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2014年04月04日

「カート」、イエメンに影 覚醒効果・多幸感生む葉

「カート」、イエメンに影 覚醒効果・多幸感生む葉
朝日新聞  2014 4 1

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カートをかみながら語り合う弔問客たち=2月、サヌア市内、村山祐介撮影


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水洗いしたカートの葉=2月、村山祐介撮影

中東の最貧国イエメンで、カートと呼ばれる覚醒効果のある葉の
過剰消費が、人々と社会をむしばんでいる。
社交の友として親しまれてきたが、長い独裁と「アラブの春」後の
社会不安で一段と広まった。他の作物からの転作も相次ぎ、
その影響で水や食料も不足。貧困がさらに深まる悪循環が起きている。

■社会不安で消費量増加

首都サヌア中心部の葬儀場。大広間でくつろぐ男たち約150人は
みなぷっくりと片ほおを膨らませ、もぐもぐと口を動かしていた。
かんでいるのは小枝から摘んだカートの新芽だ。

「人付き合いには欠かせないし、元気が湧く。若い頃は毎日9時間は
かんでいた」と元電気技師スリマン・バハリシュさん(61)。
イエメンでは葬儀や結婚式はカート抜きでは始まらない。
毎夕、あちこちの民家の客間でカートパーティーが開かれ、
旧交を温めたり、人脈を広げたり。社交の潤滑油になってきた。
仕事中や運転中に眠気覚ましにかみ続ける人も多い。

かむと青汁や抹茶のような青臭い苦みがある。
覚醒剤のアンフェタミンに似た成分が含まれ、覚醒効果や
多幸感をもたらすという。
産地や品質によって1回分500リアル
(約240円)から1万5千リアル(約7200円)ほどと、イエメンの
物価からすれば安くはない。運転手アブド・サレハさん(38)は
月給の半分以上をカートに費やすが「くつろげるし、やめられない」。

カートは、イエメンやエチオピア、ケニアなどで数百年前から
愛好されてきた。イエメンでは、サレハ前大統領が政権を握った
1970年代以降に急速に浸透し、政府の庁舎内にもカートの
ための部屋がつくられた。地元環境団体「持続可能な開発と
環境保護組織」によると、12年の市場規模は3570億リアル
(約1713億円)で、13年前の8倍に膨らんだ。

カート売りのフォージア・マシュダクさん(30)によれば、
「社会問題が起きるほど、売り上げも伸びる」。サレハ氏が
退陣に追い込まれた11年の民主化デモや武力衝突で、
治安が悪化し経済は低迷するなかで、カートの売り上げは
4割増えた。飲食店員マンスール・フセインさん(24)は、
仕事があまりなく「カート以外やることがない」と話す。
世界保健機関
(WHO)は、成人男性の9割、女性の5割、
12歳以下の児童の2割がカートを毎日かむと推測している。

■転作相次ぎ水不足拍車

巨岩に立つ別荘「ロックパレス」がそびえるサヌア郊外
ワディ・ダハール。かつてはブドウや桃、ザクロだった緑は、
今はほとんどがカートの木だ。
カート農家ファワズ・ムニフィさん(36)は「年に5回も収穫
できるし、手間もかからない。実入りは3倍以上になった」と話す。

政府情報センターによると、高級品「モカマタリ」で有名な
輸出作物コーヒーの栽培面積は08〜12年にほぼ横ばい
だったが、カートは14%増えた。農業部門の国内総生産
GDP)の3分の1を担う大黒柱だ。

だが副作用も出ている。

「昔は川だったんだ。子どもの頃はよく釣りをした」。
カート農家アブドラ・マソディさん(55)は車道に視線を落とした。
大量の水を使うカート栽
培が広がるにつれて、川は干上がり、
40年ほど前は30メートル下からくんでいた地下水も、
300メートル掘らないと出なくなった。

イエメンは元々、水資源が乏しい。1人が年間に使ってよい水は
120立方メートルで、世界平均の2%。年7%もの人口増が
続くサヌアでは水不足の危機が叫ばれてきた。カートは
地下水の7割を消費しており、世界食糧計画(WFP)は
水資源が枯渇する「主犯」と指摘する。

WFPによると、人口の4割に当たる1千万人以上が食料不足に
陥り、慢性的な栄養不良の児童の割合は58%とアフガニスタン
次ぐ高さだ。穀物自給率は2割に満たず、輸入に頼る小麦の
価格も高値が続く。外貨を稼ぐコーヒーや空腹を満たす穀物を
よそに、カート生産が増え続け、水がますます不足する――
そんな構図だ。食欲減退効果のあるカートで空腹を紛らわす
家庭も珍しくないという。

■国内は合法、国外も鈍い対応

カートへの過度な依存を減らそうと、政府は輸出入を禁止し、
栽培や消費も制限しようとしてきた。この3月にも内務省
勤務中の警察官にカート禁止を厳命した。ただ、カート関連
産業は全雇用の15%を占め、抜本的な対策には
踏み込めないのが実情だ。農家に他の作物への転換を
促すのは容易ではなく、そもそも武装闘争で政府の
統治が及ばない地域も多い。

コカインや覚醒剤など国際的な禁止薬物とは異なり、カートは
イエメンでは合法の「嗜好(しこう)品」。英国でも合法、
米国では違法と対応もまちまちで、国際社会の対応も鈍い。
地元NGO「反カート基金」代表を務めるサヌア大の
アデル・シュガ教授(45)は「貧困や食料不足、水危機に汚職
などの根っこにある問題と認識して対応すべきだ」と話している。

 (サヌア=村山祐介


関連記事です。
『カート』が禁止されていたとしたら・『イエメン人にとっての麻薬』
2008年5月1日付イエメンタイムズ紙にまさにこのタイトルで特集が
組まれた。カートという社会問題に国民がどういう認識をしているか
リポートした記事だった。タイトルは「『カート』が禁止されていたと
したら、あなたの生活はどのように変わっていたか?」というもので、
いろいろな立場の人たちが意見を載せていた。どこまで彼らは
本音を言うことができるのか果たして疑問だったのだが、
忌憚ない意見が載っていたことにびっくりした。
ここに寄せられているドクターの意見は、一般大衆の“カートは体に
いい”という信仰に真っ向から挑戦状をたたきつけている。カートが
無くなれば、癌が大幅に減ると明言している。そして、カートの栽培の
際に使われている、違法でとても殺傷能力が高い殺虫剤による中毒が
おきなくなるため、それが原因でおこる病気がなくなると指摘して
いるのだ。(カートをほとんど洗わずにそのまま口に入れるため
殺虫剤を舐めているに等しいのだ。>○<)
そして、彼らはその直接的な影響だけでなく間接的な影響、
つまり、これまでの回で説明してきたように、カートを噛むことに
よっておきる、生産性の低下、『悪の循環』を心配しているのだ。
『悪の循環』という言葉を理解してもらうには、ちょっと説明を
加えなくてはならないだろう。“循環”になってしまうのには、
カートを噛む時間とその効果の持続性に原因があるのだ。
一般的には、彼らは昼食後にカートを噛みはじめるのであるが、
葉っぱであるため、即効性・劇薬的効果はない。葉っぱを一枚
そして一枚と口の中に蓄え、噛み漉していく過程で、徐々に
覚醒をし始めるのだ。もちろん個人差があるし、噛み溜める量に
よっても効果が違うのだが、徐々に効き始めるのだ。
彼らが、その効果を持続できるのも、異常なまでの頬の
ふくらみでも判るが、カートをずっと口の中に噛み溜めしている
おかげなのだ。吸えば終わりのタバコとは違い、持続性がある。
そして何よりも高いお金を出して購入したカートをそうやすやすと
吐き出しはしない。だから夕方を越えて夜までずっと顔は
ハリセンボン状態なのだ。(^○^)
 前回【街に溢れかえる『癌患者』の症状とは? 
『イエメン人にとっての麻薬』 シリーズ第二弾】で説明したように、
頭が飛ぶというのはその効果の現れなのだが、覚醒の極みに
いけばもちろん仕事どころではない。座って宙を見つめている方が
安全というものであろう。(^○^)寝る時間が近づいてくれば、
さすがに覚醒をとめないと眠れないと彼らも知っているのか、
口の中で漉されたカートの葉っぱのカスをそこらじゅうの道端で
吐き始めるのだ。しかしカートの効果はそんな数十分で
消えるような生易しいものではない。数時間は持続する。
結果は見えている。寝ようと思っても眠れない不眠症の
人たちができあがるのだ。
これは非常に問題なのだ。この手の不眠症の人たちは意識的な
不眠症患者で、例えカートが原因だと思ってはいても、
『カートは体にいい』と信じ込んでいる人たちなので、毎日同じ
行動をとる。慢性的に不眠症になるのだ。もちろん毎日仕事が
あれば仕事にはいくが、その人たちが仕事を意欲的にこなすか
こなさないかは、火を見るより明らかであろう。
実際、職場の同僚で全く使えない人間は、カートの異常なまでの
愛好者であるのだ。働かない、いや、働く意思など湧いてこないと
いったほうが正確かもしれない。その意識を毎日カートにより、
常に不動のものとしているのだ。(悲しいかな)これこそ、
『悪の循環』であろう。
新聞記事に戻ろう。
この中にはカート業者のコメントも紹介されている。“カートには
イエメンの国民の大多数がなんらかの形で仕事に携わっており、
それがなくなることは国民を苦しませ、悲しませることだ”と。
確かに、カート生産業者、流通業者、販売業者、そしてそれを
支える購入者を考えれば、そうコメントするのも否定はできないが、
言葉を変えれば、麻薬で潤っている人たちを悲しませるから、
と言っているのだ。このコメント自体、常軌を逸している。(>○<)
実はこのカートの習慣は、その本人の体と精神を蝕むだけではない。
その周囲の人たちにも深い関係がある。この特集記事には
女性たちのとても興味深いコメントが載っている。
もし男性がカートをやめるなら、“こどもたちのためにお金を
使えるし、夫婦喧嘩は確実に減るだろう”と先生であるカウカブは
指摘する。学生のハナンによれば、“大学に行くことも可能になる”
とも。そして21歳の女学生サハールによれば“今よりももっと
ましな生活ができる”と述べているのだ。
カート購入がどれだけの負担を強いているか、家庭への影響を
考えてみたい。近くにあるカート市場に行けば、様々な産地からの
カートに出会えるが、品質および価格はピンきりなのだ。
一袋は安いもので300リヤール〜、高いもので4000リヤールと
いうものもあるのだ。一般公務員(イエメンでは安定している
かなり高い給料水準である)の所得一ヶ月150ドル
(=30000リヤール)を例にすると、仮にその激安のカートを
30日としても9000リヤール、約三分の一が消えていく。
それだけの所得者が300リヤールということは考えにくいから、
仮に500リヤールのカートとしても15000リヤール、つまり半分が
カートに消えていく計算になるのだ。
これは驚きの割合と言わねばならない。
このしわ寄せが行くのは、悲しいかな彼の家族であり
特に社会的弱者である女性なのだ。

ただでさえ機会が開かれない女性への教育の機会まで奪って
しまうとは・・・、これを悲劇と呼ばずなんであろう
(ほんとうに泣けてくる>○<)しかもここでコメントを寄せて
いるのは、恵まれた環境の人であることはほぼ間違いない。
女性でも定職についている、そして学校に通っているのは
その証である。紙面には取り上げられることの無い大多数の
イエメン人に至っては、どのような状況下にあるかを考えると
ほんとうに心痛い。(>○<)
しかしながらこのカートの問題は、外部の人間がだったら無くせば
いいじゃないかと考えるほど簡単に解決できる問題ではないのだ。
イエメンが発展途上国といわれる理由。世界ではあたりまえのように
禁止されている薬物が我がもの顔で氾濫し、またほとんどが意義を
唱えない世界。心と体を蝕まれているのに気づこうとしない社会。
自分はこれがゆえに、ある旅行書籍で何気なく取り上げられて
いるカートの記事を見るとき、心が痛む。自分は、最初は噛んで
みようと軽く考えていた頃もあった。しかし、カートに惑わされて、
次々と起こる社会問題に盲目にならされている現状を
知れば知るほど、なおのこと表面上でカートを彼らと一緒に
噛み、『タマーム(アラビア語で、良い、の意)』とは
決していいたくはないのだ。


コメントです。
ここでたびたびコメントしていることですが、
まず、世界各国でその国特有の文化があり、
それが、他の国の人たちから見れば目を
そむけたくなるような習慣であっても、
とりあえずはその事実の存在を認識
しなければなりません。
今日はイエメンの[カート]についての
話題ですが、もし、これがどう考えても
悪習慣だとしたら、今後グローバリゼーションが
より進んで淘汰されるのを期待するしかないですね。


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posted by salsaseoul at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 中東