home003.gif

2014年07月22日

機体散乱、調査団見張る武装兵 旅客機墜落現場ルポ

朝日新聞 2014年7月21日
グラボボ=石田博士 ハリコフ=渡辺志帆、キエフ=喜田尚 ジュネーブ=松尾一郎

20140722.jpg

20日、マレーシア航空機の機首部分が落ちた地点を調べるOSCEの調査チーム。
親ロシア派の武装兵が周囲を固めていた=ウクライナ東部ラシプノエ、石田博士撮影

マレーシア航空機が撃墜されたウクライナ東部の現場に20日午後、
陸路で入った。見渡す限り一面を鮮やかな黄色に染めるヒマワリ畑の
のどかな田園地帯の道沿いに、十数キロにわたって機体の破片が
点在していた。

しばらく走ると、機首の残骸が目に入った。車を降りると、小さな
ぬいぐるみが並べて置かれているのが目に飛び込んできた。

多くの子どもの遺体が、ここ、ラシプノエで収容された。
機体から落ちたり、近くの住民が犠牲になった子どもたちを悼んで
持ち寄ったりしたものだという。

そこからさらに約6キロ東に進むと、多くの残骸があるグラボボに
着いた。バリ島のガイドブック、ダイビングの機材、サングラス。
夏の旅を思わせる品々が、広大な小麦畑の一角に集めて
置かれていた。そばには収容を待つ複数の遺体が置かれていた。

現場で目についたのは、国際的な調査団を見張るように、
付きっきりで動き回る親ロシア派の武装兵たちだった。

大人の背丈ほどあるヒマワリ畑のなかで、欧州安保協力機構
(OSCE)の調査チームが残された機体などを調べていた。
周りでは、迷彩服姿の親ロシア派の武装兵たちが、自動小銃を手に
目を光らせていた。調査チームが移動すると、親ロシア派が車列の
前後を固めて走った。調査チームの一つひとつの動きを監視していた。

■「親ロ派が遺体搬出、証拠隠滅と思った」

州都ドネツクから墜落地点までは車で3時間。親ロシア派が
設けた5カ所の検問を経て、現場に着いた。

武装した大勢の親ロシア派の戦闘員が付近の警戒を続けている。
報道陣は、親ロシア派が自称する「ドネツク人民共和国」が発行した
取材許可証を所持していなければ、スパイ容疑で拘束される
可能性があり、緊張感が漂う。

自動小銃を手にした迷彩服姿の民兵が、運転手の身分証と荷物を
点検する。検問所周辺では、写真撮影や携帯電話での通話は
厳しく規制された。

現場で気になる話を耳にした。

墜落直後から何度も現場を訪れた住民は、親ロシア派の武装兵が、
ミサイル攻撃で傷ついたとみられる遺体ばかりを選んで、真っ先に
搬送するのを目撃したという。
住民は「ミサイルの破片などの
証拠隠滅を図っていると思った」と語った。

墜落機は25平方キロにわたって散乱したとみられる。現場には、
機体の一部と思われる金属片などとともに、ブランケットや
トランクなど、旅を思わせるさまざまなものが散乱していた。
機首部分はラシプノエに墜落し、本体部分は6キロほど
離れたグラボボに落ちた。

畑に育つヒマワリは大人の背丈ほど。遺体や遺品の収容は難航が
予想される。ところどころに白いテープが揺れている。遺体が
あることを示すものだった。

印象に残ったのは、撃墜事件が起こったときの様子だ。

現場近くに住むリリア・クフタさん(43)は17日夕、大きな爆発音を
聞いた。「とうとうウクライナ軍が空爆を始めた」と思って、外
に飛び出した。そして見た光景に目を疑った。

空から降ってきたのは、20以上の人影だったという。

機首が落ちた地点から500メートルほどの場所に住む
アレクサンドルさん(60)も17日夕、家の中で「ドゥドゥン」と
いう大きな爆発音を聞いた。

慌てて飛び出すと、機体が大きく二つに分かれて落ちていくのが
見えた。本体部分は地上に落ちた後に爆発し、黒煙を上げた。

はじめは「軍用機だ」と思ったが、路上や畑に落ちた多くの
遺体を見て「旅客機だ。大変なことが起きた」と思ったという。
(グラボボ=石田博士)

■223人の遺体を収容

ウクライナのグロイスマン副首相は20日、同日午後までに
現場の捜索活動で223人分の遺体を発見、収容したと発表した。
ただ、現場は武装勢力が支配したままで、作業はなお混乱している。

政府の国家安全保障防衛会議のルイセンコ報道官は同日、
朝までに収容された196人分の遺体について「武装勢力が
すべて持ち去った」と語った。その後、欧州安保協力機構
(OSCE)監視団が、現場から約15キロの鉄道駅で多数の
遺体が武装勢力によって保冷車両に収められているのを発見。
武装勢力は「専門家の到着を待っている」と話したという。

ウクライナ政府は、墜落した機体などをハリコフ市に運んで
詳しい検証をしたい考えで、収容場所として同市内の工場も
すでに確保している。ただ、現状では親ロシア派が勝手に
機体や遺体を管理下に置いている状態だ。
グロイスマン副首相によると、駐ロシア大使らが加わる連絡
グループを介して、遺体は親ロ派の支配地域から外に
移すよう交渉が続いているという。

飛行記録を収めたブラックボックスについても、
「ドネツク人民共和国の首相」を名乗る親ロシア派幹部の
ボラダイ氏は20日、「似た部品を回収した」と発言。
「国際調査団が来たら引き渡す」と話し、ウクライナ当局には
手渡す意思がないことを示唆した。

ただ、ブラックボックスをめぐってはこれまで、親ロシア派が
いったん自らが回収したことを認めた後で否定に転じるなど、
発言が二転三転。20日現在も所在は確認されていない。

親ロシア派幹部は同日、ロシアのイタル・タス通信に
「現場での調査活動の安全を保証する」と改めて語った。
ただ、ウクライナ政府との間の停戦の実現が前提だ。
停戦については各国がその重要性で一致しているものの、
その条件を巡って折り合いがつかず、実現に向けた見通しは
立っていないのが実情だ。(ハリコフ=渡辺志帆、キエフ=喜田尚)

■飛行記録隠し指示か ネットに会話内容

ウクライナ保安局は20日、マレーシア航空機の撃墜後、
親ロシア派の武装勢力司令官が墜落現場にいる仲間に対し、
飛行記録を保存している「ブラックボックス」を確保して隠すように
指示する会話内容を動画サイト「ユーチューブ」で公開した。

この動画によると、親ロシア派の主要部隊「ボストーク」の司令官が
撃墜の翌日、仲間との電話で「ブラックボックスはどこだ」と質問。
仲間がまだ確保していないことを告げると、「早くしろ。緊急事態だ。
モスクワがどこにあるか尋ねている」と命じた。

その後、この司令官は別の仲間に「上層部の友人たちが
ブラックボックスの行方にとても関心を持っている。
モスクワの人々だ」と指摘。
「他人の手に渡らないようにしなくてはならない」などと告げた。

その後再び、司令官は最初の仲間から電話で「何か見つけた」と
告げられ、司令官は隠すように指示している。
(ジュネーブ=松尾一郎)



posted by salsaseoul at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州