東京電力福島第一原発の事故後に福島県川俣町から
避難した渡辺はま子さん(当時58)の自殺をめぐる
損害賠償訴訟で、26日の福島地裁判決は
「原発事故がうつ状態と自殺の原因になった」と認定。
約9100万円の請求に対し、計約4900万円を
遺族4人に支払うよう東電に命じた。
東電によると、原発事故と自殺の因果関係を認めた
初めての判決。
訴えていた夫の幹夫さん(64)ら遺族側の弁護団は
「避難による精神的苦痛を正面から認め、被害者の
権利救済の道を大きく開いた」と評価した。
判決によると、はま子さんは2011年6月、計画的避難
区域になった川俣町山木屋地区から福島市のアパートに避難。
夜によく眠れなくなり、食欲が落ちてやつれ、ただテレビを
見て過ごすことが多くなった。一時帰宅した自宅に1泊した
翌日の7月1日未明、庭先で焼身自殺した。
判決は、はま子さんが58年間暮らした山木屋の人々との
つながりや養鶏場の仕事を原発事故で失い、不慣れな
アパート暮らしを余儀なくされたと指摘。
「耐え難いストレスがはま子さんをうつ状態にさせ、自殺に
至らせた」と認めた。「一時帰宅の際に感 じたであろう展望の
見えない避難生活への絶望、生まれ育った地で自ら死を
選んだ精神的苦痛は、極めて大きかった」とも指摘した。
東電は「判決の内容を精査し、引き続き真摯(しんし)に
対応します」との談話を出した。
内閣府によると、「震災関連自殺」とされた死者数は、
福島県を含む9都府県で7月までに計130人に上る。
(根岸拓朗)
■遺族「東電は謝罪して」
「私たち家族に寄り添った判決だ」。
夫の幹夫さんは判決後の記者会見で、とつとつと語った。
はま子さんが原発事故前に暮らしていたのは、家が
12軒の小さな集落だった。大根や白菜などを育て、
アヤメやチューリップを植えたはま子さん。自宅に
近所の人たちを招いてカラオケ大会を開き、養鶏場の
仕事では、幹夫さんとトラックで東北や関東のあちこちを
回り、ニワトリを配達した。
判決は「安住の地に住み続け、農作物や花を育て、
働き続けたいと願ったはま子さんにとって、生活の場を
自らの意思によらず突如失い、終わりの見えない
避難生活を余儀なくされたストレスは耐え難かったと
認められる」とした。
幹夫さんは「はま子もこれで成仏できる。
ゆっくり休んでほしい」と話した。
裁判の中で「はま子さんの脆弱(ぜいじゃく)性を考えれば、
原発事故が自殺の原因だとは言えない」と主張した
東電に対しては、「判決を真摯(しんし)に受け止め、
因果関係を認めて謝罪してほしい」と改めて求めた。
弁護団代表の広田次男弁護士は「全面勝訴だ」と高く評価。
「原発事故を原因とする損害賠償裁判の先例となり、
全国各地の原発差し止め訴訟にも大きな意味を持つ」と強調した。
原発事故賠償の問題に詳しい除本理史(よけもとまさふみ)
大阪市立大教授(環境政策論)は判決について「はま子さんが
どう心理的なダメージを受けたかを丁寧に指摘しており、評価できる。
原発事故は人を自殺させるほどの被害をもたらすことが、改めて
社会に認識されるべきだろう」と話した。
■「勇気づけられた」同様訴訟の原告ら
判決は、東電と裁判で争う原発事故の被害者たちを
勢いづかせた。
「うれしい。私もがんばろうという気持ちになった」。
福島県伊達市の菅野バネッサさん(36)はそう語った。
同県相馬市で 酪農を営んでいた夫の重清さん(当時54)は
事故から3カ月後、壁に「原発さえなければ」と書き残し
自ら命を絶った。バネッサさんは昨年5月、
約1億 2600万円の賠償を求め東電を提訴した。
「今回の判決に勇気づけられた。2人の子どものため、
私もしっかり闘っていきたい」
福島地裁いわき支部で係争中の避難者の集団訴訟に
参加する金井直子さん(48)は判決を傍聴。
「うれしくて涙が出た」と喜んだ。
関連記事です。
新宿での焼身自殺未遂事件 報道が少なかったのはなぜ?
多くの買い物客らでにぎわう東京・新宿で6月29日、
1人の男性が衆人環視の中、自らの身体に火を放って
自殺を試みる事件が起きた。この様子は、現場にいた
人々が撮影してネットに投稿され、大きな話題となった。
それほど大きく報じられなかった。
この男性の行為は、安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に
反対したものといわれるが、なぜ新聞やテレビでは
あまり報道されなかったのだろうか?
報道によると、中年の男性が、拡声器で集団的自衛権や
安倍首相に関する主張を1時間ほど述べた後、
ガソリンのような液体をかぶり、火をつけたという。
反響を呼んだ。しかし、ネットでの衝撃とは裏腹に、翌日の
月曜日の新聞では、読売、朝日、毎日、産経はいずれも
社会面の小さなベタ記事扱い。写真もなく、よほど注意して
見ないと記事に気づけない。テレビ民放各局も、1分弱の
単発ニュースで淡々と報じただけ。
NHKではニュースにもならなかった。
イギリスBBCなど外国メディアは、東京発のニュースとして
こぞってこのニュースを報じた。平和主義を掲げる日本の
憲法9条と集団的自衛権の問題を説明するなどし、
「焼身自殺による抗議は、日本では非常にまれ」と、
驚きをもって伝えている。
淡白なことに対して、ネットでは「言論統制か」「何かの圧力?」
「おかしいじゃないか」といった声も上がっている。
「報道すれば、それが模倣の自殺を生む」という指摘が以
前からあった。世界保健機関(WHO) は「自殺予防
メディア関係者のための手引き」を発行している。
その中では、1774年にゲーテの小説「若きウェルテルの悩み」が
出版されてから、主人公 に影響を受けた自殺が
ヨーロッパ中で相次いだことなどを紹介。
真似た自殺を引き起こす」という結論が出たことを示す。
逆に、ウィーンの地下鉄でのセンセーショナルな自殺報道を
減らした結果、自殺率は75%減少できた、という。
「自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、
そして繰り返し報道しない」「写真や映像を用いることには
かなりの慎重を期する」といった注意を、メディア関係者に求めている。
報じているように見えるのはなぜか?
大手報道機関(時事通信社)出身のジャーナリスト・石井孝明さんは、
「海外メディアは、このところ日本ものは派手なニュースでないと
伝えません。また利害関係もない。奇妙さを軸にニュースを
選んだのではない でしょうか。私は大手活字メディアに
いましたが、自殺の扱いは慎重にすることと学びました。
言論統制ではまったくないでしょう」と話す。確かに、
海外で今回の自殺未遂を報じても、国内事情が違いすぎて、
そのまま共感・模倣されるとは考えにくい。
「人の命をネタにして、自分のツイッターやフェイスブックの
閲覧数を増やしたいのだろうか。恥ずかしい行為。
ただ、誰もが悪い人ではないだろうから気づいてほしい」
と苦言を呈する。
報道 2012」(191ページ)を公表しており、この中で
自殺報道にもページを割いている。1986年のアイドル歌手の
岡田有希子さんの事例などをあげ、自殺 を報道することに
よって「連鎖自殺」が引き起こされる危険性を指摘。
このため、報道の注意点として(1)自殺の詳しい方法は報道しない
(2)原因を決めつけず、背景を含めて報道する
(3)自殺した人を美化しない、の3点を示す。
(2)時代を色濃く反映するケース (3)手段や動機が特異な場合、
などの3つをあげる。これを元に、個別のケースに応じてデスクらが
判断することになる。今回のケースは、通常なら私人の自殺は
報道対象ではないものの、(3)に該当するのは明らかで、
なおかつ集団的自衛権に言及していたようなので
(2)にも当てはまる可能性がある、と判断されたようだ。
また、今回の場合、政治的主張があり、報道することで
その主張を広く伝えてしまえば、今後、同様の手口で
自らの主張を行う模倣、もしくは同一人物による再発の
可能性も考えられる。そういう意味でも、報道を抑え気味に
した理由があったと言えるだろう。
コメントです。
関連記事で、自殺報道の扱いについて大手新聞社が
かなりデリケート(?)な基準を設けていることの
説明がありましたが、その基準に基づくからでしょうか?
福島原発事故関連の自殺者数が、すでに130人にも至って
いるのに、あまり話題になりませんね。
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