毎日新聞 2014年03月09日

ロシアと欧州を結ぶ主な天然ガスパイプライン
ウクライナ情勢を巡りロシアがウクライナ向けの天然ガス輸出を
停止する可能性に言及したことで、両国の「ガス紛争」が再燃する
可能性が出てきた。実際に停止されれば、ウクライナ経由で
ロシア産ガスの供給を受けている欧州諸国への影響も必至。
ロシアの強硬姿勢は対露制裁を決めた欧州連合(EU)への
対抗措置という側面もあり、ロシア産ガスに依存するEU側は
対応を迫られそうだ。
【モスクワ田中洋之、キエフ樋口直樹、ブリュッセル斎藤義彦】
ロシア政府系天然ガス企業「ガスプロム」のミレル社長は7日、
ウクライナ向けガスの2月分の支払いを期限だった同日に
なっても受け取っておらず、今年第1四半期の滞納金が
計18億9000万ドル(約1950億円)に上ると指摘。
滞納金の支払いがなければ、
「(ガス供給が止まった)2009年初頭の
状況に戻るリスクが出てくる」と述べた。
ガスプロムは09年1月、滞納金の未払いなどを理由にウクライナ
向けのガス供給を停止。ウクライナ経由でガス供給を受けていた
欧州諸国も大混乱した。06年1月にも両国のガス供給契約更新を
めぐる対立から同様の事態が起きていた。
ロシアには当時、エネルギー輸出を武器に、ウクライナで親欧米
路線を推進したユーシェンコ大統領を締めつける狙いがあったと
される。今回も親欧米のウクライナ新政権を揺さぶり、ロシアへの
段階的制裁を決めたEUに「脅し」をかける狙いがあるのは明白だ。
ガスプロムはウクライナのガス需要のほぼ半分を供給。ロシア産
ガスは欧州全体の需要の約3分の1を満たしており、ウクライナは
重要なパイプラインの通過国だ。ロシアはトラブルを起こしてきた
ウクライナやベラルーシを経由国から外すため、バルト海経由の
パイプライン「ノルド・ストリーム」と黒海経由の「サウス・ストリーム」の
建設を主導。ノルド・ストリームは既に稼働している。
ロシアは欧州で重要な経済パートナーであるドイツには、
ノルド・ストリーム経由でガスを供給しており、欧州を分断できるとの
読みもある。これに対し欧州側は、ロシア産ガスへの過剰な依存を
是正するため、トルコ経由でカスピ海地域の天然ガスを輸入する
「ナブッコ・ライン」の建設を予定している。
ガス備蓄量が最長4カ月分あると言われる西欧に比べ、ロシアへの
依存度が大きいウクライナやハンガリー、ブルガリアなど東欧諸国は
ガス供給のストップにより深刻な影響を受けることになる。
一方、EUはロシアがガス供給停止で脅してくることは織り込み済みで、
ロシアが態度を軟化させなければ数日中に資産凍結や渡航禁止など
第2段階の制裁を実施する方針だ。
関連記事です。
天然ガス紛争、被害者はどちら?
2009年、ロシア関連の最初のトップニュースは、ロシアの
天然ガス独占企業、ガスプロムが、ウクライナへの天然ガス
供給を1月1日から停止したというものだった。ウクライナは
かつてソビエト連邦を構成していた国の1つである。ロシアは
再度、隣国との「天然ガス戦争」に踏み切ったのだ。
2006年にガス価格交渉が決裂し、供給を停止された時、
ウクライナはもちろん、米もロシアを猛烈に批判していた。だが、
今回はその時ほどの激しい反応は見せていない。
当時、「ロシアがエネルギー供給を政治圧力に使用している」と
糾弾していた米国務省も、今回は「交渉を通じて問題の決着を
見出してほしい」と穏やかに反応している。ロシア産の天然ガスで
需要の20%を賄う欧州各国は、供給の削減を恐れて
「1日も早く問題を解決してほしい」と訴えるだけだ。
持てる国と持たざる国
この問題は複雑でエネルギー資源の偏在、世界的な経済危機の
影響、外交の駆け引きなど様々な問題が絡み合っている。
そのため、問題の真相を特定するのは困難である。
まずエネルギー資源の偏在に関して言えば、世界の天然ガス
確認埋蔵量(2004年時点)の27%はロシアにある。中東地域の
埋蔵量は40%でロシアを上回っているが、一国の埋蔵量としては
ロシアが世界一だ。ちなみにアジア太平洋地域の埋蔵量は8%
しかない。欧州と欧州に近接するアジア(中東抜き)は9%。
北米と中南米は8%である。
ソ連崩壊後、経済改革と民主化の道を歩んでいたロシアにとって、
エネルギー資源は大きな拠り所である。政府が内政や外交の
政策を立てる際の、いわば土台ともなっていた。
特に天然ガスはロシアにとって重要なエネルギー資源だ。
ロシアの石油埋蔵量は世界の6%。天然ガスの比率の方が
はるかに高い。また世界全体の平均可採年数を比べると、
石油の46年に対して天然ガスは63年。環境負担も天然ガスの
方が低い。さらには世界需要が急速に増えているが、価格は
石油ほどには暴落していない。
そのため、石油の開発に関しては国内外の民間企業の参加を
容認しているが、天然ガスに関してはガスプロムを半国営の
独占企業とし、世界最大規模のエネルギー企業にすべく
後押ししていた。ガスプロムはロシアで生産される天然ガスの
90%を押さえ、パイプラインのすべてを所有している。ロシアの
税収の約25%は、ガスプロムが支払っている。
欧米では「ロシアは “gazprom.com” だ」と皮肉る声も聞こえる。
このように天然ガス資源を豊富に持つことは、メリットだけではなく
デメリットもある。まず隣の国、特にその国が資源を持たない
貧しい国である場合、関係がどうしてもぎくしゃくとしたものになる。
問題は、国際世論がどうしても持たざる国の味方となることだ。
実際はそうでなくても、「大国が弱いものをいじめている」という
印象を与えてしまうのだ。確かにかつてのロシアは、親米国で
あるウクライナを敵視する時期もあったが、最近は対応を
変化させている。
コメントです。
ロシア・ウクライナ関係に関しては話題が
広がれば広がるほど、複雑な歴史的背景が
明らかになってきます。
そして、今日の話題のようにロシアの欧州に
対してのエネルギー供給問題と、当然、それに
関して傍観できないEUや米国の思惑が絡んで
くると、事態は複雑すぎて、簡潔にコメントする
ことはかなり難しいですね。
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