレクサンドルさん(31)は
「風刺画は不快だが死に値する人などいない」とテロを非難しつつ、
「『私はシャルリー』という新宗教ができた」と苦笑いする。

「今、シャルリーを批判すればテロリスト扱い。ユダヤ人批判については
政治的にも社会的にもタブーとされたまま、イスラム教徒への侮辱、
攻撃ばかりが強まっている。建国理念の『自由、平等、博愛』は
『すべての人に対してではない』と説明を付けた方がいい」と皮肉った。
キリスト教家庭に育ったアレクサンドルさんはイスラムに改宗している。

「イスラム憎悪に関する研究所」のアブダラ・ゼクリ所長は「テロリストを
強く非難する。イスラムの名において殺人は許されない」とした上で、
シャルリー・エブドも批判した。「資金援助を受け、イスラムへの挑発を
続けるだろう。一方でユダヤ人には触れない。
今、フランスで『私はシャルリーではない』とは自由に言えない。
二重基準だ。
表現の自由はどこだ」と話した。

 ■移民・失業者…社会に憎悪も

パリ中心部から南に約25キロの町グリニー。
華やかなパリの街並みから一変して、質素な住宅群が並んでいる。

テロ事件で射殺された西アフリカ・マリ系のアムディ・クリバリ容疑者が
育った町だ。クリバリ容疑者は9日、パリでユダヤ系食材の
スーパーマーケットを襲い、人質4人を殺害した。

パリであふれる「私はシャルリー」の標語は消える。
町を歩く人のほとんどがアフリカ系かアラブ系の移民らだった。
立っているだけの人もいる。
同行した運転手は「やつらは麻薬の売人だ」と言った。「
ここの住民は部外者を信用しない。社会そのものを憎んでいる」

フランスで最も貧しい地区の一つで、犯罪が多発する危険な町だという。
公式統計では、グリニーの2011年の失業率は22・3%で
全国平均の2倍以上だ。

クリバリ容疑者と同じ学校に通ったイブライムさん(31)はセネガル系。
「クリバリは子供の頃から警察沙汰を繰り返していた。だが、モスクで
姿を見たこともなく、宗教心は薄かった」と話す。

クリバリ容疑者は刑務所でイスラム教の過激な思想に傾倒していったと
される。イブライムさんは「グリニーがクリバリを刑務所に送り、刑務所が
テロ組織に送った」と話した。

パリの町には、激しい思いに駆られる若者もいた。

仏紙襲撃があった今月7日、ニュースを見たパリの20代の
店員の男性はすぐに友人たちに携帯電話でメッセージを送った。
「イスラムのライオンが今日、シャルリー・エブド紙を攻撃した。
勇敢な行為だ」と書いた。

アジア系の父親とフランス人の母親を持ち、パリ近郊の移民が
多い地区で育った。「職がない周りの友人の多くが『聖戦(ジハード)』に
行きたいと思っている」と話した。

米軍のアフガニスタン戦争を機に、不正義を感じるようになり、世界の
紛争を勉強するようになったという。
「自分はアフガニスタンで戦いたい」と話した。

男性を踏みとどまらせているのは、家族とのつながり、
そして仕事のやりがいだ。
「仕事と両親のことを考えると今は動かない」と心情を吐露した。
(パリ=杉山正)


関連記事です。
フランスの言論の自由はダブルスタンダードか?
コメディアンら逮捕めぐり批判も


パリの風刺新聞社『シャルリー・エブド』などが襲撃された
フランスの連続テロ事件に関連して、フランス司法当局は14日、
テロ行為を賞賛する言動を したなどの理由で、事件後に54人を
逮捕したと発表した。『シャルリー・エブド』のイスラム風刺が
支持される一方で、こうした取り締まりが行われていることに対し、
フランス国内では、「言論の自由のダブルスタンダードだ」などと
する批判的な意見も出ているという。

◆人気コメディアンも逮捕
英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、フランス司法当局は先週の
テロ攻撃後、ヘイトスピーチを行ったり、テロ行為を賞賛した者に対する
取り締 まりを強化するよう検察に新たに命じ、それによって54人が
逮捕されたと発表した。
その中には、人気コメディアンのデュドネ・ムバラ・ムバラ氏のほか、
未成年や「酔った弾みで口が滑った」者まで含まれているという。

デュドネ氏は、最初に攻撃された『シャルリー・エブド』と、
ユダヤ食品店を襲って4人を射殺したアメディ・クリバリ容疑者の
名前をもじり、「俺は 今、シャルリー・クリバリな気分だ」と
Facebookに投稿。
これが当局によって、「反ユダヤ主義的」なヘイトスピーチであり、
テロ行為を賞賛したと受け止められた。ちなみに、
「シャルリー・クリバリ」のフレーズは、全仏で行われている
『シャルリー・エブド』の犠牲者を悼む集会などで掲げられる合言葉、
「私はシャルリー(Je suis Charlie)」のパロディでもあるようだ。

デュドネ氏は若者を中心に人気を集めるアフリカ系フランス人の
コメディアンで、きわどい政治ネタを得意としている。
特に「反ユダヤ的」なネタが多く、過去にも何度か今回と同様の
逮捕歴があるという(FT)。

◆「風刺」と「差別」は違う
一方、『シャルリー・エブド』は、襲撃後の最新号でもイスラム教の
予言者ムハンマドの風刺画を掲載し、テロに屈しない姿勢を示した。
ワシントン・ポスト紙(WP)は、この最新号が爆発的に
売れたことにより、「言論の自由のシンボルとなった」と記している。

しかし、『シャルリー・エブド』の風刺が賞賛され、デュドネ氏の
“ジョーク”が逮捕容疑となることについて、フランス国内では
「ダブルスタンダー ドだ」という批判も出ているという。
FTはその例として、夕刊紙『ル・モンド』の社説や著名作家の
ブログの書き込みを挙げている。

こうした批判に対し、言論の自由の問題に詳しいフランスの
法律家は、FTで「シャルリー・エブドは、フランス社会全体の
様々な対象に向けた風刺だ。
一方、デュドネの発言は、差別主義的な思想がベースになった
過度に政治的なものだ」とコメントしている。

また、ヴァルス首相は国会で「(風刺という)生意気で図々しい
態度を取る自由と、反ユダヤ主義、人種差別主義、テロ行為の
賞賛とホロコーストの否 定には根本的な違いがある。
後者はいずれも法が厳格に罰するべき攻撃的な行為であり、
犯罪である」と述べた(WP)。
デュドネ氏は2003年に、「ユダヤ 人ジャーナリスト」と「ガス室」を
結びつけたギャグを披露し、逮捕されたという前科がある(FT)。

◆イスラム系コメディエンヌは「テロに迷惑している」
同じフランス人コメディアンの発言でも、広い支持を集めている
ケースも報じられている。アラブ系放送局『アルジャジーラ』が
紹介するチュニジア系のコメ ディエンヌ、サミア・オロセマンさんは、
自身がイスラム教徒でありながら、
YouTubeに投稿した動画を通じてテロ行為を批判している。

彼女は動画で、「イスラム原理主義者」や「ジハード主義者」を
「間違った事に関与する頭のイカれた連中」と批判。
「(テロのせいで)私たち(ムス リム)がヨーロッパで暮らすことが
難しくなってきている。それに(大多数のムスリムが)疲れきっている
ことは分かっているよね?
だから、もう他の宗教を選 んでほしい」と発言。
この動画は、昨年10月にカナダで起きたイスラムテロ事件を
受けて作成し、今回再投稿したものだが、パリの事件後だけで
10万近いアクセスがあったという。オロセマンさんの訴えは、
テロ行為も辞さないという狂信的なイスラム教徒はごく一部で、
「その他大勢は迷惑している」という、ヨー ロッパのイスラム社会の
声を代弁していると好意的に受け取れられているようだ。

また、彼女は『シャルリー・エブド』については「好きだったことは
一度もない」とアルジャジーラに答えている。14日の新作動画では、
同紙の最新号の表紙を飾った予言者ムハンマドの風刺画に
ついて、次のように呼びかけている。

「今日、『シャルリー・エブド』は
『マホメット(Mahomet=フランス語表記)』の風刺画を
発表しました。マホメットって誰?私たちの予言者の名前は
確か『ムハンマド(Muhammad)』だよね。『ムハンマド』は
“崇拝される者”という意味。『マホメット』はその反対。
だから、過剰反応せず に無視しましょう」



コメントです
フランスの連続テロ後、被害者団体への批判が
タブーに成りつつある記事を掲載しました。
これではまるで、
「王様の耳はロバの耳」 ですね。



posted by salsaseoul at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州